全ての終焉 58
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第58話『学園祭編その23 色々な前兆と修行へ』

 

とりあえず二人に魔法の存在を暴露した。

この学園に魔法使いが居る事に驚いていたけど、無理もない。

 

「これからどうする気?」

「これから? 全員を鍛えるに決まってるじゃないですか? その前にまき絵さんと亜子さん、ですね」

 

2人に注目する全員。

 

「わ、私達が問題なの?」

「仮契約すれば問題解決ですけど、しなければなかったことにするぐらいしか対処法が」

「秘密、なんでしたっけ? でもネギ君は危険な場所、戦いをするんやろ?」

「う〜ん、ネギ君が危険になる事ってあるんやろうか?」

「ないわね」

 

断言する明日菜さん。

確かに苦戦する相手なんてこれっぽっちもいない。

いるとすればこの世界に来たイレギュラーぐらい?

 

「関わる気がないなら魔法部分だけの記憶を消しますよ?」

 

「明日菜や委員長が関わってるって事は私の立場弱いかも、ネギ君のこともっと知りたい……

ネギ君!!」

「まき絵さん?」

 

決心する目でこちらを見るまき絵さん。

 

「私、仮契約する!」

「まき絵!?」

「亜子も知ってるでしょ? 私がネギ君のこと好きな事」

「う、うん。せやけど命に関わる事なんやけ――」

「関係ないよ。その辺はネギ君がどうにかしてくれるから。ねっ、ネギ君」

 

……まき絵さん自身、前よりも覚悟を持っているみたいだ。

真剣な表情で凛々しく問いかける辺りが主に。

 

「責任はありますし、最低限の保証はしますよ?」

 

前はそんな事考えもしなかった。

あれは運が良かっただけであり、決して安全があったわけじゃない。

特に魔法世界のランダム転移、あれが一番の原因。

もっとも、僕がフェイトの存在を感知した原因だ。向こうは僕が行動するまで気づかなかったらしいし。

並行世界でも指摘されたりされなかったり色々おかしかった。

今の僕は必要なだけ強化などできるから責任取れる、問題ない。

 

「じゃあまき絵さん、仮契約しますか?」

「うん!」

 

雰囲気もちょっとだけ違うからまたアーティファクトの素質が変わるんだろうなぁ。

僕は心の中でそう思いながら仮契約魔法陣を地面に展開する。

 

「えへへ。ネギ君とキス」

「魔法陣の中に入ってください」

「はいは〜い」

「何かこうやって見つめ合うと恥ずかしいかも」

「あの……早くしてくれません? 視線が刺さって微妙に怖いんですが」

「う、うん」

 

キスをした。

カードを受け取ったまき絵さん

 

「これが仮契約カードかぁ」

「さて、次は亜子さんですけど」

「う、うん。わかっとるんやけど……」

 

悩んでいる亜子に木乃香さんが手を掴んできた。

 

「亜子、恥ずかしい事は無いで。たかがキスやん」

「いや、ネギとしか絶対しない木乃香に言われてもね〜」

「そうね。ネギの理由で刹那と仮契約断ったじゃない」

「……え、え〜とあれはほら、ネギ君はそういうの嫌って思うて」

「刹那さんと仮契約は別に嫌って訳じゃないですよ? 幼馴染じゃないですか」

 

そう、あのアーティファクトは念のために欲しいからだ。

多重アーティファクトの中に組み込み、能力対象を書き換えれば誰にでも使える。

そうすれば修行時、成長速度を上昇できるという恐ろしいアーティファクトが完成する。

僕経由じゃないから複製魔法で作り出すしかない。

 

「そういえばせっちゃんいないけど」

「呼びましょうか。座標位置確認、桜咲刹那、召喚」

 

目の前に刹那さんが現れたんだけど、あれ?

 

「へ?」

「これなんてデジャヴ」

「せっちゃん、何で下着姿なん?」

 

今の刹那さんの姿は武道会で履いていたアレだけである。

 

「着替えようと更衣室に行って、密かに着替えようとしたのですが……」

「僕が召喚したせいでそのままって事ですか」

「ネギの変態!! 久しぶりのアーニャバーニングキック!!」

「うわっ!?」

 

こちらに落下してきたアーニャのキックをあっさりと横にかわすけど、名前変わってるな。

はあはあと息を荒くして、震えた指先を僕に向けた。

 

「何でネギはいつもいつもラッキースケベなのよ!」

「まあまあアーニャちゃん、ネギがそうなのは今さらでしょ?」

 

酷い。

 

「木乃香、刹那さんに服着させたら?」

「そうやな。えい!」

 

スカートのポケットから小さな杖を出して、刹那さんに向けると制服姿に変わった。

変えられた本人は驚いているけど。

 

「このちゃん、いつの間にこんな事?」

「エヴァちゃんに教えてもろうたよ?」

「でも、なぜ制服姿なん?」

 

亜子さんの疑問が呟かれた。

 

「せっちゃんの私服ってあんま見た事あらへんから想像できへん」

「あ、そういう事かって木乃香、私の私服はいくらでも見た事あるくせになんであの時は制服なのよ!」

「あの時はしょーがないやん。ウチも疲れてたんやから」

「それより亜子さんはどうなさいますの?」

 

あやかさんが真剣な表情で亜子さんを見る。

めずらしい組み合わせだな、あやかさんと亜子さんって

 

「う……ウチもする!!」

「ですって、ネギ先生」

 

笑みを浮かべて僕にそう言った。

 

「わかりました。それでは魔法陣の中に入って」

「キスすればいいんやね」

 

魔法陣を起動させて、まき絵さんと同じようにキスをした。

地面に展開されている魔法陣は役目が終えたかのように消える。

 

「ふぅ……。はい亜子さん」

「うん。何か恥ずかしいなぁ」

「どうしてですか?」

 

とんでもない爆弾発言をした。僕にとってではない。

 

「このカードを持つという事はネギ君とキスした印、もしくは証やん」

 

そうすると皆の顔がいきなり真っ赤になった。

いや皆ではないか、明日菜さんと木乃香さん以外。

 

「え、そうなん? ウチは普通に」

「木乃香はネギの寝込みすらするくせに普通でもないわよ!」

「え、えとな。これには深入り理由が」

「どんな理由よ」

「……そういえばネギ君、これからどうするん?」

 

明日菜さんとアーニャの言葉を無かった事にして僕に聞いてくる。

そもそもこれが本題じゃない。今から言う事が本題だよ。

 

「今からエヴァンジェリンさんの別荘で皆を鍛えます」

「えええええええええ!!」

「時間が無いので、批判等は終わったら受け付けます」

「意味ないじゃない。でもネギの修行ってどんなの?」

 

受けた事ある数人は顔を青ざめていた。

 

「ネギ君やなくってエヴァちゃんやろ?」

「僕が、ですよ?」

「……またあの鬼の日が来るの?」

 

鬼ってスパルタよりマシでしょうに。

途中休憩ありなんだから。

ああ、大事な事ひとつ言っておくか。

 

「小太郎も呼ぶから明日菜さん達は先に行ってて下さい。エヴァンジェリンさんがいたらそのまま伝えたら大丈夫です」

「わかったわ」

「さて……極移」

 

皆の反応を見た後、僕は小太郎の居場所を発見、その場所に転移した。

 

 

小太郎の元に来た僕は誘う。

 

「小太郎、僕と修行しないか?」

「……ネギ、俺の事はほっといてくれ」

「ほっとけないって」

 

第一、小太郎が強くならないと誰が僕の代理を務めるのさ。

どのみちイレギュラーが居る以上、前より強くさせなきゃいけないんだからな。

小太郎は僕の顔をじっと見ていた。

考えるそぶりをしながら呟く。

 

「わかった。俺も強くなるで。そしてネギを、お前を倒すんや」

「うん。それじゃあいくよ」

「ああ」

 

承諾してくれた小太郎の肩を掴み、この場から消え去った。

 

 

 

〜エヴァンジェリンの別荘〜

 

お決まりの修行場である。

よくここを使うな、でも今はここ以外使う必要性は無い。

小太郎を連れてきた僕は明日菜さん達のそばに寄る。

 

「あ、ネギ」

「皆さん揃いましたね。エヴァンジェリンさん、この空間いじらせてもらいますよ?」

「空間?」

 

首をかしげている。

わかるはずもないだろうな、と苦笑した後、この空間の広さを2倍拡大した。

 

「なっ!? ネギ、何でこんなことできんのよ!」

「アーニャ、ネギ君に突っ込むだけ無駄やって」

「そ、そうだけど……でもこの空間を広くしてどうする気?」

「実はですね、あれ?」

 

何人か足りない。

周りを見ると居ない人がいるような、いないような感覚がした。

あくまで感覚だけ。

 

「どうかしたの? ネギ君」

「ハルナさん、いえ人数が合わない気がして」」

「何を言ってるんだ? 全員居るだろ」

 

エヴァは腕を組み、全員を見る。

 

「私、木乃香、刹那さんにハルナ、小太郎君に本屋ちゃん、夕映ちゃん」

「エヴァちゃん、茶々丸ちゃん、まき絵ちゃんに委員長、亜子やろ?」

「私を抜かないでくれる?木乃香」

「あはは……アーニャちゃんもいたな。あとせっちゃん」

「佐倉愛衣と千雨ぐらいだな」

「朝倉は用事で来れないから除外ね。さよちゃんも同じく」

「仮契約してへんから意味無いやんか、なあ、せっちゃん」

「はい。あれ? まあいいか」

「ネギ先生、十分に居ると思いますが」

 

夕映さんが2回頷き、変なジュースを一口飲んでから僕に言う。

 

「夕映さん、そのジュースおいしいですか?」

「独特な味がします。なかなかクセのある味ですがネギ先生もいかがですか?」

「いえ、結構です」

 

ジュースの内容で見て断るが、そもそもチョコ汁って何さ?

汁の原料はなんだろうか、パッケージが紫で知りたくも無いからこの際スルーだ。

 

「修行するなら早くしたほうがいいと思いますが」

「この際どうでもいいか。本題に移りましょうか。まず明日菜さんは咸卦法の強化、反射神経を鍛える程度かな? 木乃香さんは治癒力の強化、刹那さんは明日菜さんに付き添いながら剣術レベルを上げるぐらいでしょうか。神鳴流の強化も含みますが」

「ちょっと待ってください」

 

刹那さんが挙手してきた。

何か疑問を抱くような表情をしている。

 

「どうかされました?」

「神鳴流と言われても私も修行の身なので全ての技知らないんですけど」

「確かにな」

「お父ちゃんに言うてみたら?」

 

多分、無駄だろうな。だって僕が初めて言った時、実力が足りない、技量が足りない!

という理由で断られました。

 

「じゃあ僕が教えましょうか?」

「は?」

「ええ!?」

 

僕の一言に周りから驚愕の声が上がった。

つーかなぜ明日菜さんまで驚く?

 

「ネギって神鳴流使えるの?」

「使えますよ。全て……明日菜さんは過去の記憶があるから知ってるでしょう」

「へぇ……そういえばそうね」

 

最後は明日菜さんにしか聞こえないように声を漏らす。

忘れていたのか微妙な笑みで誤魔化す。

 

「まあいいが、ネギ。神鳴流の何を教えるんだ?」

「正確には神鳴流の技とオリジナルを含めた僕の奥義を教えようと」

「どんな技だ」

「技名はありませんが、一瞬の動作で四肢を麻痺状態にさせるだけです」

「一瞬の動作って無理じゃないの?」

 

そういえば明日菜さんは知らないんだっけ?

一瞬の動作と言っても神鳴流の基本術を利用した方法だから簡単なんだよ。

基本術、瞬動による高速移動、攻撃ぐらい。そういう内容を告げると黙っていたあやかさんが僕を見る。

 

「ネギ先生、それは私もできますか?」

「あ、あやか!?」

「明日菜さん、私はネギ先生のために強くなりたいんです。ネギ先生の隣に立てるならどんな事してでも」

 

真剣な表情で明日菜さんを見つめる。

すごく空気がどよっと変化してるし。

はあ、見てられないな。こんな空気苦手だから僕から言うか。

 

「あやかさん」

「は、はい!」

「あやかさんにもありますからとりあえず」

「わ、わかりましたすみません」

 

今思い出したけどクーフェイさんがいないんですね。

楓さんはまだだったという記憶があるような、後で協力求めるからいっか。

 

「いえいえ、夕映さんとのどかさんは魔法の習得、アーティファクト。ハルナさんもアーティファクト。

愛衣さんは燃える天空と強化。亜子さんとあやかさん、まき絵さんは基本的なところからですね。後は小太郎だけど黒いアレと自然を吸収する充填力を上げようか。千雨さんもノーマルで強化したほうがいいですよ?油断してると相手に瞬殺されますし」

「はい」

「ネギ君、簡単に言うとるけど中身は異常すぎるえ」

 

異常すぎる?

腹筋等各1000回と魔力放出を限界までを100回と他色々程度なのに?

後、僕と1分耐えられるかのバトル数十回連続だけなのに?

その光景を思い出したのか明日菜さんと木乃香さんは顔色を青くなった。

 

「ああ、駄目や。絶対駄目」

「トラウマね」

「でも強くなるためなんだろ? 私も受けます」

 

千雨さんの決心に褒め称えよう。

 

「じゃあアーティファクトの展開を」

「わかりました。アデアット!」

 

カードをスカートのポケットから取り出し、言葉を告げる。

光に包み込まれ、背が小さくなり姿がピブリオンになった。

 

「千雨ちゃんが小さくなった」

「まき絵、アレって」

「確かビブリオルーランルージュだよね。ちょこっとだけ見た事ある」

「じゃあさっそく魔力を1時間使用してください」

「いや、無理です!」

 

即効で拒否された。

千雨さんの魔力で1時間継続できないわけじゃない。

自分でも気づいていないのだろうか? 今の自分の魔力量は昔の僕の半分以上あることに。

 

「そういえばリイスはどうするの?」

「リイスは何もする必要は無いよ。だって魔導書だから死の概念ないし」

「そうです。私は消滅する事は無いんです」

「へえ〜」

 

不思議そうな表情でリイスを眺める。

リイスはキョトンとした目でアーニャを見て呟く。

 

「私、魔導書ですよ?」

「それより私はどうなるんですか?」

「う〜ん、千雨さんは一時間ずっと魔力放出してください。できたら次の内容を言います」

「そ、そうですか」

 

千雨さんは深呼吸してから、落ち着いた。

ステッキを右手に持ち、全身から魔力を放出しようとしたが、止める。

 

「今は駄目です。この後で」

「わかりました」

 

皆の前でそれやると邪魔する人もいるからやらないほうがいい。

自然の中で放出した方がストレス溜まることなく可能だ。

 

「おいネギ! 俺はどうなるんや! そのためにきたんやで!!」

「ああ、とりあえず小太郎はこのメニューをどうぞ」

 

殴りかかってくる勢いで僕に問い詰める。

小太郎の強化は時間かかるから開始してもらうか。

紙に書いておいた小太郎強化内容を見せると小太郎が文句を言ってきた。

 

「ちょいまて! 何でうさぎ跳びなんかあるんだ!」

「うさぎとびだけじゃないよ? ちゃんと重力修行や自然から吸収する限界までの修行があるでしょ?」

「……ほんまにこんなんで強くなれるんか?」

「知らない」

「はあっ!?」

「だって小太郎の中知らないし」

 

明日菜さん達を鍛える事ができるのは前の参考と中を知ってるから。

中とは……全身全て、潜在能力等だけど正直、男のは知りたくも無いです。

だって前の参考というのは、アレしたから全てわかる。アレって男にする気なんてないし僕はホモじゃない。

 

「その中を調べればええやん」

「エヴァンジェリンさん、注射器ありません?」

「あるがどうする気だ?」

「……茶々丸さん、注射器貸してくれません?」

「はい」

 

どこから出したのかわからない注射器が茶々丸さんの手元にあった。

それを僕にやさしく渡してくれた。

 

「ありがとうございます」

「いえ、ネギ先生ですから。それに命令権はマスターよりネギ先生優先―」

「ちょっと待て! おかしくないか!?」

「おかしくありません。私の回路(こころ)は女の子です」

 

頬を染めながら堂々とエヴァに言い放つ。

あまりの変わりように呆れてしまい、ガクッと頭を落とすエヴァ

今はそんな事より小太郎だな。

ニヤニヤと笑みを浮かべて、注射器を右手に小太郎を見ると僕の持つ注射器を直視した。

 

「何で注射器やねん!」

「血をもらうだけですが? そこから僕の魔法で解析するだけ」

「それなら前にやってた変な鍵で後ろから挿されたほうがマシや」

「う〜ん、後ろから挿された方がいいの?」

 

何を言ってるんだろうか、もしかして小太郎はエム?

変な想像して気分が悪くなった時、ハルナさんが爆弾発言を投下した。

 

「ネギ君、それってアソコを――」

「何言ってるんですか! 余計な事は言わなくていいです!」

 

そのように思えたが、夕映さんから突っ込まれていた。

しかもハリセンであり、夕映という文字が刻み込まれているし、なぜ魔力を感じる?

エヴァが夕映さんの持つハリセンを見て鋭い視線を向ける。

 

「綾瀬夕映、何だそれは」

「魔力を物質化しただけですよ? 主に見た目だけは武器系しかできませんが」

「自分の魔力を物質化させるのってどっかで見た事無い?」

「何を言ってるのか理解できないですが、私の物質化はあくまで見た目だけ武器系の性能まで変わりません」

「武器の性能まで物質化できたらやばすぎるな」

 

あはは……と皆が笑うけど、僕は「物質化を強化」させたらどうなるか先を理解していた。

魔力→物質化『杖』→見た目の構成『武器系』効果があっても作り出せない。

自分の魔力→物質化「杖」→「効果もオリジナルの杖」が完成となるのが理想だろう。

将来できる可能性はあるけど、させないかどうかは今後の展開で決めるか、うん。

 

「すごいね。夕映」

「偶然です。ある夢を見たせいです」

 

「「「夢?」」」

 

また夢か、そういえば明日菜さんの夢はアスナの前兆だった訳だけど夕映さんも見るってどゆこと?

 

「その夢は私に己の好きな存在の力になりたいという事に対し、覚醒たる力を授けようって言ってたです。後、別の夢ではこういう言葉が聞こえたです。『全ての牙を創造、これが生き抜くための力だ』といって大量の剣を生み出して、次の場面に変わったら今度は大きな樹、えとこの学園の世界樹より大きい樹に剣を刺してたです」

「っ!?」

 

リイスがビクンと反応してたので念話できいてみる。

全ての牙を創造という部分はきっと夕映さんの使っていた物質化の最終地点と考えるのが妥当かな。

 

(知ってるの?)

(知っていますがここでは話せませんから後で)

(そっち絡みか)

(はい。正確にはネギの干渉が理由ですが)

(それってどういう)

(……それだけ、今は言えません)

 

念話を切る。

 

「ふしぎな夢ですね。私なんか恥ずかしい夢しか覚えてません」

「愛衣ちゃん、私も夢はあまり覚えてないわよ?」

「起きたら忘れるほうが多いと言われてますから気にする事ありませんわ。愛衣さん」

「アスナさん、あやかさん。はい!」

 

夢か、この時間に起きる出来事が歪みつつある。

僕も見ない夢を見るし、おかしな現象を目撃する事が、何かが狂ってるかもしれない。

未だに注射器を直視する小太郎にする事はしよう。

 

「小太郎、とにかく血を採らせて」

「駄目、言うても無駄そうやな」

「うん。痛みはないからささっと済ませようか」

「ネギ、お前注射器使った事あるんか?」

 

普通なら10歳程度の子供が注射器を使う事などありえない。

幸い僕は普通でもなく10歳じゃないので注射器で血を採取など造作も無い。

目的のためなら小太郎を強化しようが関係ない。

 

「じゃあ腕に刺すぞ」

「ああ」

 

僕は誰かに突っ込まれる前に小太郎の腕へ注射器の針を突き刺す。

数ミリ程度だから痛みは無いはず、解析魔法を使いながら小太郎の内部をスキャンする。

スキャンしたDNA、構造、異能の潜在能力を計算した後、注射器の中に血が溜まる。

針を抜き、小太郎から離れ地面に仮契約魔法陣とは異なる陣を展開する。

注射器の中に入っている血を魔法陣の中に流すと、魔法陣の色が金色に輝き染まる。

金色の魔法陣から小さな光が浮かび上がる。

 

「情報はこんな所か」

 

小さな光から流れてくる僕しかわからない情報を暗記、魔法陣をこの世から消し去った。

消え去る時、ハルナさんが使っていた盾と同じ弾ける様な音と共に。

さて、情報を整理してから小太郎に言葉で伝える。

 

「強化の仕方は理解したけど、それに必要な体力が無いからそのメニューでやってくれるかな?」

「不安やけどわかったで」

 

小太郎は悔しそうな表情で素っ気ない呟きと一緒に別の場所へ移動した。

放置しても大丈夫だろう。根は真面目だし。

ようやく一つ片付いたと思い、明日菜さん達の方を見ると、いきなり大きな声が周囲に響く。

 

「ああああああ!」

「どうしたの? 亜子」

「そ、そういえばウチ、今日ライブやった!?」

「ええええ、どうするの!?」

「ネギ先生、ウチどうしたらええの?」

 

表情を青くして泣きそうになる亜子さん

修行はしてもらわないといけないから行かせたくないが、どうしようか。

僕は腕を組み、う〜んと悩んでいる所で、明日菜さんが提案を言う。

 

「ネギ、カシオペア使えば良いんじゃない?」

「ああ! その手があったなぁ」

「カシオペアは学園祭中は何度でも可能だったな。それを利用すればライブ時間など簡単だろう」

 

明日菜さん、木乃香さん、エヴァは僕の持つカシオペアを使えばいいと判断している。

時間転移、学園祭中なら大丈夫だろうと思うけど、無駄な平行世界(パラレルワールド)は作りたくないんだよな。

亜子さんのライブか、考えてみれば僕は大切な人を守る事も重要だったな。

なら、仕方ないかな。

 

「カシオペア 時計型時間跳躍もとい航行?機を使えば間に合いますよ」

「それって―」

「タイムマシーンなの! ネギ君!」

 

まき絵さんが大はしゃぎしながら僕に急接近。

思いっきり顔が近いし、キスしそうな勢い。

この行動で、冷えたような空気が流れた途端、魔法の射手3本分が飛んできた。

 

「うわわわ! アデアット、リボンドリル」

 

今変な単語聞こえた気がするぞ。

カードから数メートル長い銀色のリボンになり、物凄い回転、もといドリルが魔法の射手3本を貫く。

撃った本人、いやアーニャはリボンを見て顔を引き攣る。

 

「何よそのリボン」

「アーティファクト、絶対破れない長さ自由、おまけに凄い効果があるよ!」

 

強く威張る所が何ともかわいいな。

尻尾があれば絶対フリフリと大きく揺れているに違いない。

 

「だあああああ! ちっとも話が進まないじゃないか! いい加減早くしろ! これで何時間使う気だ!」

「マスターもノリノリでしたが?」

「それとこれとは別だ。今時計見たら既に1時間経ってるぞ!」

「へえ、そんなに時間経過してたんだ。現時点、修行始めたのは小太郎君だけっていうこの状況」

 

時間を聞いて皆、疲れた雰囲気を漂わせた。

何で人って状況では時間を聞いたらやる気下がるんだろうか、不思議しょうがない。

そんな事はどうでも良いか、前から計画していた事も実行できる時期だな。よしとりあえず適当に。

 

「とりあえずさっき言った事を中心に修行してもらいます。エヴァンジェリンさんと茶々丸さんは夕映さん達のことを見てあげてください。時間はこの別荘の限界時間までギリギリやってもらいます。じゃないと今後の活動が厳しくなりますのでその辺理解してください。後リイスと明日菜さんには用がありますので修行前に来て下さい。以上!」

「「「はい」」」

 

全員返事をしてくれた。

エヴァは僕を見てしょーがないとため息を吐き、了承する。

とりあえず明日菜さんとリイスに視線を向け、付いて来るように施す。

 

 

僕達3人は砂浜に来ていた。

正しくは別荘の中にある夏の領域(僕命名)だけど。

 

「ネギ、何の用なの? 融合したからさっそく体を馴染ませたいんだけど」

「二人に来てもらったのは今後の予定の一部をばらそうと思いまして」

「そういえば計画とか言ってたっけ?」

「ネギ、協力しますよ。あなたが望むなら」

 

リイスは目を閉じ、望むままに、と僕に従う態度を示す。

態度を示したリイスを見て目を丸くした明日菜さんは大きく溜息を吐く。

そのまま黙っているという事は言えってか?

 

「超鈴音さんをこの世界に残す事です」

「ええええええええええええええええええええええええええ!!」

「ほえ?」

 

超の正体を知っている明日菜は物凄い声とリイスの可愛らしい驚きの声が響いた。

そんなに意外だったかなぁ。だって僕の世界には……

 

 

 

 

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このSSの犬上小太郎は原作のネギ(ラカン戦)に近いか、それ以上の強さを持ちます。

なぜそこまで強くする必要があるのか? それは今後の展開にて

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第58話
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