地中海の刈り取り |
新月の夜、一隻の大型タンカー船がスエズ運河を越え地中海のキプロス島へと針路を取っていた。
夜陰を縫うようにして進む大型タンカー船の内部では、武装した兵士たちが作戦開始前の準備を終えじっと息をこらしている。
地球連邦情報部から齎された情報により、亡国機業(ファントムタスク)の欧州拠点を特定することに成功した。
これに拠りIS委員会直属の対ISテロ部隊であるティターンズに召集がかかり、亡国機業殲滅の為各国と共同して強襲制圧部隊が送り込まれる。
総指揮官としてティターンズ実戦部隊指揮官であるバスク・オム大佐自らが現場で指揮を取り、否が応でもティターンズメンバー全員の士気は上がった。
亡国機業は欧州を中心にISを用いた破壊工作や各国ISコアの奪取など様々なテロ活動を行い長らく世界各国を悩ませていた。
近年では日本で世界初のIS男性適正者発見もあり東アジアでの活動も強め、日本に駐留する地球連邦軍が非常時体制を敷きそれに過剰反応した中国が軍部に動員かける等アジアでの緊張も高まっていく。
亡国機業は一時期はその装備錬度から某国家の支援を受けているのではと疑われたが、確証は無くそのかわり世界最悪のテロリストでありISの生みの親たる篠ノ之束との関係が噂される。
そしてその噂こそがこうして地球連邦の過剰とも言える反応を引き起こしたのだと後年の評論家は言うが、真相は定かでは無い。
だが、唯一分かっているのはこの日を境に、亡国機業の名が歴史に出ることは二度と無いという事だ。
亡国機業殲滅を目的とした今次作戦は欧州各国及び地球連邦軍特殊部隊エコーズなど各国の対テロ部隊やISによる反撃も予想されドイツのIS配備特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼ通称黒ウサギ部隊など各国のIS部隊総勢十二機が集まりISを用いた初の大作戦が開始されようとしていた。
無論IS部隊の参加に当たっては各国の思惑もあるが、特に英米両国は自国の最新鋭ISコアを奪われその威信を大きく傷つけられていた。
何としても自国部隊で奪われたISコアを奪還しあわよくば他国のISコアも、と考えていることが見え見えではあったが他の国々も大なり小なり同じ様なことを考えている。
作戦に当たって地球連邦及びティターンズは一見すると纏まっているように見える各国部隊が作戦開始と共に独自の行動を起こすのではないかとも懸念を示し、
今回の作戦で指揮を任されていたバスク大佐は実質頼りになるのはティターンズとエコーズしかいないと考えていた。
作戦前のブリーフィングにおいても各国のISパイロットは驕りを隠そうともせず自分達だけで作戦を完遂できると豪語し、特にドイツなどまだ幼い子供を部隊長として送り込むなど幾らトップエースとはいえ少々先進国の軍としては常軌を逸しているようにしか見えなかった。
まあ、そういう面では地球連邦特殊部隊エコーズも負けてはいない。
地球連邦発足より連邦の汚れ役として様々な汚物処理を任され連邦ある所にエコーズありとまで言われ、各国ではマンハンター部隊と恐れられているがその分下手なIS部隊よりもよほど信頼が置ける。
最悪地球連邦から特別に渡された例のアレがあればティターンズだけで亡国機業など一捻りなのだが・・・・・・国際社会の目がこちらに注目している以上流石に時期尚早と判断し洋上で潜航中の潜水艦に待機させつつ何時でも出撃できるように準備させていた。
作戦開始と共にステルス攻撃機が亡国機業拠点への攻撃を開始し、その混乱を突く様に事前に上陸を果たしていたエコーズや各国特殊部隊が潜入を果し、第一目標であるISコアの奪還を目指す。
第二に揚陸艦から上陸をしてくるティターンズ主力の本隊支援の為海岸陣地砲台への破壊工作も行われるも第一目標の内ISコア奪還は奪われたコアのうち二つを取り逃がしISの出撃を許してしまい揚陸艦部隊へと攻撃をかけようとする。
だが、そこに各国IS部隊が割り込みIS同士による初の本格的戦闘が行われ、その間に続々と上陸を果したティターンズは亡国機業の拠点制圧へと動き出す。
亡国機業拠点内部
エコーズのダグザ・マックール少佐は部下たちと共に拠点中心部へと進んでいく。
隊長率いる部隊ははダグザ達が気付かれないよう表向き各国特殊部隊と共に拠点の制圧を開始しているはずだ。
その為誰にも気付かれないよう撤収時間までに事を済まさなければならない非常にシビアな作戦だが、ダグザとその部下達は一つの冷徹なマシーンと化して顔には焦りの色一つと無い。
作戦開始前連邦諜報部が得た極秘情報から亡国機業と篠ノ之束との接触を確証付ける有力なデータ及び亡国機業が開発を行っていた新型ISの開発データの奪取と作戦終了後の隠蔽を命令されていた。
そして拠点の防衛の為多くの戦闘員が出払っている中、拠点中心部には非戦闘員しかいなかったがしかし見つけ次第全員射殺するよう厳命されていたエコーズは命令を忠実に実行し、彼等が通った後は殆ど生存者は皆無といっていいい。
こうして、作戦が無事完了する頃にはエコーズは目的を果し隠蔽の為テロリストが悪足掻きにと拠点の自爆を図ったかのように見せかけ拠点を爆破。
辛くもそれを察知したティターンズ及び特殊部隊が慌てて拠点から脱出し証拠も何もかもが土砂の下。
連邦は篠ノ之束に関する重要な情報を得て、ティターンズはその名目どおりテロリストを殲滅、各国部隊もテロ殲滅に協力してということでお茶を濁すというのが今回のストーリーだ。
無論全てがこの通り行くとは限らないがその時はまた別のストーリーを用意している。
だが、どのような結果になろうとも彼等の役目は変わらない。
ただ、連邦の意思の元命令を忠実にこなすのみだ。
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第二十話投稿 | ||
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