全ての終焉 34
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第34話『アスナと明日菜とアーニャの歓迎』

 

ネギは、僕は不思議な夢を見ている。

この時間に戻ってくる前の麻帆良学園の屋上にいた。

景色が紫色になってておかしい。

 

「これって夢、だよね」

「そうね」

「え?」

 

後ろから、聞き覚えのある声がした。

有り得ないと思いつつも振り返ると、明日菜いや、アスナが制服姿でいた。

アスナとわかったのは簡単だ。髪を下ろしていたからだ。

 

「久しぶりね」

「いや、僕にとっては久しぶりも何もないよ?」

「そうね。並行世界や異世界に移動してるネギにとっては久しぶりじゃないのはわかるけど、私にとってはそうなの!」

 

ぷくうと子供の様に頬を膨らまして拗ねた声色で僕に言う。

目の前にいるアスナこそが僕の愛した女性の一人。

移動してるといっても、並行世界の明日菜が別の人といたり、性格が違ったり色んな明日菜を見た。

もちろん、そういう木乃香達も見たけど、ね。

それはいいとして、そんな彼女がどうしてここにいるというか、何でそんな事を知っている?

 

「これって夢だからじゃない? それにね、ネギの知らない部分があるでしょ?」

 

僕の知らない部分? 夢やら違う出来事の事?

 

「アスナは何か知ってるの? この世界の、僕の過去の異変を」

「一部だけね」

「アスナはその一部を知ってるの?」

「この世界の私が夢を見たって言ってたでしょ?」

「あったね」

 

明日菜がそう言ってたのは知ってる。

今の明日菜は性格が違うけど、本質も違う気がした。

あくまでも、僕の主観だけど。

だが、アスナの次の言葉で驚愕する事になる。

 

「私ね。実は明日菜の中にいるのよ。ネギへの思いはそれの影響かも知れないわね。後、それの影響でズレてるんだと思う」

「アスナがいる影響か、ん? それじゃあ……アスナは」

 

アスナがいるだけで影響ってするのか?もしかしたら別の理由もあるぞ。

一瞬、修学旅行の時の男を想像したが、それより大事な事があった。

アスナが過去の明日菜の中で存在している?

人は亡くなってからもどこかで潜んでいる可能性が稀にあるらしい。

その稀がアスナという事だ。

なら、どうにかすれば……と思いかけたが、アスナの言葉で僕の思考が止まる。

 

「無理よ」

「え?」

「私はきっと明日菜の中で一つになると思う。もうあまり力もないし」

 

悲しそうな目で自らの手を見るアスナ。

そんなもの、権限の鍵でどうにでもなる。

だから、僕はアスナにそれを伝えようとしたが、先にこう言われた。

 

「駄目よ。私は明日菜の中で一つになればいいの。この世界の明日菜も私だしね。

ネギへの思いも同じぐらいだと思うわ」

 

あまりの恥ずかしさに赤くなるアスナ

言われた僕も恥ずかしいけど、今は寂しさで一杯だ。

 

「そ、そうですか……」

「ネギ、明日菜の事あ…し……てね」

 

アスナは満面な笑顔でそう言った後、役目が終わったかのように消えていった。

取り残された僕はアスナの言葉の意味を考える。

 

「そうなんだよな。アスナは明日菜であり、明日菜はアスナなんだよな。ククク、僕らしくないな」

 

僕は気晴らしに魔力を解放し、右手を前に差し出す。

 

「ウェニアント スピリトゥス アエリアーリス フルグリエンテース クム フルグラティオーニ フレット テンペスタース アウストリーナ ヨウィス テンペスタース フルグリエンス」

 

昔、親父がやっていた呪文を唱える。

ネギの腕に巻き付き、集束されていく雷の暴風

普通はここで解き放つのだが、僕はそうしない。

 

「闇の魔法、完全圧縮、掌握」

 

そう呟いてから空いてる左手を天に向ける。

すると、周辺にある建物やら黒色になっている世界樹すらもネギの左手の方へ圧縮されていく。

圧縮されながらも周辺にある自然のエネルギーなど全てを吸収していく。

完全圧縮は今の説明で言うと、自分よりも大きい物質すらも圧縮し手のひらサイズにできる。

右腕に巻き付いている雷の暴風に圧縮された小さい球体を含ませると、激しいスパークが走る。

修学旅行で走っていたスパークとはケタが違うが、夢だからというのもある。

 

「完全圧縮版、雷の暴風、発射っ!!」

 

右腕を思いっきり後ろに動かした後、勢いよく前に突き出す。

突き出し方は古菲から教えてもらった突きだ。

僕の右腕から雷の暴風が激しい轟音を唸りながら直進する。

真っ直ぐ向かっていくと思いきや方向がいきなり下へ変わる。

地面に打ち込まれたら、ぶつかった影響の衝撃波が発生する。

周辺の物が消し飛び、雲が消えていき、空の空間が割れていく。

空間が割れてる所で気づく。コントロールしてなかったなぁ、と思いながら僕は目を瞑った。

 

 

〜ネギの部屋〜

 

 

僕は無意識に体を起こしていた。

明日菜さんの中にアスナがいる? じゃあ木乃香さんとかは?

一瞬だけ思考を巡らせていたが、それは後で考える事にする。

起きた状況は、と周りを見てみると、アーニャがソファーで座っていて、木乃香さんが朝食を並べていた。

朝食? 

 

「ってもうそんな時間なんですか?」

 

梯子を使わず飛び降りて赤いソファーに座る。

ちなみに、アーニャは青いソファー、つまり向かい側だ。

 

「相変わらずネボスケね」

「アーニャ、失礼だよ。僕だって夢さえ見なきゃ起きれたんだよ?」

「その言い訳は何度目よ」

 

昔、僕にとっては990年以上昔の事。

ウェールズにいた頃のアーニャに起こされる時、言い訳をした事がある。

父さんの夢が見たい!とか可愛い夢だった。

そんな夢を見たら、直接次元魔法でぶっ飛ばすんだが。

 

「そういえば今日からだよね」

「うん。でも年上の人ばっかだから浮くのかな」

「大丈夫や」

 

エプロンを外した木乃香さんが僕の右隣に座る。

食事する場所も変わってるのはもう言うまい。

気にしてたら馬鹿馬鹿しくなってくる。

 

「お腹減ったぁ……」

 

疲れた表情をした明日菜さんはアーニャの隣に座る。

木乃香さんが僕の隣に来ても気にしていないみたいだ。

 

「う〜ん」

「どうしたの?」

「食パンはないの?」

「外国ではパンが多いもんね」

「ご飯自体がないわ」

 

どっちも僕にとっては懐かしいんだけど?

ここに戻ってくる前にいた場所なんて不幸すぎる。

麻帆良学園の土地が残っていて、他は消し飛んでる。

簡単に言えば、この地域以外に原型を留めてもいない。他は無くなっていて宇宙空間という事。

なぜそんな状態で存在できるのか?

僕がその地域を権限の鍵を使って一つの世界に作り替えたから。

ただし、食事なんてできるわけもなくってそんな話はどうでもいいか。

今はアーニャの事が最優先事項だ。

 

「ところでアーニャちゃんとネギ君って幼馴染なんやろ?」

「ええ」

「そうよ。小さいころからね」

「今も小さいじゃない」

 

明日菜さんが空気を読まない事を言いました。

確かに年齢はあまり変わらないけど、それを言ったら駄目ですよ。

 

「何ですって!?」

「まあまあ、明日菜も大人げないで」

「わかったわよ」

 

木乃香さんに言われた明日菜さんは黙々と食事を取る事にした。

ただ、耳は傾けている様子

 

「ネギ君の小さい頃の話を聞かせてほしいんやけど」

「ネギの?」

「小さい頃のネギ君、可愛かったんやろなぁ」

「優等生みたいな感じだったわね」

「アーニャ、嘘はつかなくて良いよ」

 

優等生ね、関係者以外禁止な場所に無断で侵入したり色々した僕が?

 

「簡単に言うと、今のネギ自体と変わんないわ」

「それじゃあわからへん……」

「確かにそうね。600年も生きるエヴァちゃんに余裕で勝てるとか、ね」

「はあっ!?」

 

驚いた勢いでソファーから立ちあがるアーニャ。

 

「ネギ、何時の間にそんなに強くなったの? 雷の暴風が精一杯だったじゃない」

「密かに特訓してたんだよ」

「雷の暴風以上の呪文も使いまくりやな」

 

明日菜さんが木乃香さんの言葉に同意していた。

一応、木乃香さんと明日菜さんには魔導書を見せているからわかる。

魔導書の中には雷の暴風以上の出力を持った呪文がチラホラと存在する。

 

「密かにしても時間が無さ過ぎよ」

「アーニャだって燃える天空を撃ってるじゃない」

 

強くなった事を指摘してやると、アーニャは溜息を吐いた。

なぜ溜息を吐いた?

 

「私が使えるのはアレが限界よ。問題の魔力が少ないから」

「じゃあ仮契約でもする?」

「は?」

「はい?」

「そやな〜」

「良いっすねぇ。魔法陣ひくっすか?」

 

驚きの声を上げるアーニャと明日菜さん、木乃香さんは増える事を喜んでいるみたいだ。

ここで仮契約でもしないと魔法世界に行った時にアーニャの居場所がわかりにくい。

明日菜さんと一緒に攫われたから分かったものを。

 

「仮契約!?」

 

アーニャの顔がみるみると赤くなっていく。

何か初々しいな、と様子を見ながら考えていると、カモがピョンと広い場所に魔法陣を展開。

実行するの早いなぁ、まだするとも決まってないのに。

カモ、そんなにお金が好きか? と呆れる。

 

「ってネギとキス!?」

「ちなみにネギと仮契約してる人数、結構いるわよ」

「まだ数人やん」

「あんた達はネギとしてるって事?」

「ま、まあね」

「これやろ?」

 

ちょっと恥ずかしそうにしてる明日菜さんと笑顔の木乃香さんが仮契約カードを見せる。

アーニャは全身が震えあがったと思った瞬間、僕の手を掴んで大胆な事を言いだした。

 

「ネギ! 私にもしなさい!」

「あ、うん」

「二人とも魔法陣の上に立ってくだせぇ!」

 

今まで存在感なかったカモ君はささっと僕に奨める。

こんな時しか出番があまり無いカモであった。

 

アーニャが魔法陣の中に入ると、スカートがふわっと浮かびあがる。

スカートが浮かび上がり、下着が見えそうになる所でアーニャの両手で塞がれた。

 

「……もう少しだったのに」

「何がもう少しなの? ……っ!?」

 

僕の言葉で疑問になったアーニャだが、意味がわかったのか顔を赤くした。

怒って赤くなったかなんて僕にわかるわけもない。

 

「……そんなに見たいんなら二人っきりの時にでもいくらでも」

「はい?」

 

小声で帰ってきた答えに僕は間抜けの声を出した。

予想外の言葉に戸惑った。

 

「あ、アーニャちゃん、早くやったら?」

「そ、そうやで!」

 

2人もアーニャの言葉が聞こえたようだ。

声が引き攣ってるような、そんな感じがした。

 

「そうですね。アーニャ」

「う、うん」

 

早くした方が良いな、と判断した僕はアーニャの肩を掴んで唇を重ねた。

唇を重ねたと同時にアーニャが僕の肩を掴んできた。

数秒間、そんな状況になっていると

 

「お二人さん、もういいですぜ」

 

カモが仮契約カードを持っていた。

絵柄は青い杖を持ち、魔法服を着たアーニャが写っている。

魔法服の露出が……と考えているその時、魔力の塊が飛んできた。

それに気付いたアーニャが僕から離れて火の矢10で相砕した。

 

「いきなり何すんのよ!」

 

撃ってきた張本人に視線を向ける。

その張本人が明日菜さんだったわけだ。

 

「あ、当り前よ! いつまでしてんのよ!」

「だからって魔力の塊を撃ってくるんじゃないわよ!」

「それは気分で」

「気分でされたら堪んないわ」

 

僕を巻き添えさせる気満々だったのが気に入らない。

僕はアーニャと明日菜さんの間に入り込んで忠告する。

 

「明日菜さん、今の魔力を僕にぶつけてどうしたかったんですか?」

 

魔力を部屋全体に撒き散らしながら笑みを浮かべる。

僕の笑みに気付いた明日菜さんが青ざめて

 

「え、えとね。アーニャちゃんだけにやろうと思って」

「僕に当たったらどうするんですか?」

「あはははは……」

「学校は行かんでええの?」

「「「え?」」」

 

申し訳なさそうに言う木乃香さんの言葉に僕は腕時計を見る。

デジタルだから簡単にわかる。

こう記されていた「8:00」と。

 

「この話はもうどうでもいいので、僕は急ぎますね」

 

解放していた魔力を自分の中に戻す。。

皆に行ってきます、と伝えてから、極移で学園長室を思い浮かべて転移した。

 

 

〜学園長室〜

 

 

極移で来た僕は学園長室にいた。

この移動って早すぎるんだよね。時間が経つ瞬間に到着してるのがすごい。

 

「ネギ君、うむ。木乃香とは仲が進んでいるようじゃな」

「うん!」

 

返事をしたのは木乃香さんの声だった。

左腕に絡まれている暖かい感触がするから左に視線を向けると、木乃香さんがいた。

 

「……何でいるんですか?」

「ネギ君が移動する時、とっさに掴んどいたんや」

 

先手必勝と右目でウインクする木乃香さん

後で明日菜さんとアーニャが……って考えると頭が痛くなる。

 

「ちなみにどれぐらいじゃ?」

「まだキスやけど?」

「それ以上進める訳ないじゃないですか」

 

10歳相手にどう進めと?

まあ逆行しただけだから、その部分は関係ないが。

だが、爺は僕の予想外の事を言ってきた。

 

「年齢詐称の飴玉があるじゃろ? それを飲み込むんじゃ。そうすれば年齢の問題も解決じゃ」

「そんなんあるんや〜」

「おい……」

 

この爺はなんて事を言い出すんだ?

あの飴玉で成長させてって方法に呆れる。

大きくなった体は必ずしも将来そうなるって想定されていないし関係ない。

でもそれを普通、娘に提供するか?

 

「その飴玉ってどこにあるん?」

 

木乃香さんが目をキラキラさせて爺に聞いていた。

使う気満々かよ。

 

「魔法世界の通販じゃ」

「よしって高いんやろ? それ、魔法薬やし」

「わしが払っといてやろうぞ! ふぉふぉふぉ」

 

駄目だこの爺、いきなり成長した木乃香さんを皆が見たらどう思うんだ?

前試した時なんかもろバレだった気が

未来での話だから関係ないかもしれないけど、この状況をどうにかするのが先決だ。

 

「年齢詐称の飴玉はどうでもいいとして、今日はアーニャがこの学園に通う日」

「うむ。もう一度言っておくが、アーニャ君は君のクラスじゃ」

「それは知ってる」

 

木乃香さんもうんうんと頷く。

あんだけアーニャとじゃれ合ってたんだからわかるでしょ。

絶対ネカネいや、ネカネお姉ちゃんが仕組んだ事だ。

 

「アーニャ君の出席番号は32番じゃ」

「あれ? アーニャはア行ですよね?」

「面倒になって最後にしたんじゃ」

 

いやいや、面倒ってどうみてもア行に追加して後をずらせばいいだけでは?と指摘してやるとなんて返答が来たと思う?

 

「こう見えても忙しいんじゃ」

「そうですか」

 

どうでもいいという平然な態度で関係ない言い訳が返ってきた。

……忙しい……だと!? どうみても書類とか見当たらないのですが?

学園長の机の上には言葉とは裏腹にスッカラカン状態だった。

 

「おじいちゃんも一応、学園長やもんな〜」

「そうじゃろそうじゃろ」

「あはは……」

 

爺いえ、学園長……自分の孫娘から一応とか言われてますよ?

木乃香さんの言葉はどうみても褒め言葉ではないんだけど。

孫娘の言葉なら何でもいいのかな?

苦笑していると学園長は机の引き出しから出席簿を取り出して、僕に渡してきた。

 

「これは?」

「アーニャ君を含んだ最新の出席簿じゃ」

「はぁ……どうも」

 

とりあえず確認っと。

適当にページを開けてみるとアーニャの出席チェック欄が追加されていた。

最後のページを見ると、32番の写真が追加されているのを確認。

確認した僕は出席簿を閉じて、学園長室から出る。

同時に木乃香さんも僕の後に付いてくる。

 

学園長室を出た後、木乃香さんは教室へ走っていった。

 

 

〜3−A教室〜

 

廊下でアーニャと会い、扉の前で待ってもらう。

何気に深呼吸をした僕は教室に入り、今日の重要な件を皆に伝える。

 

「今日から転入生が来ます」

 

皆がざわざわと騒ぎだす。

 

「先生、その子ってどんな性格してますか?」

「自分でどうぞ」

「先生の好きな子ですか?」

「それ、僕とどう関係するんですか?」

「ライバルが増えるかなぁって!」

 

まき絵さんが別の意味で正解を当ててくる。

ライバルってまあ、当たってるね。

図星なのはさておき、話を進めないと。

 

「では、入ってきてください」

 

言われたアーニャが入ってくる。

邪魔にならない様、僕はアーニャから少し横にずれる。

教壇の前に着いたアーニャは一礼してから自己紹介を始める。

 

「初めまして。アンナ・ユーリエウナ・ココロウァです。宜しければアーニャと呼んで頂けると光栄です」

 

「へえ、アーニャちゃんかぁ」

「ってあれ? 何か幼くない?」

 

「アーニャは11歳ですよ?」

 

「11歳!?」

 

「コホン、言い忘れてましたけど、私とネギは幼馴染です。

それと部屋はネギと同じ所です。そこの所を宜しくお願いします」

 

「「「「「ええええええええええええ!?」」」」」

 

アーニャの発言にあやかさんを筆頭に叫んだ。

アーニャの事を知る明日菜さん達は頭を抱える。

それはどうでもいいが、そこの所ってどういう意味だ?

どうみても挑発です、ありがとうございました的な雰囲気を漂わすアーニャ。

 

「また面倒なのが来た」

 

うむ、千雨さんの言葉が聞こえた。

様子を見ていると頭を抱えているようだ。

千雨さんとはそろそろ仮契約をしておいた方が良い。

あのイベントが起こるなら時間短縮したい。

 

「アーニャちゃん、私はまき絵って言うの。よろしくね」

「うん。まき絵」

「私は雪広あやかですわ。あやかと呼んでください」

「委員長ね」

 

そう言われたあやかさんが白く固まった。

アーニャ、もう知ってたんだ。

僕の幼馴染というから皆がアーニャの方に詰め寄ってる。

表情が少し青いアーニャは皆の質問に答えていく。

 

「ふう」

「どうした?」

 

話しかけてきたのはエヴァだ。

僕の従者になってもらうかな? 今日中に。

仮契約するのは千雨さん、エヴァぐらいか。

 

「アーニャの自業自得だなって」

「確かに……それよりも授業つぶれるけどいいのか?」

「今日は授業なしでもいいですよ」

 

今日はHRが終われば、一時間目僕の授業だ。

アーニャが転入してきたから授業潰してもいいだろう、と考えただけ。

 

「なら私は寝るぞ」

 

そう言って、エヴァは自分の席に戻った。

 

それから、アーニャは半数の、主にあやかさんとまき絵さんの質問に答え終わった所でチャイムが鳴った。

 

チャイムが鳴った後、僕は大声で伝える。

 

「チャイムが鳴りましたので僕はこれで失礼します」

 

大声で言いきった僕は巻き込まれない様に逃げた。

アーニャとの関係とか面倒すぎる。

逃げていく姿を他の人が僕の事に気付いたが極移を発動させた。

そのため、誰にも追いかけられる事は無かった。

 

 

 

放課後、僕や明日菜さん達はエヴァの別荘の中に来ていた。

 

「何で私までいるんだ!!」

 

千雨さんが何か騒いでいた。

無理もない。強引に僕が連れて来たのだから。

どうやって連れてきたかって?

簡単な事、誰もいない道で千雨さんが歩いて行く場所に極移用の魔法陣を貼ってこの場所へ転移させただけ。

 

「ネギ、今日は何をするんだ?」

 

エヴァがこの中の代表として聞いてきた。

いきなり強制転移させられたから無理もない。

木乃香さんは首を傾げつつキョロキョロと周りを見回していた。

 

「ネギ君、せっちゃんは?」

「……忘れてました」

「……せっちゃんが聞いたら絶対落ち込むえ」

「せ、せっちゃんって?」

 

訳も分からない状態なのに混乱もせず僕に聞いてくるアーニャ。

内心は驚いているようだが、声もちょっと震えてるし。

一部いない人もいるが気にしない。

 

「アーニャ、木乃香さんの親友の桜咲刹那さんの事ですよ」

「そうなんだ」

 

僕の答えを聞いたアーニャは木乃香を見て頷いていた。

どういう意味で納得したんだ? この子は。

今は気にしない方が良いのかな?

 

「ネギ先生」

「ハルナがいない……」

 

木乃香さんの背後から出てきた夕映さんとのどかさん

こちらもいきなりの事で状況についていかない事だ。

そろそろ教えるとしよう。

 

「千雨さん、エヴァンジェリンさん、僕の従者になっていただけませんか?」

 

「「「「「えええええええええええええええっ!?」」」」」

「ネギ、本気か?」

「従者?」

 

明日菜さん達は驚き、エヴァが顔を赤くして、千雨さんは従者という言葉に首を傾げていた。

6人だから驚きの声が周りに響く。

首を傾げている千雨さんに僕はこう説明した。

 

「千雨さん、仮契約をしてもらうだけですから」

「そうなのか? 仮契約ってのは?」

 

冷静になっている千雨さんに木乃香さんが人差し指を立てて説明してくれた。

 

「仮契約ってその人とキスするんやで?」

「はああああああっ!?」 

 

キスという単語で赤くなって叫ぶ千雨さんでした。

一体、頭の中でどんな想像をしたのやら

木乃香さんの説明は仮契約の内容じゃなくて仕方の説明だった。

千雨さんの顔が紅潮している所、僕は真剣な表情で伝える事にした。

 

「千雨さん、手伝っていただけませんか? 魔法を知ってしまったなら、それはもう運命でしかないです」

 

何のだよ、とアーニャ達が僕の方を睨んでいた。特にアーニャの視線が。

そんな黒い視線を無視して、僕は千雨さんの右手を両手で包み込むように掴み。

 

「お願いします。千雨さん。仮契約さえしてしまえば、もし魔法がバレても弁解が可能になるだけじゃない。

千雨さんがオコジョになる事もないんです」

 

「言ってる事は正しいんやけど……」

「うん。それって千雨さんとキスしたいだけじゃないの?」

「ネ、ネギィ」

 

木乃香さんも明日菜さんも縁起でもない事言わないで。

僕の名前を呼びながら黒いオーラを出しているアーニャがいました。

すると、千雨さんが空いていた左手で僕の両手の上にそっと置き、口を開いた。

 

「ネギ先生、一つだけ聞きたい」

「何ですか?」

「もし危険な状況に陥った時、わわ、私を守ってくれるのか?」

「はい」

 

千雨さんの質問に笑顔と共に返した。

その返事を聞いた千雨さんは恥ずかしさのあまり俯いてしまった。

恥ずかしそうに俯いてる千雨さんがかなり可愛く見える。

でも、この様子だと仮契約はエヴァからやった方がよさそうかな。

 

「わかりました。……します」

「じゃあ魔法陣を引きますか」

 

最後が小声で聞こえにくかったけど聞き取れた。

うむ、これで目標が一つだけ減った。

後はエヴァと仮契約だけだけど、前みたいに条件があるかもしれないな。

前の状況を思い出しながら溜息を吐いた。

 

「あ、カモがいないや」

 

僕はこの場で一番重要な存在を忘れていた。

僕の仮契約魔法陣だと千雨さんのスカートの中覗けないや、とちょっと残念な気持ちになった。

 

まったく、前の時とはえらい違いすぎるネギであった。

 

 

 

第35話『千雨、エヴァと仮契約』へ。

 

 

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未来のアスナが逆行先の明日菜の中にいるという点が重要になってきます。

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第34話
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逆行 最強 ネギま オリジナル魔法 

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