ゲイム業界へようこそ!その3 |
………………
とある遺跡の中を私は突き進んでいた。何故かって、それはあるモンスターを退治する為よ。
最近になって世界にはモンスターが至る所で急増していた。あいつらのせいで街に暮らす人々は不安がっている。
私はその人々が少しでも安心する為に、ダンジョンに来てはモンスターを退治していた。今回ここに来たのも、街の人々からこのエリアに強力なモンスターがいると聞きつけ、そいつを倒すためだった。
私は周りにいるザコモンスターを倒しながら、目標の敵を探す。まだそいつは現れていないが、ダンジョン奥に進めば、いずれ遭遇するでしょう。
「?」
そんなことを考えて進んでいると、前方に人影があった。どうやら一人のようだが、電話か何かで誰かと話しているみたい。
しかしこんなモンスターがたくさんいる場所に一人で来るなんて、よっぽどの強さを持っているか、ただのバカかよね。
とりあえず声をかけてみよう。もし困っているようなら助けてあげればいいし。
「あなたそんな所で何してるの?」
話しかけてから少し向こうに一匹のモンスターがいたのに気付く。どうやらそのモンスターは前にいる男性を発見し、敵意を表していた。
それに対し、男性は話しかけた私を見て、驚いた顔をしていた。あれ?初対面のはずだよね?それとも私が何か変なことしたのかな?
そんな中で彼は驚くべきことを言った。
「…ブラックハ−ト、どうして君がここに?」
………………
「…ブラックハート、どうして君がここに?」
俺は自身の言った言葉に後悔した。どう考えても初対面だろ?しかもあの格好のことを知っているのはごく一部だ。
分からない人もいるだろうから軽く説明するが、彼女はこの世界の女神の一人であり、名前は「ノワール」と言い、変身後の姿の名前が「ブラックハート」というわけだ。ここら辺は上手く解釈してくれ。
彼女の変身後の名前を知っている者と言えば、他の女神とイストワール、マジェコンヌと他数人くらいではないか。(イストワールとマジェコンヌの説明はまた今度だ!)
まさかこんなに早く出会うとは思っていなくて、思慮が欠けていた。
「どうして私の名前を…?」
やってしまったか〜!初対面の人がその名前知っていたらおかしいもんな。凄い訝しげな顔してるよ…。彼女にどう言い訳すればいいのやら。
そこでモンスターのことを思い出す。まずこちらの問題を対処しなくては。相手のモンスターは無視されて、心なしかしょんぼりしてる。(モンスターでもしょんぼりするのか…。)
「とりあえず話は後から!逃げて!」
そう言って彼女はモンスターに向かって突進していく。話をするのは決定事項か…。
しかし、どうにもブラックハートの距離があり過ぎて、その後にこちらへ攻撃をしかけてきたモンスターのほうが先にたどり着きそうだ。彼女を待っていたら間に合わない。ここは覚悟を決めなくては…。
とりあえず武器となる包丁を取り出し構える。そして、目前に迫るモンスターにどう対処するか考える。確か神様は素早さの力を上げてくれたらしいので、その通りならその力で相手の後ろに回りこむことが出来るのではないか?
しかし初めての戦闘でそこまで上手くいくものなのか…。
「否、俺ならやれる…。俺の力なら……!」
少しクサい台詞を喋ったようだが気にしない。神は言っている、「気にしたら負けだ」と。
先ほどまでの神様がどこかで「私はそんなこと言ってませんよぅ〜」と言っているような気がしたが、そこは聞こえないフリだ。
嘴を突き出し、こちらへと迫るコカトリスに、俺は右へ大きく回りこむ。生前の走るスピードより何倍もの速度に多少驚きつつも、なんとか対応していく。物凄い速さで回りこんだので、相手は俺が後ろにいることに気付いていない。
そこへチャンスと攻撃をしかける。攻撃は成功し、相手へダメージを与える。相手の上のほうにライフバーが見え、ゲージが減少したようだが今は見ている余裕など無い。
一度離れて、相手の出方を見る。相手は激昂してこちらばかりを見ていて、後ろから迫る彼女の存在を忘れている。
俺は彼女の存在がばれないよう牽制しながら間合いを取る。そして、相手がブラックハートに気付いた頃にはもう遅い。
「これで終わりよっ!」
上段からブラックハートの強斬りにコカトリスは何も反応出来ず、そのまま斬り伏せられた。体力ゲージも0となり、その場から消えてなくなった。
そういえばモンスターを斬った時に、血とかは出ないんだな。グロくなくていいけど。
「よし!レベルアップだな!」
突如として俺は声を出して驚く。自分の意思で言ったのではない。どうやら今倒したモンスターの経験値でレベルが上がったらしい。しかもいつの間にかポーズも決めてる。ちょっと恥ずかしいぞ・・・。
そこでやっと彼女のことを思い出す。いくら何でも彼女と関係を持つのはまだ早過ぎるだろ?
「君には助けられたね。ありがとう、もう大丈夫。こっちもすぐ街に戻るから。」
笑顔で彼女に礼を言い、そして歩きだした俺。頼む、これでもう勘弁して下さい。俺はもう少しいろんな所を歩いて周りたいんだ。
「ちょっと待ちなさいよ。」
「イヤ、ホントダイジョウブナンデ」
笑顔ながらも早歩きで逃げようとする俺に、彼女はどんどん近づいてきて…ハイ、捕まりました。
「何で逃げるのよ?別に取って食おうとしているわけじゃないでしょ?」
「いやぁ〜まぁそうかもしれないが……。」
「とりあえず、あなたは何故私の名前を知っているの?あなたは何者なの?どうしてここにいたの?」
「やっぱ相手のことを聞く前に自分のことを話すべきじゃないか?」
「…それもそうね、いいわ。私はブラックハート。あなたは知ってたみたいだけど。私はこのダンジョンのあるモンスターを倒しに来てたの。」
「ちなみにこのダンジョンはなんて場所?」
「そんなことも分からないでここに来てたの?バカなの?死ぬの?」
「ホントすみません…。」
今だけあの神様が憎らしく思えてくるぜ…。もうちょっとマシな所に降ろしてくれればいいものを…。そうすれば少しはマシな出会い方をしたはずだ。
「ここは封印の遺跡で、現在はその下層部にいるわ。入り口まだ深い位置にいないからそこまで強いモンスターはいないわね。でも一人でうろつける程、余裕のある場所ではないわよ」
「説明助かります…。」
説明から彼女に言わせれば、そんな一人では危険な場所にどうしているのかと聞いているのだろうな。なんて答えれが良いのか…。
「そんなことよりあなたについて教えて。」
「俺は井上 煉という名前でただの冒険家だ、ここに来た理由も本当に偶然なんだ。」
「私の名前を知っていた理由は?」
「人伝……だな?」
「なんでそこで疑問系なのよ、そもそも知っている人なんて極一部なはずなのに…。」
「まぁ、そこまで深く考える程でもないだろう?」
「うう〜ん、いいのかな〜」
彼女はまだ少し頭に?を乗せているようだが、どうやら諦めてくれたらしい。ほんとヒヤヒヤさせてくれる…。
(というか別にばらしてもいいのか?それで俺がどうにかなるわけでもないだろうし。まぁ面倒にならないだけこっちの方がマシだったか。)
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