魏√after 久遠の月日の中で16
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「なるほどねぇ……」

 

孫策さんに全てを話し終えた。

俺がこの世界で華琳に拾われた頃から、消えてしまうまでの全てを。

 

はぁ。と孫策さんから溜め息が漏れた。

 

「全部知ってた。か……何よそれ、勝負する前から結果は見えてたんじゃない……」

 

「…………」

 

赤壁の戦い。元居た世界の知識により、連合の連環の計・苦肉の策を打ち破った。

それにより呉の宿将である黄蓋さんが赤壁の地に倒れたのだ。

 

俺を見る……いや、睨む孫策さんは剣を握りその手を震わす。

彼女は俺を恨んでいるのだろう。

なら俺は……

 

「孫策さん、あなたが俺を恨むのは当然です。ですが黄蓋さんが命をかけ策に臨んだ様に、俺も自分の存在をかけあなた達の策を打ち破りました。結果黄蓋さんは倒れ、俺も戦後に消滅した。でも俺は後悔していません。俺は何としても華琳に勝利を捧げたかったから。結果はともかく、黄蓋さんも後悔はしていなかったはずです」

 

こんな事、孫策さんは百も承知かもしれない。

だが俺の口から彼女に伝えたかった。当時の俺の覚悟を。

 

俺は腰の一心を抜き構える。

 

「黄蓋さんが孫策さん……いや、呉にとってどれ程大きな存在だったかは少しは理解しているつもりです。ですが、俺もまだ死にたくないので抵抗させてもらいます」

 

呉の小覇王相手に自分がどれほど立ち回れるか分からないが、ここで素直に殺されるわけにはいかない。

緊迫する空気の中、孫策さんは剣から手を離し肩を竦めた。

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「何よ。謝ってくるようなら斬り刻んでやろうと思ったのに」

 

「……えっと……」

 

「そんな事聞いて、君に斬りかかれるわけないじゃない」

 

孫策さんは椅子に座りなおし、頬杖をついた。

先程のボールペンを弄ってた時の様な無邪気な表情に戻っている。

 

「そ、孫策さん。どうしてそんな……孫策さんは俺を……」

 

「もう五年も経ってるのよ?詳細なんて華琳からちゃんと聞いてるし納得もしてるわ」

 

そう話しながら、孫策さんは何故か楽しげに瞳を光らせている。

 

「でも君から話を聞いて、君を……北郷一刀って人を見てみたかったのよ」

 

ということは、俺を恨む様な仕草は全て演技?

……孫策さんがまったく分からなくなってきた。

 

「さっきも言ったけど、謝るなんて祭の覚悟を踏みにじる様な事したら殺すつもりだったんだけど……一本取られたわ。天の御使い以前に、華琳が君を側に置いてたのもわかった」

 

「…………」

 

どうやら御眼鏡に適った様だ。

黙って安堵する俺に孫策さんは続ける。

 

「で?何で君はこんな所にいるのかな」

 

孫策さんの言葉が胸を打つ。

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「あの子達、五年前に比べたらかなり立ち直ってはいるけど、たまに浮かべる表情ったら見てられないわよ。早く帰ってあげなさいな」

 

「……まだ。帰れないんです。俺が不甲斐無いから……」

 

目を伏せ小さく呟く。

少しの間をおいて、孫策さんは口を開いた。

 

「ふーん。……何だか訳ありみたいね。詳しくは聞かないで上げるけど、一つ教えてあげる」

 

再びボールペンを取り、指で遊びながら言う孫策さん。

言い終わると同時に立ち上がり、部屋の扉を開く。

 

「貴方が戻ってこなきゃ、いつまでも貴方を想ってるあの子達が報われないわよ」

 

分ってるとは思うけどね。そう言い孫策さんは続ける。

 

「私たちが祭……黄蓋を大切に思ってる様に、あの子達も貴方がとても大切なのよ。恋仲なだけその気持ちも強いだろうしね」

 

俺を見る瞳が少し、恨めしく鋭くなった気がした。

 

「祭はもういない。でも、貴方はこうして帰ってこれたわ。だったら、貴方のする事は決まってると私は思うんだけど……っと、これじゃ攻めちゃってるわね。忘れて頂戴」

 

それじゃ。と言い残し、孫策さんは部屋を後にした。

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『祭はもういない。でも、貴方はこうして帰ってこれたわ。だったら、貴方のする事は決まってると私は思うんだけど……』

 

孫策さんのこの言葉。

黄蓋さんを亡くしているからこそ、とても重く感じた。

俺はこの世界に帰ってくることができた。

もちろんすぐに会いに行こうと魏へ急ぎ足を運んだ。

だがそこで見たものは、この世界に帰れて浮ついていた俺には耐えられなかった。

そして、逃げるように今まで華雄と旅をしてきた。

まだ長くはないが華雄との旅はとても充実している。

だが、常に心の底に大きなしこりがあった。

 

「……ケジメの付け所かな」

 

部屋で一人立ちつくしながら呟く。

少し目を伏せ、華雄の置いて行った金剛爆斧を見つめた。

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町の大通りを歩き宿へと戻る私はとても上機嫌だ。

何故なら、とても待遇の良い仕事をもらえたからだ。

内容は知り合いの豪族の護衛。私と一刀の腕ならば申し分ないだろう。

宿も食事も、その豪族の屋敷で用意してもらえるとのことだ。

これ以上良い条件の仕事など滅多に無いだろう。

 

「だが……むぅ」

 

気がかりだったのが、用意してくれる部屋だった。

今は商談相手が団体で来ているらしく、空いている部屋が一つしかないとのこと。

見せてもらったが、部屋自体はとても良い作りだ。

だが、寝台は一つ。大きな作りになっていたので、問題は無いのだが……

 

霞との仕合での一刀が思い浮かぶ。

立会人という立場を忘れ、あの時自分はひたすら一刀に見惚れていた。

あれからというもの、妙に意識をしてしまっている自分がいる。

もしやこれが……

 

「恋……なのか?」

 

馬鹿な。と自答する。

あの洞窟で、私は一刀にきっぱりと断られた。

だが、知らぬ間に一刀に惹かれてしまったらしい。

一刀を思い浮かべると、顔が熱くなり、動悸が激しくなる。

旅を共にしていると、言い知れぬ幸福感が身を包む。

そうか、これが恋というもの……これが霞の感じた幸せというものか。

 

「……ふふ。この気持ち、悪くないな」

 

このまま旅を続けていく中で、一刀が私を受け入れてくれる日がくればいいのだが。

あぁ、早く一刀の顔が見たい。

自然と宿へ向かう足が速くなった。

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宿に着いた。

部屋の前までいくと、中に人の気配があった。

一刀は既に戻っていたらしい。

 

「一刀。仕事の件なんだが……」

 

扉を開けながら話しかける。

と、部屋では一刀が武器を持ち立っていた。

どうしたんだろうか。声をかける前に、一刀が私を見つめる。

 

……あぁ、そうか。

瞳を見ると、全て分った。分かってしまった。

浮かれて戻ってきた自分が恥ずかしい。一刀には、帰らなければならない場所があるというのに。

 

「華雄……俺……」

「行くのか?」

 

眼を見開く一刀。

少しの間の後、小さく頷く。

 

「そうか……短い間だったが、楽しかった」

 

一刀へ背を向け、部屋を出る。

自然と体の力が抜け、部屋の扉に背を預ける。

違和感を感じ目尻を拭うと、水滴が着いていた。

これは……涙か。

 

「涙を流すなど……いつ振りだろうな」

 

胸が痛い。今にも張り裂けそうだ。

これも……恋か。

勉強させてもらったよ、一刀。

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あとがき

 

 

|  |

|  | ∧∧

|_|(´・ω・`)

|桃|o   ヾ

| ̄|―u'   16話 <コトッ

""""""""""""""""

 

|  |

|_|  ピャッ!

|桃| ミ

| ̄|     16話

""""""""""""""""

 

一年以上ぶりの更新です。ご迷惑おかけしました。

久々すぎて改ページの仕方とかもまったく忘れてます。

矛盾とかもありそうで何か怖いです。

何かおかしいと思った点がありましたら言ってくださいまし。

完結まで頑張るぞー

説明
お久ぶりですみなさま。
長らくお待たせいたしました。続編アップです。
たくさんの応援メッセージありがとうございます!
とても励みになりました!
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コメント
一年ぶりですか!お帰りなさい。 そして一刀もやっと帰る決心をつけましたか。でもってなんとも華雄が、かわいいゾ。(きたさん)
華雄ねえさ~~~~~~~~~ん!!!!(幼き天使の親衛隊joker)
ちょうど一年前に この道を通った夜 昨日の事のように 今はっきりと想い出す〜♪ 一年か。お気に入りクリエイター機能があってよかった。(dorie)
お帰り〜〜〜!(タケダム)
お帰りなさい!? ご復活お待ち申しておりました!!(劉邦柾棟)
おか(patishin)
やっとかー( ´ ▽ ` )ノ待ってましたよ!完結まで頑張ってください!(スーシャン)
お帰りなさい?(断金)
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真・恋姫無双 一刀 華雄 雪蓮 

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