二度目の転生はネギまの世界 第十話
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第十話「京都といえば神鳴流であろう?」

 

 

 さて、故郷の村が滅ぼされていたり、((我|オレ))以外の((真祖の吸血鬼|ハイ・デイライトウォーカー))と出会い殺し合ったりと、中々に波乱万丈な放浪生活を長々と送ってきたが、今は中国から日本に渡ってきた。未だ鎖国状態(なんて言う割にはすんなりと入国できた)であるから、江戸時代。年号を聞いたところ安政3年とのこと。詳しい西暦はわからぬが、安政の大獄が幕末だったはずなので、幕末であっていると思いたい。歴史は苦手だったのでな。

 現在の((我|オレ))は、多少背を縮めて瞳と髪を黒にして、不本意ではあるが髷を結い着物を着ている。さらに肌を黄色にし、顔立ちを東洋風にした。やや((我|オレ))の面影は残っているが、おそらく気がつくことはないレベルだ。これならば、日本人も心を開くだろう。

 

「すまぬ、そこの者」

「はあ、なんでっしゃろ?」

 

 適当に見つけた男に声をかける。ふむ、前々世が日本人であったとはいえ、日本語を離れて500年以上。イントネーション含めうまくいっているか微妙ではあったが、どうやら聞き取る程度ならいけるようだな。

 

「京へ行こうと思っているのだが、最短での道筋を教えよ」

「へえ……でしたら………………でしょうなぁ」

「ふむ、参考になった。駄賃だ、くれてやる」

 

 銭を数枚取り出し、男の手の上に乗せる。男が喜ぶような声をあげているが無視し、人払いの魔法を使用する。そのまま街道を外れて茂みに入り、影の転移魔法を発動。大体の距離と方角さえ分かれば、目的地の適当な影に出ることなど造作でもない。

 で、適当に移動した結果、遠い昔見たことがあるような場所に到着した。

 

「む……ここは、関西呪術協会総本山にして、近衛木乃香の実家……になる場所か? ならば、京都神鳴流の情報も手に入るやもしれんな」

 

 影から刀を一本取り出す。キティと別れてすぐにアフリカで習得した武術、現地の言葉で『術』という意味を持つ、ワイヲリカ族に伝わる超高度な技の数々を50年かけて習った際に、師範を務めたハーンに貰った思い出の一刀だ。彼らには居合も伝わっており、日本刀によく似た片刃の曲刀を使用していた。その中でも最高の出来であるものを我は頂いたのだ。理由を問うたら、

 

『君みたいな最高の弟子を取ることはもう無いだろうからね!』

 

 だそうだ。まあ、劣化しない肉体を保持していれば、嫌でも最高の弟子に成れる。元々様々な技術を高めるために転生したようなものだ。少々才能がなく絶望しかけた時もあったが、時間をかければいつかは頂上にたどり着けるし、たどり着く気でいる。

 今現在も、((我|オレ))は『術』を高みに上げるための訓練は欠かさん。しかし、どこまでいっても『術』には果てが見えない。あのハーン師範ですら、未だに成長を続けていると称したほどのものだ。今の((我|オレ))は当時のハーン師範を抜いていようとも、今もハーン師範が生きていると仮定した場合、おそらく足元にも及ばない。数少ない、((我|オレ))が尊敬に値すると断言できるほどのお方だ。

 

「さて、感傷に浸るのも大概にするか」

 

 刀身が80センチ程度の無銘の刀を腰に下げ、関西呪術協会総本山への階段を上がる。ほどなく屋敷に辿り着くが、不気味なほど人気がない。

 

「留守か? それにしても人気がなさすぎるが……む!」

 

 突如、右前方の桜の木の陰から、刀を抜いた人影が一つ飛び出してくる。どうやら人気がないのではなく、気配遮断を施していただけか。奇襲のためか、警戒故か……両方だな。

 体ごと振り向いた瞬間、僅かな足音が左右後方三方向から同時に発生する。どうやら、((我|オレ))を敵とみなしていたか、全力排除にかかってきたようだ。しかし、気配遮断を解かずに行動したのは良いが、足音を立てるようでは二流だ。

 鍔のない刀をすらりと抜く。鞘走りの音など立てない。ハーン師範の前でそんなことをすれば、基礎がなっていないと説教ものだ。

 

「しかし……速いが、((疾|はや))くはないな」

 

 彼らは速い。((我|オレ))の通常体術ほどはなくとも、人の枠におさまるものとしては十分速い。しかし、いくら速度が速くとも、不意を突く疾さがなくては意味がない。

 上段に構え、左足を前に出す。別名を『王者の構え』。挑戦者をすべて受け入れ、そして叩き潰す自信のあるものに許された、攻撃は最大の防御を体現する型。

 教えてやろう、京都神鳴流。((我|オレ))の学んだ、『術』の恐ろしさを。

 

 

神鳴流剣士Side

 

 突然、関西魔術協会総本山、((R毘古社|かがびこのやしろ))に踏み込んできた愚か者。それも太刀を佩いた、見慣れぬ人物。

 警戒を強め、息をひそめていた我らに下った御言葉はただ一つ。『排除せよ』。

 布陣は正面から一人、敵の注意を引きつける。注意を引けたら左・右・背後の三方向から挟み撃ちにする。達人であろうとも、そう簡単には崩せぬこの布陣。その命、掻っ切る!

 

「留守か? それにしても人気がなさすぎるが……む!」

 

 正面からの攻撃の構えに、侵入者は注意を向ける。それも体ごと振り返るという、我々にすれば願ったり叶ったりの状況だ。

 直後に、三方向から飛び出し、前後左右全方向からの挟撃。気づいていないのか、悠々と太刀を抜き、

 

「しかし……速いが、疾くはないな」

 

 そんな世迷い事をほざいて上段に構える侵入者。その油断が、貴様を殺す猛毒だ!

 あと一歩。それで侵入者の命は潰え――

 

「無重剣」

 

 ――金属と金属がぶつかり合う、キンという無機質な音が四度連続で響き渡る。一瞬ぶれた気もするが、依然奴は背中を向けたまま上段に構えている。このまま――あれ? 俺の刀は、どこに行った?

 

「やはりな。速いが疾くない。技術も程度が知れる」

 

 いつの間にか納刀した侵入者がぐるりと周囲を見渡し、そこらの地面を指さす。その指差す先を見れば、刀が4本転がっていた。

 

「京都神鳴流、この程度か」

 

 ひどくつまらなそうに呟いた侵入者は、その足で((協会|ここ))から出ようとしていた。その姿に俺は何も言えなかった。4人がかりで挑んでかすり傷一つ与えられないばかりか、彼が何をしたのかさえ理解できない俺などには、神鳴流を貶める発言に、反論など、できるはずがない。

 

「待つがよい、強き侵入者」

 

 だが、俺たちの無念を晴らしてくれる者はいる。今代の京都神鳴流最高位、青山宗一郎が。

 

 

神鳴流剣士Side out

 

 

 そこまで使える術者でなかったか、あまりに弱かった((雑種|ザコ))を無視し帰ろうかと思っていた矢先、不意に聞こえた声に再び振り返ることとなった。

 視線の先に立っていたのは、やや痩せた、それでいて不思議と力強さのある一人の男だった。

 

「私は青山宗一郎。京都神鳴流の最高位を頂いている」

「((我|オレ))の今の名は((有須輝人|アリステルト))だ」

 

 婚約者の名前をもじった偽名を告げる。たがいに名乗りあい確認しあうだけの、淡々とした会話が始まる。まるで予定調和を思わせる、静かな世界。

 

「なぜ、侵入した」

「京都神鳴流の情報を得るために」

「なぜ、情報を求めた」

「京都神鳴流の教えを請う為に」

「なぜ、貶める発言をした」

「想像以上に弱かったからだ」

 

 それもそのはず。おそらく奴も、((我|オレ))と同じことを考えている。

 ――ただ、戦いたいと。互いの技で鎬を削りあいたいと。

 

「それだけの技術を持ち、まだ神鳴流を望むか」

「成長こそが((我|オレ))の生きる意味だ」

 

 弓を引き絞るように、宗一郎の体が力をためていく。では、開幕としよう。

 

「真の京都神鳴流。((我|オレ))の前にその力を示せ」

「参る」

 

 その一言が、戦いの火ぶたを切った。我は一切動かず、相手の動きを見る。相手は太刀に手を触れることなく、滑るように接近する。わざわざ刀を佩いていながら触れもしないとは、太刀に直前まで触れぬ居合の類か。『術』にも、その技術は存在する。わざと構えぬことで、構えている状態よりも自由が利くため速く動ける――初めて聞くと気が狂っているとしか思えない技術が。

 

「破岩拳」

 

 だと思えば、拳だった。ただし気を纏い、『術』に通ずる無駄のない動きでの一撃だ。なるほど。全身で発生する力を余すことなく利用し、気で強化すれば岩をも砕くことを可能にするであろう。

 しかし。その程度であるのなら、おそらく((我|オレ))にもできる。

 

「見様見真似破岩拳」

 

 同じく無駄のない一撃を、気で強化して叩きつける。さらに激突の瞬間動きを止め、衝撃を余すことなく伝える((浪之華|なみのはな))を使用する。

 

「……っ!」

「くっ……!」

 

 激突と同時に、互いに大きく吹き飛ばされる。((我|オレ))と違い、衝撃こそ突き抜けてこなかったが、気が代わりに叩きこまれる。なるほど、これが京都神鳴流か……面白いではないか!

 

「居合斬空閃」

 

 そんな気が緩んだ瞬間を見逃されなかった。神速の居合が空を一閃。それにより生じた衝撃波にも見える気が、斬撃として襲いかかってくる。それも一撃ではない。神速の抜刀と納刀を繰り返し、次々と斬撃を飛ばしてくる。

 だが、それは((我|オレ))には当たらない。膝抜きを駆使し、ひらりひらりと隙間を抜ける。時に脛を切り落とそうとする斬撃には跳ばずに膝のみを折り曲げ、最小限の動きで回避する。

 

「貴殿も、遠距離では不利か」

「さすがにこれは、見様見真似では不可能だからな」

 

 互いに攻撃も回避も止めずに会話する。『術』には遠距離攻撃を可能とする技はない。飛び道具の使用法や飛び道具を避けて懐に潜り込む歩法はあるが、ここまでの使い手に出会うことがほとんどなく、使用回数が少なく鈍っている。だが、そろそろ体も温まってきたところだ。

 

「そろそろ行くぞ」

 

 ゆっくりと宗一郎に向けて歩みだす。歩むことで生ずる、規則的な体の揺れを完全に消す。宗一郎はまだ気付かない。((我|オレ))が既に、彼の間合いに踏み込んでいることに。

 ((我|オレ))の接近速度と現在位置を知らねば、タイミング良く迎撃はできない。そしてそれらを目測するために必要なものは、人が歩む時の体の揺れと視覚の大きさの変化だ。そして、体の揺れは接近のテンポを知る重要な要素だ。だが、それを完璧に制御されると、距離感がつかみにくくなる。結果、間合いに踏み込まれても気が付かなくなる。

 『術』の神髄は、予測の封印だと師範は言う。誰もが常に行う何気ない予測。それを封じられると、人は脆い。

 『術』の攻撃は、速くはないが疾い。相手が予測するよりも早いタイミングで攻撃が来るからだ。『術』の攻撃は、強くはないが((勁|つよ))い。相手が防御しようとする前に攻撃が来るからだ。

 間合いに入り刀を振るう。目を見開いた宗一郎が飛び退いて回避するが、その程度では無駄だ。すぐさま追いつきもう一閃。

 

「これで終わりだ」

「紅蓮剣」

 

 しかし敵も恐ろしい男だった。回避し着地した瞬間に方向転換し、炎のような熱を放つ気を纏った太刀で斬り付けてきた。あの一瞬で転じた判断力は認めよう。しかし、それは無謀だ。

 太刀が接触する瞬間、全身にブレーキをかける。((我|オレ))に伝わるは熱気だけであるが、あちらはとてつもない衝撃が襲いかかったはずだ。刀こそ手放さなかったが、体勢は崩れ大きく吹き飛ばされる。

 宗一郎が立ち上がる前に、その首に刃を突き付ける。

 

「――見事だ、青山宗一郎」

「――そちらこそ、有須輝人」

 

 そして敗北宣言を受け取り、刀を納める。周囲の数名は驚いているようだが、我や宗一郎にすれば別にどうということはない。ただ、自らの技を出し合うことが目的なのだから。そもそも殺す気があれば、先ほどの4名の命はない。

 

「敗者は勝者には逆らえないな。京都神鳴流、習っていくがよい」

「……言いだした((我|オレ))が言うのもなんだが、他流派のものを引き入れることに抵抗はないのか?」

 

 通常はそんなことは許されない。伝えられた技を他流派に奪われないためにも。しかし、なんてこともないと言わんばかりに答えを返す。

 

「貴殿が敵に回らなくなる。それだけでも十分に意味はある。秘奥までは教えられないが……見て覚えられては手も足も出ないだろうな」

 

 秘奥だろうと覚えたければ覚えればいいと。彼はそんなことを言うのか。

 

「総員、引け。この者も我ら京都神鳴流の一員となったのだからな」

「「「「は、はっ」」」」

 

 あわてたように((雑種|ザコ))共は引いてゆく。そもそも決して敵わぬ相手に敵対すること自体が誤りではあるのだがな。

 さて、京都神鳴流……いったい何年で((我|オレ))の物とすることができるのやら。

説明
放浪の末、幕末の京都へとやってきた。京都……ネギま……神鳴流に殴りこむか。
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コメント
だからっ! どうしてっ! 今更になって誤字報告がくるんだよぉぉぉ! 訂正いたしました。感謝です(翡翠色の法皇)
(バカな、誤字報告のなかったやつのコピーなのに、なぜいまさら誤字が見つかる……!?)誤字訂正しました。感謝です(翡翠色の法皇)
一因は一員では?(KU−)
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アルティメット・ファクター クロスオーバー 魔法先生ネギま! 

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