IS《インフィニット・ストラトス》 駆け抜ける光 第三話前編〜白と可能性 |
翌週の月曜日の放課後。オルコットさんとの決闘の日。なんだけど……
「なぁ、箒?」
「なんだ一夏」
この一週間、僕と夏兄は箒さんと剣道の稽古(けいこ)を付けてくれた。僕自身は初めてで、どっちかというと実践3割、精神統一7割だった。夏兄と箒さんはずっと実践だったけど、それが問題で……
「結局、ISのことを教えてくれる話はどうなったんだ?」
「…………」
「目 を そ ら す な」
そう稽古ばかりだったということだ。
「し、仕方がないだろう。お前のISもなかったのだから」
「でも、基本的なこととか、あっただろ!」
夏兄と僕には専用機があるようで――僕は待機状態になってる――夏兄専用ISはごたついてるらしく、来ていない状況なのです。現に今も……
「お、織斑くん、織斑くん、織斑くんっ!」
第三アリーナ・Aピットに駆け足でやってきたのは、おなじみ副担任の山田先生だ。あの、一回呼んでもらえるだけで大丈夫ですよ。
「先生、落ち着いてください。ゆっくり深呼吸してください」
「はいっ。す〜〜〜〜は〜〜〜〜〜……ふぅ、助かりました」
何よりです。もっと落ち着かないと、危ないですよ。てか、この先生は本当に年上なんだろうか。今度聞いてみよう。
「山田先生はお前達より年上だぞ」
振り向けば、お母さんがそこにいた。読心術ってかなり難しいよね。
「えっとですねっ! 来ました! 織斑くん専用のISが!」
さっきから『織斑くん』って言ってるけど、僕も織斑ですからね。血は繋がってませんけど。
「織斑兄、すぐに準備しろ。アリーナを使用できる時間は限られてるからな。ぶっつけ本番でものにしろ」
「この程度の障害、男子たるもの、乗り越えてみせろ」
実の姉と幼馴染からの容赦ないお言葉だよ。まぁ仕方がないのかなぁ。
ごごんっと鈍い音がして、ピット搬入口が開く。斜めに噛み合うタイプの防壁扉は重い駆動音を響かせながら向こう側を晒していく。
「これが織斑くん専用IS『白式』ですっ!」
――これが夏兄のIS……可能性を感じる。νガンダムに匹敵するほどの可能性が。
飾り気のない無の色。眩しいほどの白と夏兄が『繋がる』。
「ISのハイパーセンサーは正常に作動しているようだな。一夏、気分は悪くないか?」
お母さんが微妙にだけど、声を震えさせている。――心配なのは分かるけど、夏兄なら大丈夫だよ。信じてあげてお母さん。
「大丈夫、千冬姉。いける」
「そうか」
夏兄のいつもの声。お母さんのほっとした声。この二人の絆がどれほどのものかが分かる。
「箒、光輝」
「な、なんだ?」
「夏兄……」
「行ってくる」
「あぁ、勝ってこい」
「大丈夫だよ。夏兄なら、大丈夫だから!」
僕達の応援を聞いて、安心した夏兄は決闘へ……
一夏VSセシリアは割愛させていただきます。
「惜しかったね夏兄」
「自分のISの特性を把握することをしないからだ」
「篠々乃の言う通りだな。全く、大馬鹿者め」
結果的に夏兄は負けてしまった。一次移行(ファースト・シフト)が終わって、追い込んだのは良かった。切りつける前にエネルギーゼロという結果だ。
「大丈夫だよ夏兄。もっと頑張れば強くなれるよ」
「ありがとう光輝。次は光輝だよな?」
そうだった……。夏兄の仇を絶対に。
「よし、織斑弟、ISを展開しろ」
「はいっ!」
返事をして僕は集中する。
『νガンダム……起動』
待ってました、と言わんばかりに多量の光が僕を包んで、消える。同時にISのハイパーセンサーが作動する。
白と黒を基調とした機体で、左肩には『ν』の文字、左腕に装備してあるシールドにはユニコーンのマークがある。一番の特徴は、左の背中半分に装備してある、放熱板――フィンファンネルだろう。
「これが光輝のIS……すごいな」
「なんというか、威厳を感じるな」
「こういうタイプのISは始めてですねっ!」
それぞれ感想を漏らすが、お母さんは違った。一度見てるしね。
『光輝、無理はするんじゃないぞ』
『大丈夫だよ、お母さん。勝ち負けじゃないから』
個人間秘匿通信《プライベート・チャンネル》で話すお母さんと僕。表情に変わりはないが、心配してくれてるのが伝わる。ありがとう。
「精一杯頑張ってこい光輝。それがいいのだ」
「光輝は光輝なりに頑張れ!」
「箒さん、夏兄……ありがとう。それじゃ、行ってきます」
僕はそう言うと、フィールドへ出撃した。
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光輝の試合前です。 | ||
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