第十一話 正直に話そう |
はやてサイド
も、もう我慢できひん……。
アニス君が悪いんや、アニス君が可愛いのが悪いんや!
「アニス君!」
「ん?どうしたの?はやてt、キャッ!?」
「アニス君かわえぇよ〜」
何やろう……アニス君を見てるとこぉ……抱きしめたくなるんはどないしてなんかな?
母性本能がくすぐられると言うか、何と言うか。
「は、はやてちゃ〜ん……恥ずかしいよ〜」
「いっつもアンクさんに抱きしめられとるのに何言うとんねん!」
「あーうー、幾らアンクが居ないからって、些か大胆過ぎだよはやてちゃん……あうあう……」
そう、今アンクさんは絶賛就職活動中。
アニス君は年齢的に働けないので、必然的にアンクさんが仕事を探して働くと言う事になっている。
就職と言っても、アルバイトやねんけどな。
うちは別に気にしてへんのに。
「アニス君のその恰好、他の人に見せたらアカンよ?」
「寝間着は人に見せる物じゃないよ〜、はやてちゃん離れてよ〜。苦しぃ〜」
「ホンマ、こう近くで見ると……どう見ても女の子にしか見えへんな〜……胸揉んでみるか」
「ひゃっ!は、はやてちゃん!?だ、だめ!くっ、あはははは!く、くすぐったいよ!あはははは!!」
「あぁ……幸せや……」
「こ、こんなことで幸せを感じないでよ!?あぁ、ワイシャツがシワくちゃに……もぅ、はやてちゃんが僕を膝に乗っけたいなんて言い出すから……」
「あはは、すまんなぁ。アニス君が可愛すぎるから、どうしても歯止めが効かんくなってまうねん」
「ぶーぶー。結構恥ずかしんだよ?」
「……もうかわぇぇなぁ!」
顔を赤らめて上目づかいで言われても説得力の欠片もあらへん!
もうアニス君は妹!ウチの妹に決まりや!性別?アニス君の前では塵にも等しいで!
「アニス君〜、ウチホンマ幸せや〜」
「……はやてちゃん」
「両親が亡くなってもうて……足が不自由になってもうて……ウチ、寂しかった……学校にも行けへんし、病院から帰って来ても、誰もお帰り何て言ってくれる人……おらんかったし……ご飯を作っても、美味しいって言って、笑ってくれる人がおらんかった……」
「……………」
「ホンマ、アニス君とアンクさんには感謝やで……不謹慎やけど……アニス君がここに逃げてきてくれて、ホンマ良かった……」
「……はやてちゃん……」
「何や……?」
「……魔法って、信じる?」
アニスサイド
今までの事を思い出して泣いているはやてを見ているのが俺には出来なかった。
寂しいとはやての口から出るのを見ていられなかった。
そして、今がとても幸せだと言って笑うはやてを見ていられなかった。
これから始まる悲劇を、これから動き出す運命を……。
何も知らずに、今が幸せだと言って、俺に笑いかけてくれるはやての笑顔を見て……俺は俺を許せなくなった。
たぶん、俺が手を出さなくても……なのは達が終わらせる。
むしろ、俺が手を出さなければ、物語は改変されなくて済む……だけど……俺ははやてに嘘をつきたくなかったし、はやての笑顔を、守りたくなったんだ……。
「ま、ほう……?」
「そう、魔法」
「あはは、アニス君、夢見すぎやで。このご時世に魔法て……そんなんある訳ないやん」
「それが、あるとしたらどうする?」
「………せやな〜、取り敢えず、見せてもらいたいわ」
「……だったら、見せてあげるよ」
「へっ……?」
俺ははやての膝から立ち上がり、はやての目の前に立つ。
そして、極限まで魔力を抑え、クイーンを起動させる。
「クイーン、セットアップ」
《了解しました》
バリアジャケットを纏い、ブリジットと同じ格好になる。
はやては目を丸くして、俺を見ている。
「まぁ、魔法と言っても……少し科学的だけどね」
「……か……かわぇぇなぁ!何やねんその修道女みたいな恰好は!?似合いすぎや!」
「い、いや、はやてちゃん……結構真面目な話なんだけど……」
「はっ!カメラ!カメラどこや!?アニス君のこんな可愛い格好、いつ見れるか分からへん!……いや、いつも見とるか」
「……お……お願いだから、俺の話を真面目に聞いてほしいんだけど……」
「あ、あぁ……ごめんごめん。それで、それが魔法なんか?」
「うん、そうだよ。まぁ、これだけじゃ実感湧かないと思うけど……これだけで信じてくれたら嬉しいんだけど……」
「……まぁ、アニス君がこんなしょうも無い嘘を付く子やとは思えへんし……うん!信じたる!そ、それにしても……いつもはワイシャツで隠れとる足が見えとる……しかもスパッツやから……あ、アカン……鼻血が……」
「お、お願いだから、もっと落ち着いてくれると嬉しいんだけど」
「む……ムチムチ……」
「お願いだから落ち着いてぇぇぇぇぇぇ!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「さて、落ち着いた?」
「ふぅ……それで、魔法の話やったな」
け、賢者タイム……だと……。
はやて、あの間奏の間に何してきたんだ……。
取り敢えず俺はバリアジャケットを解除して、話を続ける。
「はやて……実は俺、この世界とは違うから来たんだ……」
「違う世界?」
「うん……そこは……そうだね、魔法の世界って言っても間違いないかもね。俺はその世界から来たんだ」
「……ちょっと待ってぇな……せやったら、逃げてる云々は嘘やったんか?」
「ううん……それはホント……俺は逃げて来たんだ、あの世界から。俺の一族、クロイツベル一族の手から……」
「クロイツベル……一族……?」
「そう、俺の一族。……俺は、産まれちゃいけない存在だったんだ。その昔、俺の一族の一人が……それはもう、化け物の様に強かったんだ……だから、その人は皆に恐れられて、殺された。その生まれ変わりが、俺」
「………………」
「だから、俺は……その一族から命を狙われる事になったんだ……その時、お父さんとお母さんが戦ったんだけど……連れて行かれちゃって……俺はアンクと逃げたんだ……この世界に……」
自分が力を使いすぎたせいで、あんな事が起きた。
俺が引き起こした悲劇……いや、自業自得なのかもしれない……。
「……いきなり、魔法だとか、世界だとか言われても困っちゃうよね……ごめん、はやてちゃん」
「……アニス君……」
「……何?」
「アニス君は、ズルいで……」
「………えっ?」
「そんな事、隠しとったんか……。しかも、命狙われてない言うてたのに、そっちが嘘やったんか……」
「は、はやてちゃん?」
「そこに座りぃ!!」
「は、はい!!」
いきなりはやてが大きな声を出したので、俺はびっくりしてはやての言う事を聞いてしまう。
「えぇか!ウチらは家族や!!隠し事はするなとは言わへん!!せやけどなぁ、産まれたらアカンだとか、困っちゃうよねとか!!そないな事言わんといて!少なくとも、アニス君が産まれてへんかったら、ウチは今も一人のままや!せやから……そないな事……言わんといて……」
そう言って、はやては泣き崩れてしまった……。
「は、はやてちゃん!?」
「うぅ……アニス君……グスッ……居なくなったり……せぇへんよな?」
「……うん、俺は絶対に居なくならないよ……」
「アニス君……」
「はやてちゃん……ありがとう」
「ふぇっ?」
「はやてちゃんのお蔭で、少し気が楽になったよ」
「……ふふ、そうか?……なぁ、アニス君」
「何?」
「……抱きしめてくれへんかな?」
「……はぅ……お、俺から?」
「乙女を泣かせた罰や、さぁ、覚悟決めぇ」
くっ……それを言われると……かなり痛い……。
……仕方ない……俺ははやてを車いすから抱き上げて、抱きしめる。
「ア、アニス君……大胆過ぎや……」
「う……うるさい……」
もう駄目……恥ずかしい……。
あうあうあうあうあうあうあうあうあう………。
「……すー……」
「うぇっ!?ちょっ、はやてちゃん!?」
ね、寝ちゃってる……。
でも、はやての寝顔可愛いな〜……俺ははやてを床に置き、すぐさま部屋から毛布を持ってきて、はやてに掛ける。
「泣き疲れちゃったのかな?」
悪い事しちゃったな……。
アンクにも言わないと、はやてに魔法バラしちゃったって。怒るかな?
……はぅ、それはそれでしょげるわ……。
あ……はやての寝顔見てたら……俺も眠くなってきちゃった……。
俺ははやての横で眠ってしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ただいま〜」
はぁ、何とかバイト先を手に入れた。
まぁ、何とも魔力が高いガキが一人居たが、関係者ではないので害はないだろう……。
それにしても、静かすぎる……。
いつもならアニス辺りが走って来て抱き着いてくる筈だが……。
俺は靴を脱ぎ、居間に向かう。
「……あぁ、静かな理由が分かった」
八神が寝ている傍らで、アニスがはやての手を握って眠っている。
傍から見たら姉妹に見えるな……っと、アニスは男だったな……日に日に女っぽくなってくるから複雑だ……。
「……取り敢えず、グリード、撮っとけ」
《あいよ》
何となく写真にとっておこう。
……た、他意はねぇよ!ただたまにデバイス使ってやらないとあれだと思って使うだけだ!!
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魔法はバラす物(キリッ | ||
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コメント | ||
アンクのデバイス名「グリード」だったのか・・・いいセンスだよ作者!!( °`ω°)b(鎖紅十字) | ||
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