全ての終焉 20 |
第20話『修学旅行5』
影のゲートから出てきた場所はエヴァの部屋だった。
適当につなげた影響だと思う。
「どっから現れる」
座ってお茶を飲んでいるエヴァに呆れられていた。
無理もないか。
影のゲートで現れたんだから
「ごめんなさい。って明日菜さんもいたんだ」
「いたんだってええ!? 朝倉!!」
僕の横にいる朝倉さんに指を差して驚く明日菜さん
次の瞬間、明日菜さん達がじーっと僕を睨んでいる。
隣にいる朝倉さんが苦笑いしていた。
「実はばれちゃいまして」
「ああ、ネギ君自身からバラしたんやろ?」
両手を合わせてはっきりと答えを言う木乃香さん
それに反応して朝倉さんが頷く。
「もしかして、ここにいる全員は知ってるの?」
「問題ない。私は吸血鬼だがな」
「百合的な意味の」
「ナギストーカーの吸血鬼です」
「勝手に名称を変えるな!」
変な名称に突っ込み様に叫んでいた。
からかいのあるエヴァだ。
座布団を敷き、勝手にお茶菓子をもらった。
朝倉さんはメモ帳にメモしていた。
「じゃあじゃあ、桜並木の吸血鬼、現るは」
「そうだ、私の事だ。私は吸血鬼の真祖だ」
どうだ!と体を張っていた。
そうやっていると何か空しくなるぞ。とか突っ込んだら駄目だ。
「それ、威張る事?」
「威張ってるなんて大人げないですね。エヴァンジェリンさん」
「女の子の血を良く吸ってただけじゃない」
「木乃香、明日菜、ネギ! 私はそうじゃないと何度言えば!?」
何度言っても分からないと2人は首を傾げる。
実際、女の子しか吸ってない事実は変わらない気がする。
憐れみな視線をエヴァに向ける。
「女の子しか吸ってないじゃない」
「女子高だから仕方がないだろ!! それにネギの血も吸ってるぞ」
「アイテムと引き換えの時だけですが」
それ以外、僕の血を吸わせた記憶すらない。
封印が解けてるから血を吸う意味がないはず。
これからどうなっていくんだろうな、と別の意味で楽しみになった。
「……」
「マスター、ガンバです」
沈黙して俯くエヴァに茶々丸さんが親指を突き立てる。
凄い物を見た気がする。
こんな光景二度と見る事がない。
「朝倉、どうする気?」
「え? 何が?」
本当に分からないと示している。
それだけだと分かりにくいよ、明日菜さん
「魔法を知ってどうするのって事!」
「裏世界みたいなものだから危険だぞ」
「ところでよ!」
存在感が空気の生き物が何かを言った。
「何?」
「仮契約やってしまおうぜ!」
誰にってああ、分かりやすいね。
朝倉さんと仮契約しろっていうんでしょうね。
今はその時ではないからする必要がない。
興奮している生き物を黙らすために半分冗談でエヴァに聞く。
「エヴァンジェリンさん、下等生物を溶かすアイテムありませんか?」
「ああ、確か有った様な無かった様な」
「兄貴! オレッチを溶かす気なんスか!?」
震えながら青ざめているカモ君だった。
メモ書きしている朝倉さんに聞いてみる。
「……朝倉さん、どうしますか? 内密にする程度なら構いませんが」
「修学旅行中は確実に危険よね」
「じゃあ、今後の事を決めよっか」
今後って何?
それよりも明日菜さんがまとめ役って似合わない。
「まず、カモ君を燃やして跡形もなく消す」
「それは今後じゃなくて決定事項なんじゃあ」
「オレッチ死ぬんスか!?」
白くなった。
遊び相手にはふさわしいと思うが、
ちょっと飽きたから本当の話に入る。
「とりあえず、データをまとめましょうか」
一枚の紙をどことなく出してペンで書いていく。
「まずはあのおばさんね」
「札を使う陰陽師って所かしら?」
陰陽師だっけ?あのおばさん。
札で大文字の炎や魔物や後、スクナを呼び出すために木乃香さんのおでこに札を貼っていた。
それだけしか印象がないなぁ……と思い出していた。
「もう一人は神鳴流を使います。二刀流を使う女、油断できないほどの実力です」
「ネギが戦ってた時は強そうに見えないんだけど」
「ほら、ネギ君やし」
「ですが、油断は禁物です」
そう言った刹那さんが要注意と態度で示していた。
実際、刹那さんの全力でもきつかった相手だ。
相手より力が上回ってるとそう見えるだけの錯覚が存在する。
人の目とは不思議だ。
「元はと言えば関西と関東の仲が良くない原因ですし」
「あのじじいが原因か」
エヴァの言う通りだ。
失敗で並行世界に来た時も全部それだった。
仲が悪いのは必然なのか?
「仕方がないですよ、おじいちゃんですし」
「酷い言われようですね」
「話が進まないわ」
「じゃあ、魔法を知ってるメンバーを教えておきましょうか」
「ネギ、知ってるのか?」
「このクラスのだけ教えます」
「私と木乃香と刹那さんと茶々丸さんとえ〜と、後誰だっけ?」
「夕映にのどかぐらいやね」
ふんふん、あれ?
誰か一人いない気がする。
誰だっけと考えていると張本人が叫び出す。
「私はどこに行ったぁ〜!!」
「忘れてたわ」
「帰ってきた時の修行で覚えさせてやる」
エヴァも病んでるな〜。
「もう寝ますね」
「疲れたわ」
「ここで寝る」
「邪魔だ!」
「僕もここで寝ます。明日起こしてくださいね」
「既に決定か!」
うるさい……。
「じゃあ、ウチも、せっちゃんも!」
「わわわ、このちゃん!」
木乃香さんが刹那さんをガバッと抱きしめて寝転ぶ。
それだから百合関係って思われるんだけど。
口にしない方が一番。
「ったく、茶々丸さん、ゴメンネ」
「いいですよ。マスターの困った顔を見られて満足です」
「うわ、茶々丸さんもネギに感染した様な気がする」
「ちっ!仕方がない」
「じゃあ、あたしはこれで」
「別に用はないから行っていいわ」
「……うん」
寂しそうにここから出ていく朝倉さんでした。
寝る状態がこうなっていた。
僕は中心で、刹那さんと木乃香さんが僕の斜め右、明日菜さんが僕の右、
エヴァは僕より距離を置いた所、茶々丸さんはエヴァの隣
バラバラ過ぎる。
「夜遅いですし寝ます」
僕は別の意味で限界になり眠った。
そして……
朝になった。
エヴァの部屋に泊まったんだ。
目を開けると
「何ですか、これ」
何でエヴァと木乃香さんとっていうか全員が僕に寄って来てる。
このカオス的な展開はどうすればこうなるの?
「とにかく、瞬動で」
動こうにも腕が絡み付いてどうにもできない。
誰か目を覚ましてください。それが僕の願いです。
「う、う〜ん……へっ?」
「明日菜……さん」
「ネギって何でエヴァちゃんまでネギの体に巻き付いてんのよ!」
「うん? ああ、気づいたらこうなってた」
「だったら巻き付くのはやめたら?」
「ふん!」
離してくれたのだが、木乃香さんとかが……ね。
「木乃香、刹那さん、茶々丸さん、起きて!」
「なかなか起きないな」
「エヴァちゃん、茶々丸さんを強引に起こして」
「仕方がない」
頭にあるネジを巻いた。
ビクンと反応する。
「マスター、お、おやめください」
「起きたな」
「あ、はい」
木乃香さんと刹那さんの前で呟く事にした。
「魔法の射手・光の1000矢」
「ちょっと待って!」
「ネ、ネギ先生!?」
その言葉と同時に起き上がり慌てていた。
冗談で言ったのに本気にしたのか。
「これでよし」
「本当に教師か?」
「僕は魔法使いです」
「マギステル・マギを目指す者には見えない」
「目指してませんよ?」
「は?」
「建前なだけです」
「3日目だから決着を付けに行きましょうか」
「魔力を出しながら言うな!」
エヴァから突っ込みを入れられた。
〜旅館〜
僕達がベンチに座っているとのどかさんが来た。
私服姿も新鮮です。
明日菜さん達も私服なんです。
これから自由行動なのでそうなってるだけです。
「のどかさん」
「ネギ先生、私と」
「やっほ! のどか〜」
問答無用な邪魔が入る。
呆れた明日菜さんが木乃香の頭に手を置く。
「空気読みなさいよ、木乃香」
「空気以前にウチらのいる前で告白なんて意味ないやん」
「そうだけど……」
告白じゃないですよ?
どう見たら告白に見えるんですか?
それを聞いていたのどかさんの顔が真っ赤になっている。
「私も付いていくか」
「大丈夫ですよ、リョウメンスクナが現れたら来てください」
「何時現れるんだ?」
それを言おうとしたら、のどかさんが僕の肩をポンと軽く叩かれた。
「リョウメンスクナって何ですか?」
「伝説の怪物らしいです」
「そうなんですか……」
のどかさんが分かったような分からないような微妙な表情になっていた。
それだけだと誰も分かるはずがない。
危険があるのは確かという事実。
「エヴァンジェリンさん」
「何だ?」
「前の対決の事を覚えていますか?」
「ああ、あの時か」
「あの時の何でも言う事聞く条件はですね、仮契約です」
「え?」
「そうなん?」
「……ネギ先生」
「そうなのか」
「はい」
事実だ。
けど、僕が明日菜さん達のアーティファクトを使えるようになった時
何時頃だっけと首を傾げる。
それを余所に明日菜がエヴァに尋ねた。
「どうするの?」
「ネギ、私は……ああ、もう! 決着がつくまで駄目だ!」
「ですよね〜」
赤くなりつつも考えていたエヴァが恥ずかしくなって横に振って否定した。
人の前では言いたくないらしい。
「エヴァちゃんってツンデレやな」
「誰がツンデレだ!」
「マスターはツンデレです」
「茶々丸、それは覚えなくでいい!」
「夕映っちの仮契約のアイテムって何なん?」
「知りません。のどかさんのは心の日記らしいですが」
夕映さんはこの場にいないので言わないでおく。
アイテム名を聞いたのどかさんがカードを出した。
「これですか? アデアット」
のどかさんの前に1冊の本が出てきた。
初めのページを見ると注意事項が書かれていた。
「それが本屋ちゃんのアイテムやな」
「いどのえにっきの注意事項がズラッと書いてある」
注意事項が15行ぐらい書かれている。
僕もその中身は見た事あるが相手の心を読めるのがすごい。
表層意識って書いてあるけど僕が使った時は相手の裏の事まで読めていた。
理由は今でも不明。
「ん? 最後の項目に凄い事書いてあるわね」
何かを見つけた明日菜さんが呟く。
僕ものどかさんの横から覗くとこう書かれていた。
「契約者であるネギ・スプリングフィールドの表層意識を読もうとすると精神が崩壊しますので、絶対に使用を禁ずる」
「何でなん?」
やっぱり注意事項に載ったのか。
僕の魔力は破壊を示すからそうなってる。
戻ってくる前、相手が僕の心を読みとった瞬間、悲鳴を上げて眠る様に逝ってしまった。
「どうなんでしょうね」
惚ける事にした。
どうせ、後で分かる事だからね。と全員に視線を向けた。
僕の表情で理解した明日菜さんが溜息を漏らした。
「今からどうするの?」
「学園長から頼まれた事を果たしに行きましょうか」
「私達は?」
「どうしましょうか」
明日菜さんだけで十分な気がする。
咸卦法が使えるから強い。
「連れていくなら明日菜さんだけで十分ですよ。普通の敵だったら余裕ですし」
「私はシネマ村に行くぞ」
「マスター、行きたいのですか?」
「せっかく来たんだ。思い出としてだ」
シネマ村か、ロクな思い出がない。
矢を向けられたり矢を向けられたり。
木乃香さんも魔法を知ってるからどうにかなるかな。
「夕映さんは?」
「夕映ならハルナの所でしょ」
「おっ! こんな所で何やってるの?」
ハルナさんと夕映さんが後ろに立っていた。
気配は今までなかったから聞かれていないよね。
「これから何処に行こうかって話よ」
「じゃあ、せっかく来たんだからゲーセンいこ!」
(なぜゲーセン?)
この場にいる全員がハルナの発言に疑問を持った。
「仕方がないですね」
旅館を出てゲームセンターへ向かった。
〜ゲームセンター〜
着いてみるとスッカラカンだった。
客は一人もいないもぬけの殻。
平日だからなのかもしれない。
「カードゲームをやりに行こう!」
「これって……」
「新幹線の時にやってたカードゲーム」
「今はやりのアーケードでもカードゲームでもできる人気ゲーム」
1時間後、夢中になってるハルナさん達から離れて出口に向かう。
明日菜さんも付いてきた。
「これでやっと行動できるわ」
「ですね」
ゲームをプレイしてても小太郎が乱入しに来なかった。
どうして来ないの?
世界に除外された?
来なかったら来なかったらで別に構いはしない。
魔法世界以外、役に立った事もないし。
問答無用にそう考えた僕は明日菜さんを誘う。
「行きましょうか」
「そうね」
ゲームセンターから出た僕と明日菜さんは関西呪術協会の本山まで電車で移動する。
電車の中。
「しかし、大変っすねえ。任務があるから遊べないとか辛いっすよ?姐さん」
「いたんだ」
「いたの」
「酷いっす」
「冗談よ」
「僕は本気で思ってますが」
「兄貴はひどいっす!」
「窓の外へ放り投げますか」
僕は電車の窓を開けて生き物を投げようと勢いを込める。
「ちょっと!?」
「ネギ……」
「冗談だよ、もうカモ君もバカだな〜」
本気で投げてみたかったのは内緒だ。
投げない意志を見せるため、窓を閉めて明日菜さんの肩に乗せる。
「何で私に渡すのよ」
「いいじゃないですか、喋らなければ可愛いんですし」
「それはそうなんだけど、ネギのペット扱いよ」
「そうでしたっけ? そもそも、許可なんて貰ってましたっけ?」
「不法侵入よね」
明日菜さんには学園に貼っている結界の事を話している。
だから、明日菜さんも分かっている。
「兄貴、オレッチ必要ないんスか?」
「いるよ」
「兄貴……」
カモの頭を撫でる僕。
君がいなきゃ仮契約の時、アレが見れないじゃないか。
本気でカモ君の頭を撫でながら頭の中で考えていた。
「はいはい。そろそろ着くころじゃない」
「そうですね」
僕と明日菜さんは到着した駅に降りて走って向かった。
〜古社〜
前と違うのはちび刹那さんがいない。
僕自身も実力が違うから別にいいんだけど、予想できない事も起こる。
それが僕にとって苦手だ。
とにかく、走るか
「明日菜さん、一気に行きましょう」
「OK」
僕と明日菜さんはここから一気に到着を目標に走り出す。
緑が多い。
走っている途中、バシュン!とはじけた音がした。
目に魔力を通して周りを見ると紫色のバリアが円状に出来ていた。
「明日菜さん」
「どうしたの?」
僕と明日菜さんは立ち止まる。
やっぱりいたのか、油断した。
「閉じ込められました」
「え?」
「ループ式にされてますから360度何処の道へ行っても戻ってきます」
「そんな……」
「その通りや!」
巨大なクモの上に乗った男の子がいた。
そう、こいつが小太郎だ。
久しぶりに見るけどやっぱり小さいや。
「私達は急がないと駄目なのよ! ここから出して」
「ここで戦ってもらおうか」
小太郎が構える。
バトルジャッキーはちょっと遠慮願いたい。
「ん? そこのお前はネギ・スプリングフィールドやな。あの千草が言ってた通りやな」
「はい?」
「お前の父は英雄らしいな」
「そうですけど」
「俺と勝負や」
「ネギ」
「仕方がない……時間稼ぎが目的なんでしょ? なら、付き合ってあげる」
小太郎と向かい合わせになる。
距離は15メートルって所か。
どうしようか……
あの生き物を瞬殺、次に小太郎を気絶させるでいいか
「僕の名前を知ってるようだけど君の名前は」
「しゃーないな、犬上小太郎や」
「犬太郎?」
ボケてみた。
「ちゃうわ!!」
ちゃんと突っ込みが入った。
さすが関西人なだけある。
そう満足すると人差し指を相手に向ける。
「冗談だよ、小太郎君」
「へっ! いくで!」
目の前にいる生き物が糸を吐いてきた。
こいつ、クモだったな。
うっとおしくなる前に排除開始。
「さっさと成仏してくれ、魔法の射手・光速の1矢」
僕の指先から光の矢が生み出される。
生み出された光の矢が光った瞬間、生き物の体を貫通し、後ろにある木や色んな物がぶっ飛んだ。
光の速度に合わせたから相手も反応できない。
「……」
「こんなものか」
ポカンとする小太郎だったが、威力に不満なネギであった。
あれでもまだ威力を抑えているらしい。
「やるやないか!」
小太郎が戦闘モードの目つきになる。
雰囲気もさっきもちゃんと出ているのがわかる。
黒いオーラが出ている。
「明日菜さん、1分で済ますよ」
「えと、私がいる事を忘れないで」
「わかってますよ」
笑顔で明日菜さんに答える。
ネギの表情を見た明日菜は赤くして俯く。
何で俯くんだ?
それはいい。目の前の敵をどういじろうかな。
「フフフ……」
「全力で行くで!!」
さあ来い! いじってあげるから。
いじり対象であろう獣化した小太郎と怪しい雰囲気を漂わせる僕の戦いが始まる。
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