第六話 アニス、はやてと出会うの事
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はやてサイド

 

 

「んっ……ふぁ〜……」

 

 

いつもと変わらない朝。いつも通りの時間に起きて、ウチはベッドから降りて、車いすに乗る。

せやけど……何やろうか……いつもと感じが違う朝になりそうなのは……ウチの気のせいやろか……。

 

 

そう思いながら、リビングのカーテンを開けて、外を見る……。

 

 

「……はぁ?」

 

 

いつもと変わらない風景……の筈が……二人の人が……男女が倒れとるのが分かった……。

男の人は、女の子を庇う形で気を失っており、女の子は……さながら騎士に守られる姫の様に綺麗やった……。

 

 

「……アカン……神話の読み過ぎや……」

 

 

ウチは自分の目を擦り、もう一度外を見る。

 

 

「……やっぱり人が倒れとる〜!?」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「………んっ……」

 

 

「あぁ、どないしようどないしよう!やっぱ警察!?それとも救急車!?あぁ、どないしよう!!」

 

 

……何だこいつは……人の周りを車いすでグルグル回りやがって……。

そういや……アニスは!?……良かった、俺の腕の中か……。

 

 

「よいっしょ……」

 

 

くっ……転移装置に魔力を流し過ぎた……体が重い。

俺はアニスを起こさないように起き上がり、そのまま抱きかかえる。

 

 

「あ、起きたんか!?」

 

 

「少し静かにしろ。こいつが起きるだろうが」

 

 

「あ、……すいません……」

 

 

「……それより、ここは……」

 

 

見渡す限り、家があり……ここもどうやら、人様の敷地ならしい。

もしここが魔法文化の無い世界なのだとしたら……なぜ、この家の中に魔力反応を感じるんだ?

 

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

 

「………………」

 

 

少し訛りの入っている子供が声を掛けてくる……。

そいつは足が不自由なのか、車いすに乗って、こちらを見上げている。

 

 

「あぁ、少なくとも俺は大丈夫だが……こいつはどうだかな……」

 

 

アニスは昨日の戦闘で、魔力を根こそぎ斬魄刀に持って行かれた。

普通の奴なら半日は寝込むだろうが、こいつなら何時間かで目を覚ますだろう……。

 

 

「あの……」

 

 

「何だ?」

 

 

「急ぎじゃないんでしたら、ウチの家で休んでいきませんか?」

 

 

「………………」

 

 

願っても無い提案だ……だが……。

こいつの家の中の魔力反応が気になるな……、一体、何を企んでる、こいつ……。

だが、欲望があるわけでもないし……その目には、悪意の欠片も移ってない……ただの善意か?

だとしたら、一刻も早く、こいつを休ませてやりたい……。

ここは、背に腹を変えられないか……。

 

 

「あぁ、迷惑を掛けるな」

 

 

「なら、こっちから入ってください」

 

 

ガキが指を差す方には玄関があった。

俺はアニスを抱えながら、その玄関へと向かい、中に入る。

そして、外から戻ってきたガキがこちらにに手招きをしたので、俺はそちらの方へ向かう。

 

 

「ウチの部屋で申し訳ないんやけど、寝かすならここの方がえぇ。他の部屋やと、少し準備に手間取ってしまうさかい」

 

 

「すまんな」

 

 

「いえいえ、これも何かの縁ですし!」

 

 

「そうか……」

 

 

俺は部屋に入り、ベッドにアニスを寝かせ、掛布団を掛ける。

……これで先ずは一安心か……。

そう思いながらふと振り返ると……鎖で縛られて置いてある黒い本に目が映る。

これか……魔力の元は……こいつ、魔導師か?いや、だったら俺達の魔力を感知できるだろう……。

 

 

「あの、どないしたんですか?その本をじっと見つめて」

 

 

「っ!いや、何でもない……」

 

 

「そうですか。あ、ここで話をしてたら起こしまうな……聞きたい事もあるんで、リビングに来てください」

 

 

確かに、いきなり人ん家の庭で気を失っていたんだ……聞きたい事なんぞ山ほどあるだろうな。

さて、何処まで話せるか……。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「うっ……くっ……!」

 

 

体が重たい……まるで、自分の体じゃない様だ……。

そんな体に、自分は鞭を打ち体を起こす……。

 

 

「知らない部屋だ……」

 

 

先ず第一声がこれ……。

何処だここ……つうか、見覚えがあるんだが……。

 

 

「それよりも……俺は一体、何でこんな所の……あっ!」

 

 

思い出した!

昨日の夜、襲撃されてお父さんとお母さんが飛ばされたのを見て激情し、卍解を使って魔力切れを起こしたんだ。

そして、そのままアンクに抱きかかえられて、転移装置に乗って……地球に……。

 

 

「……そう言えば……アンクは?」

 

 

俺の近くには居ない……。

まさか……転移の時に離れ離れになっちゃったとか!?

そんなぁ……アンク……。

 

 

「……ぐすっ……アンクッ……ぐずっ……アンク……」

 

 

寂しい……お父さんもお母さんも何処かに行ってしまい、今度はアンクまで……。

お父さん、お母さん、アンク!

 

 

「アンク……。アンク……。……うわぁぁぁぁ!!」

 

 

寂しい……あれほど近くに居た人達が、一日で一気に居なくなってしまった……。

 

 

「お父さん!お母さん!アンク!うぁっ………アンクゥ……さみっしいよっ……」

 

 

胸が苦しい……俺は、こんなに依存してたんだ……。

お父さんやお母さん以上に……アンクに……。

 

 

「アン……ク……!うぁっ……!」

 

 

その時、この部屋のドアが開かれる。

俺は泣きながら、ドアのとこを向いた……そして、顔を出したのは……。

 

 

「おい、どうしたアニス」

 

 

居なくなったと思っていた……俺のパートナーの、アンクの顔だった……。

俺は無意識の内にベッドから出て、アンクに抱き着いた。

 

 

「アンクッ!」

 

 

「おっと!……どうした、いきなり」

 

 

「アンク!アンク!アンク!」

 

 

「あぁ、俺だ!だから何回も俺の名前を連呼すんな!!」

 

 

「アンクぅ〜……グスッ……アンクも、何処かに居なくなっちゃったと思った……よ……怖かったよ……!うぁっ……」

 

 

「……泣いてんのか?」

 

 

「声の……感じで……分からないかな……?普通……グス……」

 

 

「何で泣いてんだよ」

 

 

「だって!だって……お父さんも、お母さんも……居なくなっちゃって……一緒に逃げ来たアンクまで、居なくなっちゃったかと思って!」

 

 

「……はぁ、俺がお前を置いて何処かへ行くと思ってんのか?バーカ」

 

 

そう言いながら、アンクは俺を抱きしめ返す……。

 

 

「お前を置いて何処かに行くわけないだろ。誓ったろ?お前を守るって、必ず両親を見つけ出してやるって」

 

 

「……アンク……」

 

 

……うし、少し落ち着いた……。

これで何とか持ちこたえれそうだ……主に精神的な意味で……。

それより、ホントにここ何処なんだろうか?

 

 

「なぁ、アンク……ここ何処か分かる?」

 

 

「俺が知るわけないだろ。俺も気が付いたらここに居たんだ。詳しい話を聞きたいなら、リビングにここに住んでるガキに話を聞くと良い」

 

 

「ここに住んでるガキ?」

 

 

アンクサイド

 

 

取り敢えず、一旦こいつから話を聞かないと下手に動けないな……。

アニスの事もあるし……。

 

 

「粗茶ですが、どうぞ」

 

 

「どうも」

 

 

ガキが出したお茶をすすり、俺は本題を切り出す。

 

 

「……何でお前の家の敷地で気を失っていたか、だろ?聞きたいのは」

 

 

「えぇ、そうです」

 

 

「話せば長くなるが……俺達は少し、遠い所か逃げて来た……そういう解釈で話を進めるが、良いか?」

 

 

「……何や?駆け落ちでもしたんか?」

 

 

ブーッ!

俺は飲んでいたお茶を吹き出す……。

何言ってんだこいつ!ガキが益せた台詞言いやがって!

 

 

「なわけねぇだろ!」

 

 

「だって、あんな小っこい可愛らしい子を抱きかかえて気を失ってたんやで?まるで姫を庇った騎士みたいにな。でも、あんな小っこい子と駆け落ちって……犯罪やで?」

 

 

「だから違うって言ってんだろ!人の話を聞きやがれ!!」

 

 

「あはは!冗談やて冗談。それで、何で倒れてたん?」

 

 

「あぁ、実はな……さっき寝かした奴居ただろ」

 

 

「あの可愛い子やな?その子がどないしたん?」

 

 

「あいつ、良い所のお坊ちゃんなんだよ。それで、そいつの家がつい昨日襲撃されてな。俺はあいつと、命からがら逃げて、ここで気を失っていたんだ」

 

 

「……ちょっと待ちいな……」

 

 

やっぱ……信じられるわけねぇか……。

まぁ、いきなり突拍子過ぎて、着いていけるわけもないしな。

 

 

「あの可愛らしい子が坊ちゃん!?お嬢様や無く坊ちゃん!?あの子男の子やったんか!?」

 

 

「気にするとこそこか!!」

 

 

「当たり前や!女のウチよか女の子らしいで!?世の中不公平やわ!!」

 

 

「まぁ、お前よりは可愛いと俺は思うが……って、俺は何言ってんだ!」

 

 

ヤバい……あいつのせいで狂って来たな俺……。

 

 

「それで、その子が命を狙われとる事やけど」

 

 

「サラッと本題に入りやがったな……」

 

 

「行く宛とか無いんやったら家に住まへんか?一時身を潜めるつもりで」

 

 

「……それを俺に言われても、決めるのはあいつだし。それに従うのが俺だ」

 

 

「結構な忠義心やな」

 

 

「はっ、あいつしか仕える奴が居ないんだよ。さて、少しあいつの様子を見に行ってくる」

 

 

 

「分かったで」

 

 

俺はそう言って、さっきガキに案内された寝室に向かう。

向かったのだが……。

 

 

「お父さん!お母さん!アンク!うぁっ………アンクゥ……さみっしいよっ……」

 

 

……あぁ、明らかにあいつ引きずってんなこれ……はぁ、相変わらず、戦闘は強いが、精神的に駄目な奴だ。

俺は内心でため息をつきながら、ドアを開ける。

 

 

「おい、どうしたアニス」

 

 

部屋に入り、アニスに声を掛けた。

その瞬間、アニスはベッドから飛び出て、俺に抱き着いてくる。

 

 

 

「アンクッ!」

 

 

「おっと!……どうした、いきなり」

 

 

「アンク!アンク!アンク!」

 

 

「あぁ、俺だ!だから何回も俺の名前を連呼すんな!!」

 

 

「アンクぅ〜……グスッ……アンクも、何処かに居なくなっちゃったと思った……よ……怖かったよ……!うぁっ……」

 

 

何でこいつ……こんなに泣いてんだ?

まさか、いきなり俺が居なくなったせいか?……はぁ。

 

 

「……泣いてんのか?」

 

 

「声の……感じで……分からないかな……?普通……グス……」

 

 

「何で泣いてんだよ」

 

 

「だって!だって……お父さんも、お母さんも……居なくなっちゃって……一緒に逃げ来たアンクまで、居なくなっちゃったかと思って!」

 

 

案の定だ……こいつは……。

 

 

 

「……はぁ、俺がお前を置いて何処かへ行くと思ってんのか?バーカ」

 

 

そう言いながら、俺はアニスを抱き返す……。

全く、俺は男だぞ?簡単に抱き着きやがって……っと、こいつも男だったな。

 

 

「お前を置いて何処かに行くわけないだろ。誓ったろ?お前を守るって、必ず両親を見つけ出してやるって」

 

 

「……アンク……」

 

 

何であんな恥ずかしい事を言ったと思ってんだこいつは。

もう絶対、お願いされても言いたくない台詞だ……。

はぁ、やれやれ……さて、どうしたものかな……。

 

「なぁ、アンク……ここ何処か分かる?」

 

 

「俺が知るわけないだろ。俺も気が付いたらここに居たんだ。詳しい話を聞きたいなら、リビングにここに住んでるガキに話を聞くと良い」

 

 

「ここに住んでるガキ?」

 

 

「あぁ、行くぞ」

 

 

俺はそう言って、アニスを抱きかかえる。

 

 

「ちょっ!?何で抱きかかえるのさ!?」

 

 

「うるさい、昨日魔力切れ起こした奴が何言ってんだ!良いから黙って大人しくしてろ!」

 

 

「……あーうー……」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「どうも……アニス・クロイツベルと申します……」

 

 

「これはご丁寧に、八神はやて言います〜。宜しゅうお願いします」

 

 

……結論、ここは地球で海鳴市であり八神家でした……。

まぁ、何という確率……俺に幸運EXでも付いてるんだろうか?

 

 

「あの、アンクと何処まで話しましたか?」

 

 

「アンク?あぁ、この人の事やな。まぁ、君がお金持ちの坊ちゃんって事と、命を狙われてるって事までや」

 

 

「ま、まぁ……大まかに説明するとそうかな……あはは……」

 

 

アンクめ……。

俺はアンクをキッ!と睨むが、顔を背かれてしまった……。

 

 

「それで、その、アンクさんにも話したんやけど。身を潜めるって事で、しばらく家に住まへんって言ったんやけど。アンクさんには決定権が無いって言われてもうて、決めるのはアニス君だって」

 

 

「まぁ、そうだろうね……」

 

 

う〜ん……。

まぁ、命を狙われてる事は間違いないけど、あの次元世界内の事だけだし……ここには被害はそう起きないだろう。

それに、住むところは愚か、お金もないし……家なき子だしね……。

 

 

「……本当にここに泊めてもらっても良いのでしょうか?」

 

 

「えぇ、ウチは構いませんよ。どうせウチだけしか住んでへんしな」

 

 

「あっ……ごめんなさい……」

 

 

「ううん、気にせんといてアニス君。もうウチは気にしてないさかいに……それで、どや?」

 

 

「……あの……不束者ですが……よろしくお願いします……」

 

 

「………………使い方間違うとるよ……アニス君……」

 

 

「えっ!?あれ?違うの!?……はぅ……」

 

 

〜はやてサイド〜

 

 

何やねんこの子!可愛すぎやろ!

間違い指摘されて、恥ずかしくて顔赤うしとる……アカン……可愛すぎる……。

こんな子が男の子や何て信じられへん!どっからどうみても女の子やん!

 

 

「あ、あの……八神さん?」

 

 

「はっ!ど、どないしたん?アニス君」

 

 

「いや、いきなり俺の顔をじっと見て固まってたから……気になっちゃって……」

 

 

「あ、あはは……な、何でもあらへんよ?気にせんといて?」

 

 

「う、うん……分かったよ八神さん」

 

 

「それ」

 

 

「へっ?」

 

 

「その八神さんっての、何か他人行儀で、ウチは好かんねん。ウチの事ははやてでええよ?ウチはアニス君って呼ばせてもらっとるから。それと、敬語も無し!今日から一緒に住む家族やからな!」

 

 

「八神さん……」

 

 

「アニス君……?」

 

 

「あ……は、はやて……ちゃん」

 

 

そう言って、アニス君は恥ずかしそうに頬を染めながらウチの名前を呼ぶ。

っ〜〜〜〜〜〜〜〜!可愛い!何やねんこの子!?ホンマにかわえぇ!

それに、ウチより年下やのに、こんなに行儀がええとわ……偉いなぁ……。

 

 

「あの、はやてちゃんって……何歳かな?」

 

 

「あ、あぁ。ウチは今年で九歳やで」

 

 

「あ、そうなんだ。俺はもう誕生日来ちゃったから……はやてちゃんより一歩リード。えへへへ。俺も九歳なんだ」

 

 

………な、ななな……何やってぇぇぇぇぇぇぇ!?

この子、ウチと同い年やとぉぉぉぉぉぉぉぉ!?

身長ウチより結構差があるで!?ホンマに九歳!?おかしい!神様は不公平やっぱ!!

そしてそのハニカミ!……もぅ……何て言うか……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可愛すぎやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!

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