鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第六十話
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〜バンエルティア号〜

 

ハロルドとリタが少し暗い雰囲気で船に戻って来た時、

 

『おかえりなさい』

 

ただ、それだけの言葉が響いた。

 

『……………』

 

リタは、ただムスっとした顔で何も語らず、研究室に戻ろうとしていた。

 

『どうしたの?』

 

『エドに会った。』

 

リタがそう答えると、辺りの空気が変わった。

 

全員、リタの言った言葉興味津々のようだった。

 

『エドワードさんに会ったのですか?』

 

『師匠は、今は何をしていましたのです?お腹を空かせてないか、心配で…』

 

『そんな心配は、微塵も要らないと思うけどね』

 

リタは、そう一言だけ返した。

 

『で、今はどんな事になってたんだ?』

 

『知らないわよそんなの。』

 

リタは適当に返した。

 

あまり、奴の事は話したくない。そんな空気がだだ漏れていた。

 

『いやそれがね、私もビックリしたのよ。エドちゃん、ライマ国の騎士団に入隊していて…』

 

『ちょっとアンタ!!』

 

軽い口で話したハロルドに、リタは怒りの声を上げた。

 

『騎士団?』

 

ユーリが、その言葉に反応をした。

 

『アイツ、騎士団なんかに入ったのか?』

 

『そ、騎士団の服は着てなかったけどね。結構イメージ変わったような気がするわ。』

 

ハロルドが言い終えると、ユーリはまた、考え事をした。

 

『ふーん……騎士団か。リタが暗くなるにも納得するな。』

 

『どういう意味?』

 

リタはユーリを睨みつけたが、ユーリの反応は薄かった。

 

『それにしても、一番驚いたのは、やっぱりゲーデって言うの?そいつを見事仲間に入れた事よね。』

 

ハロルドがそう言うと、ゲーデを知っている者達が、一瞬沈黙し、

 

ざわめきだした。

 

『え?ゲーデって……あの、村の皆の命を石に変えた……』

 

瞬間、何かが落ちる物音がした。

 

入り口に立っていたイアハートが、持っていた剣を地に落としたのだ。

 

先程の話を聞いていた。という状態へと、

 

『ハロルド!』

 

リタが、慌てたような様子でハロルドに怒鳴りだした。

 

イアハートの表情は、固まったままだ。

 

『…………………』

 

その表情は、どこを見ているか分からない。

 

『あ………』

 

リタが声を出したが、その前にイアハートが声を出した。

 

『……エドが…ゲーデを仲間に…………』

 

その言葉を繰り返すように言うと、リタは居た堪れない状態となった。

 

ショックを受けているのが、身を受けて分かる。

 

そもそも、イアハートは心に傷を負いすぎている。

 

このままでは、本当に精神が狂いかねないだろう。

 

『そっか………そうなんだ…。』

 

イアハートは、剣を拾って、鞘に入れた。

 

そして、笑顔になった。

 

『やっぱり、エドは変わらないね。凄いなぁ。』

 

その表情には、曇りは一片も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ライマ国騎士団〜

 

『…………………』

 

エド達が、新しい仲間を騎士団に連れて来た時の全員の反応は

 

沈黙、だった。

 

『………あの、エドワードさん。』

 

『ああ、紹介するよ。こいつはウリズン帝国を滅ぼした張本人だ。今日から仲間になる』

 

エドは、淡々と説明をした。

 

だが、ほとんどの者は、この状況を理解しきれて居なかった。

 

『……エド、ギャグだよな?』

 

『違う』

 

エドは即答した。

 

『確かに、過去はこいつとは敵だ。今もこいつはムカつくし、殺意だって湧いている。だがな、今や目的は同じなんだ。共に手を組む事が有意義だと思ってる。』

 

『…………』

 

全員は、しばし黙り込んでいた。

 

こいつの目的は、世界を破壊すること。

 

一見、とんでもにあ目的のように思えるが、今の自分達の目的と変わらない。

 

『そうか』

 

ルークが言い終えた瞬間、瞬時に剣を抜き、ゲーデの前に現れた。

 

剣を突き出し、ゲーデの目の前に突き出した。

 

だが、ゲーデもノーモーションで床を壁にして作り出し、剣から自分の身を守った。

 

剣は、壁に突き刺さり、身動きの取れない状態だ。

 

『……………』

 

そのまま、二人は動かない。

 

『……殺さないのかよ』

 

ルークがそう言うと、ゲーデは鼻を鳴らした。

 

『敵でも無い奴に殺す価値は無い。』

 

皮肉のようなその言い方に、ルークは舌打ちをした。

 

その奥で、ジェイドがこの状況を見て、拍手していた。

 

『これはこれは、随分有能な方が騎士団に志望してくれましたねぇ。』

 

拍手しながら、ゲーデの元へと歩き近づく。

 

『昨日のエドワードさんとアルフォンスさんの入団に続いて、我が国の騎士団は調子が上手く流れていますよ。』

 

『…………しかし、』

 

ジェイドの奥に居た姫、ナタリアは少し不安な表情をしていた。

 

『この方は、一つの国を滅ぼしたお方…でしょう?その…』

 

『それが、どうした?』

 

『………本当に、この国に留まらせて、良いのでしょうか、と疑問を感じて……』

 

ナタリアが言い終えると、ゲーデは更に呆れた表情をし、俯きながら答えた。

 

『今の人間の目的が、世界を殺す事なら…俺にもう人間を殺す理由なんて無い。敵になる理由もな。』

 

ゲーデはそう言って、そっぽを向いた。

 

『俺を捨てたこの世界の支配者。そして俺を殺そうとする野郎。今の所、俺の敵はそれだけだ。』

 

『それはつまり、私達が貴方に危害を加えなければ貴方も絶対に我が国の者に危害を加えるつもりは無い。そう捕らえて良いのですね?』

 

『さっきからそう言ってるだろうが』

 

ゲーデは、鬱陶しそうな顔で言い払った。

 

『それが嘘で無ければ、私は大歓迎ですよ。試験を通さずとも、国を一つ滅ぼした貴方なら、入隊はフリーパスのような物です。』

 

瞬間、ジェイドの笑顔は無表情に変わった。

 

『ですが、』

 

ジェイドは、槍を持ち、ゲーデに向けて投げ放った。

 

槍は、ゲーデの頭のすぐ横の壁に突き刺さる。

 

『貴方が私達を攻撃しようとした、その時は直に死罪へと変ります故。よく心に刻みますように。』

 

『……本当に、お前ら人間は用心深かったり浅かったり、良く分かんねぇ野郎だな。』

 

ゲーデは壁に突き刺さった槍を抜き取り、錬金術ですぐに灰へと変えた。

 

笑顔に変ったジェイドは、次に優しい口調で話を進めた。

 

『済みませんねぇ。貴方は一応、心強い味方と同時に危険人物となっていますので。ではまず、貴方の部屋を紹介しましょう。』

 

ジェイドは、手招きせずに直に振り返り、歩いた。

 

ゲーデは、その後へと着いて行く。安易に背中を向けている辺り、ジェイドは一応ゲーデを信じたようだ。

 

『………エドワードさん。本当に大丈夫なんでしょうか。』

 

ナタリアは、エドに不安の疑問をぶつけた。

 

『ん?』

 

『いえ…。あの方が我がライマ国の騎士に素直に所属して頂ければ、心強いのですが、いつ裏切られるか、利用されるか不安で…。』

 

『裏切られるのはともかく、利用されるのは別に良いだろ』

 

エドがそう言うと、ナタリアは少し驚いた表情をした。

 

次に、ルークが少し怒りの表情をしている。

 

『おいエド!あんな野郎に利用されたりこき使われたりとか!ムカツクとは思わねぇのかよ!!』

 

『俺達騎士団もあいつを利用しようとしてるじゃねえかよ。』

 

エドがそう言い放つと、ルークは何も言い返さなかった。

 

『兄さん、そんな言い方……』

 

『アルも甘い事を言うな。今これからやろうとしている事は、戦争でもない、大戦争でもない、最終戦争だ。』

 

最終戦争(ハルマゲドン)

 

エドがその言葉を吐いた瞬間、辺りが静まり返った。

 

『俺達も国一つ滅ぼしたあいつに利用されて、俺達も国一つ滅ぼしたあいつを利用する。黒くて汚えだろうが、そうでもしねぇと勝てない。』

 

もうすぐ始まる、全ての問題が掻き消される事

 

世界との、最終戦争

 

 

 

仲間を殺した白いカノンノの姿が思い浮かび

 

エドの目は、どこか遠くを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜廊下〜

 

『エドワード・エルリック』

 

誰かに呼び止められ、振り向くと、エドは普通の仲間に接するような表情をした。

 

『なんだ、ゲーデか』

 

『……お前のその神経はなんだ?短期で強情かと思えば、直に受け入れられるような神経。』

 

ゲーデは、真剣に疑問を感じた目でエドを見つめていた。

 

『チビと言われたら、容赦なく襲い掛かるくせに』

 

『だぁれぇがぁぁミジンコマイクロドチビかぁ―――――ッ!!!!!』

 

瞬間的に敵意と怒りの表情になり、エドは拳を握り締め、ゲーデに襲い掛かった。

 

だが、ゲーデは手を出そうとせずに、ただ横に移動し、避けた。

 

エドの拳は壁にぶつかり、衝撃はエドに襲い掛かる。

 

『〜〜〜〜っ!!!』

 

手を押さえながら悶えるエドを見て、ゲーデは冷めた目を向けていた。

 

『いつも通りだな』

 

『その前に俺にチビって言った事に謝罪しろ…!』

 

『ごめん』

 

口だけを動かして、謝罪した。

 

『……ったく。いきなり呼び出したと思えば、まだ不満があるってのか?』

 

『ある』

 

『即答だな…』

 

人間じゃないからか、ほとんど容赦の無い受け答えをしていた。

 

『……人間と組む事、その事は特に気にする事では無いが、今の人間は俺に敵意を抱いているはずだ。なのに』

 

ゲーデは、腕を組んで壁に背をつける。

 

『何故、お前らは俺を仲間だと迎え入れた?』

 

『勘違いするな。お前はあくまで仲間だ。味方じゃねぇ』

 

エドも同じように、腕を組んで壁に背をつけてもたれながら答えた。

 

『お前が一人でも人間を殺せば、すぐに関係が破綻するような、そんな薄っぺらい関係だ。』

 

『それはお前にも言える事だろう。お前が人間を一人でも殺せば、騎士団から省かれる』

 

『俺は既に、人を殺めたんだよ』

 

エドは背にもたれ、天井を見上げた。

 

『……前のギルドでな』

 

エドがそう言い終えると、次にエドは笑い出した。

 

『その時の俺は、お前と似たようなもんだ。目的の為ならと、人を殺した。仲間を守る為に、一人の人間を俺の手を殺したんだ。』

 

『随分人間臭い言い訳だな』

 

エドは、壁から離れ、歩き出す

 

『でも、前のギルドでは仲間だけじゃなくて、味方だった。だから、出て行くのにも反対されたんだけどな』

 

エドは、その時の事を思い出す。

 

嘘つきと言われた、イアハートの言葉。

 

笑って見送ってくれた、オッサン達

 

哀しそうな顔で見送った、仲間達

 

ムカツク大佐

 

泣いてくれた少佐

 

いつも通りの中尉

 

そして、最後まで俺を引きとめようとした。カノンノ

 

『美しい人間関係なこったな』

 

ゲーデは、皮肉そうにそう言った。

 

『ははっ、確かにな。思い出すと可笑しいぜ。』

 

この、俺の笑いはどこから来ているのだろう。

 

疑問を感じながらも、俺は笑っていた。

 

『…少しだけ、お前が羨ましく思った俺がムカつくと感じる程だ。』

 

『へぇ、お前も人間になりたいと思ってんのか?』

 

振り向くと、ゲーデはこちらを見た。

 

『お前の様な身長にはなりたく無いけどな』

 

エドは床から錬金術で槍を数本作り出し、それを持ってゲーデを追いかけた。

 

『くたばれぇぇぇぇ!!!くたばりやがれぇえええ!!!人間の敵がぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!』

 

エドは持っている槍を、一本ずつゲーデに投げつけて、攻撃しようとしている。

 

ゲーデは、一切手を出そうとせず、ただ逃げ回っていた。

 

その光景を見たルークは、少し驚いた表情をし、エドを呼び止めた

 

『うおっ!!……おいエド、何してんだ?』

 

『手伝え!あいつ殺すぞ!!』

 

エドはそう言って、床から武器を練成した。

 

ルークは、エドのセンスで作られた武器を見て、少しだけ興奮した。

 

『かっけー武器だっ!』

 

武器を持って、エドが追いかけている相手を見た。

 

ゲーデだった。

 

ルークは好都合と感じた。楽しくなっていた。

 

『よっしゃ!行くぜエド!!』

 

『ゲシャシャシャシャシャシャ!!!!!!』

 

二人は大量の武器を持って、逃げるゲーデを追いかけた。

 

ゲーデは一切手を出そうとせずに、ただ逃げ回っていた。

 

その様子を偶然見たアルとティアは、呆れた声で溜息を吐いた。

 

『………仲良しね。あの二人はいつも』

 

『ええと……ゲーデさんが、何かやらかしたのかな……。』

 

そう思って、逃げているゲーデの方を見た。

 

『…………あれ?』

 

少しだけ楽しそうに笑っている表情が、ゲーデに現れているのを

 

見たように感じた。

 

見間違いかも、しれないけど

 

 

 

 

〜バンエルティア号〜

 

ソフィは、部屋の中でアスベルから教えてくれた花を育てていた。

 

自分の名前の由来にもなった、優しい花の名前

 

クロソフィ

 

この名前を気に入っていたソフィは、部屋にも花を育てる事にした。

 

最も、最初に育てようと提案を出したのはアスベルだが。

 

育てていたのも、ほとんどアスベルだった気もするけれども。

 

アスベルが居ない今、ソフィが代わりに花の世話をしている。

 

アスベルが大切に育てて来た理由も、今なら分かる気がする、

 

新しい感情、眠っていた感情が生まれそうになっていた。

 

『水は……』

 

ジョウロと言う物に水を入れる事は知っているのだが、

 

ジョウロの持ち方は、良く思い出せなかった為、胴体の方を持って、水を挙げていた。

 

持ちにくい上に、傾け辛く、結構な重労働だとソフィは感じた。

 

水をやり終えた後、片付けようと手を動かそうとした瞬間、扉の叩く音が聞こえた。

 

『ソフィ、入るよ』

 

女性の声と共に、扉は開かれた。

 

『あーあー。ジョウロはそんな持ち方じゃないよ。』

 

緑色の髪。浮いているように軽いスカート

 

『……ファラ』

 

『貸してみ、ちゃんとした持ち方、教えてあげる!』

 

『……良い。もう、終わった所……』

 

そう言いながらも、ジョウロを離そうとしなかった。

 

『そ……そう。』

 

ちょっとだけテンションが下がった様子で、ファラは返答した。

 

そして、次にベッドの方へと歩み寄る。

 

『ちょっと、良いかな?』

 

『どうぞ』

 

素っ気無い返事のやりとりで、なんとか会話が細く繋いだような感覚だった。

 

ファラは、ベッドに腰を下ろして、息をついていた。

 

『………ジーニアス君が、記憶喪失…なんだって。』

 

ファラがそう言っても、ソフィは何も返答をしなかった。

 

俯いたまま、動こうとしない。

 

『……ルカ君も、居なくなっちゃったし、スパーダ君も、去っちゃったし、エステルさんも錬金術の禁忌に触れて、大変な事になったし、エドワード君も…解雇されたし……。なんだか、色んな事が起きてるね。』

 

ファラは、遠い目をしながら、何も無い壁を見ていた。

 

『……呪われてるのかな、私達』

 

また、ファラは俯いた。

 

思えば、ギルドのメンバーも結構減ってきた。

 

その度に、寂しく感じるのも、確かだった。

 

『あっ…でもね、つい最近リタさんとハロルドさんがエドワード君に会ったみたいなの。』

 

『………そう。』

 

出会う事は、必然だと思っていた。

 

そして、いつか永遠の別れが来ることも、覚悟している。

 

まだ、その時で無い為、そこまでの驚きは無かった。

 

『今、ライマ国の騎士団をしているんだって。それでね、エドワード君がウリズン帝国を滅ぼしたって噂の、ゲーデって言う人を仲間に入れたんだって。』

 

瞬間、ソフィの持っていたジョウロはソフィの握力により粉々に砕かれた。

 

『っ!!』

 

その硬くて大きな音に、ファラは驚いた。

 

『ソ……ソフィ?』

 

ソフィの目は、どこかどす黒い何かが潜んでいるように見えた。

 

『…………ゲーデ…』

 

ソフィは、その名を口に出した。

 

『ゲーデ…………』

 

そいつは、ウリズン帝国を滅ぼしたと同時に、ソフィの大切な人を奪った人。

 

『…ゲーデ…』

 

今、殺したいほど恨んでいる人。

 

『………エド…ワード……!』

 

ソフィの目は、殺意で赤くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ライマ国騎士団〜

 

『……調査?』

 

エドは、依頼をしてきたジェイドにそう聞き返した。

 

『ええ。あのバカでかいキバみたいな物質、あるでしょう?』

 

オルタータ火山の中にある、あの巨大な物質

 

ラザリスが作り出した、もう一つの世界の物質

 

『出来る事なら、あれを消してくれたら嬉しいのですが。』

 

『出来るか!んな事!!』

 

『あれぇ?貴方、錬金術師じゃありませんでした?分解する事が出来るなら、あんな物も時間をかければ消滅できますよね?』

 

かなりの無茶ぶりを平気で言葉に出すそいつに、エドは怒りを通り越して呆れを感じた。

 

当然、怒りで腹が煮えくり返り、顔の血管も浮かび上がっているのだろうが。

 

『…………別の世界のあんなわけの分からん物質、分解できたら苦労しないぜ』

 

かの精霊、イフリートでさえあの物質に勝つ事が出来ずに、吸収されて事が切れてしまった。

 

精霊であるにも関わらず、死んでいると感じたくらいだ。

 

もし生きていても、ろくに動けてはいないだろう。

 

『特別騎士NO,16:エドワード・エルリック様。ジェイド大佐からの依頼がございます。』

 

『ほらほら呼んでますよ。早く行かないのですか?もし依頼に背くのならば、特別騎士に対する軍法大会議にかけて逮捕しても良いのですよ?』

 

こいつ………

 

『……………くそったれ!!』

 

エドは、親指を下に向け、ブーイングのポーズをジェイドに見せてから、受付の方へと向かった。

 

あいつは、現時点でマスタング大佐よりも嫌いになっていた。

 

だからと言って、マスタングに愛着が湧いているわけでも無いが、というか気持ち悪い。

 

くたばれば良いのに、二人ともくたばってしまえば良いのに。

 

受付の前に来ると、依頼内容を受付の人は言い放った。

 

『依頼内容は、オルタータ火山内に発生している、例の未知物質の第5調査。同行者はNO,1とNO,2、そしてNO,3、NO,18です。』

 

NO,1とNO,2、そしてNO,3

 

『………で、その同行者って誰だ?』

 

『先ず私です。』

 

ジェイドは、手を自分の頭の位置にまで上げて、主張した。

 

『おやおや?随分と不満そうな顔ですね。』

 

エドは、露骨に嫌そうな顔でジェイドに睨みつけていた。

 

『ジェイドは大佐であると同時に、科学者であるからな。調査となれば、妥当の判断だろう。』

 

次に、ツンツンした赤髪の野郎が現れた。

 

『あ、この方がNO,3のアッシュさんです。』

 

『………ほう、随分と癪に障る顔をしているな』

 

アッシュは、エドの更なる露骨に不満そうな顔について、鬱陶しそうに相手にした。

 

『そもそも、こんな依頼に5人も行く意味が分からん。特にこのチビは留守番でもさせた方が良いのでは無いのか?』

 

『誰がチビだ!!このツンツン頭ぁ!!痛い目合わせるぞゴラァアアア!!!』

 

エドは、アッシュに露骨に気に入らない心情を曝け出し、アッシュに突っかかった。

 

アッシュはほとんど無視した。

 

『それに、出来損ないのルークと新入りを共に俺を向かわせる意味も分からん。編成班が腐ってるのでは無いのか?』

 

『いえいえ。私達は特別騎士団である故、これが妥当な判断とも言えるでしょう。』

 

『特別騎士にも、階級をつけるべきだろう。』

 

どちらも人を見下す奴らである為、エドはどちらも気に入らなかった。

 

『だったら俺はお前よりも階級上だ!!俺はNO,1!!特別騎士ナンバーでは俺が一番上なんだからな!!』

 

『特別騎士番号は入隊順の番号だろう。そんな名称、意味など無い。勝手にほざいていろ』

 

『んだとてめぇ!弟のくせに俺にぐだぐだ言ってんじゃねぇ!!』

 

喧嘩になりそうな所、アルとジェイドが仲裁に入った。

 

『まぁまぁ二人とも、落ち着いて……』

 

本当にこのメンバーで大丈夫なのだろうか。

 

不安が隠しきれないアルは、少しだけ溜息を吐いた。

 

『新入り』

 

『あ?』

 

次にアッシュは、ゲーデに目を向けた

 

『貴様が国を滅ぼしたか知らぬが…どうせ貴様もこのミジンコと同じ魔術に頼らねば何も出来ない輩だろう?』

 

『誰がミジンコだ!!』

 

『この騎士団では、そのような奴は無駄であり、命に関わるだろう。退隊までとは言わないが、この依頼はお前が引き受けるべきでは無いのでは無いのか』

 

アッシュの言葉に、ゲーデは顔色一つ変えずに見つめた。

 

『つまり、俺は足手まといというわけか』

 

『そう言う事だ』

 

その言葉に、エドとルークは別の怒りの感情が湧いた。

 

『!!……おいてめぇ!!』

 

だが、二人の気も知らずに、ゲーデとアッシュは会話を続けた。

 

『だったら見捨てれば良い。俺が死ぬ時は体内の賢者の石の力が尽きる事だろうだが、そんな物使わなくとも』

 

ゲーデは、手を変形させて、その手から黒いオーラのような物が溢れるように燃えるように表れた。

 

『軍隊一つ出来そうな程の数の人間殺す事なんて、なんて事無い。』

 

そのオーラを見て、アッシュは鼻を鳴らした。

 

『……ふん。結局は魔術の使いようでは無いのか。』

 

『そうかもしれないな。俺はお前ら人間の作りとは違う。どうしても人間の使えない”何か”が溢れるんだろうな。』

 

空気が、より一層悪くなってきている。

 

その中で、アルが再び仲裁に入った。

 

『ま……まぁまぁ、仲良くしましょうよ。これから行く調査には、きっと皆の力が必要だから、この編成の結果だと思うますよ。』

 

アルがそう言うと、エドとルークは納得行かない顔をしながらも、前を向いた。

 

『………まぁ、ここで言い合ってもしょうがないな。』

 

『…………』

 

これ以上の議論は無駄だと感じたのか、アッシュも既に口を閉じていた。

 

『では、調査に向かいましょうか。』

 

ジェイドがそう言った瞬間、エドは一瞬不安を感じた。

 

そして、多くの事が頭によぎった。

 

本当に、このパーティで大丈夫なのだろうか。

 

本当に、このパーティで上手く行くのだろうか。

 

『ったく、アッシュの野郎…すっげームカツクよな?エド』

 

『まぁな』

 

この、仲の悪いパーティで、本当にやっていけるのだろうか。

 

正直、嫌いな奴が三人程居る。

 

このパーティに

 

『行ってらっしゃい。兄さん』

 

アルは、兄であるエドに向かって小さく手を振った

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その2
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