黒猫さん家でその2
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 京介が私の家の中に居る……ま、まぁ、私が呼んだのだから当然なんだけど……

「…………」

 ど、どど、どうしたらいいのかしら? 何か話題を振らないといけないわよね? 何か

京介が食いつくような話題を……

「きょ、京介っ!」

「何だ?」

「あの、その…………お、お茶を用意してくるわっ!」

「お、おう……」

 うぅ……っ、あまりの情けなさに泣きそうになりそうだわ。私は普通に会話をしたいだ

けなのに、普段ならもっと普通に会話が出来るはずなのに。

 どうして今は普通に出来ないのかしら? 自分の家というテリトリーに、固有結界に居る

はずなのに平常でいられない。

 トクトクとコップにお茶を注ぎながらこの後の方針を考える。

 このまま意味もなく時間を消費させるのは嫌だから。せっかく京介を家に呼んだのだ

から、せめて何かしらのモノがないと意味がない。

 

「お、お茶の準備が出来たわよ……」

 飲み物と一緒に予め用意していたお菓子を一緒に出す。

「悪いな。こんな物まで出してもらって」

「いいのよ。あなたを呼んだのは私なのだから、これくらいのもてなしはするわよ」

「そうだよ。高坂くんを呼んだのはルリ姉なんだから、高坂くんはどっしりと構えてたらいいよ」

 日向が『呼んだのはルリ姉』という部分を強調していたような気がしたのだけれど、この

子は何が言いたいのかしら? 日向だって、京介に会えるのを楽しみにしてたくせに……

「にひひっ♪ そんなわけだから、高坂くんは遠慮しなくていいんだよ。勿論、あたしも

高坂くんに遠慮しないけどねー♪」

 そう言って、京介の隣に陣取る日向。

「ひ、日向――っ!?」

 あ、あああ、あなた何をしているのよ!? 何で京介の隣に腰を下ろしているのよ!?

 京介の隣は私の特等席なのに。

「どうしたのルリ姉? あたしに何かあるのぉ〜?」

 日向がニヤニヤとムカつく笑みを浮かべながら私を見てくる。この子、私を挑発する

ためだけに京介の隣に座ったわね。まったく、実の姉を挑発して何が楽しいのかしら?

 そもそも私がこんな程度の低い挑発に乗るわけが――

「……」

「お、おい!? 二人に挟まれたら、俺動けなくなるんだが……」

「何処に私が座ろうと私の勝手でしょう? ここは私の家なのだから」

「ルリ姉ぇ〜♪」

 ――挑発に乗ってしまったわね……何一つ抵抗出来ず、日向の挑発に乗って京介の隣に

座ってしまったわ。

 私が挑発に乗ってしまったから、日向がニマニマと笑みを加速させているわ。

 なんていうか……可愛い自慢の妹なのだけど、無性に殴りたいわね。

「あーっ、姉さまもお姉ちゃんもズルイです。わたしだってお兄ちゃんと一緒にいたいですっ」

 日向に意識を集中していると、珠希が僅かに頬を膨らませながら抗議の声と共に、京介

の膝の上に座った――って、ひ、膝の上ですって!?

「た、珠希……?」

「えへへっ♪ お兄ちゃんの膝、とてもいいです♪」

 ニコニコと嬉しそうな顔を浮かべる珠希。珠希にこんな顔をされてしまったら、何も

言えないじゃない。年の離れた妹に嫉妬じみたことなんて……

「おわっ、た、珠希ちゃん!? そんなに身体を動かしたら――はぅっ!?」

 な、何かしら? 今京介から変に情けない声が出たのだけれど……まさかとは思うけど京介……

「く、黒猫さん……? 何故にそんな怖い顔で俺を見ているのでしょうか?」

「……」

 この獣は妹好きだけではなくてロリコンでもあるの!?

 ――はっ!? ロリコンで妹好きだなんて、珠希は京介の好みのど真ん中じゃない。

 だ、ダメよ! いくら珠希でも京介とそういう関係になるのは早いわ。男の人の――京介の

あ、アレを珠希が咥えるだなんて絶対にダメよ!

 あの男のモノは心だけでなく身体全てにおいて、私の所有物なのだから他の女に現を抜

かすだなんて許されないわよ。

 きょ、京介の初めては私が貰うのだと決めているのだから。そ、それに京介もよく考えて

欲しいわ。いくら珠希が幼い子供で妹だからといって、小学一年生に手を出すのは拙いわ。

 その点、私なら体格も京介の好みに近いはずだし……む、胸はその内大きくなるはずだし。

 だから珠希ではなくて、私を襲った方がいいと思うわよ!

 ――などと、頭の中で考えていると、不意に私の携帯が鳴った。

 電話ではなくメールのようで、差出人はもう一人の妹――日向だった。

 そして、その日向からのメールの内容は――

 

『ルリ姉、高坂くんが来てテンションが上がってるのは分かるけど、エロい妄想をする

のはどうかと思うよ……』

 

 実に酷い内容だった。

「ひ、日向っ!?」

「うおっ!? いきなり大きな声を出してどうしたんだ?」

「そうだよ、ルリ姉。いきなり大きな声を出したらたまちゃんがビックリするよ」

「姉さま……?」

「……な、何でもないわ」

 すとん、と平静を装いながら座り直す。

 それにしても日向ったら、どうして私の妄想の内容を理解出来たのよ? もしかして

私の考えが口から漏れて……いえ、それはないようね。

 私の口から漏れていたら、さすがに京介も変な顔をするでしょうし。まぁ、今もさっき

の行動のせいで若干変な顔はしているのだけれどね。

「……お茶が美味しいわ」

 ずずず、と自分で淹れたお茶を喉に流し込む。どうもさっきから私は余裕がないみたいね。

 お茶でも飲んで、少しは落ち着きを取り戻さないといけないわ。

「ねぇねぇ高坂くん。なんかして遊ぼうよー♪」

「ん、いいぞ。何して遊ぶんだ?」

「えーとね、お医者さんごっこ♪」

「ぶっ!?」

 口に含んだお茶が外に噴き出る。

「うわっ、ルリ姉汚いよ」

「姉さまだいじょうぶですか……?」

「だい、大丈夫よ……っ」

 げほっ、ごほっ、と咳をしながら珠希に大丈夫だと伝える。あぁもう、せっかく掃除を

したというのにお茶で汚れてしまったわ――って、そんなことを呑気に言っている場合じゃなくて――

「日向……私の聞き間違いでないのなら、とても不穏な言葉が聞こえたのだけれど、もう一度

言ってくれるかしら? 京介と何をして遊ぶのかを……」

「あーその、えっと……てへっ♪」

「……日向、あなた本当に覚悟してなさいよ」

「ご、ごめんなさいルリ姉! 冗談だから、ほんの出来心だから!」

 ペコペコと必死に謝ってくる日向。まったく、すぐに謝るのなら余計なことを言わないで欲しいわね。

「お兄ちゃん……わたしとお医者さんごっこするですか?」

「珠希――っ!?」

 あ、あなたまで何を言っているのよ!? 日向でもアウトなのに、あなたが京介と

お医者さんごっこなんかしたらアウトどころの騒ぎじゃなくなるわよ!

 京介が警察のやっかいになってしまうわ!

「えへへ〜冗談です♪」

「そ、そう……」

 最近、珠希までもが私を弄ってきているような気がするわ。

 珠希は素直で優しい子だから、そんなことしないと思うんだけど……妙に気になるのよね。

 もしかして、日向の影響を受けているのかしら? もし、そうなら日向にはお仕置きを……

「る、ルリ姉……? なんだか物凄く不穏な気配を感じたんだけど……?」

「……気のせいよ」

 日向、あなたの抱いた気配は完全に気のせいなのよ。だから安心して私にお仕置きをされなさい。

 日向へのお仕置き。それを考えないといけないというのに――

「お、お医者さんごっこだと……!? お、俺が幼女達とお医者さんごっこ……」

 京介のバカがなにやらぶつぶつと呟いていた。日向だけではなくて京介にもお仕置きが必要かしら?

「京介、目を覚ましなさい」

 ぺちぺち、と京介の頬を叩いて目を覚まさせる。

「――はっ!? お、俺は一体何を……?」

「京介、あなたが真性の変態であることは理解出来たわ」

「黒猫!? お、おま――何を言ってるんだよ!?」

「この男は自覚がないのかしら……?」

 妹達とのお医者さんごっこを想像してニヤニヤしていたというのに、それに気が付いていないだなんて。

 これは少し治療が必要かもしれないわね。お仕置きを兼ねた治療が……

「京介。あなた今日はこの家に泊まりなさい」

「はぁ?」「えっ……」「わー♪」

 三人がそれぞれ違う反応を示す。

 京介は驚きの声を。日向はこの姉は何を言っているんだという声を。珠希は喜びの声をそれぞれあげる。

「一日くらいなら問題ないでしょ?」

「そ、それはそうなんだが……」

「日向や珠希と一緒に遊んであげなさい。そうしたら、この子達も喜ぶはずだから」

 妹達をダシに泊まるように勧める。これで京介が泊まってくれれば、お仕置きも出来るのだから。

「お兄ちゃん。泊まってくれるですか?」

 私の気持ちを察してくれたのか、珠希が泊まるように催促してくる。さすが私の妹だわ。

 勿論、日向あなたも珠希に続くわよね? そんな期待を込めた視線で日向を見る。

「ひぃ……っ!? こ、高坂くん? あ、あたしも高坂くんに泊まって欲しいなぁーなんて」

 日向も京介に泊まるように催促をする。いい子ね、日向。少しあなたへのお仕置きを減らしてあげましょう。

「うぐ……っ、みんながそう言うのなら、と、泊まろうかな?」

「ええ。そうしなさい」

「分かったよ」

 これで京介が泊まることが決定した。今日一日、ずっと京介と居られるのね。

 

 ふふ……っ、長く激しい戦いになりそうだわ。

 

説明
どんどん黒猫が黒くなり、日向が不憫になっていく。
仕方ないねこれは・・・
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俺の妹がこんなに可愛いわけがない 黒猫 日向 珠希 高坂京介 

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