メガリス事変
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就任三期目を迎えたゴップ首相は、オーストラリア中部に新しく建造した循環型発電施設、メガリスの始動式に出席していた。

 

ゴップ首相は全世界を飛び回っていて、政務を怠っているのではとの批判もあるが、それはお角違いというもの。

 

一年で回りきれぬほど連邦の領土は広大で、それだけ様々な問題を抱えていた。

 

今回のメガリス訪問も、本当ならもっと前に来る予定だったのだが、度重なる問題の連続に今まで後回しにされ、結局この日までずれ込んでしまったのだ。

 

屋外での式典の為、壇上が組まれ皆眩しい太陽に照らされて汗を流しながら、式典が始まるのを集まった人々は待っていた。

 

ゴップ首相もその一人ではあったが、壇上の遮るも屋根のない中汗一つとて浮かべずに平然と式典が始まるのを待つ。

 

そしてどの位経っただろう、漸く壇上に姿を現した所長から挨拶と関係者からの祝辞が述べられている時に......それは起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーストラリア上空三万メートルの地点に、全身黒塗りの首がない西洋の甲冑を纏ったような機体が、一機佇んでいた。

 

吹き荒ぶ大気の奔流の中、微動だにしないそれは、何かを待っているような様子だった。

 

地上からは米粒より小さい点にしか見えないそれは、近くで見ればまず間違いなくISであると判った。

 

しかし何故?こんな所にISがいるのだろう、しかも所属国籍を告げるナンバーコードの応答もなく、いやそもそもこの機体はレーダーは愚か衛星にさえ映ってはいなかった。

 

何者が何を目的としてこのISを送り込んだのだろう、光学迷彩を展開して足元から風景に同化する機体は、徐々に加速をかけながら高度を落としていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめそれは何だったのだろう。

 

メガリスの上空で式典を見守っていた空軍の戦闘機が、目の前を通過した僅かな揺らぎに疑問を覚える暇もなく、猛烈なスピードで発生したショックウエーブに巻き込まれ錐揉みしながら墜ちていく時、彼ははっきりとその姿を見たと、後に語った。

 

謎の黒塗りのISは、こうして誰にも悟られないまま、メガリス上空にまんまと接近し、そして最早無用と光学迷彩を解き、両腕を突き出してメガリスに向けた。

 

そして、手のない代わりに四つの砲口から赤色のビームが飛び出し、メガリスに突き刺さった。

 

崩壊するメガリスと、無表情なセンサーアイが見つめ、今度はその砲口を式典会場へと向けそして......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『謎の武装勢力式典を強襲!?』

 

そのニュースは瞬く間に全世界を駆け巡り、地球連邦のお膝元で起きたこの事件は、各国を驚愕させた。

 

何故なら近年軍拡著しい連邦は、それだけ絶対の哨戒ラインを持ち、どのようなルートであれ瞬く間に侵入者を発見、排除するだけの実力を持っていた。

 

だが、今回のテロ事件は、侵入ルートも不明なうえ目撃情報も少なく大勢の犠牲者を出したこの事件は、後に驚愕の事実が明らかとなる。

 

謎の墜落を遂げたパイロットからの報告により、光学迷彩を展開したISが事件当初、メガリス上空にいた事が分かったからだ。

 

「IS委員会」は直ちに事態の究明を図る為に、全世界のISの稼働状況を調べるも、事件当日のISコアは全て一機たりとも国内を出た形跡がなかったのだ。

 

委員会は混乱するも、ある噂が鎌首をもたげて来る。

 

「今回のテロは篠ノ之束が起こしたのではないか。」

 

最初は誰も信じようとしなかったそれは、段々と真実味を帯びて外交官スジで囁かれる様になる。

 

ゴップ首相は「白騎士」事件以来反ISを掲げ、ISの兵器利用に強く反発し、事実上ISにテロリストの兵器というレッテルを貼った。

 

それに怒った篠ノ之束が連邦に復讐したのでは?と考えられたのだ。

 

理由としては、第一に彼女以外に誰がISを誰にも知られること無く目的地まで運び、展開して逃げる事が出来るのか?

 

第二にそもそも登録されていないISコアを製造する技術を持っているのは、開発者である篠ノ之束ただ一人だけであり、天災と称されるほどの彼女の能力を持ってすれば世界中のコンピューターをハックする事など容易い。

 

第三にこのような非合理で非常識きわまる愉快犯のような手口を世界規模で行えるのは篠ノ之束ただ一人だという結論に達する頃には、

 

世界中は彼女に恐怖した。

 

これでは公然とISを批判したり、彼女の気分を害した場合、最強の刺客が送り込まれる事と同義なのだ。

 

最早世界は篠ノ之束に、唯の一回の事件で膝を屈するかに見えた......。

 

 

 

 

 

 

 

 

PiPiPiPi

 

医療機器の心音を知らせる音がなる中で、ゴップ首相は真っ白で清潔なベッドに横になっていた。

 

あの時、余りの暑さに急遽屋根を展開した式典会場で、ゴップは屋根を貫いたビームの後に降り注いだ破片により、頭を強打していた。

 

急ぎ混乱する会場から救出されたゴップ首相は、救助ヘリに乗せられ真っ直ぐ近隣の大学病院へと収容された。

 

手術は無事成功したが、ゴップは一向に目を覚ます気配を見せなかった。

 

それから一週間、世界中が謎のISの話題で盛り上がっている中、病院を移したゴップ首相ただ一人が、時間の流れから取り残されているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

説明
第八話投稿
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タグ
連邦 機動戦士ガンダム 宇宙 地球連邦 原作崩壊 ゴップ IS 事変 

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