全ての終焉 53
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第53話『学園祭編その18 武道会D』

 

今、試合場でタカミチと向かい合っている。

こうしてみると僕にとっては不思議な気分だ。

まさかもう一度、タカミチと戦う事になるのだから。

けど、僕の過去ほどではない。

 

「ネギ君の力、見せてもらうよ」

「いいよ。存分に味わってもらおうじゃないか」

 

『では、第6試合、子供先生ことネギスプリングフィールド対恐怖のデスメガネこと高畑・T・タカミチの試合をはじめます! では、始め!』

 

コングが鳴った。

 

「ネギ君、いくよ」

「はぁ……」

 

僕はタカミチの周辺に小さな光の塊を無数に作り出す。

当然びっくりするだろうが、そんな事は気にせず魔法の射手10を放った。

ポケットに両手をしまい込み、居合い拳で魔法の射手をあっという間に潰したが、そのときには既に瞬間移動でタカミチの背後にいた。

 

「タカミチ」

「なっ!?」

 

タカミチは慌てたように距離を取った。

本来なら声をかけるのではなく、魔力を込めたパンチで攻撃すれば終了だったけど、すぐに勝負が付いても面白くないし止めた。

 

「どうやら僕も本気で行かないと駄目のようだ」

「咸卦法使わないと足元にも及ばないかな?」

 

なら僕も使ってみようかな? 結界を貼らなきゃ。

 

タカミチは左に気を、右に魔力を練り込み、融合させるとタカミチの体からオーラが漏れていた。

ってか、前より高くなってません?

思いっきりスパークが走ってますが!

 

「僕の方は準備完了だ」

「面倒だなぁ。 宇宙抱擁結界」

 

僕は両手を天高く掲げて、今からする力で壊れないように宇宙規模の結界を貼る。

金色のオーラが町全体を覆い尽くしていくが、そこから速度が上昇していき、月、火星、土星、と金色のオーラが包まれた。

 

「な、何だいそれは?」

「混沌の魔法(カオス)」

 

黒いオーラが僕を包み込む。

周りにも向かっていくが、結界が押さえ込んで落ち着いた。

 

「目の色が」

「気にしないで。これはこの魔法の特徴だから」

 

自分では見た事あるが、目の色は青色になっている。

さっきよりも早くこちらに向かって攻撃してくるが、黒いオーラが弾き飛ばした。

タカミチは場外どころか会場から神社の建物までぶっ飛んだ。

 

「おいおい、まだ何もして無いのにもう終わりなの?」

 

会場も沈黙していた。

そりゃそうだ。いきなり相手が後ろへ飛んでいったのだから。

 

『え、え〜と高畑先生の場外、10カウント……するまでもありませんね。

第6試合勝者、ネギスプリングフィールドです!』

 

誰の声援も無いってどういう事なの。

試合が終わったから、黒いオーラを閉じ、結界を解除した。

 

「何か釈然としないなぁ」

 

そのまま選手席のベンチまで歩く。

到着すると怪訝そうな表情をした明日菜さん達がいました。

 

「おかえり……ネギ」

「今のは何だ?」

「闇の魔法の反作用で生まれた混沌の魔法、そして結界を貼ってないとヤバイ力」

「どんぐらい危ないの?」

 

顔に青筋を立てながら聞いてくる明日菜さん。

 

「ちょっとだけの力でも一つの島が消滅するぐらい」

「何だそれは!? だいたい反作用ってのは何だ!!」

「エヴァちゃんうるさいわよ!」

「コホン、闇の魔法に副作用はあるが、反作用は無いぞ」

 

そう、エヴァの知ってる闇の魔法では存在しない。

僕の闇の魔法はエヴァの知ってる術式を改変させている。

世界の壁すらぶち壊し、他の力を取り込んだ影響で魔力、気と他の力が反発する。

反発しあっている内に別の力、術式が生まれた。それが混沌の魔法。

一部を隠して教えて差し上げると、エヴァは腕を組み、考え始めた。

 

「そんな事で反作用が起きるのか? いやだが、闇の魔法を暴走させて……」

 

暴走とか変な事を言い出すなぁ。

 

「難しく考えても仕方が無いと思いますが」

「そうよね。刹那さん」

「はい」

 

二人ともいい加減すぎる。

それはともかく、次の試合はメイドの格好での明日菜さんと刹那さんか。

ここ、変わってたら僕は泣きます。

 

「そういえば次はあなたたちの試合ではなくて?」

「そうだった。刹那さん」

「はい」

 

2人は僕に手を振り、朝倉さんに耳打ちされてから建物の奥へ入った。

着替えのため、だな。

精神的に疲れただけの僕はベンチに座る。

その右隣に愛衣さんが座ってきた。

 

「ネギ先生、凄いです」

「タカミチに勝った事?」

「はい!」

 

子供のように目を輝かせる愛衣さん。

尊敬の眼差しで見られても困る。

 

「混沌の魔法を使っただけだから凄いもクソも無い気がする」

「混沌の魔法?」

 

かわいらしく首を傾げる。

左を見ると座っているエヴァは聞き耳を立てていた。

興味無さそうにそっぽ向いてるが、バレバレです。

 

「混沌の魔法は闇の魔法みたいに魔力を取り込みわけでは無いです。

さきほどの試合では自分の魔力を利用してましたが、本来は戦う意志以外の全てを取り込んでから相手を叩きのめすだけの力です」

「戦う意志以外の全て?」

 

わかんないって表情をしてる。

 

「戦うという意志以外って事は魔力、生命力、何もかもを吸収して戦いの糧とする。余計な感情、無駄な力を戦うだけの力に変換する。戦うだけの意志を持つ究極の戦士だよ」

「そ、そうなんですか」

「そんなことをしてどうなるんだ?」

 

エヴァが話しに割り込んできた。

僕は苦笑した。

 

「生命力まで賭けなきゃいけないから結構、欠陥能力ですね。権限の鍵と同調すれば関係ないですが」

 

僕の場合、生命力を払っても意味が無いのは理由があるから。

理由の一つとして権限の鍵がソレだ。

もう一つあるけど、これは今の所教える必要も無い。

 

「なるほど、あの鍵がそういう役割を持つとはな」

「僕も滅多な事では使いませんから関係ないですよ。この話はもういいですね? 明日菜さん達に聞こえると困ります」

「フ、そうだな」

 

『次の第7試合を開始したいと思います。神楽坂明日菜対桜咲刹那。では出てきてください!』

 

合図と共に出てきたのは、メイド服の明日菜さんと刹那さんが試合場に来た。

 

「って何よこの服は!?」

『責任者によれば客にサービスだ、との事です』

「超のやつ……」

「まったく」

 

……二人の顔が赤い。

観客の盛り上がりが一段と高くなり、今までよりうるさい声援が聞こえた。

メイド萌え〜とかヤバイ発言が目立つ。主に男共。

 

『では試合を始めましょう!』

「このままでやるの!?」

『当然です。お互いがんばってください!』

 

何かに絶望した明日菜さんは頭を俯かせた。

刹那さんも観客というか木乃香さんの方をチラチラと見ていた。

数秒後、お互い試合するため、向かい合う。

 

『では第7試合、始め!』

 

 

試合が始まった。

 

先攻は明日菜さんからだった。

明日菜さんがハリセンを思いっきり360度横切ると、全体に衝撃波が発生する。

って衝撃波!?

今の明日菜さんの力を考えると結界なんぞ役にも立つまい。

僕は指を鳴らし、空間歪曲結界を周囲に展開した。

衝撃波がこちら側にも来るが、空間歪曲の影響で別の場所へ押し流された。

審判の朝倉さんにも貼ってるから被害はない。

 

「どっちが勝つんでしょうか」

 

背後から白いフードを被ったクウネルが現れた。

気配を感じた隣のエヴァも背後を見ると驚愕の表情だった。

無理も無い。

 

「な、何でお前がここにいる!?」

「おや、エヴァンジェリンじゃないですか。隣に居るのはネギスプリングフィールド、彼の息子ですか」

 

興味深そうに僕を見つめてくる。

その間にも戦いは続いてるが、エヴァはそんな事お構い無しでクウネルに話しかける。

 

「何しに来た」

「いえいえ、私も選手じゃないですか。ここにいる理由はソレで十分でしょ? こうして再会したのですから感動の一つでも」

「あってたまるか! 本当の目的は?」

「神楽坂明日菜さんの力についてですが」

 

会話の内容が凄く変わってるし、ここでは僕の父親に関する賭けや明日菜さんへの手助けがあったはず。

そのイベントも起こらなくなったみたいだ。

別に影響ないから大丈夫かもしれないが。

明日菜さんと刹那さんの方を見ると、人では見えないほどの速度で激突していた。

あちこち移動しながら箒とハリセンがぶつかり合う、の繰り返し。

 

「ほう。かなりの成長ですね。咸卦法も使えてますし」

「当然だ。私が鍛えてるからな」

「めずらしいですね。あなたが弟子を持つなど」

 

目をキランと輝かせてエヴァを見るクウネル

 

「明日菜だけじゃないが、な。ただもう一人は明日菜より強い」

「ほうもう一人居たのですか、それはどなたですか?」

「詠春の娘だ」

「なるほど。まあ、あなたなら大丈夫だと判断したのでしょう。確かに彼女はナギを超える魔力を持ちますし、鍛えやすいでしょう」

 

基本は僕が教えたんだけど。

 

「運動神経も並みの魔法使いでは勝てない状態だったからな」

 

と言いつつも、眉を細めて僕を睨む。

運動神経というか基本の中に体力作りとして腹筋やらなんちゃらをやらせていたし。

エヴァの別荘みたいに時間を長くさせたから短期間で強くなった。

 

「おや? 彼女の方が押してますね」

「刹那は油断しすぎている。それに、あいつはネギが鍛えた事を忘れているようだな」

「ネギ君が、ですか?」

 

珍しい生き物を見るような目で僕を見てきた。

エヴァもエヴァで僕をどうしたいんだよ。

仕方が無い。

 

「明日菜さんにバレた影響で強くさせただけです。明日菜さんには不思議な能力がありましたから」

「完全魔法無効化能力。お前も知ってるだろ? アル」

「クス、私の事はクウネル・サンダースとお呼びください」

 

エッヘンと胸を張られて言われても反応に困る。

頭が痛くなってきた。

エヴァも同じようで頭を抱えた。

 

「おっ! 彼女が勝ちそうですね」

 

前を見ると明日菜さんがハリセンに魔力を、正確には魔法の射手光の矢20を覆わせていた。

刹那さんは僕が見てなかった内に折られたのか、箒ではなく素手を前に出す。

早く特攻できるように構えた。

お互い動かずに止まっていた。ここでシーンと会場も空気を呼んだかのように静かになる。

 

「凄いですね」

 

静かに沈黙していた愛衣さんが呟く。

その後ろには高音さんが腕を組み、顎に手を当てる。

 

「おそらく、この一手で決着ですね」

「お姉さまはどっちが勝つと思いますか?」

「決まってるでしょ? 先に動いた人の勝ちでしょう」

「じゃあ、ネギ君はどっちが勝つと思いますか?」

 

まるで愛衣さんの真似ごとく同じ声色で聞いてくるクウネル

笑みを浮かべながらだからさらにむかつくが。

 

「も、もちろん明日菜さんですよ」

「では、エヴァンジェリンは?」

「私も明日菜だな」

 

「では賭けをしましょう」

「賭け、だと?」

「そうです。もしあなたが負けたら次の試合でスクール水着+猫耳を付けて戦ってもらいましょうか」

 

どこから取り出したのか、エヴァのサイズに猫耳をエヴァに見せる。

エヴァはクウネルの条件に顔を青ざめている。

おそらく、自分が負けた時の状態を想像したのだろう。

 

「な、何で私がそんな事をしなければいけない!」

「そう来ると思っていました。あなたが勝てば、彼の情報を教えましょう」

「彼って父さんの事ですか?」

「そうです。妥当な取引だと思いますが?」

「思わん。第一そんな情報、今になってはどうでもいい」

 

エヴァの意外な反応に驚いたクウネルは横目で僕を見て、人差し指を立ててこう申した。

本人の表情はニヤニヤとして、悪戯してやろうという笑みだ。

 

「なるほど、つまりナギからネギ君に乗り換えたんですか」

「……とにかく、そんな取引応じる気は無い。というかいつまで立ち止まっている」

「残念です。合図を作ればいいんじゃないですか?」

 

クウネルは残念そうに猫耳とスクール水着をどっかに保存した。

僕も見たかった気もするけど、しょーがないか。

動かない試合を見て飽きてきた僕は空に魔法の射手を放った。

放たれた魔法の射手は人の届かない場所で爆発した。

すると、明日菜さんと刹那さんが一斉に特攻した。

2人がすれ違い、立ち止まる。刹那さんが明日菜さんの方を見て、疲れた声色で

 

「凄いですね。明日菜さん……油断していました。降参です」

 

遺言のように呟き、その場で倒れた。

明日菜さんのハリセンに魔法の射手20は消えていた。

光の矢って確か貫通だったよね? 

妥当な判断だけど刹那さんじゃなかったら胴体切れてるよ。

審判というか何の解説もなしにただ見ていた朝倉さんは明日菜さん手を天に差し出した。

 

『桜咲刹那選手、負けを認めたため、この試合は神楽坂明日菜選手の勝ち!』

「せ、刹那さん!?」

 

朝倉さんの掴んでる手を解いて、刹那さんを持ち上げてから、そのまま担いで建物の方へ運んだ。

別にケガをしてるようには見えないけど、骨は折れてるのかな?

 

「はぁ、この段階で強くさせすぎたかなぁ……」

 

心配になった僕はその場にいるエヴァ達に治療してくると伝え、明日菜さんの所へ向かった。

 

 

 

第54話『学園祭編その19 武道会D』へ next

 

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明日菜が勝った事で、ネギVS明日菜になりました。

次の話はあまり見せ所がないため、展開が速いです。

説明
第53話
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逆行 最強 ネギま オリジナル魔法 

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