ゲイム業界へようこそ!その1 |
「ふう…、ミッションコンプリート…」
感慨に浸ってしまったな。
今クリアしたゲーム「超次元ゲイム ネプテューヌ」のタイトル画面を見て、俺こと井上 煉(イノウエ レン)は呆けていた。
現在一人暮らし中である俺は、家に引きこもりギャルゲーをしていた。大学生ながら、ろくに友達とは遊ぼうとせず、同人誌を集め、ニコ○コ動画を散策し、新しいゲームを見つけるため、日々ショップを訪れている駄目人間である。こんな自分だが後悔はしてない。
「みんな可愛いかった…、特に女性声優の演出がグー…」
今クリアしたばかりのゲームについてだが、これでも最初はやろうかどうか大分悩んだのだ。周りの奴らの声を聞いても評価はイマイチ…。しかしそんな中、俺は時間的余裕(暇と同義)とキャラの安定した可愛さの二つの理由から思わず購入してしまった。実際やってみれば思った以上にやり込むことが出来て、結局2週間程度でクリアしてしまったのだ。ゲーム性もあってキャラも可愛い…、アレ?実は良ゲーだったのか?
とりあえずこのゲームのおかげで、また一歩成長したな、俺!どこからかレベルアップ時の音が聞こえた気がする。テレテレテッテッテーー
「さて、チェックしていたゲームでも探しにショップにでも行くか。」
椅子から重い腰を上げる。よっこらせ…。天気はどうやら雨で、外に出る気が一気に失せる。しかし、現在家でやりたいものも無いので、仕方なく外に出ることに。
「さて、傘は…。ない…だと……?」
傘くらい普通あるだろ!?まったくテンションだだ下がりである。これはショップまで走っていくことに決定だな。俺の愛用するショップは家から歩いて約15分程度掛かり、それは高低のある坂を含んでいるので実に面倒極まりない。
外に出ると、雨がザーザー、俺は服べっちょり。気にせずショップへと向かう。そう、気にしたら負けなんだ!視界を遮る雨の攻撃に俺のライフは少しずつ減少していく。さながら毒沼を歩く勇者のごとくだ。
「イタっ、目に入った…、いってぇ〜。」
立ち止まって、目を擦る。雨が傘を差していない俺を容赦無く攻撃していく。まったく…これだから雨は嫌いなんだ!雨なんて消滅してしまえばいい!そして擦る手を退けて、目を見開くと…
俺の視界は空を向いていた。
「えっ……な…ん…で……?」
上手く声を出せない。そして体が信じられないほどに痛い。あまりに痛すぎて、泣き叫びたくても声がでない。
自身がどういう状態なのか確認するため頭を動かそうとするが思うようにいかず、目で可能な限り自身の体を追って見ると、両腕が本来ありえない方向へ曲がっている。両足は見ることが出来ないのだが、力を入れても動かせないためおそらく腕と同様の状態なのだろう。視界も痛みのせいか、だんだんぼやけてきた。
ぼやけた視界の先には多くの人々が立ち止まってこちらを見ている。あいつ等は俺のことどんな風に見ているのだろうか?まぁ今更考えても仕方ないか…。
雨が先ほどにも増して勢いを強め、俺をどんどん体の体温を奪われていく。どうしてこんなことになったのだろうか…。もう、考えるのも疲れてきたな、寝てしまおう…。
しかし涙が流れるのは何故なのだろう。雨の降る中、頬を涙がつたっていく……。
ここで俺の意識はシャットダウンした。
………………
…意識が戻っていく。しかし、周りは暗闇で、今までに味わったことのない浮遊感があった。どこを見渡して、闇、闇、闇。夜のような暗さではなく、どこまでも先が見えることのない圧倒的な「闇」。そろそろ自分の状況が知りたい。
「ここは…」
喋ろうとした時、俺の目の前に一人の女性がいたことに気付く。どうやらあの女性はこちらを大分見ていたようだ。
「あなたは誰な「あなたはは死んでしまったんです、煉君」…どうして俺の名前を?」
待て…考えろ……、俺。この状況はどこかで見たことがあるはずだ。
「それは私が「分かりました、あなたが神だからですね」よく分かりましたね…。」
神様?らしき人物の言葉を遮る俺。どうやら正解だったらしい。この手のSSはよく読んでいたから、まさかとは思ったが…。
「あなたは今どんな状態にあるか理解していますか?」
「神様であるあなたが言ったのだ。俺は死んでしまったのでしょう。」
「そうです。そのわりにはあなたは今まで見てきた者達より、随分落ち着いていますね。」
「この手のものは結構知っているので」
「そうですか、物知りなんですね。」
神様は頭の上に?を浮かべているようだったが、どうやらスルーしてしまうようだ。まぁこっちとしても大したことではないが…。いや、死んでしまってるのだから、大したことなのか?
「さてあなたが何故この場所にいるかですが、先に謝らせてください。本当にごめんなさい。」
何を思ってか神様はこちらに頭を下げる。なんとなく予想がついてしまうが、一応聞いておこう。
「何故神様が俺に謝るのですか?」
「それは私の不手際から、まだ死を迎えるはずのないあなたの人生を終わらせてしまったからです。」
「そうでしたか…」
「私の不手際の理由などの細かい説明など必要ですか?必要ならゆっくりと説明していきますよ。ここは無限の時間があるので」
「いえ、大丈夫ですよ。大体理解出来ましたので」
「えっっ!本当によろしいのですか!?」
「この手のものは結構知っているので」
「本当にあなたは物知りなのですね…」
神様はどうやら本当に驚いてらっしゃるようだ。まぁ、俺もSSでよくある話の通りに進んでいるので驚いてはいるのだが。
「それでは、物知りのあなたにはこの後どうなるかご存知ですか?」
「よくある話ならば天国もしくは地獄に行くと思われます。後は別世界で新しい生活を始めるとかかと…」
「話が早くて助かりますね、後者で正解です。あなたはこの後どこか別の世界で生活してもらいます。」
ふむ……、ここまで俺が知っている通りに随分進んでいるな。あまりに順調過ぎて、少し怖くなってきた…。このまま行くとチート性能とかの力を貰い、その世界で多くの人々(ヒロイン含む)と交流を深めながら、それぞれの道を進んで行くことになると思うのだが…。
「どの世界に行きたいかはあなたに任せますよ、特にこれというものが無ければこちらで住み易そうな世界へ送りますが」
「行きたい世界ですか…そうですね…。」
今まで読んだ漫画や攻略したゲームのことを思い出していく。どの作品も間違いなく魅力的だ。勿論、ヒロイン面で。しかし、あまりに数が膨大過ぎて決まりそうにない。まさかこんな機会が来るなんて思ってもみないから当然だ。果たしてどうしたものか…。
ここで何故か先ほどクリアしたゲームの「彼女」のことを思い出す。彼女の笑顔を現実で見てみたいかもな…。
「決まったみたいですね、それではその世界へ飛ばしますね。」
「えっ、まだ俺は決めてな…」
そこで俺の意識は再び落ちていくことになる。意識が落ちていきながら、俺はどの世界でもいいから、せめてモンスターなどがいない初期位置からスタート出来るように、神様に祈った。
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