ゲイム業界へようこそ!その2 |
…意識が戻っていく。
辺りを見渡すと見覚えのない風景。いや、見覚えのないというのは嘘になるな。
俺はつい最近このような場所をゲーム内で訪れたことがある。そのゲームはもちろん予測出来る。
「ネプテューヌの世界に来たのか、俺は…。」
「超次元ゲイム ネプテューヌ」の世界にどうやら来てしまったらしい。しかし、果たして俺はそのゲームのどこにいるのだろうか?
人影はない。どこかのダンジョンのようだ。そして、ここがダンジョンということはモンスターがどこかに存在する結果に繋がる。
「神様は何故俺をこんな場所に…。」
まったく冗談ではない。俺がモンスターにでも襲われてみろ。今まで安穏と暮らしていた一般人があいつらを倒せる訳ないのだ。武器だって持ってないのに…
「って、いつの間にか武器を持っているな。」
どうやら武器は所持していたようだ。腰に少し大きめの片手剣がある(見た目は包丁だが、武器であると信じたい!)。むしろ自分自身の格好も大きく変化していることに気付いた。
まず髪は以前より長めで、そして何より服装がまるでコスプレと思わせるほど派手であった。とても恥ずかしいが基本装備なのであろう。納得しなければこの世界ではやっていけない。うんうん。
(調子はどうですか〜?)
(っ!?)
思わず周りを見渡すが誰もいない。むしろ心に声が響いてくるようだ。これがあの「テレパシー」なるものなのか…。
(聞こえていますよね、私は先ほどまであなたと話していた神様です。あなたの脳に直接情報を伝えているので、周りに声は聞こえませんよ。)
(…。)
どうやって神様に伝えれば良いのかが分からない。念じたりでもすれば伝わるのだろうか?それと何かもっと複雑な何かが?
(どうすればこちら側に伝わるか悩んでいるのですね?普通に声を出していただければ伝わりますよ。)
「わりと普通なんですね…。」
(ご期待に添えず、すみません。それではあなたの近況を伝えようと思うのですが大丈夫ですか?)
「大丈夫ですよ…。」
俺は少ししょんぼりした。しかし、こんな所で挫けていてはいけない。
(あなたは今「超次元ゲイム ネプテューヌ」の世界の住人として存在しています。場所はどこかのダンジョンのようですね。安全な場所に降ろすことが出来なくて、申し訳ありません。)
「……。」
(? そっ、それでですね。あなた自身のことですが、この世界ではイレギュラーな存在となっているわけです。ですが安心して下さい。世界に大きな影響を与えたりしない限り消されたりなんかはしませんので。)
「ということは影響を与える度合いによっては私は消えてしまうのですか?」
(そこまで気をつけるほどでもないですよ?あなたが物語の重要な所を邪魔したり、主人公達を殺したりしなければ。)
「そんなことをするつもりは全く無いですね。」
むしろ俺はせっかく来ることが出来たこの世界でヒロイン達と少し話をする程度でいいから、楽しく暮らして往きたいのだ。物語に絡むつもりなど毛頭無い。
平凡?そこが良いのであろう。
(なら大丈夫ですね。続いてですがこの世界で生きていく為に私からあなたにいくつか力を与えました。)
俺が一番気になる話がやっと来たようだ。俺の存在がこの能力の部分で決まるようなものだからである。チートまではいかずとも、それなりの力は欲しいと思うのが当然だ。
(あなたには第一に「素早さ」の力を与えました。移動速度等が常人ではないレベルのものを持っています。しかし、光速のスピードを持っているわけでもなく、この世界の生物の中では1、2を争う程度という意味です。)
「理解しました。」
(次にあなたには「変身能力」を与えました。変身方法は自分が変身したいと思ったらすぐになれますので、後で確認してみて下さいね。変身後はスピードの向上の他に、攻撃力も大きく上がりますので戦闘向きになりますね。)
「…理解しました。」
言葉ではこう言っているが、内心ではかなり興奮している。変身だと!?変身後は髪がシルバーになってイケメンになるとか…。もしくは全身装甲の人型兵器とかはどうだ?いかん、早く変身して確かめてみたい!
(話を続けますが、注意事項です。あなたは全体的に強化されたと思うかもしれませんが、耐久力、言わば防御力は変化していません。これは変身してもです。二階の窓から飛び降りれば当たり前のように怪我をしますし、車に撥ねられれば大怪我、もしくは死に繋がります。ここだけは気をつけて下さいね。)
「なるほど、把握しました。」
それを聞いて俺は少し恐怖を覚えた。攻撃力、素早さがあっても、相手から攻撃を食らってしまったら、即アウトということなのだ。
モンスターと遭遇したならば、逃げることが第一と言える。俺無双が出来るかと思ったので残念であった。
(後はそうですね、本来見えないはずのパラメーターなんかも見えるようにしておきましたよ)
「それはどういった物ですか?」
(それは簡単に言えば、相手のレベルやステータスが見えるというものです。詳しくは実際に相手を見てみれば分かりますので。これは見たいと思ったら見れるもので、常に表示されているわけではないので、ご了承下さいね)
「まぁ、なんとなくですが了解しました。」
(オマケとして、あなたが周りから好感を持ってもらうように、外見を少し変更しておきましたよ。女性から見たらあなたは中の上って所ですね。)
「…それは有難うございます。」
服装まで変わったくらいだから、まさかとは思ったが案の定か…。とりあえず後から確認だな。
(とりあえず説明はこのくらいですかね。何か聞きたいことはありますか?)
「一つだけ…。この世界ではどのように暮らしていけばいいのでしょうか?」
(それはあなたの思うがままで良いのですよ?ただ先ほども話したように、この世界に大きな影響を与えるのであれば、その代償があなたに訪れるということだけです。そこを理解しているのであれば、どんなことをしてもあなた次第ですので構わないのですよ?)
「それを聞いて安心しました。」
しばらくはこの世界に馴染む為に、どこかの国で落ち着きたいものだ。四つの国でどこが良いだろうか?なんとなく住み心地が良さそうなのは、プラネテューヌかリーンボックスだと思うのだが…。
ルウィーは年中寒そうだから嫌だし、ラステイションは街がゴチャゴチャしている気がするので住みたいと思わない。とりあえずはそれぞれの国に行ってみて確かめてみるとするか。
神様との話で、そうこう考えていると、奥の方から何か近づいてきたことに気付く。鶏のような外見をしているが。おっ?そのモンスターのキャラの上に表示がされている。
「コカトリスか…。確か序盤に出てくるモンスターのはずだな。」
(初モンスターのようですね、私はしばらく傍観者になりますが、緊急の場合は呼んで下さいね。)
「このモンスターをなんとかしてはくれませんか?」
(無理です。自分でどうにかして下さい。そのくらいのモンスターなら攻撃を食らっても軽症で済むでしょうし。そのくらいどうにか出来ないとこの世界ではやっていけませんよ?)
「もう神様には当てにしません…。」
(そんな!?とっ、とりあえず頑張ってみて下さいね。私も応援してますから。ファイトォ〜♪)
そしてそれを最後に神様の声が聞こえなくなる。神様のことはとりあえず放っておくとして、目の前にいる一体のモンスターに集中しなければ…。
「ゲエッ、ゲエッ!!」
相手もこちらに気付き、攻撃的な声を荒げている。神様が言うには、攻撃を食らっても軽症程度で済むらしいが、それでも初めての戦闘である。怖いものは怖い。
相手から離れるように、少しずつ後ろへ下がっていく。神様が素早さの能力を与えてくれたんだ、全力で走れば逃げれるのではないか?
「あなたそんな所で何してるの?」
ここで第2の刺客か?俺は後ろを振り返り、相手を見て驚く。
何故ここに君がいる?
そいつは俺にとって見知った顔だった。
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