魔法戦記リリカルなのは聖伝 〜SDガンダム・マイソロジー〜 プロローグU−始まりの終わり− |
「ありがとう、時也。貴方は本当に姉思いな子ね。」
素顔を隠していた複眼の仮面を外し、ビームライフルを構えたガンダムの姿の『月宮(つきみや) 時也(ときや)』と対峙するマイシス総帥『エイロス』の正体…時也の実の姉『月宮(つきみや) 時音(ときね)』は微笑を浮かべながらそう告げる。
「姉さん…いや、エイロディア!!! お前だけは…オレ達が止める!!!」
「あら、今更私達を止めた所で何になるって言うの? 大破壊はもう始まっているのに。もう手遅れよ…あの愚か者達のお蔭でね。」
鈴の鳴るような声で嘲笑しながら時音はガンダムの叫び声を嘲笑う。彼女の言葉通り、マイシスにより引き起こされた大破壊により、全ての次元世界は次々と崩壊、消滅して行っている。
「そんな…それじゃあ、私達のして来た事って。」
「全部私達の為になってくれた。ありがとう、貴女達機動六課と時也達の働きには心から感謝してるわね。」
呆然と告げる青い髪の少女『スバル・ナカジマ』の言葉に対して時音は何処までも優しく、残酷に彼女の言葉を切り捨てた。
「そんな…私達…私……何の為に時也さんと…何の為に…みんなは…。」
「スバルちゃん…。」
呆然とマイシスによって積み上げられた犠牲の…互いに惹かれ合いながらも戦うしかなかった思い人との戦いの結果に呆然と呟く彼女の名を呼ぶが…そんな彼女へとかける言葉は浮かんでこない。
『高町 なのは』を除く機動六課の隊長陣・副隊長陣とスバルを除くフォワード達はハーディアとガンダムによって時音(エイロス)による洗脳が解けた事で、彼の仲間となったフリーダム、デスティニー、ゴッドとの戦いで既に相打ちに近い形で戦闘不能となり、彼女等と戦った彼等三人も既に聖獣を呼び出す事も出来ない程に消耗してしまっている。
そして、なのはは…スバルと共にガンダムと彼の聖獣ハーディアと戦っていた最中に不意を付く形で乱入した『天津 翼』の『バインドウイングガンダムゼロ』の剣で腹部を貫かれ、現在は機動六課の本部となった次元航行艦『アースラ』でヴォルケンリッターの『湖の騎士シャマル』による治療を受けているが意識は戻っていない。
そして、彼女の撃墜と共にマイシスはエイロス…時音のもう一つの姿である『キュベレイ』と彼女の聖獣『ウラノディア』により管理局本局の上層部の乗る次元航行艦を撃墜。
それを合図にして残された最後の聖獣使い(バインドユーザー)『クロスボーンガンダム・フルクロス』の率いる部隊である海戦部隊が時空管理局の艦隊に大打撃を与え、多くの船を撃墜させた。『クロノ・ハラウオン』もその戦いの中で帰らぬ者となった。
本来、かつてゴッド達が率いていた地、空、海の三部隊は同格だが、実は最強を誇っていたのは、クロスボーン率いる海戦部隊である。
親衛隊以上に少数精鋭…『ガンダム試作一号機』、『リックディアス』、『ジオング』、『スーパーガンダム』等、一騎当千のバインド使い達による部隊…それが海戦部隊なのである。
時音は時空管理局…もっとも、評価していなかった相手であるそれを最大限に利用しマイシスにとって最強の敵である時也達四人の聖獣使い達を消耗させ、その戦力の大半を削る事に利用したのである。
マイシスの攻撃より生き残った一部の上層部は密かに回収していたロストロギア『アルティメシア』を起動させたのだが…それが、時音の狙いだったのだ。
既に失われた四つのそれを含む五つの『アルティメシア』…それの所在を知る事が時音の…マイシスのこの戦いを引き起こした目的だったのである。
「あの愚か者達…いえ、時に愚か者は賢者以上の働きをしてくれるわね。貴方達の立場にしてみれば、愚か者達の行動は結果的には救いだったわけだしね。」
そう言って彼女は巨大な黒いガンダム『サイコガンダム』へと指示を出す。
その指示ともにサイコガンダムの右腕は禍禍しく肥大化し『バインドサイコガンダム』へと変貌し、禍禍しさを増した右腕からビームを放つと海戦部隊と戦う艦隊へとビームが降り注ぐ。
「あの愚か者達のお蔭でもう一つの究極聖獣(アルティメット・マイソロジー)のパーツはこのサイコの右腕を除いて全部失われちゃったわね。だから…私達はこの世界をやりなおすの…。大破壊を持ってね。」
「っ!? まさか…。」
彼女の言葉の意味…聖獣の研究に関わっていた時也と“ガンダムの記憶”があるからこそ全てが理解できる。
記憶の中で同じ様にガンダムやゴッド達はキュベレイの率いるマイシスと戦っていた。…その戦いの中でハーディアに似た白銀の聖獣と究極聖獣“エイロディア”の激突により、引き起こされた大破壊によって全てが滅んだ瞬間まで記憶していた。
そして、大破壊の先に有る世界が…ガンダム達の力を宿した聖獣(マイソロジー)が残され、再構築された世界こそが今の次元世界に当たる。
ガンダム達の記憶が残っている様に、聖獣の力を一部でも宿した者はその記憶を再構築された世界へと引き継ぐ事が出来る。MS達の力を手にした者でさえ彼らの記憶を知る事が出来るのならば…同一人物ならば、ほぼ完全に次の世界へと記憶が引き継がれる可能性は高いだろう。
だが、それは100%とは言えない可能性…。結果的に全次元世界の全ての生命を犠牲に彼女は…。
「理論の上では私達、聖獣使い(バインドユーザー)やバインド使いは大破壊による世界の再構築によって記憶を失う事はないわ。現在ではなく過去なら、今の情報から全てのパーツを得る機会が巡ってくるわ。」
意図的に引き起こした大破壊により、己の目的の為に世界を遣り直すつもりなのだ。己の目的を果す為に。
「はっ、良いねぇ! 存分に暴れられる訳だ。野郎ども、過去への航海だ、乗り遅れるんじゃねぇぞ!!!」
首長龍を連想させる聖獣『ポセイディア』の背に乗り現われるのは雄叫びを揚げる海戦部隊を率いる狂戦士(ベルセルク)クロスボーンガンダム・フルクロス。
「総帥。私と親衛隊各員…一名も欠ける事無く最後までお供いたします。」
鎧武者を連想させる人型の人造聖獣『ヘルメディア』の肩に乗り現われ片膝をついてそう告げるのは、なのはを撃墜しただけでなく、管理局で唯一のバインド使いの資格を得たスバルの家族の命を最も多く奪った男…親衛隊長のウイングゼロ。
「ありがとう、二人共。それじゃあ、時也…楽しみましょう。この世界の最後の宴を…。ユニオン。」
二人の従者へとそう告げ、時音はその姿をキュベレイへと変え、ウイングゼロ、クロスボーン、バインドサイコガンダムへと命令を下す。
「お前は!!! よくも…よくも、なのはさんを、ギン姉を、父さんを、みんなを!!!」
「待て、スバルちゃん! くっ。…悪いが…エイロディア…お前を次の世界に残す気はない!!! ハーディア!」
難い仇の姿を見て飛び出して行くスバルを止めようとするが、尊敬する人を、姉を、家族を奪った相手への憎しみを抱いた彼女を止められず。既に起こってしまっている大破壊を止める術はない。せめて実の姉を邪悪な聖獣の意思から解放し様と考え、ハーディアを呼び出しスバルと共に時音達へと向かって行く。
姉を含む一対一では勝ち目がないであろう強敵が四人…それを己とスバルの二人だけで戦うと言う事実に対する絶望はガンダムの中にはない。狙うは…次の世界へと向かおうとする悪意を討つ事…悪意を宿したキュベレイだだ一人なのだから。
「エクリプス…。」
「ディバイン…。」
「…あら、残念…時間切れよ…時也。」
ガンダムとスバル…二人の持つ最大の一撃を放とうとした時、時音の告げるその言葉を合図に二人の視界は白く染まった。
世界が消える瞬間、世界の終わりの時、この時を持って…全ての次元世界の再構築は始まったのだ。
プロローグ・了
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始まりの終わり。それは、新たなる戦いの始まり | ||
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