フォーゼマギカ 0話 私の最初で最後の友達
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「はーい、今日はみんなに転校生を紹介しまーす!」

それが、この日クラス担任の先生が朝一番で発した言葉だった。

転校生……それは一年に一回…いや、学校生活三年間の間に一回あるかないかのビッグイベント。

当然その言葉に誰しもが心躍らせ、いち早くグループに取り入れようとするはず。

ゆっくりと扉が開かれ…そこから噂の転校生が姿を見せた。

 

 

「あ……あの…私…あの…、あ、暁美…ほ、ほむらと言います…。よ、よろしくお願いします!」

 

 

三つ編みの綺麗な長い髪に、大きなメガネをかけた気弱そうな少女。

暁美ほむらと名乗るその少女は少し前まで心臓の病気でずっと入院をしていた。

つい先日その病気が治り、いつでも通っていた病院に行けるよう、そこから最も近いこの学校に転校してきたのだ。

内気そうな彼女は、休み時間になってもやはり、皆とは溶け込めず、質問攻めにあっても『その…』とか『えっと…』しか言わず。

これでは皆をがっかりさせてしまう……そう思い、シュンとした時だった。

 

「ごめんね皆、暁美さん…休み時間は保健室でお薬飲まなきゃいけないの。」

 

「ふぇ…?」

突然、ほむらにそう言って笑いかけてきた少女が一人。

どうやらこのクラスの保健委員らしく、『保健室の場所わかる?』と聞いてきてくれると彼女の手を取り、教室の外へと連れ出してくれた。

保健室に行きながら、その子はアハハと笑いほむらに頭を下げる。

「ごめんね暁美さん、みんな転校生なんて珍しいからはしゃいじゃって。」

「ううん…ありがとう…ご、ございます…。」

「アハハ、いいよ緊張しなくて!クラスメイトなんだから。あたし鹿目まどか!『まどか』って呼んで!あたしも暁美さんの事、『ほむらちゃん』って呼んでもいいかな?」

「えっ!?」

驚いた。

今までこんな変な名前…呼んでくれる人なんて家族か病院の先生達ぐらいしかいなかった…。

いや、そもそも転校生という事を除いてもこんなに親しげに話しかけてくれる人なんていなかった。

「で、でも変な名前だし…あんまり、名前で呼ばれた事ないし…。」

「そんな事ないよ!あたしはかっこいい名前だなぁって思うよ!」

「名前負けしてます……。」

「そうかな…?あ、だったらさ!」

「?」

 

 

「ほむらちゃんもかっこよくなっちゃえば良いんだよ!!」

 

 

 

本当に嬉しかった。

この言葉に、一体どれほど元気づけられたかわからない。

自分はかっこよくなれない……最初はそう思った。

そう、あの時までは……、

 

『魔女』に襲われるまでは…。

 

『魔女』……それは、絶望を振りまく災厄の種。

周囲に結界を張り巡らし、獲物を捕らえては殺す。

よく童話に出てくるような老婆の様な姿ではなく、人の形である事もあればモンスターの形をしている時もあるし、無機物の様な形をしている事もある。

狙われたら最後、死ぬしかない。

こんな形で死ぬなんて……絶望したほむらを救ったのは一筋の光。

 

「大丈夫ほむらちゃん!」

 

「……鹿目さん……?」

それは、ピンク色の衣装を身に纏い、弓矢を構えるクラスメイトの姿。

その隣には廊下ですれ違った事がある様な無い様な…とりあえず上級生っぽい少女が立っており、マスケット銃両手に黄色い衣装を纏っている。

何が起きたのか理解ができないほむらの隣に、白い猫の様な生き物が寄ってきて彼女に教える。

「彼女達は『魔法少女』!魔女を狩る者達さ!」

「あ、あなたは…?」

「僕はキュゥべぇ!よろしくね暁美ほむら!」

「いきなり正体がばれちゃったねほむらちゃん…クラスの皆には内緒だよ?」

 

それが、鹿目まどかとの『最初の出会い』

以降、ほむらはまどかと、まどかの魔法少女の先輩である巴マミと共に魔女との戦いを手伝う事になる。

とはいっても彼女自身は魔法少女にはならず、戦いを傍で見ているだけ。

魔法少女とは少女達の祈りをキュゥべぇこと『インキュベーダー』に叶えてもらい、その代償として魂を『ソウルジェム』と呼ばれる宝石に宿し、魔女を倒すために戦う戦士の総称。

魔女達の落とす『グリーフシード』と呼ばれる宝石を集める事で、魔法少女達はさらに力をつけていく事が出来るのと同時に、消費した魔力(穢れ)を取り除く事が出来るのだ。

この穢れを放っておいたらどうなるのか……それについてはキュゥべぇは何も言わない。

しかしそれでもまどかもマミも気にしなかった、勿論ほむらも。

彼女達の目的はただ一つ…近いうちにやってくる最悪最強の魔女『ワルプルギスの夜』を倒す事だけだった。

そして、とうとうその日がやってきた…。

 

 

 

「じゃあ、行ってくるね。」

弓を構え、まどかは背を向けほむらにそう言った。

彼女の足元には動かなくなってしまったマミの死体…『ワルプルギスの夜』やられ、ソウルジェムを砕かれたのだ。

ソウルジェムを失った魔法少女の末路は『死』のみ、しかしマミもそれは重々承知の上で、この戦いに身を投じていた。

「そんな…巴さん死んじゃったのに…!」

「だからだよ。」

壊滅する街、死した友…普通の人なら絶望するだけ絶望し、生きる気力すら無くす事態をいくつも目の当りにしながらも…まどかは笑っていた。

それはある意味諦めかもしれない、『ワルプルギスの夜』を倒せるのは自分だけだという覚悟かもしれない、ほむらだけでも守るという決意かもしれない。

まどかは笑いながら振り向くと、『ほむらちゃん』と呟いた。

 

「あたし、あなたと友達になれて嬉しかった。今でも自慢なの、あの時…貴方を救えた事。魔法少女になれて、本当に良かったって、そう思えるんだ…。」

 

「嫌……いかないで…!」

 

「さよなら、ほむらちゃん…。」

 

 

 

 

 

どうして…死んでしまうとわかっていたのに…。

この町が『ワルプルギスの夜』に壊されたとしても、誰もまどかを恨んだりしないのに…。

本当は自分の命なんてどうでも良かった、彼女が生きてくれるのならば。

どうせ消えるはずだった命、ならばせめて…まどかの力になれて死ぬ……そう出来たらどんなに良かっただろう…?

 

だから、やり直したいと思った。

 

「その祈りは本当かい?」

キュゥべぇが問いかけてくる。

勿論だ、迷いなんかない。

キュゥべぇと契約すれば魔法少女になれる、どんな祈りもソウルジェムとして輝かせる事が出来る。

ならばほむらの望む願いはただ一つ。

この願いの為になら命を……いや、過去未来全ての時間軸を掛けてもいい。

その願いとは……、

 

「私、鹿目さんとの出会いをやり直したい…。彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守れる私になりたい!!」

 

 

こうして、暁美ほむらは魔法少女の力を手に入れた。

その力とは『時間干渉』

この力により、彼女は過去の自分に今の自分を上書きする=過去に遡ることに成功。

今度は魔法少女として、まどかとマミに接触、協力した。

その強力な力ゆえに、彼女は前線では大活躍……と、言いたいが実際にはやはり守られてばかり。

しかし今度は自分も戦える…一緒に『ワルプルギスの夜』を倒せる。

そして………彼女の望み通り、彼女達はとうとう『ワルプルギスの夜』を倒す事に成功した。

成功した…はずだった。

 

その瞬間、まどかのソウルジェムが突然グリーフシードへと変わり果ててしまったのだ。

 

これが『穢れ』を取り除かなかった結末。

最悪の魔女を倒すには、最大の力を使わなければならない。

まどかは、その為に再び犠牲になったのだ。

 

『魔法少女が魔女を生む』

 

その答えを知ってしまったほむらは再び過去へと遡り、今度こそまどかを救おうと尽力。

しかし、その次もダメ。

次も、次も次も次も次も。

全部失敗、どれも最終的な結末は『まどかの魔女化』

まどかから生まれた魔女はキュゥべぇ曰く『ワルプルギスの夜』を遥かに凌駕する存在らしい。

その力は、歴戦の魔法少女達が何人も命を散らしようやく倒した『ワルプルギスの夜』を一撃で葬りさるほど。

悩んだ末、ほむらはいくつ目かの時間で出会ったまどかの言葉を思い出す。

 

『キュゥべぇに騙される前の…バカなあたしを助けて…。』

 

そうだ、簡単な事だった。

『まどかが魔法少女になる前に『ワルプルギスの夜』を倒せばいい』

そうしてほむらは今までの甘い自分を捨て、非常になりきり、まどかを罵倒してまで彼女を守り続けた。

マミが命を落とし、仲間の魔法少女である美樹さやかが魔女に堕ち、それを救う為に佐倉杏子が犠牲となり……それでもほむらは戦い続けた。

単独で『ワルプルギスの夜』に挑み、圧倒的実力の差を思い知らされ、彼女のソウルジェムがグリーフシードに堕ちかけたその時……、

 

「もういいんだよ、ほむらちゃん。」

 

まどかだった。

この時間の彼女は魔法少女ではなく、普通の中学2年生の女の子。

しかしそれでも魔法少女の戦いを近くで見続けていた彼女の眼には覚悟があった。

ほむらが何度も時間を逆行し、自分を救ってくれていると知ったまどか。

そのほむらの為に、彼女はキュゥべぇに願った。

 

 

『全ての宇宙、過去、未来全ての時間の全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい』

 

「そんな祈りが叶うとしたら、それは奇跡なんてレベルじゃない!!因果律そのものにたいする反逆だ!!まどか、君は本当に神様になろうとしてるのかい!?」

「神様でも何でもいい!!だから、これまで希望を信じてきたみんなを泣かせたくない、最後まで笑顔でいてほしい…。それを邪魔するルールなんて…壊してやる、変えてやる!それが私の願い!!さぁ、叶えてよ…インキュベーダー!!!!」

 

その願いは、宇宙そのものを救う願いだった。

勿論、まどか程強力な素質を持った者ならばそれは可能…しかし、これを行う事で彼女の人生には『始まり』も『終わり』も無くなってしまった。

それはつまり、『この宇宙からの追放』

彼女の存在は『存在』よりも上の『概念』というものに成り果ててしまい、『鹿目まどか』という『概念』を認識できるものはただ一人としていなくなってしまう。

いや、1人だけいる。

暁美ほむらだ。

まどかは消える寸前に、ほむらに言い残した。

『あなたは私の最高の友達』

その言葉と共に自身のリボンをほむらに託すと、まどかの姿は徐々に消えてきた。

彼女曰く、『皆を迎えに行く』そうだ。

これから彼女は魔女に成り果てた全ての魔法少女達を救いにいくのだろう。

 

『じゃあねほむらちゃん、いつか…またもう一度会えるから…。』

「嫌……いかないで…まどか…!」

 

そうして消えていく鹿目まどか。

『概念』という名の『神』になった彼女は、この宇宙とはまた別の空間へと……その姿を消していった。

 

 

 

「まどかぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから三年後…天の川学園高校二年B組

ほむらはいつも通り、窓の外から景色を眺めていた。

窓の外では丁度三年生が体育の時間でマラソンをやっており、ほむらの仲間である巴マミも同学年である風城美羽と共に並んで走っている。

まどかが全ての魔女の存在を『無かった』事にした為、本来魔女に殺されたはずのマミもこうして生きている。

同じ様に魔女となった美樹さやかを助けようとした佐倉杏子も生きており、この学園に通っているがクラスは別。

しかし、そのさやかの姿はどこにもない…。

たとえ魔女が出現しなくなったこの世界でも、人の世の恨みや闇が消えるはずはない。

それを付け狙い、今度は『魔獣』というものが出現しだした。

さらにそれに合わせて、最近ではまた別の『闇』の存在が確認されている。

少し離れた席に座る歌星賢吾と城島ユウキがそれについて調べているそうだが、ほむらには関係ない。

彼女の標的は『魔獣』…これが今の魔法少女達の駆除対象。

魔女とは違い、魔法少女達が堕落してなる存在ではなく、あくまで別個の存在。

まどかのおかげなのか、ソウルジェムが黒く染まっても彼女達は魔女にはならず、そのまま消滅するのみ。

この当たり前の様な風景が、鹿目まどかによってもたらされたものだとは誰も知らない、いや……『知ることができない』

これを知っているのはほむらだけ、マミにも杏子にもわかるはずが無い、もちろんキュゥべぇにも。

 

「はーい、今日はみんなに転校生を紹介しまーす!」

 

友達はいらない、いれば、その子は魔獣の標的にされる。

だから友達は作らない……ずっとそれでいいと思ってた、そうでなければならないと思っていた。

あの男と出会うまでは……、

 

 

「俺は如月弦太朗!!俺の夢はこの学園の連中全員と友達になる事だ!!よろしくな!!」

 

(………暑苦しい男…バカみたい…。)

如月弦太朗と暁美ほむら。

仮面ライダーフォーゼと魔法少女。

ソディアーツと魔獣。

そして、スイッチとソウルジェム。

これは、如月弦太朗と暁美ほむら、そして仮面ライダー部と魔法少女達が繰り広げるハイスクールストーリーである。

 

 

   第0話 私の最初で最後の友達

説明
鹿目まどかが『ワルプルギスの夜』を倒し、全ての魔女を消し去ってから3年後…天の川学園高校二年生になった暁美ほむらのクラスに、あの男が転入してきた。

「俺は如月弦太朗!!この学校の連中全員と友達になる男だ!!」

彼の発足した『仮面ライダー部』と共に、ゾディアーツ、そして『魔獣』との戦いに身を置くほむら。
そして、彼女の出した結論は…?
これは、如月弦太朗と暁美ほむら、そして仮面ライダー部と魔法少女達が繰り広げるハイスクールストーリーである。

宇宙キターーーーーーー!!!!!!!!
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コメント
始めて感想を書き込みます。ymaです。にじファンの頃よりバース・ディさんの作品は拝見させていただいてました。あのまどマギにフォーゼをクロスさせるという発想にも驚きましたが、後日談とはいえ、あのまどマギの鬱な雰囲気をフォーゼがうまく払拭しているというのは実に良いですね。続きを楽しみにしております。(yma)
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仮面ライダーフォーゼ まどかマギカ 

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