IS〜深緑の狙撃姫〜「俺は既に専用機を持ってます。」
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二人は何事もなかったかのように教室に戻る。

そこには戻っていた箒がいた。

 

「一夏、ロックオン。どこに行っていたのだ?」

「ああ、裏門(オーシャンが暴れていた場所)の所から悲鳴が上がってな。そこへ行っていた。なあ?」

「ええ。さて、もういい時間だから帰りましょう。」

 

ロックオンはこの話は終わりとばかりに切り上げる。

そこへ真耶が入ってくる。

 

「あ、織斑くん、まだいたんですね。よかった。」

「山田先生?俺に一体何の用事で?」

「ええっとですね、織斑くんの部屋が決まりました。ただ、急な部屋割り変更でしたので一ヶ月でお引っ越しになりますが。」

「なるほど。どこですか?」

「1025室になります。篠ノ乃さんと同じ部屋ですね。」

 

一夏は箒の方に向き直る。

 

「まぁそういう事だ。よろしく。」

「ああ///」

 

箒の顔は赤かった。

恐らくこの間に一夏に近づこうとするだろう。

だか一夏にはロックオンという守るべき彼女がいる事を箒は知らない。

勝手に運び込まれた荷物は携帯充電器、服などといった必要最低限のものだけだった。

 

翌日

 

授業開始前、千冬は一夏に切り出した。

代表戦の事らしい。

 

「織斑、代表戦の事だが当日使えるISが無くてな。そこでお前には政府から専用機が用意されることになった。」

 

その言葉に教室にざわめきが走るがロックオンと一夏は表情を変えていない。

何故なら一夏とロックオンが持っているISは現行ISの性能を大きく上回っているからだ。

 

「聞いていいですか?」

「何だ?」

「確かにコアは467個しかありません。篠ノ乃束はこれ以上作らないと公言しました。そんななかで俺に専用機が与えられるということは俺をモルモットとして見ている(・・・・・・・・・・・・)という事ですよね?それにそんな事のために開発途中のISを放棄して作った・・(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)何て事はありませんよね?」

「織斑、なぜそんなことを聞く?」

 

千冬は睨みを効かせるが一夏は表情を変えずに淡々といい放つ。

 

「もし相手が発注をしていたにも関わらず相手の許可をとらずに一方的に開発を放棄してそれを開発したのなら受け取りません。確かに俺というイレギュラーが現れたから早急にデータを取りたいのは仕方ないですよ。だけどそれを言い訳にして開発途中で放り出すなんて大人、そして社会人として信じられないし、途中で開発を放棄する企業のISなんて信用できません。その皺寄せを喰らった(・・・・・・・・)相手や相手の気持ちはどうするのですか?発注相手が学生だろうが代表候補生だろうが得意先だろうが最後まで仕事をする、もしくは相手の同意を得た上で開発をする。これは社会人なら当たり前の事だと思いますが。」

 

淡々と言い放つ一夏の言葉に千冬は何も言えず、本音は一夏の顔を真剣に見ている。

一夏はそれにと付け加えながら右腕にある青いガントレットを見せる。

 

「俺は既に専用機を持ってます。(・・・・・・・・・・・)ですからいりません。」

「・・織斑、貴様それをどこで手に入れた?」

 

一夏が既に専用機を持っているという言葉に千冬の視線がさらに鋭くなる。

家族である自分でさえ知らなかった事実。

箒も驚いていた。

空気はピシャリと凍りつき、ロックオンを除く生徒が息苦しくするなか一夏はそれを受け流しながら答える。

 

「かつてブリュンヒルデと呼ばれ、教師であるあなたでもそれは教える事はできません。ただ、とある場所で手に入れたとだけ言っておきます。ですからそのISはいりません。自分たちが受け持った仕事を最後まで責任を持って果たせない企業は信用できない・・とその企業と政府に伝えて下さい。」

「・・・。」

 

言いたいことを一通り言った一夏は席に着く。

その一夏を唖然とした様子で見る千冬。

 

「それを聞いて安心しましたわ。あなたがどのようにして専用機を手に入れたのかは知りませんが私が専用機であなたが訓練機などフェアではありませんからね。」

「その驕りが足元を救われかねないぜ?」

 

かろうじて回復したセシリアの皮肉を皮肉で返す一夏。

そんな一夏たちをよそにクラスメイトが千冬に質問をする。

 

「あ、あのもしかして篠ノ乃さんって篠ノ乃博士の妹?」

「ああ、そうだ。篠ノ乃は篠ノ乃束の妹だ。」

 

クラス全体がまた騒ぎ始める。

開発者の妹がこのクラスにいたのだ。

無理はないが・・。

その箒は歯を食いしばって何かに耐えていた。

その様子を見てロックオンがパンパンと手を叩く。

 

「はいはい、みんな。篠ノ乃博士は篠ノ乃博士、箒は箒よ。何から何まで博士とは同じとは限らないし、今ここにいるのは篠ノ乃束ではなく篠ノ乃箒という唯一無二の存在よ。」

「ロックオンの言うとおりだ。人のプライベートを侵害するような真似はやめようぜ。プライベートを侵害されたら箒だって気分が悪くなるだろ。」

 

ロックオンと一夏の言葉に騒がしかった教室が静かになる。

そんな二人を見て箒は目を見開いた。

それと同時に二人が眩しく見えた。

自分も同じ事を言われたら同じ様に対応出来るか?

答えは否。

もしあのまま姉について聞かれていれば周囲に当たっていたかもしれない。

 

昼休み

 

「い、一夏、ロックオン。さっきの事だが・・。」

 

箒はさっきの礼を言うべく一夏がいるロックオンの席へと向かう。

 

「気にするな。俺も似たような物だ。」

「あ・・。」

 

箒は思い出す。

一夏の姉はかつてブリュンヒルデと呼ばれた。

箒は同じ境遇の自分の気持ちを汲んでくれたのだと思った。

だが一夏は違う。

一夏は箒以上に千冬の事を言われていた。

過度の期待、千冬の弟だから出来て当たり前。

一夏自身を見ようとせずに千冬の弟としてしか見ていなかったこと。

だから箒の苛立ちをわかったにすぎない。

 

ラビットハッチ

 

放課後、ロックオンの家から持ってきたクローゼットからラビットハッチへ向かう。

因みにロックオンとティアナは同室なので安全。

一夏はロックオンの部屋経由でここに来ていた。

ロックオンの部屋の前のドアには外出と書かれた札がかけてある。

ダブルオーの調整を行っているティアナに声をかける。

 

「よう。」

「あ、一夏くん。ダブルオーの調整は問題なし。ただワンオフが使えないのは変わらないけど。」

「じゃじゃ馬だから仕方ないさ。」

 

一夏はアストロスイッチに目を向ける。

ケースには30番、31番が入っていた。

 

「NスイッチとSスイッチか。なんか磁石みたいだな。」

「うん、これ二つで一つのスイッチらしいんだよね。一応スイッチ本体は完成(・・・・・・・・・)してるんだけどまだ未完成(・・・・・)なんだよ。力を上手く引き出すにはどうしたらいいかわからなくて困ってるの。」

 

ティアナはシュミレーションで仮想フォーゼを使ってこのスイッチ二つを使ってみたが装着した途端、フォーゼがあらゆる物を引き寄せる人間磁石になってしまうことを発見。

ただのスイッチでは使い物にならない事がわかった。

 

「あいつに渡したエレキやファイヤーとは別物って事か。」

「ステイツチェンジの力を秘めているのは間違いないんだけどね。」

どうしたらマグネットスイッチの力を引き出せるのか。

そのあとロックオンがやって来て話し合いをしたがいい案が浮かばずお開きになった。

そしてクラス代表戦の日がやって来る。

 

説明
そのあと。
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