全ての終焉 54 |
第54話『学園祭編その19 武道会E 世界樹の改変と武道会の試合』
龍宮神社には医務室が存在するというか大会用に一時設けた部屋がある。
その場所に刹那さんと明日菜さんがいる。
2人はソファーに二人並んで座っていた。
「明日菜さん、刹那さん大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
「検査では異常ないって。私も骨が折れたかと思ったわ」
それに苦笑する刹那さん
今の明日菜さんは魔法が使えるように僕が強化したせいでもあるが、まさか勝つとは。
「ところでネギ先生はどうしてここに?」
「ちょっと心配でここに来ました」
「そ、そうですか」
「ふ〜ん」
明日菜さんがジト目で見てきた。
心配してるのは刹那さんなんだ、という嫉妬的な視線を感じた。
そんな事よりも別の事に書き換えないと。
「それよりも次の相手が明日菜さんになるんですね」
「そうね。ネギ、お互い本気で――」
「それはだめですよ」
「何でよ!」
怒鳴ってくる。理由わかってるだろうに。
「僕が本気出せば学園が消し飛ぶけどいいですか?」
「あ、そうだったわ」
忘れていたらしい。
エヴァと修行してれば忘れもするか。
僕が明日菜さんに何か言おうとした時、木乃香さんがいきなり部屋に入ってきて
「せっちゃ〜ん! 大丈夫なん!?」
「こ、このちゃん!?」
抱きついてきた木乃香さんを受け止めた。
本当に百合百合しい光景です、というかすごく似合うのは気のせい?
背景がピンク色に薔薇を飾れば完璧。
「次ってネギ君と明日菜やろ? ネギ君が優勝してくれるといいんやけど?」
「ネギに勝てないのは明白だししょーがないけど、だからってあきらめたくないわ」
「明日菜も負けず嫌いや」
「ネギ、武道会潰さない程度の本気でやってね」
「それでいいならそうします。僕も明日菜さんの実力が見たいです」
明日菜さんは嬉しそうに頷く。
刹那さんの様子を見ると、木乃香さんと百合百合しい雰囲気だからこの場から出るか。
それよりいい加減気づこうよ。
「明日菜さんの次の相手ってエヴァンジェリンさんですが」
「え?」
「そうやで、明日菜」
「明日菜さん、忘れてたんですか?」
「そうか、今、第1回戦だっけ? アハハハって皆もノリノリだったじゃない!」
「ノリに乗っただけや」
見事に乗せられた、と落ち込む明日菜さんの姿が哀れに見えた。
落ち込む明日菜さんの肩を優しくポンと置き、
「明日菜さん、ファイトです」
「刹那さん……も結構ひどいよ。それより木乃香も」
「あははは、だって明日菜も気づいてて言ってるもんやと思うてたもん」
「それならエヴァちゃんにも勝って、現実にする!」
立ち上がりテンションMAXで唸り挙げていた。
どうでもいいけど勝算は考えてるの、という疑問を聞くのはナンセンスだろう。
立ち直った明日菜さんを見てから、僕はもういいだろうと思い、この場から去った。
〜世界樹〜
僕の試合まで時間があるから武道会から離れ、世界樹前に空間転移していた。
世界樹にもたれ掛かると妙な鼓動、言葉が聞こえた。
ー…ネギ、ス……
「ん? この世界樹から聞こえた? 違う、確かこの下ってアレだったか?」
僕の知ってる歴史ならこの下にはアレが眠ってるはず。
鼓動なんか聞こえないはずなんだけど、何だこのヌルヌルしたような感覚は。
僕は権限の鍵を通して世界樹とリンクし覗いてみると一番下に眠ってるはずのアレが別の何かに変わっていた。
「!? 人が入った氷というか冬眠状態のアレじゃない? 何で繭なんだ?」
僕が目にしたのは、3メートルぐらいの繭だった。
鼓動はあの繭からだと理解した。
「お前は何者だ!」
ー…ネギ、オレ……
声色的には男なんだろうけど、繭の影響でよく把握できない。
いやアレは、まあいい。
繭は中から膨れ上がるように、いや心臓のように動いていた。
ー…目覚め、の、時、ネギ……者……へ
聞こえる言葉に途切れでしか聞こえない。
訳が分からないけど、僕の中の権限の鍵が輝いてる。
その時、一瞬だけちゃんとした言葉が聞こえた。
ー…もう間もなくだ。ようやく叶う……
僕は疑問に思い、問いただそうと権限の鍵で聞きだそうとした瞬間、強制的に世界樹のリンクを解除された。
その場で座り込み、先ほどの繭を思い浮かべる。
「僕の知ってる世界から離れていく? 世界樹の一番下に眠ってるモノが変わってる……じゃあ魔法世界の時、どんな影響が起きるんだ?」
僕の知ってる世界、経験した世界でもしガノードがこの世界に来なかったらどうなるか。
権限の鍵で見たから知ってるだけ。僕の世界ではそんなもん関係なかったからな。
魔法世界でいきなり現れたガノードにフェイト達が消滅してたから復活やら行えるはずが無かった。
さらに地球を含む宙域を滅ぼそうとしてたってのが僕の経験した世界。
同じ経由の並行世界経験したって言っても1つの世界に数時間〜数十日程度だから意味ない。
そこまで考えてまとめようと思ったら、ポケットの中が震えていた。
「ん? ああ携帯電話か」
ポケットの中から携帯電話を取り、出てみる。
「ネギ先生」
「……誰?」
「のどか、です」
のどかさんがそんな声色な訳ない。
最後にです付ける子は夕映さん以外の何者でもない、です。
「どうみても夕映さんです。何のようですか?」
「試合見ないのですか? 選手席にいないようですが」
「もう始まってるんですか?」
「いえ始まる寸前です」
「わかりました。夕映さんって優しいですね」
「え、ええ!? いえ私は別にその、しかし」
テンパってますね、夕映さん。
のどかさんでもそこまでテンパる事ないと思う。
受話器の向こうではハルナさんとのどかさんが何か言ってる。
「あの〜」
「あ、はい! 何ですか?」
「もう切っても良いですか? 移動するんで」
「あ、そうですね。ではまた」
「はい」
携帯電話をそのままポケットの中に直す。
う〜ん、のどかさんやハルナさんの性格がちょっと違う気がする。
気にしてもしょーがないか、じゃあ選手席まで行きますか」
「極移」
呟いた時には既に僕の座ってる場所まで転移完了していた。
周りの人は騒いでるからこちらに気づく事はないっぽい。
「どこへ行ってたんだ?」
「どこでもいいじゃないですか」
「まあいい」
そう言ってエヴァは僕の腕に絡ませようとするが、もう片方の腕に愛衣さんが占領する。
何これ?
急に背中が寒くなった。
「ネギ、両手に花ねえ」
冷たい声色にゾクっとした僕は逃げ出したくなるが二人のせいで逃げられない。
ここで極移しても良かったのだが、暖かいし別にいいや。
「愛衣ちゃんはいいとしてエヴァちゃんは遠慮しなさいよ」
「何で私は駄目なんだ?」
「なんとなくというかネギの血吸う気でしょ」
「どっちかというとネギにキスだがな」
「そっちのほうがもっと駄目でしょうが!」
喧嘩に、ならない。一方的に明日菜さんがエヴァにって感じ。
エヴァは思いっきり流してるから成立しないんだよ。
ってあれ?
「そういえば次の試合ってエヴァンジェリンさんじゃあ」
「そうだったな」
そういって立ち上がり、向こうへ行ってしまった。
明日菜さんはジーっとエヴァの背中を見つめていたから気になった。
「どうかしたんですか?明日菜さん」
「え? この試合で負けてくれると嬉しいかなぁって」
「ありえませんね」
「や、やっぱり?」
表情を引き攣った状態になり、なぜか俯いた。
「そこまで戦いたくないんですか?」
「エヴァちゃんって強いでしょ?」
「明日菜さんに魔法は効きませんが」
「それはそうなんだろうけど、まだ使いこなせてなくてたまに凍っちゃうし」
ああ、そういえばそうだった。
あれって自分で完全制御しないと魔法無効化は引き出せないってあの人が言ってたな。
「魔法無効化、天敵ですわね」
「え?」
後ろから声が聞こえたので振り向くと高音さんがいました。
あの黒装束っぽい姿ではなく普通に制服でしたが。
「次の試合一瞬で終わりそうですわね」
「あのエヴァンジェリンさんですから」
その時、ようやく朝倉さんが声を上げる。
『次の試合を開始したいと思います。第8試合3D柔道の使い手、山下慶一選手対麻帆中囲碁部エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル選手』
両者が試合場に現れた。
もう面倒だからここから何があったか僕の口で語らせてもらう。
相手は軽い気持ちでエヴァに近づき、肩を掴もうとした瞬間、エヴァが人では見えない速度で拳をお腹に突き出す。あまりのダメージに耐え切れずそのまま前へ倒れた。
朝倉さんはうわぁ、と呟き、相手の状態を見る。
『第8試合、エヴァンジェリン・A・K・マグタウェル選手の勝ち!』
エヴァは当然の結果のように鼻笑いしてから僕の元へ帰ってきた。
「つまらなかった」
「エヴァちゃん、一撃で終わらせたよね」
「さすが600万ドルの指名手配にされただけの事はあります」
「封印状態だったらどうなっていたことやら」
僕の一言で周りの雰囲気が固まったと思ったら刹那さんが戻ってきました。
木乃香さんは観客のほうへ戻ったようだ。魔力、気配でわかる。
「もう大丈夫なんですか?」
「はい。クウネルさんに直してもらいましたから」
「そういえばいつの間にかいなくなってるな。最初からどうでもいいやつだから気にする価値はないな」
すると、いきなりエヴァの背後に現れたクウネルさんが困り顔で呟く。
「ひどいですね。せっかく直してさしあげたのにそれはないでしょう」
「別にお前じゃなくて木乃香が直せば問題なかった。つまりだな」
「しかし彼女はまだ数ヶ月程度の見習いレベルでしょう」
「完全治癒魔法も習得済みのやつが見習いレベルならできない奴はそれ以下だな」
「なるほど、どうやら私の予想とは違う使い手になりそうですね」
「別の意味で異常すぎる魔法を覚えているがな」
星光破壊のことですね。
障壁、結界の貫通、空間転移追尾効果などあるらしい。
本当、どうしてこうなった!って思うほどのイレギュラーだった。
「ネギ」
「ん? ああ誰だっけ」
「小太郎や、忘れんな!」
今時の学ラン装着の小太郎が近づいてきた。
そういえば次の試合はボッコボコに終わる。
「負けに行くんだね。がんばって」
「ネギと勝負するまで負ける気ないで」
「何気に死亡フラグ立ってる。小太郎君一つだけ忠告するけど、クウネルさんはその辺にいる雑魚じゃないから数秒で負けないでね。明日菜さんだったら勝てるでしょうけど反則な方法なら」
「え? 私が勝てるの?」
僕と小太郎の話に入ってきた。
名前を呼ばれたら当然かもしれない。
「ハマノツルギを覚醒、思いっきりあの能力を制御しながら当てるだけというお仕事です」
「待ってよ。覚醒させたら大剣になるんだけど」
「そして、殺傷力のある武器を持つことになるから反則負け、確かに反則な方法ですね」
刹那さん、エヴァも後愛衣さんも何気にわかったみたいだ。
アレの制御できるようになるのは魔法世界後だったかな。
あの世界じゃあ一度魔法世界消えたっけ。むしろ火星ごと消えてるし、ガノードのせいで!
そして権限の鍵で、て今はどうでもいい話だ。
「結局制御できないから今は無理なんじゃない?」
『第2回戦第1試合は10分後に開始したいと思います。対戦内容は犬上小太郎選手対クウネル・サンダース選手です。10分後までお待ちください。なお混雑してるかと思いますがくれぐれも騒動を起こさないでください』
「10分休憩か。今すぐでもできたぞ」
「まあいっか。とりあえずノートパソコンで現状を見てみようか」
僕は権限の鍵でノートパソコンを思い浮かべる。
記憶の中に千雨さんの持ってたモノが印象的だった。
だから僕はそのノートパソコンを引き出した。
僕の手元にソレが具現化した。
「ここであーして、そこであーしてっと」
ある程度覚えていたため、すらすらと情報を探ってみた。
するとやっぱり第1回戦の映像のリンクが掲示板に貼られていた。
「明日菜さんこれ見てください」
「え? どれどれってはい!? な、ななな」
ワナワナと震えていた。
それもそうだろう。見せパンやらメイド姿で自分が戦っている姿があったのだから。
ネットで、だからダメージもでかい。
「ここにいる全員の映像がありますよ」
「……これってお姉さま」
「ええ。まずいですわ」
心配するが、大丈夫だ。
魔法先生はまったく気にしてなかったからだ。
むしろ焦るのは超さんの計画だったからこの映像の処理はしていなくてあの世界では証拠として残されたけど。
この世界では関係ないだろうと思い、放置しよう。
「ネットに流れてるならもう無理ですよ」
「わ、私のメイド姿が」
「明日菜さんがあるって事は私のもあるんですね。和風メイド姿が」
この映像見る限り、刹那さんも結構見えてるし派手すぎる。
でもさ、視点おかしくない?
何で必ずパンチラがあって普通ではありえない視点も混ざってるの?
この映像流したのも超さんだから不思議でもないかも知れない。
「愛衣さんがおぼれてる姿もありますね」
「うう、見ないでください。恥ずかしいですよ」
小太郎に吹き飛ばされ、水へダイプ後、バシャバシャと水の音を立てながらおぼれている姿。
なかなかの斬新すぎる光景だ。これで魔法使いだからさらに斬新だ。
『第2試合第1回戦を開始します。犬上小太郎選手対クウネル・サンダース選手』
もう10分たったのか。
動画を見てただけだから当然といえば当然か。
ちなみに一部の動画は保存済みさ。
「ほないくで」
試合場に出る小太郎。
僕はベンチに座り、ノートパソコンで地下にあるアレをハッキングしながら試合場を見る。
「父さんの知り合いだから小太郎君では勝てないでしょうね」
「まあな。勝てる可能性ないが、せいぜい無駄な努力で足掻けって所か」
「二人ともひどすぎません」
刹那さんが引き攣りながら僕とエヴァにいってきた。
他人であろうと気遣う所の刹那さんが好きだよ。
『でははじめ!』
試合の合図がなった。
・・・
・・
・
結果から言おう。
前より短く、早く終わった。小太郎の惨敗で。
小太郎が以前のように突進するが背後を取られ上、下へ叩き落される。
哀れのように倒れている小太郎に何かをしゃべっていたが、小太郎はなめるなと意気込みながらも黒い気を自分にぶち込み強化し、先ほどよりも数倍、3倍も速く殴りかかるが、スカッと回避され重力魔法で落ちつぶされる。
重力魔法で潰されていた小太郎は狼化になろうとしたが、さらなる重力魔法を喰らい気絶した。
ここまでで1分も経っていないかもしれない。
気絶した事で、勝利はクウネルさんとなった。
次の試合は僕と高音さんの試合が始まる。
「ネギ、がんばって」
「ネギ先生、がんばってください」
「何も言わなくても勝手に勝つだろ」
「ネギさん、がんばってください!」
ネ、ネギさん!?
愛衣さん、なぜ僕の応援なんですか?
応援すべき人は高音さんでしょ、と高音さんを見ると暗い雰囲気となっていた。
「ネットに流されるんですわよね。でしたら、ですがせっかくのこの機会はもう無いかも知れません、いえですが」
ネットのことを心配していた。
やはりあの姿で戦うのを見られたくないんだとわかった。
あの姿って無駄に色っぽ、ゲホゲホじゃなかった黒い何かにしか見えない。
「ねえ愛衣ちゃん、高音さんって強いの?」
「お姉さまは油断さえしなければ普通の魔法使いには勝てるんです」
「へえ、普通の、ねえ」
明日菜さんが普通を強調し、僕をジーっと見てくる。
まるで僕が普通じゃないと言いたげじゃないか、
「僕はあくまで普通ってそうじゃなくて試合場へ行きます」
僕は表に出た。
僕が出た途端、盛大に声が弾ける。
観念したのか、高音さんも出てきたけどやる気なさそう。
「ネギ先生、私と戦っていただきます。ただしあの力は使いませんが」
「わかりました」
高音さんの瞳の奥にある感情を理解した。
ようはわざと負けるという事だ。
しょーがない。一瞬で終わらせますか。
「はぁ」
ため息を吐いてから、瞬動で相手の背後に回りこむ。
相手から見るといきなり消えたとしか見えず、背後にいることも気づかない。
僕はわざと負けたいという高音さんの想いを叶えてあげようと首の方に手刀をかます。
と思ったら、高音さんは自分の黒い影を利用し、勢いを込めて手刀を弾き、僕から離れた。
「あれ?」
「危なかったですわ」
あれってわざと負けるんじゃなくてあの派手すぎる装備なしでって意味だったのか。
読み違いに頭を掻く僕に黒い影が襲う。
黒い影が布状で伸びたような感じだったからアレができるだろうと掴み
「魔法の射手 炎の10矢集束……爆炎」
右手で掴んでるから左手で集束し、一つになった炎の塊を影、布どっちでもいいがソレを通じて高音さんへ流し込んだ。
高音さんは手に持っている影を切り離し、後方へ下がるけどそれだけではこれを防ぐことはできない。
地面に落ちた布の先から竜の形をした炎が生まれ、突き進み、高音さんに当たる寸前で爆発した。
外野から「ネギやりすぎ」やら「アホ!」の暴言が飛んできた。
それをさり気なく無視して前を見ると高音さんが倒れていた。制服は普通に焦げてる程度に収まり脱げることは無かった。
「朝倉さん」
『え〜と、ネギ、子供先生の勝利です!』
毎回のように会場が盛り上がる。
やりすぎたか、と高音さんの方へ歩いてると心臓が人ではありえない程の鼓動がしたが気にしないことにした。
そんな事よりも今は高音さんをどうにかしないと。
高音さんをお姫様だっこで保健室もどきへ運んだ。
『……ネギ・スプリングフィールド、真……まで、a o 51%』
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