全ての終焉 23
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第23話『修学旅行編8』

 

 

爆発音が聞こえた場所に向かうと詠春さんが石化していた。

やっぱり石化するんですか、空気キャラなだけあります。

僕は王座の上に立っているフェイトを見る。

 

「君がやったんだね」

「そうだよ。ネギ・スプリングフィールド」

 

僕に向かってニヤッと口を歪めてきた。

完全なる世界か……はっきり言ってこいつら、空気レベルだからどうしよ。

月詠さんがフェイトの隣にいるって事は2対1か。

 

「ネギ君、君一人かい?」

「そうだよ。だからって勝てない訳じゃないけど」

 

挑発のつもりで魔法の射手1をフェイトに向かって撃つ。

手加減してるため後ろに弾いてくれたが、

ネギの撃った魔法の射手1が只の射手な訳がない。

 

「いいの?」

「何がだい?」

 

フェイトに向かって指を差すと、弾き飛ばされた魔法の射手が帰ってきた。

驚いた表情になった後、魔力を込めた拳で魔法の射手を消した。

あっさりと消された。

 

「フェイトはん」

「何?」

「私にやらせてもらえへんやろか〜」

 

月詠さんの言葉に僕の方を見て頷く。

 

「いいよ。僕はお嬢様を回収しに行きます」

 

フェイトが木乃香さんの方へ向かおうとする。

そんな行動、僕がやらせると思ってるの?

とか思っていると、闇の吹雪らしき魔法が僕の横を逸れてフェイトの横を通り過ぎた。

闇の吹雪って事はエヴァか……。

後ろを見るとエヴァと木乃香さんがいた。

 

「ネギ、作戦実行だ」

「え?」

 

作戦なんて知らない。

 

「というわけで、木乃香」

「了解や!」

「はい?」

 

エヴァと木乃香さんのやり取りが理解できません。

混乱している僕を余所に影のゲートで消え去るエヴァ。

撤退するって何しに来たんですか。

隙が出来た事にチャンスと見たのか、木乃香さんの後ろからおばさんと使い魔3匹が出てきて、

 

「木乃香お嬢様はウチがいただくで! 残念やったな!」

 

拘束された木乃香さんと共に逃げ出した。

何なんだよ、これ。

訳が分からない展開に戸惑った。

逃げ出したのなら仕方がない。

気を取り直して前を見ると月詠さんだけ。

 

「フェイトはどこへ行った?」

「フェイトはんやったら千草はんの護衛や」

 

嬉しそうに語る言葉の内容を知った僕は断罪の剣を両手に作る。

木乃香さんをわざと攫われるってああ、本気で実行したの。

それなら気にすることはない。

 

「月詠さん、捕まってもらいます」

「タダで捕まる気ないわ〜」

「魔法の矢50」

 

問答無用な数で月詠さんに追い打ちを駆ける。

 

「ひどいわ〜」

 

1秒ほどで全てを弾いた。

この月詠さん、強い気がするけど僕の気のせいだよね。

それを確認するためにちょっとだけ強力な魔法を撃つ。

 

「雷の射手……集束」

 

一つ一つの矢が集束。強力な矢になった。

集束し終わった射手を月詠さんにプレゼントした。

プレゼントにしては過激な気がする。

 

「これは、やばいかも、知れへんな〜」

 

とか言いつつ、二刀流の刀に気を込めて流そうとするが受け止めるという形になった。

受け流そうにも流せないみたいだ。

 

「月詠さん、おとなしく捕まってくれませんか? ここから同じ魔法を撃てば詰みですよ?」

 

涼しい表情で最終確認を取る。

反対すれば倒してでも拘束すれば問題なし。

誰かが介入でもしない限り不可能な状況へ持ってきた僕は計画通りと笑みを浮かべた。

 

受け流そうにもあまりの魔力に弾くことすらできない月詠さんの表情が歪んでいる。

辛そうだった。

ここでやめれば良心があるんだろうが、僕にそんなものはない。

だから、

 

「ラス テル マ スキル マギステル 光の精霊11柱! 集い来たりて 敵を射て

魔法の射手 連弾・光の11矢」

 

月詠さんに向けて解き放つ。

光の矢11が月詠の背後へ向かう。

向かってくる光を見た月詠さんは叫んだ。

 

「降参や!」

 

どうしようもない事に気付いたらしい。

無理もない。

瞬動を使っても光の矢は追尾式。

それに当たると拘束される効果もある。

全ての魔法に追加効果を付けるなど未来人にとって造作でもない。

とりあえず、全ての魔法を消す。

 

「付いて来てください」

「今や!」

「へっ?」

 

月詠さんが逃げだした。

なるほど、隙を取られた。

一息付いた後、石化した詠春さんをじーっと見てどうするか考える。

 

「元に戻すのはいいとして役に立つの?」

 

「ネギ!」

「ネギ先生!」

 

あ〜あ、考えてる間に皆が来てしまった。

 

「ネギ、いくわよ!」

「どこへですか?」

「木乃香を助けに行くのよ!!」

 

何を言ってるんだ?

木乃香さんなら自力で帰れるのに助けに行く意味がわからん。

 

「リョウメンスクナを消滅させるのではなかったのですか?」

 

そういえば、そんな話があったようななかったような。

月詠さんはこの後、現れなかったから次の機会が魔法世界行きゲートって長い。

前と何か違うから現れるかもしれない。

ネギが言ってる意味は、ネギの前に現れるかどうかの意味。

 

「向かいますか」

「そうよ!」

 

ハリセンを上に向ける明日菜さん。

剣になるのは修学旅行後だろうから今は気にしない方が良い。

 

「夕映さん達はここで待機しててください」

「はい」

「ネギ、私も行くぞ」

「私もマスターの壊れっぷりを堪能していたいです」

 

茶々丸さんの性格が歪んでるのはもうどうしようもない事。

気にしたら負け、らしい。

 

「早く行かないと被害が出ます」

 

刹那さんの言う通りだと判断した僕達は木乃香さんの方へ向かった。

 

 

 

〜決戦場〜

 

 

木に包まれた森で緑ばっかだ。

走っているとようやく見つけた。

皆と同じペースで走ってるせいでちょっとだけ遅くなった。

 

「待ってください!」

 

木乃香さんを背負ってるおばさんが札を取り出してから、

捕まっている木乃香さんのおでこに貼り付けた。

ここで鬼どもが召喚されるって事か。

そう思っていたが違った。

 

「フフフ、ウチの最高傑作、ビッグONIや! 100匹以上の鬼を融合させたんや。

これに勝てる術者は滅多におれへんで!!」

 

見た目は鬼、大きな鬼だった。

巨大と言っても30メートルしかない。

リョウメンスクナより強力じゃないが、

それに近いんだから、それで目的を果たせよ。

僕達はその一点だけ思った。

 

「ほなさいなら!」

 

捨て台詞を吐いておばさんは逃げだした。

 

「どうするのよ、ネギ」

「こんな切り札を持っていたとは」

「そうですね、どうしましょうか」

「兄貴!」

 

明日菜さんの服からニョキっと出てきた。

ってかいたのかよ……カモ。

突っ込む気もないよ。

明日菜さんから制裁されてるからどうでもいいけど。

 

「この鬼、どうしてくれよう」

「マスター、落ち着いてください」

「無詠唱の魔法で倒す?」

 

「あの、ゆっくりでいいんですか?」

 

刹那さんが申し訳なさそうに呟く。

リョウメンスクナが出ないと目的の意味がない。

 

「リョウメンスクナが出ないと暇なので時間つぶしになる」

「このちゃん……」

 

心配な表情になっておばさんが向かった方面を見ていた。

 

「大丈夫ですよ。伊達に転移魔法の杖を渡してますし」

「そ、それならいいんですが」

 

「グオオオオオオオオオオオオオ!」

 

目の前にいる鬼が大声を挙げる。

 

「うるさいわね!」

「こいつ、どうするんだ?」

「エヴァンジェリンさん、こいつを捕縛する兵器とか無いんですか?」

「リョウメンスクナ用の捕縛しかない」

 

結界弾を持って来てるのかってどこにあるんだ?

今の茶々丸さんの全身を見る。

武器らしき物がない。

 

「後で捕縛する物は転移させる」

 

首を傾げている僕を見たエヴァが説明してくれた。

だから納得した。

ロボットだから内蔵されてるのかと思った。

 

「グオオオ!」

 

何かうっとおしくなってきたな。

その時、鬼の口から魔力が混ざった玉を撃ってきた。

 

「明日菜さんミサイル!」

 

僕は明日菜さんを後ろから持ち、騒ぐ明日菜さんを無視して放り投げた。

 

「ちょっと!?」

 

魔力が混ざった玉が明日菜さんに当たったら消失。

魔法無効化って楽です。

投げられた明日菜さんは空中で体制を整えてから着地した。

 

「いきなり何すんのよ、ネギ!」

「いや〜、すみません。手が滑りました」

「投げる気満々だったでしょ!」

 

怒りながらこちらに向かってくる。

別に怒る事でもない気がする。

鬼は明日菜さんに気づき、左手に斧が出てきた。

 

「凄い鬼ですね」

「刹那さん、この鬼を退治するにはどれぐらいかかりますか?」

 

明日菜さんが騒ぎながら逃げてる状況で刹那さんに聞く。

 

「そうですね……多分、3日はかかると思います」

「エヴァンジェリンさん、片づけてください」

「いいのか?」

「いいですよ。僕は傍観してます」

 

エヴァより後ろに下がり観客気分で見ようとしたら、思ってもない乱入者がいた。

 

「そうはいかへんで!」

 

黒髪に学生服、尻尾が付いてる小太郎だった。

学校行ってないのに何で学生服着てるんだ?

 

「何しに来たの?犬太郎」

「誰が犬太郎や! 小太郎や」

 

ちゃんと僕にツッコミをくれた。さすが関西人。

勝手に関西人にするネギ。

 

「くっ! こうなったら」

 

向こうで明日菜さんが咸卦法を使い、こちらに帰ってきた。

瞬動が使える事は既にわかっていたがここまで成長すると感心する。

 

「ネギ〜」

 

明日菜さんはジト目で睨んでくる。

鬼が魔力を開放しながらこちらに向かってくる。

ん? ……開放だと?

 

「リク ラク ラ ラック ライラック 来たれ氷精 闇の精 闇を従え吹けよ常夜の氷雪 闇の吹雪!」

 

闇の吹雪が鬼の上半身をもぎ取った。

下半身しかなかった。

 

「下半身だけですか」

「神鳴流決戦奥義 真・雷光剣!!」

 

鬼に突っ込んだ刹那さんが技を使った。

スパーク、電気エネルギーが走った剣を思いっきり上から振り落とす。

鬼周辺が爆発する。

爆発した質量が多い影響で煙がモクモクと発生した。

 

「ゲホッ! ゲホッ!」

 

小太郎が咳をしていた。

苦しそうにしていたから、僕は親切心と思い、背後に回り込み背中に向かって、

 

「えいっ!」

 

魔力を込めた掌で思いっきり叩いた。

背中の激痛により小太郎が気絶した。

加減をミスったかな?とかちょっとだけ反省した後、風で煙を消した。

 

「鬼が消滅しましたね」

 

刹那さんの場所にいたはずの鬼が消えていた。

ここで無駄だ、みたいに復元したら怖かったが、無いみたいで良かった。

 

「エヴァちゃんと刹那さん、すごいわね」

「いえ、私は……」

「当然だ」

 

褒めている明日菜さんに、褒められて遠慮気味の刹那さんと鼻で笑うエヴァ。

 

「そういえば、もう一人何かいたような」

「いませんよ」

「いるじゃない」

 

気絶してる小太郎を見て指を差す明日菜さん

はあ……と息を吐く。

小太郎の体を浮かして本山の方にぶん投げた。

投げた衝撃で数本の木が折れていた。

 

「ネギ、あんたね……」

 

この場にいる明日菜さん達は呆れた視線で僕を見る。

これで小太郎、小太郎君の出番はもうない。

計画通り、と小声を呟いた。

 

「リョウメンスクナが誕生するまでしりとりでもしましょうか」

「ここから魔法届くの?」

 

首を傾げて疑問を呟く。

 

「目の前の方が効果はいいと思うけど」

「そうですね」

「結界弾も射程がないですし」

「ここにいたら近衛木乃香を助けにくいしな」

 

上から明日菜さん、刹那さん、茶々丸さん、エヴァ。

なんて少ないパーティなんだ。

 

「ここには役に立たない一匹がいるけど」

「それってオレッチっすか?」

「理解が早いな。下等生物」

「ひっ!」

 

エヴァの人睨みで明日菜さんの服の中に潜る。

 

「体力はまだ余ってますか?」

「私は大丈夫よ」

 

明日菜さんが平気平気と体を動かす。

エヴァも茶々丸さんも平気みたいだ。

奥義を放った刹那さんは、

 

「だ、大丈夫です。少し休めば」

 

疲れ気味だった。

無理もない。決戦奥義なんて放ったから疲れも出てくる。

 

「刹那さんが回復するまで待ちましょうか」

 

と言った途端、向こうの方で低い音が聞こえた。

 

「休んでる暇はないようだな」

「リョウメンスクナが召喚されたようです」

 

水色の大きい怪獣が現れた。

僕から見て、アレは怪獣だよ、と表現します。

胴体にはおばさんと横になっている木乃香さんがいた。

風呂場から攫われた訳じゃないから服を着てる状態。

 

「オッホッホッホッホッホ!!」

 

おばさんの声がこの場を支配してる存在に見えた。

まあ、森がそう言ってるだけ。

 

「うるさいですね。さっさと片付けますか」

「フェイトとか言うガキまでいるな」

「強力な相手が2人ですか……」

 

おばさんには個人的に叩きのめしたいから、

エヴァがフェイトの相手にさせればオールOKだね。

自分の中でまとめた作戦を明日菜さん達に説明する。

 

「僕と茶々丸さんがリョウメンスクナに向かいます。

エヴァンジェリンさんと刹那さんと明日菜さんはフェイトの相手をしてください」

「ふん、いいだろう」

「分かりました」

「分かったわ」

 

僕の作戦に賛同した全員で実行する前に僕は刹那さんとエヴァにこう言った。

 

「石化が得意みたいなのでその時は明日菜さんをシールドに使ってください。

なんなら、僕みたいに明日菜さんミサイルを……」

「何言ってるのよ! 私は嫌よ!」

「えと、私も遠慮します」

「無くても余裕だ」

 

ここで肯定してくれたら面白かったのに。

そもそもこれって作戦じゃない。

 

僕は改めて向こうを見ると水色の怪獣が唸っていた。

さらに、

 

「生意気なガキんちょ、出てこんかい! ウチをその辺のサブキャラ扱いした事を後悔させたる!!」

 

愚痴を叫んでいた。

聞いていた明日菜さん達は苦笑していた。

あなたの出番はここで終わりなんだよ。

 

「さっさと片付けたら休みましょう」

「私は修学旅行を楽しむ」

「最終日しかないけどね〜」

「明日菜さん、それを言っては駄目です」

 

明日菜さんの言葉でエヴァが悔しい表情になる。

水色の怪獣いや、リョウメンスクナがこちらを見てる。

無表情だ。操られてるんだから仕方がないか。

 

「フェイトとか言うガキを始末するか」

「ちょっと待って!」

 

そう言って、エヴァは猛スピードで走り去った。

明日菜さんと刹那さんが慌てて走り出す。

僕と茶々丸さんだけになった。

 

「茶々丸さんは上空から結界弾を撃ってください」

「わかりました」

 

茶々丸さんは頷いてから、上空へ向かった。

 

「雷の暴風より上の呪文で対抗するか」

 

雷の暴風は周りを巻き込むから使いたくもない。

気にしないけど、こんな事で目を付けられる訳にはいかない。

なら、周りを巻き込まない目標を狙う魔法を使おう。

使う呪文を決めた僕は宙に浮きリョウメンスクナの方へ飛んでいく。

 

 

 

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