全ての終焉 48 |
第48話『学園祭編その13』
僕はありえない現状に頭を抱えていた。
その原因がここにいる。
喫茶店で当たり前のように溶け込んでコーヒーを飲むフェイトに声を掛ける。
「なぜ君がココに?」
「ここで話すのはちょっと気が引けるから別の場所へ行こう」
「わかった」
喫茶店を出た僕とフェイトは人気が無い場所まで移動した。
なぜかエヴァの家前だった。
どうやってここまで移動したのかなんて小さなことだ。
「何でココなの?」
「ここの方が人気が無い」
「そう」
僕は木に体を預ける。
フェイトも隣で自分の手を見ながらつぶやく。
「僕がここに居る理由だけど、わからないんだ」
「え?」
「いつの間にかここにいた、という認識しかない。ある男に消されたはずなのに、さ」
消された? いつの話なの?
「それって修学旅行の後?」
「違う。魔法世界を滅ぼそうとしてる時だよ」
「はっ!?」
魔法世界って未来で起こるあの現象?
それとも、2番目と呼ばれた時の事? どっちなの!?
僕としては後者の方がいいかもだけど、その希望は砕け散った。
「君が魔法世界に来た時の事だ。なぜ僕は過去に戻ってるのか、ね」
「なんならどうしてここに居る?」
「言ったでしょ? 僕はいつの間にか麻帆良の付近にいたと」
僕が展開した結界に反応したのがコスプレイベント時という事は。
「いつごろ?」
「さっきだよ。目が覚めたら驚いた。体が存在して、なぜかお金も持ってる状態だった。ただし仮契約したあの子達のは消えてるみたいだけどね」
「ガノードに消されたのは知ってたけど、過去に戻る現象なんて起こるものだろうか」
ありえない。
権限の鍵で消された存在は許可するまで再生も転生も憑依も何もかもできないはずだ。
腕を組んで、色々なパターンを解析していると、フェイトが僕に。
「君は、やはり僕の知ってるネギ君か?」
「そうだよ。僕は過去に転移したからね。ちなみに君を消した本人は僕が消滅させている」
「……そうか、君は強くなっているんだね」
うんうんと勝手に納得して頷くフェイト。
ちょっと気になる事があった僕はフェイトという存在を世界に捜索する。
すると、どっかの地域でフェイトを感知した。
つまり、この世界でフェイトが2人居る状態になった。
「……この世界に君が2人居ることになるが、これからどうするの?」
「僕にはもう役目が無いし、どうするか僕も分からない」
「ああ……う〜ん、それはこれから考えていけばいいよ。とにかく姿変えないと」
「そうだね。僕はイレギュラーみたいだ」
「そういう僕もだけど」
本当にその通りだった。
と、その時、何者かが魔力を覆わせながら突っ込んできた。
「ネギを狙う人は許しません!」
ビシっとフェイトを指差すリイスがいました。
「はい?」
「えっ?」
「ふえ?」
同時に固まった。
何をしてるんだ? リイスは。
「リイス、空気読んでよ」
「え、ええ? あ、そういうことですか」
状況を理解したリイスは赤くなりながら頭を下げた。
「すみませんでした」
「別にいいよ。リイス……フェイトの姿を」
「存在してると危険ですので、姿を変えるしかないですよ?」
「しなかったらどうなるの?」
「莫大な強制力が来て、世界があっという間にガラガラドカーンってなります」
幼稚な表現で言ってくれたリイスの言葉を何となく解釈して理解した。
面倒だなぁ。
リイスがじーっとフェイトを見ていた。
「ネギ、この人の生命力少ないですよ?」
「え?」
フェイトの中から感じた魔力いや、生命力が人で言うと数年しか残っていない。
魔法を使えば数ヶ月程度だろう。全力で使うと消えてしまう可能性があるが。
「今の僕には冥府の石柱10回分の魔力しか持たないから使うと消えるかもしれない」
「それほどピンチ、か。わかった。学園祭が終わるまで自由にしていいよ。フェイト」
「わかった」
「あ、これ持っていって」
僕はフェイトにマジックアイテムを10個ぐらい渡す。
首を傾げるフェイトに話す。
「それは身分を誤魔化したりするアイテムも含んでるから」
「そうなんだ。じゃあ貰っていくよ」
受け取ったフェイトは背を向けて人通りの道へ歩んだ。
これでフェイトの事は一時的完了かな?
ああ、イレギュラーの出来事ばっかじゃんかよ〜!
「いいんですか?」
「何が?」
「未来のマジックアイテムを渡して。それに姿を変えなくて」
「未来じゃなくて異世界のだから、それに心配ないと思う。フェイトは学園祭に干渉してないから」
そう、前と同じならばフェイトがココに来るという事は無い。
ちなみに、僕が渡したのは身分偽造書、魔力復活の薬などこの世界では非常識の品物を渡したのだ。
あのフェイトとはもう友達だし、いいよね?
「はぁ、そんなアイテムを持ってるなら姿を変える必要は……これからどうするんですか?」
「これから? そうだな〜。時間も時間だし、明日菜さん達の所へ行ってから武道会へGOかな?」
「わかりました」
そういえば、アーニャを明日菜さん達の所に転移させてるから……
「あああああああああああ!?」
「どうしたんですか?」
「アーニャの奴、まさか明日菜さん達に愛衣さんと仮契約したって言ってないよね?」
「無駄だと思いますよ?」
「……はぁ」
本当の事だから仕方ないが、うるさくなりそうだ。
とりあえずは多重アーティファクトを作れる条件には達したので、それでいいか。
そう考えた僕は明日菜さん達を探しに向かった。
〜麻帆良学園・街〜
明日菜さん達を探しに街中をウロウロしていると、誰かとぶつかった。
その時、僕の持つ魔法障壁が割れた音をした。
「キャッ!?」
「いたっ!」
何とか倒れずにすんだが、ぶつかった本人は尻餅を付く。
誰かと思いきや
「どこ見て歩いてるのよってネギ!」
「明日菜さん」
制服姿の明日菜さんがいました。
なるほど、通りでぶつかった瞬間、一般の障壁が消えたわけだ。
立ち上がった明日菜さんは僕の肩を掴み
「ネギ、ちょっと来て!」
「え?」
「ネ、ネギ? 明日菜さん?」
必死の表情で、そのまま何も言わず僕をどこかへ引っ張っていった。
本当に何がなんだかさっぱりだ。
〜龍宮神社〜
どこへ向かうのかと思えば龍宮神社に到着した。
ようやく明日菜さんが手を離して
「ごめんね。木乃香、連れてきたわよ」
すると、神社の入り口から木乃香さん達が来た。
ああ、何か前より複雑だなぁ。
「ネギ君、武道会に参加せえへん?」
「私も参加するからネギも参加しろ」
エヴァが腕を組んで言ってきた。
「そうだなぁ。リイスのために参加してみるか」
「え!?」
「ちょっと待って!」
突然、明日菜さんが僕の両肩を掴む。
木乃香さん達の視線も僕に行ってるわけで。
「何ですか?」
「何でリイスちゃんのためなのよ!?」
「リイスに何か買ってあげようと思いまして。僕がやるまで外に出たことあまりなかったんですよ?」
「「あ……」」
2人はリイスの事を知っていたため、申し訳なさそうな表情になる。
でも、エヴァはリイスの前に立ち
「それとこれとは別だ。私だって……ネギから……」
途中から小声で聞こえにくかったが、リイスは目を見開いたが笑みを浮かべた。
「……木乃香さん」
「何?」
「賞金ってどれぐらいなんですか?」
「ちょっと待ってな? え〜と1000万やって」
「ならエヴァさん達にも何か買ってあげたらどうですか? ネギ」
「「「え?」」」
3人が驚いた声を上げる。
「リイスはそれでいいの?」
「あ、あの……私の欲しい物はそんなに高くありませんので。あ、別の意味では高価格かもです」
「リイス、リイスがそういうなら別にいいですけど」
「あの〜」
背後から声が聞こえたと思ったら、制服姿の刹那さんな訳です。
なぜか表情が優れていません。
「いつから」
「最初からですが、皆さんが私を避けてるって思うと」
「別に避けてませんよ」
「ほ、本当ですか!?」
だから何でほとんどの人は僕の手を両手で包み込むように握るわけ?
暖かいから、まあいいんだけどさ。
「それよりエントリーしに行きましょうか」
「じゃあ私も参加してみますか」
「明日菜さんも?」
「刹那さんも出ようよ」
「……わかりました。私も実力は上がったと思いますから」
刹那さんがいい笑顔で微笑む。
その時、周りが騒がしくなった。
何事かと騒がしい方向へ見ると、超さんが1段高い所に立っていた。
「凄い人数ネ。今から1時間後に開催予定の麻帆良武道会の変更点があるネ」
「変更点?」
「なんだそりゃ」
「まず賞金を従来より高くして2000万にしたネ」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「2000万って事はアレもコレも」
聞いてみると欲望だらけで笑ってしまう。
僕の知ってる展開だと数十人の雑魚が突っ込んでくる。
「この武道会には色々な使い手がいるネ。裏家業をやってたり空手をやってたり、不思議な現象を起こす手品師達が揃って戦うネ。昔、ある異国の少年がこの大会に参加して優勝したアル。その少年は10歳にも満たさなかったが。激しい戦いを繰り広げながらも優勝したネ。その少年の名前がナギ=スプリングフィールド。この名前に心当たりがある人は参加してみるよろし。ではでは」
超さんはそれだけ言い、奥の方に戻っていった。
武道会でアル、いやクウネルと会うんだな。
え、何で呼び捨てかって? 気にするな。
「ネギ、あの名前もしかして」
「そうだ。ネギの父親だ。ナギの奴、そういう所でも参加してたのか」
「エヴァちゃん、今でも遅くないからずっと追ってたナギさんに変更路線は?」
「無いに決まっているだろう。何を言ってるんだ?」
「そういえば、夕映さんとのどかさんも来てたんですね」
いつの間にか背後でなぜか落ち込んだ状態だった。
「刹那さんみたいな扱いされたのは屈辱です」
「ええ!? 夕映さんは私みたいな扱いが嫌なんですか?」
「当然です。ネギ先生に忘れられるなんて絶えられないです」
「そうです!」
夕映さんとのどかさんのテンションが何気に違うな。
だんだんと性格が改変されていってる気がする。
あ、でもハルナさんがいないのはなぜ?
「ハルナさんは?」
「ハルナは置いてきたです。どうせどこからでも現れると」
「うわぁ。シャレにならへんなぁ。ネギ君に大人のキスするし」
「木乃香だってしてたじゃない」
「それはそうなんやけどな〜。そう言われると照れるわぁ」
この話題に入った瞬間、その状況を思い出して赤くなる僕が居ました。
そうだよね。したのって数人はいるから……僕って周りから見たら最悪な人でなし?
どう思われようが知ったことじゃないし、興味も無い。
「エントリーしに行きましょうか」
「了解」
結局、参加するのは明日菜さんとエヴァと刹那さんなんだけど。
エントリーが終わり、人が集まっていない所でしゃべっていると、
「ニンニン。ネギ坊主も参加するでござるか?」
「ネギ先生も参加するんだな」
え〜と、ほぼ接触したこと無い龍宮さんと楓さんだった。
干渉した記憶が無いんだけど気のせいかな?
「参加しますよ」
「ネギ先生の噂は聞いてるよ?」
「どんな噂なん?」
「木乃香の婚約者とか子供教師最強とか色々だ」
「後半はいいとしても、前半はネタだ。本気にするな」
「エヴァちゃん、まだネタや言うてるん?」
あの爺さんも本気で言ってるから怖いんだよ。
冗談じゃなきゃ年齢詐称薬とか渡してこない。
「ネギ先生も大変だな」
「別の意味で、そういえば古菲さんは?」
「ん? 古菲なら時間まで体を動かしてくるとか言って森の方へ行ったぞ」
「クーちゃんも相変わらずね」
「ネギ先生、私もこれで」
「はい」
冷静に返事をすると、フッと笑みを浮かべながら奥の方へ向かった。
まあ、ここは隊長の神社だから自由なわけで。
「アーニャフレイムキーック!」
僕の上から炎の塊が降って来た。
どうみてもアーニャなんだが、その、ね。
「炎!? 星光破壊で!」
「いや、ここは闇の吹雪で撃退するべきだ」
「一応、人前なんですが?」
後、僕の方へ降ってきた炎はというと
「だりゃあああああああ!」
明日菜さんが僕の上にジャンプしてカードからハリセンに変化。
ハリセンを思いっきり右から左へ降ると、炎が消滅してアーニャが飛んでいった。
空まで飛ばされたアーニャは星となって消えた。
「アーニャ、永遠に忘れない」
「勝手に殺すなぁ!」
明日菜さんに遠くに飛ばされたアーニャが瞬動で帰ってきやがった。
修行の成果は抜群のようだ。
「アーニャちゃん、ネギに攻撃するのは駄目!」
「だってネギが……」
「それでもよ!」
「わかったわよ。で? ココで何してるの?」
「今から武道会予選が始まるらしい」
今からといってもまだ30分はあるが。
アーニャは参加する気なさそうだよね。
「アーニャちゃんは参加しないの?」
「ネギも出るんでしょ? 無駄じゃない」
「アーニャ、ちょっと」
「え?」
僕はアーニャを引っ張って明日菜さん達には聞こえない距離を置く。
「アーニャ、言ってないよね?」
「佐倉愛衣って子と仮契約したこと?」
「うん」
「言ってないわよっと思い出した! ネギ、どんな場所に転移させんのよ」
「え? ちゃんと明日菜さんの場所に」
ちゃんと計算したはずだ。
明日菜さんがいたという気配の場所にってあれ?
「何で人ごみが多い街中なのよ! おかげで神社まで走らなきゃいけなかったじゃないの」
「ああ、気配があった場所に飛ばしたから遠くなったのか」
「ったく」
腕を組んで拗ねるアーニャ。
こうなったら絶対許してくれないからなぁ。
はぁ、リイスと同じようにするしかないか。
「アーニャ」
「何よ」
「あのさ、ゴニョゴニョゴニョ……」
「……ん〜、それ本当?」
上目遣いで僕を見つめる。
一瞬ドキって来たじゃないか。
そんな心を隠しながらアーニャに笑顔で頷くと。
「そ、それでいいわ。絶対よ」
「ハイハイ」
言いたい事が終わったアーニャは明日菜さんの方へ戻った。
麻帆良学園にフェイトが存在する。
この事で僕の知ってる展開からどう変わってくるのかな?
もしかしたら、ありえないがデュナミスが攻めてきて「我が同胞になれ」や「アスナ姫を我が手に」とか言う展開だったら溜まったものじゃないが、どうだろうか?
「う〜ん」
「ネギ」
「うわあ!?」
有りえそうな展開を考えていたら。横から声が聞こえた。
いきなりだったから驚いたよ。
声の主がリイスだった。
「何?」
「ネギ、そろそろ予選が始まるらしいから準備を、だそうです」
「なら、いきましょうか」
そう意気込むと、リイスは嬉しそうに微笑む。
僕の様子をじーっと見ていた明日菜さんが手を振りながら大声で言う。
「ネギ、リイスちゃん早く〜」
「うん」
「わかりました」
明日菜さん達と一緒に武道会の予選会場まで移動した。
夕映さんやのどかさん、アーニャもなぜか付いて来てたけどいいのか?
その頃、フェイトはと言うと。
キッチンフードで休みながらネギから渡されたアイテムを操作していた。
このアイテムは名前、姿、年齢、住む場所まで改竄して住む事が出来る高等技術のアイテム。
別視点から見ると、明らかに犯罪レベルのアイテムなのだ。
「う〜ん。名前、名前……思い浮かばないなぁ。年はネギ君と同じでいいか。住む場所はマンションでもいいか。……名前だけは思いつかない。どうするか……」
最初の段階で苦戦していたという。
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