真・恋姫†無双〜天兵伝〜 第6話
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「この者が、『天の御使い』・・・・でございますか?」

 

「なんというか、想像していたのと違いますな」

 

「あ・・・・あの・・・・」

 

 

荊州、襄陽近郊。宣城にて。

 

城内の玉座の間にて、劉表は文官・武官から冷たい視線を向けられていた。

 

ビクビクと怯える劉表の隣には、気まずそうな顔の徐福と、呆れ顔の一刀が並んでいた。

 

 

「徐元直殿は「あの」水鏡女学院の学生だったと聞きますので、我々文官としては元直殿の仕官を歓迎します」

 

「軍師としても期待できる元直殿の士官は、我ら武官としても嬉しい限りであります」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

徐福はペコリと頭を下げる。が、素直に喜べる状況ではなかった。

 

彼女へ向けられる視線は喜びと期待を込めたものであったが、その隣に立つ一刀への視線は疑惑だけだった。

 

 

「劉表様、正直に言います。 この男が『天の御使い』だとは思えません」

 

「自分もそう思います。 こんな汚らしい男が『御使い』というのは信じられない」

 

「で、でも・・・・」

 

 

劉表は何も言えず、顔を俯かせるだけだった。

 

 

「劉表様!! どうしてこのような輩を『御使い』だと判断したのですか!?」

 

「ひっ・・・・!」

 

 

一人の武官の怒声に、劉表はブルブルと震えだした。

 

 

徐福はただ唖然としていた。

 

 

反論。

 

非難。

 

批判。

 

 

言いたい放題の家臣に、何もできずにいる主。

 

これが荊州の内政なのか。

 

 

「劉表様は何を考えておられるのですか!!」

 

「一目見ればこの男が『天の御使い』かどうか、わかるではないですか!!」

 

「ぐすっ・・・・えぐっ・・・・・ご、ごめ―――――」

 

 

ポロポロと涙を流す劉表が、か細い声で言いかけた時。

 

 

「劉表」

 

 

堂々とした一刀の声が、凛と響き渡った。

 

 

「うっ・・・・えぅ・・・・ほ、北郷様・・・・?」

 

「お前は、俺のことを『天の御使い』だって思ったんだろう? だから俺を連れてきたんだろう?」

 

 

一刀の言葉に、劉表は大きく頷いた。

 

 

「だったら謝ろうとするな」

 

「なんだ貴様!! おとなしく黙っておれ!!」

 

 

一人の武官が、一刀へ怒鳴り声をあげる。それに乗じて、何人もの文官と武官が一刀へ罵声を浴びせはじめた。

 

 

「薄汚い輩が!」「金目当ての畜生め!」「消え失せろ!!」などと言われ続ける一刀。

 

まさに暴言の嵐だ。

 

隣にいた徐福もカチンときたのか、目つきが鋭くなっていく。

 

もう我慢の限界だ。

 

いよいよ腰に差してある短剣に手を伸ばそうとしたその時。

 

 

 

 

「るっせぇぞ!!!!!!」

 

 

 

 

その場の人間全員を黙らせる轟声。

 

声の主は、北郷一刀だった。

 

 

「テメェらいい加減にしろよ」

 

「貴様、何様のつもりで―――――――」

 

「御使い様のつもりだよ」

 

 

そう言うと、一刀は眼前の武官へ向かって歩き出した。

 

ゴツ。ゴツ。と、一刀の軍靴の音が響き渡る。

 

 

「な、なんだ・・・!」

 

 

精一杯の睨みをぶつけてくる武官に、一刀は嘲笑で返す。

 

そして彼の額にパチン!と軽いデコピンをした。

 

 

「何をした!?」

 

「『呪い』をかけてやった」

 

「な・・・・ッ!」

 

 

驚愕する武官に対して、一刀はただニッを笑うばかり。

 

 

「なんの呪いを・・・・・!」

 

「死んだときに地獄に落ちる呪い」

 

「な、なんだと!? う、嘘をつくな!!!」

 

「だったら試してやるよ」

 

 

そう言って、一刀はコンバットナイフを抜く。

 

みるみるうちに顔が青ざめる武官。

 

殺気に満ちた一刀の睨みが、深く突き刺さる。

 

 

「永遠に苦しめ」

 

「ま、待て!!」

 

「待たない」

 

「すまない! 私が悪かった!! ごめんなさい!!」

 

「・・・・抵抗すらしねぇ、か」

 

 

ハァ。と、一刀はため息をつく。

 

ブルブルと震える武官に、「この腰抜けが」と言い放ってナイフをしまった。

 

 

「で、他に文句言った奴は誰だ?」

 

 

一刀の言葉に、他の文官武官は気まずそうに顔を俯かせる。

 

徐福の隣という最初の立ち位置へと戻っていった一刀は、腕を組んでニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「俺は北郷一刀。 劉表サマの言うとおり、天の御使いだ」

 

 

 

この一言以降、劉表の家臣は何も言わなくなった。

 

 

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「申し訳ありませんでした・・・・」

 

「気にすんな。悪口にゃ慣れてる」

 

 

一刀はこれ以上は何も言わなかった。申し訳なさそうに頭を下げる劉表を叱りつけるようなことはせず、呆れた顔でため息を吐くだけだった。

 

そんな中、徐福は目をキラキラさせて一刀を見つめていた。

 

 

「北郷殿って呪術にも心得があったんですねっ! スゴイですっ!!」

 

「ありゃ嘘だ」

 

「・・・・へ?」

 

「『天の御使い』を信じている連中なら、地獄やらなんやらでも信じるもんだと思ったんだが・・・・。あそこまで本気にされるとは思ってなかった」

 

 

カハハ。と一刀は笑う。

 

一瞬で羨望を打ち砕かれた徐福は、露骨にがっかりする。

 

 

「気迫と自身がありゃ、嘘でもなんでも通るんだよ」

 

 

そう言って、劉表に目をやる。

 

 

「だから、何がどうあっても堂々としてろ。 絶対に自信を失うな」

 

 

一刀の言葉を、劉表はどのように受け取ったのだろう。

 

それは彼女にしかわからない。

 

だが、劉表は一刀に対して初めて柔らかな笑顔をむけた。

 

 

「はいっ!」

 

 

この日以降、一刀は城内の誰からも『天の御使い』と認識されるようになった。

 

 

 

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後日。

 

 

 

「例の『呪い』を受けた武官なんですが、結局どうなったんですか?」

 

「あぁ、呪いは解いてやったよ。 半泣きで頼まれて気持ち悪かった」

 

「・・・・ヒドイこと言いますね。 どうやって解いたんですか?」

 

「金的」

 

 

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荊州、夏江。

 

 

 

「敵襲!! 敵襲!!」

 

「賊か!?」

 

「いや―――――」

 

 

平穏を打ち砕く、血死の嵐。

 

轟号と共に押し寄せる、幾万もの侵略者。

 

 

「牙門旗を確認!!」

 

「なんだと!?」

 

 

「嘘だろ・・・・! 『孫』の牙門旗だ!!」

 

 

襲い来るは『江東の虎』。

 

 

「迎え撃つぞ!! 死んでも守り抜くんだ!!」

 

「劉表様に知らせろ!! 急げ!!」

 

 

 

 

 

「孫堅が攻め込んできた!!」

 

 

 

説明

はじめに、前作にコメントしていただいた方々にお礼を。

もう一人オリキャラ出すかどうかで迷ってる今日このごろです。
マジどーしよっかな。

暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。
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コメント
お二方様とも、コメントありがとうございました。 今後の展開については後ほどのお楽しみ、という感じでw(マーチ)
まあこのまま劉表に仕えるのも有りなんじゃないんですね。ここの劉表真面目そうだから一刀の活躍が光りそうだし。寧ろ孫堅や雪蓮を驚かせたい(笑)。(ハーデス)
劉表が気弱いのも、豪族たちが強気なのもまぁ本来通りですね……あれ?孫堅死ぬ?一刀孫呉の仇になるフラグ?(TAPEt)
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