マンジャック #14(前) |
マンジャック
第十四章(前編) 三巴の饗宴
「あの。ちょっと伺いたいのですが。」
男は国立精神医学センターの受け付けの女性に尋ねた。背広を着込んだこの男は、クールなのだが、スーツケース片手に平伏している姿は普段からは想像もつかないものだ。一体彼は何をしようというのか。
「カタストロフ製薬の者です。新薬の相談で最土先生にお目にかかりたいのですが。」
受け付けの女性はこの外資系企業の訪問には慣れているらしく、何の警戒もせずに答えた。
「えぇ。今でしたらいらっしゃいます。いつもあと三十分程部屋に残ってみえますよ。」
「三十分ですか。」
「えぇ。ご家族の方が迎えにみえるのが、いつもそのくらいなんです。」
クールは仰々しくお礼を言ってその場を去った。ふぅ。日本支部の営業はこんなことしているのか。彼は苦笑いしつつ思う。が、とりあえず間にあったようだ。まだ成木とか言うジャッカーは来ていないようだ。
三十分? 彼は微かに微笑んだ。充分な時間だ。
林の中に倒れ伏している男、馳太一を見下ろしながら、操乱は服の上から懐のナイフを探っていた。
こいつ、どうするか...。
転移を解かれた馳を気絶させたままにすることに、操乱はかなりの苦労をした。それが、彼の迷いを新たに生じさせていた。こいつは近いうちにはっきりと力を付けるであろうという確信が、並のジャッカーではない操乱だからこそ推察し得ていたのである。
ジャッカーの精神支配に抗するに最も重要なことは、何よりも精神力である。馳は最近の一連の大事件にことごとく接することで、自身ですら気付かぬうちに己の心を強くしてきているのだろう。
芽を摘むか。
将来の敵に対する警戒が、操乱の目に殺気を走らせた。ジオから奪ってきたナイフを取り出し、先の戦闘でくぐもった刃先に自身を鈍く映した。
操乱の目が怜悧になる。刃を手にした腕を高く掲げる...。
遠く...音がした。蝉の声を蹴散らしながら近づいてくるそれは、サイレンの音だ...。
操乱は瞬時にその意味を悟ってひとまず殺気を消した。
あれだけの大騒ぎだ。いくら他の民家から離れているとはいっても、近くの住人が気付かないはずがないが、予想外に早かったな。
彼は考え、馳をあらためて見る。クール隊達の返り血を少なからず浴びているこの男、通りすがりの散歩者には思われまい。
操乱は馳の警察手帳を失敬すると、彼を洋館の見える位置、道路からは丸見えになる位置にまで運んで放り出した。羊歯の葉をクッションにして、馳は道脇の側溝の上まで滑り落ちた。
彼は少し息を荒くしながら、そのままの姿勢で気を失っている馳に言った。
「お前には時間稼ぎになってもらう。成長しても、この小説じゃもう俺と会うことはないだろうからな。」
操乱は林の中に身を消した。成木が集団転移を手にしてきた時、それを現実の物とする準備をするために...。
何事もなかったかのように、成木は最土の相好を崩して、我に返った秘書が部屋から出るのを見届けた。
密かに外を包囲していたクール達が展開してから暫く経った。奴等のことだ、既に病院の建て屋の中にいることだろう。
クールも含めて四人...ここで戦うのはまずいか。
プリンスホテルでのクールとの交戦は、彼にクールへの警戒心を少なからず与えたようだ。壁に置いた彼の手には、無意識のうちに力が入ってゆく...。
彼は次第に迫る自身への脅威に、いまだ有効な手段を思いつくことができない。
成木は苛ついた。考えがまとまらないのだ。
時間が過ぎていく。
いつになく成木が落ち着かないのは、実はクールだけが原因ではない。
遂に集団転移を己の物としたことが、沈着な彼をして昂揚感を抑制させきれずにいたのだ。
くっ。私ともあろう者が。
成木は苦笑したが、最土の身体に馴染んでくるにつれて、じわじわと判ってくる集団転移の全貌が、厭が上にも彼を上気させてゆく。
この力、渡せるかよ。
そこに、電話がかかってきた。はっと我に還った成木がそれに応対する。
それは受付けからの電話であった。
その内容を聞くうち、ゆっくりだが、成木は最土の表情に笑みを湛えさせていった。
通話を終え、受話器を置いた彼は、ドアに向かって歩み始めた。
私の運、尽きてはいないようだ。
何気ない風を装って、クールは再度病院に入り込んでいた。今度は先程とはうって代わって病人を装っている。
待合いのホールでポロシャツをだらしなく着込んで、痛そうに胃の辺りを押さえるさまは、確かに病人そのものではある。が、時折放つ視線はやはり、常人にはない鋭さを放っている。
既に彼らは最土の研究室への包囲陣を敷き終えていた。後は作戦通りに奴を誘拐するだけだ。
機は熟したな。
彼はゆったりと立ち上がって所定の行動に移ろうとする...。
その時だ。彼の視線の先に、エレベーターから出てきた最土を見たのは。
「!」
彼は最土の格好を認めて少なからず驚いた。白衣ではなくしかも鞄を持っているその姿は、他の棟で医療行為をするために降りてきたのではないだろう。
帰るのか。受け付けの女は三十分と言っていたが、まだ五分も経っていないぞ。
クールの戸惑いをよそに、彼の脇から子供連れの女性が最土に近づく。
「仕事が早く終わったのよ。たまには外で食事でもと思ったの。」
読者とクールに判るようにその女性は最土に向かって言った。最土は小さく手を挙げて了解の意を示す。
「パパー。」
最土の娘、園子は、小さな手を広げながら、もう待ちきれずに走り出した。彼女は父親のたかいたかいが大好きなのだ。
園子は最土に走りよった。彼女の中にはジャンプする自分の姿が映じているだろう。そして彼女が今にも飛びつこうとした瞬間。
「!!」
園子は壁にぶつかったように立ち止まった...。
彼女の中の何かが立ち止まらせたのだ。
えっ。彼女は自分の為した行動が理解できない。
だが彼女がそれを反芻する間もなく、園子は最土に抱え上げられていた。
「園ちゃん、元気だったかい。」最土が顔をほころばせて言う。
たかいたかいをするそのさまは、幸福な親子そのままだ。
そこに生じた針の穴ほどのぎこちなさを、園子以外にも感じとったのは、もう一人の男だけだった。
園子を抱きしめた肩越しに、自分の方を向いた最土と一瞬目が合った時、クールは確信した。
成木黄泉!
クールに気付いたのかどうなのか、最土の笑みがほんの少しだけ種類の違うモノに代わった...。
ちぃっ。
焦燥する対象が成木からクールに180度入れ替わった。
クールは自分が先を越されたことを思い知らされたのだ。
奴が先に来ていたとは...。
いつ騒ぐかもしれない子供が一緒である以上、クールの病院内での誘拐計画は頓挫してしまったに等しい。クールは怒りが心を占めてゆくのを感じる...。後一歩の所で、獲物は彼の眼前をすり抜けてゆくのだ。
妻子が早く来るのが偶然の誤算だとしても、彼の怒りは鎮まるはずもない。成木に完全に出し抜かれという想いが、更にそれを助長する。
奴め、どうするつもりだ。
クールは、成木の次の手を推し量りかねたため、娘を抱えたまま歩く最土とその妻に気取られぬ程距離が開いてから座を立った。そして三人の後をさり気なく尾けだすと、左手に付けた腕時計型の無線機で指示を出した。
「俺だ。最土が病院を出た。ミンとエルヴァは研究室を探れ、アインは俺と奴等を追うぞ。」
最土一家が、妻の乗ってきた車に乗って病院を後にする。
すぐさまクールも車に飛び乗った。待機していたアインが敷地内に乗り入れてきた車だ。
「ジャッカーめ。このまま逃げられると思うなよ。」
二人に減ったか。随分助かるな。
最土の中にいる成木は、バックミラーの中につかず離れず尾いて来る車を見て思った。
もうすぐ本当に二人になるぞ。彼は内心ほくそ笑んだ。
「ここだ。」
白衣を着た男がもう一人の白衣の男に呼びかけた。
再び病院の中。最土の研究室の前の廊下。
二人とも白衣を着てはいるが、その衣装に隠せないほどの鍛え上げられた肉体を持っている。クールが病院に戦力を裂いた戦士、ミンとエルヴァだ。
彼らの目的は言うまでもなく、最土の研究室の捜索。部屋を探り、人工転移その他の資料の奪取だ。
多人種が混交するのが当たり前になってきた日本において、二人が白衣を着ていたとしても、今更特に警戒する者もないであろうが、それでも彼らは警戒を怠らず、出来るだけ人に会わないようにしてここまで辿り着いた。
二人は隠していた銃を出してその手に構えると、ドアの両脇に陣取った。そしてノブに手をかけ...。
彼らの不幸は、ほんの十分前までその部屋に、成木がいたことを知らされなかったことだろう...。
だが後ろの二人はどうする...。研究室に仕掛けたトラップの効果を疑いもせず、成木は次の手を考える。
「ねぇ、こっちじゃ家に帰っちゃうじゃない。食事していきましょうよ。」最土の妻が不機嫌さを含めて言った。
「悪いが、今日は気分が悪いんだ。今度にしてくれないか。」考えを止められた成木は、それでも辛うじて怒気を押さえて答える。
「いやよ。私今日は家事をしたくないのよ。」
彼女も食い下がる。最土の知識に、妻の我侭さへの放任を読み取って、成木はうんざりした。最土にも少しは同情するな。大センセイの娘というだけで...。
車の前列のそんな会話を聞きながら、後部座席に座っている娘の園子は、その幼い心を不安に満たしていた。
彼女は思い出していたのだ、さっきの病院のロビーでの自分の行動を。
どうしてあんなことしたんだろう。彼女は己を襲った得体の知れない想いに困惑するばかりだ。
なにもかもいつもと同じなのに...、いつもと同じなのに...。高い高いしてくれた時も、自分に顔を近づけたときに感じるお髭の感触も...。
でも、笑いかけてくれるその顔は...、いつもと違うの...。
「出たわ。約三十分。」
原尾は大野に向かって言った。大野の車に付いたカーナビに最土の家の位置をマーキングして、病院からの所要時間を計算させたのだ。
「三十分か、ギリギリだな。」
大野はその額に汗を浮かべて呟いた。成木があれからすぐに車に乗ったとしたら、もう家に着いている頃だ。最土の家族すら救えないようでは俺は...。
「最土の家族は何人だい。」
不安を忘れようと大野は尋ねる。
「最土氏と奥さん、それに五歳になる女の子がいるわ。あと、猫を一匹飼っているわね、黒猫。」原尾は携帯無線機で警視庁にアクセスした結果を読んだ。
どうしてペットのことまで判るんだ。大野は驚く。警察はひょっとして俺のパンツの枚数まで知ってんじゃないのか。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
「三人家族か。何とか間にあってくれ。」
明らかに現時点でのイニシアチブは成木が握っていた。それがわかるだけに、成木の操る最土一家の車の後を追いかけるクールの心中も穏やかであるまい。
焦燥について言えば、大野、成木、クールの三人の中では、クールが一番身近に感ぜられるのではあるまいか。
クールの身体を構成する強化細胞は、先に書いたように、爆発的な体力と引き替えの短命さを欠点としている。全身を薬液に浸して延命する事が出来なくなった彼にとって、全身を不意に襲う激痛の、次第にそのサイクルを短くしていることが、己自身の命を刻む時計そのものなのだ。
余命を賭して希求する力は、未だその手に出来ず。
彼にとっての異国の街を、いつ何処に着くともなく走り続ける車を追いかけているこの瞬間にすら...、
彼の時間は消えてゆくのだ。
「ねぇ、Uターンしてよ。」
まだ自説を曲げぬ最土の妻に、成木はもう一度諭した。
「頼むよ。頭が痛いんだ。家で休ませておくれ。」
いつになく強気な夫の態度にしかし、彼女はヒステリーを起こした。
「なによ偉そうに。最近ちょっとちやほやされたからっていい気にならないでよ。あんたなんか私と結婚しなかったら...」
園子が聞いた母親の声は突然そこで止まった。彼女には、父親がふと伸ばした左手が母親の額に触れた瞬間に、その声が止んだように見えた。
「ママ。どうしたの。ねぇ。」
園子はおそるおそる聞いた。だが、母親の答えは。
「どうしたの園子。おとなしく座ってなさい。」
あまりにも平然としたその物言いに園子は身体をぶるっと震わせた。
「マ...マ...。」
父が振り返る。
「そのちゃん。すわっていなさい。」
その目を見たとき、園子は全てを悟って凍り付いた。父のはずのその男は、昏く殺意に満ちた眼差しを湛えていたのである。
恐怖が園子の口をこじ開ける。その呟きは、彼女にとって残酷極まりない事実を語った。
「パパじゃない。」
瀟洒な住宅が続く街の一角で、クール達の車は停まった。そこは、つい今しがた最土親子の乗った車が入った家の脇だ。
午後のその時間、辺りには丁度人通りが無くなる。彼らの車がそこに停まっても、まだ一人の通行人も見ていない。
それが警戒心を緩めたわけでもあるまいが、窓を開け放って、クールはその家をしげしげと眺めた。いつの間にか、クールはミリタリールックに着替えている。
低い塀に囲まれた狭い前庭には、彼らが追ってきた車が、エンジンのくすぶった音をまだたてて停められている。その奥の建て屋はさほど大きくはない二階屋で、鉄筋の白壁が午後の日差しを眩しく反射している。そしてなにより、玄関に付けてある表札には、”最土”と書いてある。
「まさか、堂々とMODOの家にくるとは思いませんでしたね。」
アインが呆れて言った。最土をジャッカーが乗っ取っていたのなら、明らかに自分達のことは気付いていたであろうに、道中撒こうとする素振りすら見られなかったのだ。
「それだけ奴も急いでいるという事か。」クールが答えた。「それとも、俺達を倒す自信があるのか。」
あるのかもしれんな。クールはふとそんな考えがよぎった。家の中には間違いなくあのジャッカーが罠を張っているだろう。
二人は無言で銃を手にし、各々弾創に弾が溢れていることを確認した。それでも足りないと思ったか、アインは後部席に手を伸ばすと、大きなケースの脇にある小さな箱を引き寄せた。開け放たれた箱は弾薬が山と入っていて、アインはその幾つかを胸のポケットに無造作に入れた。
黒猫が、塀の上からそれを眺めている。
「行くぞ。」一瞬の後、クールの声が静かに、戦闘の開始を告げる。
先制攻撃は意外なところから来た。
クールが車のドアを開けかけたとき、窓から何かが入り込んできたのだ。
彼はそれを無意識に避けた、は良かったが、それが点火したままのライターだと認識して愕然とした。それは弧を描き、アインが今さっきシート脇に置いた箱の中に入る...。
「出ろ! アイン!!」
クールがドアを開けるのと、爆発は殆ど同時だった。
バン!!
彼は爆風を背に受けて塀にたたきつけられた。
「ぐぅっ!」
思わず音を上げるクール、背中をしこたま打ちつけたためだ。それでも彼は、何とか体勢を立て直して車の方を向く。
車は爆圧で屋根をも吹き飛ばされた状態で燃え盛っていた。アインは車の脇に逃げ出すことには成功していたものの、服の中の弾が暴発し、腹部を抉り取られて転がっている。
「......。」
クールの無言は、普段の彼からすると意外なほど長かった。彼は自分が遂に一人になったことに、どこかで気付いていたのだろうか。
しかし彼は次の瞬間、塀の方に素早く向き直り、振り向きざまに塀上に銃を撃つ。
ギン! 黒猫が一瞬早く家の中に逃げ、弾は塀を削って空に舞う。
あの男、猫に転移してきたのか。クールは、プリンスホテルで息の根を止めたはずの成木がどうして生きていたのかが薄々判った。そして同時に、今回の事件を舐めていたのは、自分の方であった事を思い知らされた。
「ジャッカー!!」
クールは塀に向かって叫んだ。
クールはゆっくりと最土家の門を過ぎた。だが、いったいどんな度胸をしているのか、いつ襲ってくるやも知れぬ罠を前にしているのに、彼はまだ手にした銃を構えようともしていない。
だが実際のところ、彼の大胆さには根拠があると言わねばならない。クールの落ちつきは、自分がまだ狙われていないことを感じとっていることにあるからなのである。
クールの表情は今、これまでに増して無表情になっていた。それは、彼が全神経を外界に向けて解放している事を示すものだ。もし彼をよく知っている者が見たら震え上がるだろうその状態は、実はクールが最も戦闘の才を際だたせる時のそれなのだ。
クールがこれまで数多の戦地、幾多の死地を何度となく切り抜けてこられたのは、己の感覚を究極まで研ぎ澄ますことで、自身に注がれる殺気をいち早く察知する能力を身につけたからだったのだ。そしてその能力は、人体能力を活性化させる人工細胞の身体を得たことによって、人間の感覚を遥かに凌駕するまでになっているのだ。
クールは玄関ドアを大胆に開け放った。してみると、彼のセンサーはまだ己をつけ狙う敵を感知していないようだ。
クールはフローリングされた廊下に土足で上がり、奥まで続くその廊下をゆっくりと歩く。彼の足音の微かな声の他は、遠く街の息づかいしか聞こえない。
ふと、彼は左側にドアを位置して立ち止まった。その部屋は玄関脇に面した応接間だろう。彼の腕は自然銃を持ち上げてゆく。
クールはドアに銃を向け、慎重に狙いを付けてから一発放った。
バン!
クールは発射後すぐにドアを蹴破って部屋に入る。そして何よりもまず銃を突き出す。
部屋は十畳程の洋間で、ソファやら書架などが整然と配されている。左には玄関からも見えるガラス戸があり、右には奥の廊下に通じるらしいドアが付いている。
ドアから見て一番奥の壁に、女が凭れていた。最土の妻だ。両手で銃を構えているが、みぞおちのど真ん中に壁向こうが見えるほどの穴を開けている。
「ぐはっ。」
最土の妻は血を吐いて膝を屈し、もんどりうって倒れた。
即死だ。
ロシア流れの銃か...。女の手にした銃を見てクールは即断した。なまじ俺に殺気を向けたことで無駄死にしたな。
クールがそこから視線を外そうとしたとき、女の銃に手を伸ばす何者か...。
ダダダッ。ソファの後ろを這っていく人影、最土だ。
ジャッカーか。それと認識するや、クールはソファごと最土を撃つ。
ぐっ。弾け飛ぶソファの破片越しに、またも短い悲鳴が漏れる。最土はたまらず、クールから向かって右手に逃げ出し、奥のドアから部屋の外に出た。クールが発射した弾丸が後を追う。
クールは急がない。ドアの横に成木の影を見ているからだ。彼は素早く銃のマガジンを入れ替える。
「き、貴様...私の位置が見えているのか。」壁越しに最土が叫んだ。流石の成木も驚きを隠せないようだ。
「おう。お前が座り込んで横っ腹から血を流している事も判るぞ。」クールは姿を見せぬ相手に言い放った。「だが俺は見ているんじゃなく、感じているんだがな。」
計算が違う。クールの声を聞く成木は混乱していた。あの男の...クールの攻撃力が、先回とはまるで違う。
「仲間がいなくなったんで久しぶりにこの状態になれた。」まるで成木の心を読んだかのようにクールは言う。「殺人を最優先にするから、少しハイになってるんだ。感謝するぞ。」
「じょ、冗談はよしたまえ。君は人工転移の力を欲しているのだろう。この最土を殺しては手に入らないぞ。」
「そんなことはない。」嘲笑気味にクールは言う。「そんなことはないよ。俺はただ、あんたの首さえあればいいんだから。」
クールが最土の居場所を突き止め得たのは、おそらく死んだはずのギルバートから何らかの方法で情報を聞いたからだろう。それが察せられるだけに、クールが発したセリフの信憑性には疑うところがない。成木は震え上がった。
生死を問わずということか...。殺されるな。
成木はドアの脇から不意に半身を出して、死体から奪った拳銃を撃った。だが、そんな闇雲な攻撃に対し、クールは既にそれを察知し、正確に狙いを澄まして反撃する。
結果は明らかだ。最土の右腕は二の腕からもぎ取られ、最土と共に廊下に転がる。
最土の頭がクールから見て無防備に曝された。クールはその首の付け根に狙いを付ける。
最土...いやこのジャッカー...。何故笑みを浮かべている?
クールは狙いを一瞬中断して視線をずらす。最土は左手を伸ばして右腕を掴んでいた。その右腕に握られた銃の狙いは、正確に彼の眉間に付けられている。
「!!」
クールは思わずしゃがんで攻撃を避ける。弾はミリ秒前まで彼の頭のあったところを通り、天井で跳弾して外に過ぎた。
今だ。成木は慌てて半身を起こすと、廊下の先に飛び退いた。そして音からして、地下室への階段を転がる様にして降りたようだ。
一瞬の間をおいて、地下への階段を前にするクール。手にした銃のグリップが悪い。緊張による発汗のためだ。クールといえども、今の攻撃に驚嘆したということだ。
床に銃を固定して一撃必殺を狙ったか。クールは思う。だがそのために利き腕を捨てるとは...。このジャッカー、いや成木黄泉...。
狭い地下への階段は、セメント壁むき出しの粗雑な造りで、とてもプロの仕事には見えなかった。最土から流れ落ちた血が紅く染めたそんな階段を一歩一歩、クールは降りてゆく。
成木が、腕一本を犠牲にしてまで、逃げ場のない場所に行く以上、そこに罠があることは間違いあるまい。
地下室は階段左手に位置し、踊り場に淡い光を漏らしている。クールはその光の直前、最後の階段で足を停めた。地下室は妙に暑い。彼は額に滲みだした汗を一回拭ってから、銃を構えて気を飛ばす。何の目的の部屋か、アルコール系の薬品が匂う。これに嗅覚が遮られるため、感覚が散乱して敵の位置が定まり難い。とはいえ、成木が隠れていないことは察せられる。
何を企んでいるにせよ、いい度胸だ。だが俺が一瞬でもあんたの姿を認めれば、あんたが何をしようが即死させられるんだぜ。
クールは三つ数える。1,2...。
「3!!」(筆者注。”スリー”って読んでね。)
叫びざまクールは地下室の入り口に飛び降りるや、銃を室内に向ける。
仄かな照明にもしっかりと判る人影が正面に...、最土だ!! クールが電光石火に行動したせいか、最土は呆然とクールを見つめるばかり...。
俺の勝ちだ。クールは心中叫んで引き金を弾く。
バン!!
クールの大型銃から発射された弾丸は、最土の胸のど真ん中を正確に貫いた。
「!!」
クールは一瞬目を疑った。最土の顔面に一直線に亀裂が走ったからだ。
それが鏡だと判断するのに100分の5秒。だがクールは、次の攻撃に移る前に最土と...いや、鏡に映った最土の中の成木と目を合わせてしまった...。
最土が笑う。ヒビの入った鏡の中で、それはシュールな絵の様に奇妙なレイアウトをとる。
う、動けん...。クールは己に起こった変化に気付いた。
そんなクールの動揺を見て取ったように、ピカソな口が彼に語りかけた。
「催眠術だ。どうかね、気分は。」
地下室は四畳程度と狭く、嗅覚を遮断していたアルコールなどの薬品類は、しまいこまれているのか、見あたらない。寧ろ、パソコンが置いてある机や書架などがあり、研究室の印象が強い。そんな部屋の真ん中に、割れたガラスを背にした最土が立っている。
「ここが最土の研究室だ。ご苦労なことに自分でこさえたようだよ。頭の上がらない婦人から離れた場所が欲しかったのか。まぁそんなことはどうでもいいが...。」成木は動けないクールに向かって話を続けていたが、次の一言だけ口調が変わった。
「奴はこんな蒸し暑くて陰気な部屋に閉じこもらなければ自分が許せなかったのかもしれないな。」
妙に同情的なその言葉は、過去の常盤との付き合いが去来したか...。
「彼はここで悪魔の研究に再び手を染めたのだ。」再びクールに向かう言葉に、最早弱さはない。「君の求めている人工転移と、私の求めている集団転移の研究にね。」
クールが僅かに反応した。
「ふふ。気になるようだね。そうでなくては面白くない。」
「?」
「疑問があるようだね。何故私が君にこんな話を聞かせるのか...。いや深い意味はないよ。私は君の間違った行動を訂正したかっただけでね。」
最土の中の成木も昔は学者だった男だ。話し方が妙に説明的になる。
「いいかね。君は最土の頭から全ての情報を引き出せるつもりでいたようだが、それは大変な誤解なのだよ。
「研究とは一般に言って、理論と証明とから成ることは判るだろう。ある研究の完成度を上げるには、思考実験のようなものは例外として、何らかの実験をし、データを蓄積しなければならない。実証学的なきらいのある医学ではそれはなおさら重要だ。計算式ではメスは握れないからね。
「転移心理学もそのように、実験で次第に理論を固めてゆく点ではやはり医学に準ずるのだ。つまり...」
成木はクールに近づき、強調した。
「理論のみ入っている最土の頭だけでは、君の願望を充足する事は出来ないのだよ。」
成木はクールの前に黒い板切れをかざして見せた。
「彼のこの部屋の研究成果の入った、この光ディスクがないとね。」
クールの眼が怒りに燃えだした。
「ほう。分かりましたか。私が君にこんな話をしているわけを。」
「俺に...見せびらかすためだ。」
「そうそうそう。その通り。」施術されながらも洩らしたクールの必死の言葉を、成木は心底喜んだ。「君は自分の夢を目の前にしてそれを得ることが出来ない、全てを失ってまで追い求めた願いを叶えることが出来ない、何故か。」
成木の喜悦はここに極まる。
「私が掠め取ってゆくからだよ。」
クールが口から血を滴らせた。怒りで奥歯を噛みしめすぎたのだ。
「無駄だよ。陥催眠剤であるイマジノールの中で、私が術を掛けたのだから。」
原尾や馳が一歩も動けなかった成木の催眠術は、脳細胞の活動を緩和させる働きを持つ薬品であるイマジノールを使うことで、効果をいや増すのである。
「プリンスホテルでも、今でも。君は私に恐怖と屈辱を与えた。ならば、私が君に同じ程度のお返しをして上げないと失礼というものでしょう。
「欲しいものが目の前にあるのに、その価値が分からないなんて惜しいじゃないか。そして、それが手に入らないものだと分かっているのなら、なおさら詳しく説明して上げなくてはと思うのは最早人情というものだよ。」
筆者はそこまで根性悪くないので、念のため。
成木はゆっくりとクールの脇を通り過ぎざま、彼の耳元で言った。
「催眠術というのは、普通は自分に危害を及ぼすような命令には無意識に反対できるものなんだがね、私のは特別製なんだな。何せ元転移療法士なもんで、被術者の精神の弱い部分は見ただけで分かってしまう。だからこんな風に言っても通じてしまうのだよ。」
その声は、凍るほどに暗く...。
「自殺しろ。」
クールを踊り場に残し、成木はゆっくりと階段を上ってゆく。クールがどうやって死ぬかを想像しながら。
クールは身体の何処からか湧いてくるあらがい難い衝動と闘いながら、その身を震わせていた。
衝動。言うまでもない。死への誘惑だ。
自分の右腕がゆっくりと、手にした銃を持ち上げていく。それを彼は停めることが出来ない。みるみる沸きだす額の汗も拭えないまま、カッと見開かれた眼でそれを眺めるしかない。
安楽。消滅。終息...。死に奉ろうイメージの群が、闇の奔流となって彼の脳裏に囁きかける。だが、術中にはまった彼にあっては、その言葉は甘美な響きを持って織りなされるハーモニーにすら聴こえるのだ。とはいえ、よしんばそのメロディに流されてしまえば、行き着く先は黄泉の世界だ。
クールの幽かな理性は、なんとかしてこの場を乗り切る手段を思いつくことに必死になっていた。
脚を撃ち抜いて、激痛で催眠を解くか。指...引き金を弾く人差し指の一本でいいから動かせないか...。
彼は精神を腕に集中して、動きの制動を試みるが、その動きは全く停まることはない。だがそれは当然であろう。成木が敵に対して背を向けているのだ。その姿勢は自分の攻撃に絶大の自信を持っていることの証なのだ。
クールが確実に死ぬという、絶対なまでの自信。
そんな成木に取り残されたクールの腕は、手にした銃を己の左胸に突きつけた。
心臓に。
だがクールはまだ諦めてはいない。無意識の底にある、絶望という名の刻印は、この状況に於いても尚、彼の胸を覆い尽くせないでいるからだ。
バンッ!! 銃声はしかし、容赦なく地下室に響きわたった...。
成木はその銃声を、階段を上りきったところで聞いてニヤリとした。
クールはもう死んだな。
後はもうここを去るだけだ。あいつが来る前に...。
大野はきっと来る。奴が来たら厄介だ。彼の思いは既に次の敵に飛んでいた。
しかし、彼が玄関に向かうために居間を抜けようとしたとき、つと、女の死体の前で足が動かなくなった。
ちっ。嫌っていたくせに。妻の死が悲しいか。成木は心中、最土に悪態をついた。
被転移中といえども、依童は己の見たもの聴いた音を認識しているのだ。最土の無意識に届いた自分の妻のショッキングなイメージが、最土の身体を硬直させたのだ。
成木は最土の身体制御の回復にかかる。無意識からの指令をシャットダウンし、成木自身の意識をその統御に割り込ませるのだ。彼ほどのジャッカーには、それは造作もないことではあるのだが...。
そこに費やした時間、劇的な戦いを避けるには、些か長すぎたようだ。
成木が再び最土の制御を回復し、その身を玄関に向かわせたときだ。彼はけたたましい音の発せられたすぐ後に、背中に激痛を感じてそのまま壁に叩きつけられた。
な、何だいったい...。成木は、突然起こった衝撃の原因を、それでも何とか突き止めようとして視線を巡らす。
「!!」
成木の驚愕。彼の見たもの。
居間への裏からの入り口扉の横に、クールが立っていた。
「この先か!」
大野のタイヤが何度目かの悲鳴をあげた。
彼らの乗る車の走っている街、雰囲気からして最土の自宅のある街とそう離れてはおるまい。もう少しだ。
「主役そっちのけで目立ちやがって。章のタイトル変えなきゃいかんだろうが!!」
「何言ってるの。」原尾の疑問ももっともだ。
最土の左肩の肉を丸ごと取られた成木は、何とか身構えて立ち上がったものの、その顔には信じられないといった感情が浮き出ている。彼は思わず叫んだ。
「いったい...。何故生きているのだ!」
成木の驚きは無理もない。彼の術中で自殺を強要されれば、確実に即死できる方法をとるはずなのだ。そしてそれが実行されたことも間違いない。
何故なら、クールはその心臓から、服を染めるほどの血を流しているではないか。
クールは左手で胸を押さえ、しかも戸口の柱に寄り掛かってではあるが、右手で構えた銃口はしっかりと成木に狙いを据えている。
クールは、成木の驚きに少し心を動かしたのか、その唇を開いた。
「俺自身...人工細胞の身体の心臓が、この位置に無いことは知らなかったのさ。」
人にとって、心臓のあるべき位置に手を当てながら、彼は言った。その響きには、どこかしら寂寥が篭って...。
豹と化した河合の突きが胸を貫いても生きていたわけだ。クールは苦笑いをしつつ思う。
俺は死なない...。あの時も今も...死ねない...。
「人と違う...。思い知らされたよ...。」彼の一瞬の呟きは、彼自身の心に染みてゆく。
しかし、クールの次の言葉には、再び殺気が入っていた。
「俺は貴様のおかげで自分が何者かを知った...。この礼はするぞ。」
クールがまた一発撃った。最土の右肺をそれは貫通する。
ぐっ。血を吐きながら、成木はまた立場が逆転したことを思い知らされた。こうまでダメージを喰らった以上、自分の憑いている最土はもう長くは無いだろう。この男の頭脳を、それでも惜しいと思えばこそ今まで憑いていた成木だったが、今となってはそうも言っていられない。どのみち集団転移は、成木自身が最土の脳を探り回って得た情報と、胸にあるディスクをもってすれば、充分解析可能なのだ。となれば手は一つ。
奴に...憑く!
プリンスホテルの地獄絵図を再び展開するつもりだ。成木は最土の目に敵意を漲らせてクールに突進する。
彼は更なる弾丸が自身に撃ち込まれるのにも構わず、クールの首に手を伸ばした。
転移?
一瞬で、しかしクールは彼の視界から消える。直後、成木は凄まじい衝撃を受けて吹っ飛んだ。そしてソファに当たって一回転、書架に叩きつけられる。
成木は自身がクールの拳にカウンターにあったことは何とか理解したが、その時には既に眼前にクールを見留めている。
逆さまになった成木はそれでも、次のクールの拳が繰り出されるところを再度転移を仕掛けようと狙う。が、今度クールが攻撃したのは脚だった。成木は横殴りに蹴り付けられ、またしても壁にぶち当たる。
それに暇を全く与えず、クールは銃を二連射する。弾丸は最土の両足を貫いた。
は、速い...。成木はボロボロになった最土の体の中で舌を巻いていた。とてもじゃないが、転移している時間がない。こいつ、本当に怪我をしてるのか。
両足を奇妙な角度に向けて座り込んだ最土を見留めて、クールは次の攻撃にワンテンポを置いた。銃口を最土の胸の中心に据えて語りかける。
「ホテルでの惨敗から、俺がなにも得ないと思ったのか。お前は転移するために、コンマ3秒程の間相手に接していることが必要なんだよ。となれば対処は比較的簡単だ。遠隔攻撃か、高速連続攻撃が有効って事だからな。」
成木は愕然とした。自分の転移に必要な時間を、勿論彼自身は知っていたものの、他人が、しかもたった一戦交えただけの男に見抜かれるとは...。彼はクールという男の評価を低く見すぎていたことを今更に後悔した。
このままでは殺られる。成木の脳裏に死期が閃いた。クールは、死んだ最土の頭を持っていって命を吹き込む手段を持っているのかどうか知らないが、もしそうなっても私の意識が残っている保証はない。
少なくとも、己の命は消えているだろう。
その時、成木の心に浮かぶものあり。
消える...残留...?
何だ...? こんな時に湧く不可思議なイメージに、成木は戸惑いを隠せない。
「今度は俺が言う番だな。」そんな成木の心を余所に、クールがニヤリとして言った。
「死ね。」
「動かないで!」
クールの持った銃はしかし、突然の声によってその発射を止められた。
クールが声のした方に視線を向けると、今さっき二人が入ってきた居間の裏口側の入り口に、最土の娘の園子が立っていた。幼いその手に銃を持ちながら。
「パパを殺さないで。」
園子はもう一度叫んだ。
確かにパパはいつものパパじゃないが、パパであることに替わりは無い。
だからパパは私が守る。彼女のそんな小さいが固い決意は、クールという怪物をも止めた。震えるその銃口は、それでもしっかりとクールの頭に据えられていたからだ。
「ふふふ。私が丸腰だったことがおかしいと思わなかったのかい。」成木は心中意外な展開に感謝しつつクールに語る。「その子はね、地下室に隠れていたんだよ。見上げたもんじゃないか、ジャッカーにのっとられた親を救いに来るなんて。」
クールはしかし、微笑んでいる。
「おいおい。これで今の状況が好転したと思ったら大きな勘違いじゃないのか。
「お嬢ちゃんがあの細腕で撃てるのはせいぜい一発、それも撃った瞬間に反動で両腕を折る。もし俺に当てなければ二人ともそれで終わりだ。」
「ふふ。だからまだお嬢ちゃんは撃ってはいないだろう。」
成木は言った。つまり、ひとまず戦況は膠着したということだ。
座り込んでいる最土、それを狙うクール、そして、そのクールを狙う園子。
三人の中で、意外にもクールの反応が思いの外大きい。うそぶいていると言うより、動揺が大きいのだ。そして、成木がそれを見逃すはずがない。
「やはりね。」成木が口を開いた。「思いの外、上手くいったようだ。」
「どういうことだ。」クールは、今度は確かに動揺している。
「私がその娘を生かしておいたのには理由がある。すなわち...、
「君は子供は撃てない。いやもっと言えば...、
「撃たせたくない。」成木は小さいが、確信をこめた声でそう言った。
成木がクール隊にジャックしたときに得た情報の一つに、クールの過去の戦績のそれがあり、クールには仲間には語らないものの、子供に関して微妙な感情があるというそれがあった...。
「貴様。」クールは歯がみした。的を射られたことが悔しいのだ。確かにクールは、娘が手にした銃を撃つことでその腕を折らせたくないと思っていたからだ。
俺ともあろう者が...仏心か?
彼の殺した少年少女は、彼が思った以上に、彼に深く入り込んだようである。
思わぬ膠着が続く。
気を抜くわけにはいかない。成木は次の手を必死に考えている。何せ自分は出血多量で間もなく死ぬ最土の中にいる。持久戦は不利だ。園子の銃を持つ手も苦しそうだ。だがそんな彼を更に絶望させているのは、クールの胸の血が既に止まっているという事実だ。人工細胞の恐るべき治癒力!!
時が経つほど不利になる...。血の気が引いていくように感ぜられるのは、絶望感が出血を助長しているからでもある。
どうする。このままでは、あの男まで来てしまう...。
その時だ。成木をしてクールと同じくらい厄介な、”あの男”が現れた。
大野が来たのだ。
14章(後編)に続く
説明 | ||
精神レベルで他人を乗っ取れるマンジャッカーという特殊能力者を巡る犯罪を軸にしたアクションです。 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
440 | 433 | 0 |
タグ | ||
SF アクション 精神 近未来 三つ巴 MJ | ||
カロ藤法之さんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |