【意味がわかると怖い話】死んで当然の男
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 誰でも持ってる願望だろうが、俺はとくにその思いが切実だった。一度でいい、誰でもいいから人を殺してみたい、という願望だ。

 その願いをとうとう叶えられそうだ。ふとした偶然から、俺は『殺人クラブ』の入会資格を得ることができた。

 呼び出されたのは寂れた倉庫。その中央に、椅子に縛られて目隠しされた男がいる。薬でも飲まされてるのか、男はぐったりと首を折っているが、意識はあるようだ。

 倉庫には男の他、数人の男女が集まっていた。誰もが興奮の目で、椅子の男を見つめている。

「こいつは“死んで当然の男”なんだ」

 と、俺をクラブに勧誘した男が説明してくれた。

「誰も知らないことだが、この男は深い罪を犯している。世間の連中が知ったら『鬼畜』とか『悪魔』とかって蔑むような罪だ。で、このクラブではそんな連中をターゲットに選んでる。法の機関に代わって、処刑を行うのさ」

 そいつはありがたい。俺が今まで人を殺さずにいたのは、逮捕が怖いからじゃない。被害者が気の毒だからだ。だが、そいつが“死んで当然”なら話は別。むしろ進んで殺せる、というものだ。

 新メンバーの俺は、殺害方法を選ぶ権利をもらえた。俺は迷わずナイフを選んだ。肉を抉る感触を、この手で味わってみたかったんだ。

 ――数分後には、男は血まみれで息絶えていた。俺は心の底からこみあげる満足感に浸っていた。俺を勧誘した男が尋ねた。

「どうだ、初会合の感想は?」

「最高です! やっぱり想像してたのとは全然違いますね! 誘ってもらえて本当に感謝してます」

「気にするなよ。次はあんたが勧誘する番だ。相手は慎重に選べよ」

「わかってますよ。……そういえば、今日殺したこの男、どこから連れてきたんです? 聞くのすっかり忘れてましたけど、こいつはどんな罪を犯したんですか?」

 俺が尋ねると、男は黙って俺を見つめた。こいつ馬鹿じゃないのか、とでも言いたげな目つきだった。

 

説明
俺は殺人クラブのメンバーになった。最初の生贄は「死んで当然の男」だ。――「意味がわかると怖い話」のオリジナル。短いです。これも解説なしにしておきます。
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意味がわかると怖い話 殺人 ミステリー 

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