全ての終焉 31
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小太郎がヘンテコな役になってます。

ネギVSヘルマン編の前編です。

 

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第31話『ネギ対雑魚犬、ヘルマン前編』

 

「こら! これを解きなさい!」

 

 

200センチの四角形状になってるフィールドが貼られていた。

その中に明日菜が捕まっている。

 

「そのフィールドは君の力では解けない。

フィールドのエネルギー源は電力だからね〜」

 

「うるさい! こんな格好させてこの変態っ!?」

 

明日菜の格好はなんとチアガールのようだ。

麻帆良学園のチアガールが着る服そのものだ。

どこから、どうやって仕入れたのだ?

 

「うむ、夢の様なキャミソールの方が良かったかね?」

「夢? どう言う事?」

「フフフ……君も見ているのだろう? 神楽坂明日菜君」

「!?」

「じゃあ、木乃香達も攫うのもやっぱり」

「そう、ネギ君をおびき寄せるだけの餌に過ぎない」

「木乃香!!」

 

ちょっと離れた所では液体で出来た3メートルほどのフィールドがある。

私服姿の木乃香が明日菜の声に反応する。

 

「あの液体牢には声を遮断する効果がある。だから、君の知り合い達の声も聞こえない」

 

「そう言う事……」

 

「ヘルマン様、敵が来ました」

 

「ほう……」

 

 

ー噴水広場ー

 

僕は噴水広場に来た。

明日菜さん達の捕まってる状況を見て、目を細めた。

 

「……何だ? あのフィールドは前に無かったぞ」

「あれが嬢ちゃんを捕縛してるッスよ」

 

僕の服から出てきたカモくん。

つか、何時の間に潜入してたんだか……と呆れていたが、隣の方を見ると

 

「やっぱり攫われてるし、スライムすら強くなってるとは思わなかった。

前の僕なら瞬殺で終わり、か」

 

カモ君にすら聞こえない小声でつぶやいた後、メンツを見る。

木乃香さん、夕映さん、ハルナさん、のどかさん、刹那さん、朝倉さん、

ってあれ? クーフェイさんがいないってああ、関わって無いから当然か。

刹那さんは起きたままだけど抜けだせないほど頑丈な結界のようだ。

 

「カモ君、今から僕の言う事を木乃香さん達に伝えてくれないかな」

「オレッチしかできないんスか?」

「うん。この圧縮されたアイテム2つを木乃香さんと刹那さんに渡してきてほしい」

 

ポケットの中から聖なる剣と強制転移の杖の圧縮された赤い球を渡す。

受け取ったカモはぐーっと親指らしき指で立てた。

 

「けど、どうやって圧縮を解くんスカ?」

「圧縮解除って言いながら魔力及び気を解放で」

「わかったぜ! 兄貴」

 

頷いたカモ君はピョンと地面に飛び降り、木乃香さん達が捕まってる結界へ走った。

走り速度はまあ、気にしない方が良い。

これで大丈夫だろう。どうせ、捕まるし。

捕まる前提で考えたから何も問題ない。

問題はヘルマン只一人。

 

「ヘルマン、あんたを倒す」

「いいだろう。来たまえ!」

 

「またんかい!」

「誰だ!?」

 

ヘルマンが驚きの声を上げるってノリが良いなぁ、このヘルマンは。

声の主なんて、凄く分かりやすい声だ。

小太郎以外の何物でもない。

 

「ネギ! 勝負や!」

 

僕とヘルマンの間に割り込んできた。

ヘルマンって小太郎も敵扱いなのにその相手の前に立つのは自殺行為な気がする。

 

「……はぁ、小太郎君。後ろを気にした方が良いよ?」

「ハッ! あんなオッサン、雑魚やろ?」

「ほう……?」

 

ヘルマンの表情を見たら、少しだけ寒気がした。

だって、怒りの表情になってたからだ。

 

「君は邪魔だ。悪魔パンチ!!」

「こんなもん!」

 

ヘルマンは小太郎に向けてパンチを放つ。

小太郎はヘン!と鼻笑いして受け止めようとするが、

受け止める場所とは見当違いの場所に当たり、僕の後ろの建物?の壁までぶっ飛んだ。

 

「アホだ……」

 

小太郎がアホの様にぶっ飛んでた光景を見て思った。

ヘルマンの攻撃速度が2倍以上あるぞ。

世界が歪んでいるにも程がある。

 

「無駄な邪魔が入ったが気にしない。さあ、勝負だ。ネギ君」

 

小太郎を雑魚扱いにしたヘルマン。

当然だわな。油断してぶっ飛ばされるなんて哀れにしか思えない。

 

「そ、そうだね」

 

僕は久しぶりに戦いの歌を使った。

ヘルマンへ走る。

 

「ふん!」

「魔法の射手 光の17矢」

 

直線的な攻撃を放つ。

 

「はあっ!」

 

ヘルマンは僕の魔法を右腕でなぎ払った。

ああ、明日菜さんの魔法無効化ねぇ。

 

「フフフ……私に魔法は効かんよ」

「魔法が効かない? 人の能力を利用してる他人任せの魔族さん」

「だからどうしたのかね?」

「……雷の暴風3」

 

3連続の雷の暴風を解き放つ。

さすがのヘルマンもそれをまともにせず、右回避する。

あれ? かわされたって事はまずいな。空に方向を変えないと。

僕は3連続の魔法を人差し指を上に向ける事で上空へ飛んでいった。

 

「無効化利用すればいいのに」

「そうもいかんよ。今のはヤバかったのだ」

 

こいつ、さっきの魔法に無効化が効かないと察したのか?

前より遥かに強くなってるな。

ヘルマンの強さを考えていると、後ろからバカの声が聞こえた。

 

「いてて……邪魔しよって」

 

ドジな小太郎が僕の前に移動してきた。

ちっ、寝てなかったのか。

 

「おい! 俺が優先やろうが! 俺の邪魔すんな!」

「ネギ君の仲間は愉快だね」

「仲間じゃねえ!」

「そういえば、仲間じゃないよね」

 

さらに、前よりも関係が悪くなってる気がする。

 

「いくで! ネギ」

「って僕かよ!」

 

小太郎が爪をはやしてこちらに突っ込んでくる。

攻撃をかわしていくが、ヘルマンが僕の背後にいて

 

「これもまた一興か」

「ちょっと待って! 何で2人が協力してんの?」

 

一興の一言で向かってくるな!

なぜか2人が協力的になっていた。

どうでもいいけど、カモはどうなってるんだ?

見てみると、スライムからポイっと液体牢の中に……。

 

「ってか何で水牢ではなく液体牢なんだ? まあいっか、明日菜さんを助けなきゃ」

 

そう思ってると、小太郎の狼爪とヘルマンの悪魔パンチを連射してくる。

バランス良く体を捻らせて回避する。

 

「ああもう、鬱陶しい!」

 

僕はあまりにも鬱陶しい2人に向けて魔力解放。

解放した瞬間、衝撃波が発生し、吹き飛ばす。

一定距離以上離れた今がチャンス。

 

「さて、明日菜さんを」

 

明日菜さんの前まで来てフィールドの強度を調べる。

魔法が効かない要素がチラホラと含んでいるのが分かった。

 

「……明日菜さん、すぐ助けますね」

「これ、魔法じゃあどうにもできないってあのスケベ爺が」

「大丈夫です」

 

一歩後ろに下がる。

 

「こんなもの、精霊の射手」

 

魔法の射手以上の威力がある魔法でぶつけた。

フィールドは歪み始めたが、吸収されてしまった。

 

「ネギでも無理なの?」

「……」

 

やっぱりこの程度では無理か。

その時、後ろから

 

「残念だったね。ネギ君」

 

嬉しそうな声色でヘルマンが言った。

残念ってこれから出力を上げて破壊しようと思ったのに……。

 

「ネギ、勝負や」

 

お前はそれしかないのか!?

仕方ない。ヘルマンに片付けてもらおう。

 

「小太郎君、こいつを片づければ勝負できるぞ」

「ホンマか? うっしゃあ〜!」

 

小太郎はヘルマンに不意打ちをした。

だが、ヘルマンは左腕だけで小太郎の攻撃を軽く防いだ。

 

「この程度かね?」

「ふざけるな!」

 

小太郎は舐められたと思い怒りの連続パンチをぶっ放した。

 

「なるほど、君の力はもう分かった。休んでいたまえ」

 

ヘルマンの拳が小太郎のわき腹を抉り込み吹き飛ばした。

明日菜さんの背後にある10メートルぐらいの木にぶつかった。

ゴキっと音が聞こえたけど気のせいかな?

骨が折れたのはわき腹の骨か?

 

「ふう……明日菜さん、木乃香さん達優先にさせてもらえませんか?」

「え? わ、わかったわ」

 

明日菜さんの返事を確認した後、液体牢を見ると水がはじける音がした。

刹那さんが聖なる剣を天に向けていた。

 

「ネギ先生!」

「朝倉さん、ハルナさん、夕映さん、のどかさんはそこから動かないでください」

「でもスライムが」

「ウチに任せて。 雷の暴風」

 

木乃香さんが呪文を使って近づいてくるスライム1匹を蒸発させた。

蒸発!? 木乃香さんの魔法技術上がり過ぎかも……。

驚いていると、木乃香さんは自分の杖を残りのスライムに向けて。

 

「光の粒子よ、我に仇名す存在に、罰を与えん 星光破壊」

 

光の粒子が集まっていく。

何これ、ラテン語の呪文じゃなくて自作日本語の呪文?

それにこの呪文、嫌な予感がする。

 

「マジック・アンチ・フィールド拡大展開」

 

学園全体に魔法陣を貼る。

これで、多少の被害はない筈。

 

「発射!」

 

木乃香さんの合図と共に杖の先から発射した。

集まった魔力が昔の僕(20)の時以上あるぞ?

スライム2匹は何かの札を前に投げる。

 

しかし、木乃香さんの魔法は札に接触した瞬間防ぐ役目すらなく燃え貫通して

光がスライム2匹ごと飲み込んで大爆発が起こる。

爆発の余波で危ないと感知しただろうヘルマンも魔法障壁を貼る。

僕も一般の防御結界を貼ったが貫通してきやがった。

 

「魔法無効化、障壁等の貫通って……どっかの魔法少女ですか」

 

ガードしていたヘルマンも傷だらけになっていた。

魔法無効化能力すら意味を成さない光の魔法を編み出した木乃香さん

ありえないんですけど……。

 

「ネギ君、スライムは倒したで〜」

 

撃った本人はケロッと明るくこちらに手を振っていた。

 

「そうですか……刹那さん、剣返してもらえますか?木乃香さんは杖を使って

ハルナさん達4人を一定距離、取ってください」

「はい」

「いくで!」

 

頷いた刹那さんはこちらに来て、僕に聖なる剣を渡してくれた。

木乃香さんが杖に魔力をぶつけた瞬間、ハルナさん達を噴水広場から離れた場所へ転移した。

これで被害なし。

後は、

 

「明日菜さんを救うだけか」

「フフフ……ネギ君、君は本気では戦っていないのではないのかね?」

「私も見てみたいがな」

「え、エヴァちゃん!?」

 

驚いた表情の明日菜さんが僕の背後に指を差していた。

あれ? 鎖で縛られてる訳じゃないから自由なのか。

それはいいとして、後ろを見ると茶々丸さんとエヴァが腕を組んで立っていた。

 

「いつからいたんですか?」

「初めからだ。初めは木の上から見ていた」

「見ていたんなら助けてください」

 

エヴァは観察していたのだろう。

最初から気配あったけどやっぱりいたのか。

 

「マスターはネギ先生を乙女の眼差しで見ていたので、それどころではありませんでした」

「何を言ってるか!! このポンコツが!」

「闇の福音、エヴァンジェリンか」

「よく私を知ってるな。そうだ! 私は」

「それはいいんで。下がっててくれません?」

 

僕に言われたエヴァは機嫌悪い雰囲気になったが、フンと横に背け

 

「ネギ、こんな雑魚に負けてくれるなよ」

「わかりました」

 

僕は満面な笑顔でエヴァに返した。

赤くなったエヴァは唸りながらも茶々丸さんと共に後方へ下がった。

 

 

 

周辺には、僕とヘルマンしかいない。

木乃香さんも刹那さんもってちょっと待て!

 

「明日菜さんを解放してください」

「よかろう!」

 

良いのかよ!

即答したヘルマンは明日菜さんの結界に向けて指を鳴らす。

結界、フィールドが鏡の割れた音と共に消滅した。

解放された明日菜さんはボーっと僕を見ていたが、ハッと気づいて木乃香さんの方へ移動した。

 

これで、周辺にいるのが2人だけになった。

 

何か、全然思ってた事と違う気がする。

だって、大きな木の所には小太郎が気絶してるし、

スライムはあっさりと一言もなく消滅してるからどうしようもないな。

 

 

すると、急に空気の流れが変わった。

僕の目の前にいるヘルマンが数メートルほど離れて

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

筋肉がボコッと膨れ上がり、魔力がどんどんと上がっていく。

お前は超人にでもなったつもりか!?

しばらく待っていると、もう膨れ上がらない……って事は完成か。

 

「ネギ君、君の村をさらったのは私だ。この顔を見た記憶はないかね?」

「さらったってどういう意味ですか?」

「コホン、間違えたから言い直そう。襲ったのは私だ。どうだ?」

 

ダンディだった顔が捲れて長い角が2本付いている化け物に変わった。

眼が2つと口があるだけの悪魔だ。おまけに黒い翼が2枚ある。

それより、僕の思い出したくない記憶を引き出すなんて気に食わない。

 

「……あるな。そうか、そういうことするんだ。人がせっかく忘れてた所を思い出させるのがそんなに楽しいか」

 

本当に消してしまおうか。

心の奥底から思った僕は体内にある権限の鍵を発動。

世界を破壊しない程度の最大出力で魔力を解放させる。

噴水広場にある噴水等は僕の魔力に接触した瞬間、崩れる音と一緒に崩れた。

 

「こ、これは……」

 

ヘルマンが驚愕の表情に染まっていた。

 

準備完了した僕が攻撃開始と思ったその時、学園側の方角から声と共にやってきた。

 

「何よこれ! ってあ、ネギ……」

 

箒に跨ってこちらにきた小さい女の子。

ポニーテールをして学園の制服を着ている。

それにしても、髪型といい、姿といい、どっかで見た事あるな。ってああ!

 

「まさか、アーニャ?」

「そうよ! 久しぶりね。元気にしてた?」

 

思い出した。制服だったからちょっとわかんなかった。

アーニャは周りの事を気にせず、僕に言葉を交わす。

周りの空気が読めないのか? この子は……と呆れた表情でヘルマンに指を差す。

 

「何? その指は……っ!? 化け物!」

 

ようやく気付いたようだ。

気が動転して杖を反対側でヘルマンに向けるアーニャはこう宣言した。

 

「ちょっとあんた! ネギに何かしようとしたら許さないわよ!」

 

アーニャの怒鳴る声が周りに響いた。

 

「状況の空気を読んでよ、アーニャ」

 

呆れて呟いたネギはアーニャの登場でテンションが下がり、頭をガクッと下に俯いた。

 

 

 

続く。

 

 

第32話『後編』へ

 

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後編に続きます。

説明
第31話
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