全ての終焉 24 |
第24話『修学旅行編9・短すぎる決戦』
リョウメンスクナの中におばさんと木乃香さんがいる。
操ってるのはあくまで木乃香さんの魔力
使う呪文はヘルマンに唱えたアレにしよう。
というわけで、現在、リョウメンスクナ付近にいます。
「ガキンチョ、覚悟しいや!」
「嫌ですよ」
左腕を上空に向けて
「あれ? 木乃香さんが巻き添えになるかも。……まいっか」
僕の言葉に反応したのか、木乃香さんが杖を取り出した。
強制転移の杖は願えば発動する。
僕が呪文を使った瞬間、発動すれば巻き添えにならない。
「一撃で葬り去るか。向こうは向こうでフェイトが苦戦してるし」
あちらを見るとエヴァがエクスキューショナーソードを振りまわし
刹那さんがエヴァの攻撃をかわした後の隙を狙い
明日菜さんが魔法類を無効化させながらハリセンを振りまわしていた。
必死に抗うフェイトを見て僕は笑う。
「ククク、向こうは安全みたいだから僕も実行しますか。 サンダー・チャージ」
空を見るとネギの言葉に反応し、雲が集まってきた。
この後、大雨が降るような雲が段々と集まり、白色が黄色に変わる。
「並行世界や異世界に行った時に思いついた雷の倍増かな?」
集まってきた雲がスパークを放ちながらネギの右手に雷を降らす。
雷を受け止めた僕は呪文を唱える事にした。
「ラス テル マ スキル マギステル」
「な、何をする気や!」
「ネ、ネギ君……」
嫌な予感したおばさんがリョウメンスクナの両腕で自分のいる場所を守る。
そんな質量程度の壁でこの魔法を防ぐことはできない。
木乃香さんの声が聞こえたが、詠唱に集中する。
「来れ、虚空の雷、薙ぎ払え……木乃香さん! 雷の斧」
僕の声に反応した木乃香さんは杖を発動させて強制転移の杖で消え去った。
突然消えた事に驚いていたおばさんはキョロキョロ見回すが
上空から降ってくる雷の斧がリョウメンスクナに直撃する。
「おばさんをどけなきゃ」
思いっきり手加減した雷の暴風でおばさんだけを追い出す。
「ひえええええ!!」
どこかに飛ばされた。
これでおばさんの出番は消えてなくなりました。
「さてと……茶々丸さん、結界弾」
「わかりました」
茶々丸さんが大型銃をセッティングした後、目標に向けて発射した。
結界弾がリョウメンスクナにぶち当たり動けなくした。
「ネギ先生、この質量じゃあ数秒しか持ちませんのでお早めに」
「分かりました」
茶々丸さんが持っていた銃が一瞬にして砂の様に消失した。
あれ? 銃って一回きりの兵器だっけ?
リョウメンスクナの叫び声を聞いてハッと思いだした僕は
「木乃香さんがいないから遠慮なしで行くぞ」
ちょっとだけ力を出すことにした。
あまり力を出し過ぎるとこの地域どころか世界がお陀仏になるから手を抜かなくてはいけない。
だからって闇の魔法は使う気にもなれない。
使った瞬間、暴走でもしたら大変だ。
上空には黄色の雲が残ってるから有効活用しよう。
「雷の斧、雷の斧、雷の斧」
僕は雷の斧を3発分ぶつける事にした。
リョウメンスクナは雷の斧を弾こうと抗うが、上空から来るスピードと雷の威力に耐えきれず、両腕が消し飛んだ。
「雷の斧じゃ無理っぽいな。……良い事考えた」
前から試しかった魔法があったんだ。
ここで実験するには効果的だろう。
そう考えた僕は実行しようと決めて、左手を上空に向ける。
「ラス テル マ スキル マギステル 契約に従い、我に従え、炎の覇王。来たれ、浄化の炎、
燃え盛る大剣。ほとばしれよ、ソドムを焼きし火と硫黄。罪ありし者を、死の塵に」
とりあえず、ここで言葉を止めて右手を同じく向けて同じく詠唱を開始する。
「ラス テル マ スキル マギステル 来たれ雷精 風の精 雷を纏いて吹きすさべ南洋の風」
左手には炎、右手には雷が包み込んでいる。
威力はいつもより少なくしている。
威力が高いとこの後の影響で滅茶苦茶になるから。
「燃える天空、雷の暴風!」
両手をリョウメンスクナの方に向けて解き放った。
雷と炎が重なり合い勢いが早くなり向かっていった。
「グオオオオオ!!」
両腕が無いのに立ち向かおうとするリョウメンスクナ
雷と炎が重なった魔法はリョウメンスクナの全身を燃やし尽くした。
雷の暴風の勢いで斜め上に方向が変わりどこまでも飛んでいった。
リョウメンスクナの居た場所を見ると残り滓の欠片も残っていない。
完全に消えたことが分かった僕は背後に浮いている茶々丸さんに話しかける。
「茶々丸さん、どうですか?」
「反応ありません」
「そうですか。では、エヴァンジェリンさんの所に向かいましょうか」
僕は茶々丸さんの手を握り転移を行う。
転移先がフェイトとエヴァ達の間だった。
「終わりました」
その一言にフェイト以外が呆れた表情だった。
何でそんな表情されなきゃいけない。
明日菜さんが上空に人差し指を差した。
「ネギ、アレって何なの?」
「雷の属性を倍増させるものですが?」
「ありえんだろ」
「そうですか?」
フェイトに向けて雷の暴風を撃つ。
「何!?」
あまりに速い雷の暴風に抗う事も出来ず森の奥まで雷の暴風と一緒に引きずり込まれた。
明日菜さん達を見ると、あっさりと吹き飛んだフェイトの光景を見て顔を顰める。
「戻りましょうか。リョウメンスクナは消滅したみたいですし」
歩き出そうとすると、明日菜さんの後ろから吹き飛んで行ったはずのフェイトが現れた。
「石の槍」
と呟き、魔法陣から石の槍が一部分だけ出ていた。
まずい!
瞬時に明日菜さんの所へ向かい、横に退かした。
石の槍が僕の胸(心臓)部分を貫通させて背中から石の槍が出てきた。
「君に当たったか。まあいい……このまま死んでもらうよ」
死ぬ……? 誰が死ぬって?
僕が、俺が体を貫通されたごときで死ぬとでも?
「ネギ!」
「ネギ!!」
「ネギ先生!」
エヴァ、明日菜さん、刹那さんが僕を見て驚愕した。
石の槍が突き刺さったネギは一瞬だけ意識を失いかけた。
だが、今のネギは魔力、精神を鍛えられてるため直ぐに覚醒した。
「ぐっ……原子崩壊」
バランスが崩れて倒れそうになった僕は刺さっている石の槍に呟く。
突き刺さっている石の槍が砂の様にサラサラと消えていった。
それより今、誰を刺そうとした?
明日菜さん、アスナ……を!!
刺された僕はフェイトに怒りを込めて殺気を放つ。
放たれた本人はケロッとしていた。
平然としてるフェイトに怒りを覚えた僕はフェイトの障壁ごと消せる程度の魔力を込める。
「対消滅の暴風」
ネギの周辺に光の粒子が集まってくる。
白い粒子と黒い粒子がぶつかり合って水色の粒子に変わっていく。
対消滅とは(白い)魔力の粒子と(黒い)魔力の反粒子を衝突させて他の粒子に変換される現象
完成していく水色の粒子からこの世のものとは思えないほどのエネルギーを感じる。
明日菜さん達が何か叫んでいたが知った事か。
「フェイト、この場から消えろ!」
雷から対消滅へ変えた暴風をフェイトに向けて開放した。
近距離でかわせずヒットしたフェイトが吹き飛んで行く途中、水状になり蒸発した。
対消滅の暴風はそのまま森を巻き込み、山を抉り込み、空を貫き、宇宙へと消え去った。
周りを見ると森が抉れて山が消し飛んだような光景になった。
「ネギく〜ん!」
強制転移の杖で離れてた木乃香さんが空を飛びながらこちらに降下してから僕に抱きついてきた。
風呂場で攫われなくてよかった〜。
もしも、風呂場で攫われてたら一枚、下手したら裸だぞ。
この時だけはおばさん、フェイトに感謝しよう。
「木乃香さん、どこにいたんですか?」
「ウチ? 隠れてた」
「それより、ネギ」
「何ですか?」
エヴァが真剣な視線で僕を睨む。
明日菜さん達も僕を見る。
「さっきの魔法は何?」
「燃える天空と雷の暴風ですか?」
「違う!」
エヴァが言ってるのは対消滅の暴風か。
アレは原子崩壊が出来た後に考えた魔法?かな。
「魔力を強引に変換させた現象と言えば納得してくれますか?」
「納得できるか!」
「確かに納得できないわね」
「ネギ先生は本当に10歳ですか?」
何でこんなに問い詰められるの?
普通に雷の暴風を使った方が早い。
「それよりも屋敷に戻りましょうか」
「まあいい。修学旅行が終わったら聞かせてもらうぞ」
「……わ、わかりました」
仕方なく返事をするネギ。
「転移魔法で戻らない?」
「賛成やな」
ニコニコと笑みを浮かべている木乃香さんの視線がぶつかる。
視線の意味がなんとなくわかる。極移使えって事か。
「じゃあ行きますよ」
言った瞬間、明日菜さんと木乃香さんとエヴァの視線がぶつかる。
視線のぶつかり合いになった。
こんな状況じゃあ転移しづらいため、数メートルほど離れて状況を見守る。
何をしてるか観察してると状況が変わってきて、エヴァが騒いだりしていた。
言葉の途切れからすると僕を独占やらそんな話だ。
明日菜さんは2人を止めようとまあまあ、と落ち着かせていたけど効果が無い。
あはは……こいつら、置いていくか。
僕は空笑いした後、明日菜さん達を無視して刹那さんと茶々丸さんに話しかけた。
「明日菜さん達をよろしくお願いします」
「はい」
「ネギ先生、何処に行くんですか?」
「石化を直さないと」
刹那さんは僕の答えに納得して頷いた。
これでよし。
自分の影から潜り込もうとしたら
「何処へ行く気!」
逃げようとしたけど、明日菜さんの声がした。
いつの間にか言い合いかよくわからんカオスな状況が消えていた。
溜息を吐いた僕は影のゲートを閉じ、苦笑いする。
「あはは」
「あははじゃない! エヴァちゃん、木乃香! 木乃香の実家に戻ろう」
「……いいだろう。先ほどの話は後で付けよう」
「ウチも賛成や!」
一体何の話をしてたんだ?
ネギは明日菜達の話を聞いていないため、理解すらできなかった。
その後、僕達は状況を放置して実家に戻った。
きっと、この事をネギに聞いたら「どうでもいいですよ」という性格だった。
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