魔法戦記リリカルなのは聖伝 〜SDガンダム・マイソロジー〜 003ステージ −戦闘狂(バトルマニア)な運命の剣士− |
龍也SIDE
さて、時期的に既にシグナム殿達が動き出している頃でござるな。詳しい事情は知らぬが…拙者としても、再び刃を交えられるのは実は少し楽しみでござる♪
それにしても…以前あった時也殿、辛そうに感じたでござる。姉上は大切な家族だったと言っていたから、やはり、そんな相手を疑って監視するような真似はしたくないのでござろう。
「まあ、これからは拙者と雷斗も協力できるから、少しは時也殿の負担も軽くなれば良いでござる。」
一人じゃ出来ない事も協力すれば出来るでござる。時也殿には前回の時に救っていただいた恩も有るのだから…前回の時の結果は不本意でしかなかったでござる。
デスティニーの姿で素振りをしながら、そんな事を考えていると拙者の影からドラゴン型の拙者の聖獣(マイソロジー)クロスディアが現れたでござる。珍しいでござる、呼びもしないのに出てくるとは。
「どうしたでごさる、クロスディア?」
拙者がそう問いかけると、クロスディアは別の方向へと頭を向けたでござる。…まさかとは思うが…。
「…なのちゃんでござるか?」
拙者の問いにクロスディアは頷くことで答えてくれたでござる。
はぁ…“前回”では拙者が居なくても大丈夫だった。しかし、今回は拙者達の存在で未来が変わっている可能性もあるでござる。なのちゃんも心配だから行って見た方がいいでござるな。
そう考えて拙者は光の翼を広げてクロスディアの教えてくれた方向へと飛ぶ。
SIDE OUT
赤いドレスの少女『鉄槌の騎士ヴィータ』がビルに鉄槌型のデバイス『グラーフアイゼン』を振り上げ、叩きつけられたなのはにトドメを誘うとした時、
「パルマ…フィオキーナ!!!」
光の翼を羽ばたかせ、運命の剣士『デスティニーガンダム』がそう叫びながら右腕を前に向けて突進、加速をつけたデスティニーの右手がヴィータのデバイスと激突すると同時に爆発、そのまま互いに弾き飛ばされる。
「ふぅ、間一髪…でごさる。」
「りゅ、龍也くん。」
「間に合ってよかったでござる、なのちゃん。それに…“二人共”久しぶりでござる。」(それにしても、やっぱり、『夜天の魔道書』の守護騎士だったでござるな。シグナム殿ではなく、ヴィータ殿とは少し残念でござる……それに、ああ言う武器を正面から打ち返す物ではないでござる。ちょっと手が痛いでござる。)
なのはの言葉に答えながらそんな事を考えながら、背中の大剣(正しくは対艦刀だがデスティニーの場合、サイズ的にそうではない)『アロンダイト』を抜き放つ。
「ごめん、なのは、遅くなった。」
「もう大丈夫だよ、なのは。」
同時に現れる二人の少女と少年…金色の髪の少女『フェイト・テスタロッサ』と少年『ユーノ・スクライア』の二人だ。
「ユーノ君…フェイトちゃん!」
心配そうになのはを見つめている二人にデスティニーはヴィータへと視線を向けながら、
「フェイト殿、フリーダム殿が居なくて残念でござるな。」
「え!? そ、そんな事…。」
デスティニーの言葉に顔を真っ赤にして慌てるフェイト…そんな彼女を面白そうに眺めながらも、注意を外さず…。
「仲間か!? それに、テメー…その姿は…。」(何で似てるんだよ…『 』兄の姿に…。)
「幼馴染でござる!」
「友達だ!」
ヴィータの言葉にそう答えるデスティニーとフェイトの二人…そして、デスティニーはフェイトとユーノの方に視線を向け、
「フェイト殿に、ユーノ殿…なのちゃんを頼んだでござる。奴は拙者が取り押さえるでござる!」
「え、でも。」
「そう言うのは拙者の得意分野でござる。」
有無を言わせず、そう言いきりデスティニーはヴィータへと向き直る。
「なんだ、テメーら!? 管理局の魔導師だってのか?」
「いやいや、フェイト殿は兎も角、拙者は違うでござるよ。…拙者は…。」
アロンダイトを構えながらデスティニーはヴィータを睨み付ける。
「幼馴染を怪我させてくれた落とし前を付けさせてやりたいだけでござる。大人しくするなら、手荒な真似はしないでござるが…どうする?」
「誰がするかよ!」
「言うと思った……でござる。」
そう言ってデスティニーは背中の翼を大きく広げると、アロンダイトを構えてヴィータに向かって突進していく。
「っ!? はえぇ!!! グラーフアイゼン!」
《Schwalbefliegen》
突きの体制で一瞬で距離を詰めようとするデスティニーに向かって左手に鉄球を四つほど取り出し、それを打ち出すして迎撃しようとする。
「っ!?」
それに気が付き、無理矢理軌道を変え真上へと飛び上がるが、打ち出された鉄球は方向を変えてデスティニーを追いかける。
「誘導型射撃魔法と言う訳でござるか!? なら!!!」
それが示すものを前回の記憶で知っていたデスティニーは、背中から大型ビームランチャー『高エネルギー長射程ビーム砲』を展開させ、引き金を引き、自分を追いかけていた鉄球を打ち落とす。
「これは飾りではないでござるよ! 続いて!」
続いて打ち落とせなかった鉄球に対して右肩のビームブーメラン『フラッシュエッジ2』を投げて迎撃する。
「こいつ!」
「一つ言っておく…これは拙者の射程範囲でござる。来たれ、土星を守護に持つ時の龍、聖獣(マイソロジー)クロスディア!!!」
紡がれる祝詞と共にデスティニーの影から現れる紫の体色をしたデスティニーと似た面影の頭部を持つ翼龍…聖獣(マイソロジー)クロスディア。
「クロノキャプチャー!」
「な!? 動けねぇ!!! どうなって…。」
「無駄でござる。」
クロスディアの角が輝くと同時にヴィータが動きを止める。
「『クロノキャプチャー』…詳しく説明する気は無いでござるが…そっちにも分かり易く言ってみれば、これは『タイム・バインド』と言った所でござる。時間ごと停止させてしまえば何者であっても動く事はできないでござる。」
『時間停止』、それこそが指定した物体の時間を止める事の出来る土星の加護を持つ聖獣(マイソロジー)クロスディアの能力。
「終わったみたいだね。」
「あとはそちらの仕事でござるよ。」
自分の横へと飛んできたフェイトへとそう告げる。…精々自分の役目は幼馴染に怪我させた相手へのお返しなのだ。あとは管理局に所属しているフェイト達の仕事と判断して後は任せる。
「うん。さて……名前と出身世界、目的を教えてもらうよ。」
デスティニーの言葉にそう答え、フェイトは彼女のデバイス『バルディッシュ』を向けて警告する。
「く……くそぉぉぉ!!!」
逃れようと必死にもがいてはいるが時間を停止させられているのだから、そこから間違いなく逃れる事は出来ないだろう。
「はっ! なんかやばいよ、フェイト、龍也!!!」
その時、大声でフェイトの使い魔である『アルフ』からの警告が入る。それと同時に誰かが現れる。ガンダムとの戦いを斬り止めてこの場へと駆けつけたシグナムである。
シグナムはそのままデスティニーとフェイトへと向かってレヴァンティンを振り下ろす。
「くっ!」
「あぁぁ!!!」
二人はそれぞれの武器で防ぐが、背中の翼の出力を上げて踏みとどまったデスティニーに対して、フェイトは押し負けてそのまま弾き飛ばされてしまう。
(…拙者も運がいい…。今の貴殿とは別人だが…申し訳ないが…前回の時は引き分けだった決着…付けさせて頂こう!!! 烈火の将。)
今回の世界と前回の世界とは別人と理解しているが、アロンダイトを構えながら目の前に現れた前回の時に何度も戦った宿敵(ライバル)を視界に納め、デスティニーの心は喜びに震えていた。納得がいかなかった前回の戦いの決着を付けれる事への…。
だが…クロスディアの視線が上へと向いている。そして、同時に感じるのは聖獣(マイソロジー)同士の共鳴。
「拙い!!!」
慌ててクロスディアと共にその場から離脱するが、今までデスティニーとクロスディアの存在していた場所を火炎弾と爆雷の爆撃が襲う。
「この攻撃は…まさか…。」
そう言って真上へと視線を向けた瞬間…そこにはクロスディアと同じ大きさの赤い鳥が存在していた。
「『アレシディア』!!! ゴッドの聖獣(マイソロジー)が何故!?」
今まで消息の掴めなかった仲間の存在を示すモノに思わずそう叫んでしまう。
「ほむ…ゴッドか?」
「おう、オレも加勢に来たぜ、っと、…まさかあいつに会うなんてな…。」
「知り合いか?」
「まあな。それと、ヴィータ、もう動けるだろ?」
「あ、ああ…。ありがとな…。」
クロノキャプチャーの効果が切れて動けるようになったヴィータがアレシディアの背に立つゴッドとシグナムの元に合流した。
「どうした、ヴィータ、油断でもしたのか?」
「ま、あいつの技は注意しようが無いだろうからな、時間停止なんざ、反則そのものだろ?」
「うるせーよ。って、そんな反則なモンだったのかよ、ゴッド兄!?」
「拙者が説明したでござるよ。」
三人の会話が聞こえて来たのか思わずそう突っ込みを入れてしまうデスティニーだった。
「あなた達は何者ですか!? その子は何も罪の無い民間人を襲った犯罪者です。もしその子の協力者だと言うのなら、私は管理局の魔導師として逮捕させていただきます。」
デスティニーの隣に戻ったフェイトが新たに現れた乱入者…『ゴッドガンダム』とシグナムに向かってそう宣言する。
「はぁ…。ったく、動物や覚悟も有るだろう管理局の連中なら別にいいが、民間人襲った、ってのは、どーゆー事だ? 聞き捨てならねーぞ。」
アレシディアの背中に立ちながらゴッドは横目でシグナムとヴィータを睨む。
「あ、いや…その……。」
「そ、それは…その……。」
「…ったく、ヴィータだけじゃなくて、シグナムもかよ…。まあいい…それはあとで追求させてもらうぞ。」
そう言ってゴッドはデスティニーとフェイトの二人へと向き直り…
「ザフィも来た様だし、はじめるぞ。あいつには悪いが、バインダー同士で相手させてもらうぞ!」
そう告げるゴッドの視線の先にはアルフと戦っている使い魔らしき男の姿が有った。そして、宣言どおりゴッドとアレシディアはデスティニーとクロスディアへと向かっていく。
「っ!?」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
衝撃音と共にぶつかり合うゴッドの拳と、それを受け止めたデスティニーのアロンダイト。同時にアレシディアとクロスディアも激突する。
「…焔殿…何故!? 拙者達が戦ったらどういう事になるか、分かっているのでござるか!?」
「そんな事分かってるぜ! 残念ながら…今、お前を足止めできるのはオレだけだからな…付き合ってもらうぜ! 龍也ァ!!!」
SIDE OUT
時也SIDE
「…どういう状況なんだ、これ…?」
ハーディアの肩に乗りながらガンダムはそう呟いてしまう。
鎌と剣で切り結んでいるフェイトとシグナム。
殴り合っているアルフと使い魔らしき男。
追いかけっこを繰り広げているヴィータとユーノ。
ここまでは別に良い。問題なのは、次だ。
拳と剣、鳥と龍の聖獣同士がぶつかり合っているゴッドとデスティニー。
「あいつら…聖獣同士の戦いは最悪の場合、大破壊が起こる危険性が有るの……自覚してるから、本気で遣り合っていないのか。」
結構本気な様子で戦っているゴッドとデスティニーを一瞥しながらそう思ってしまうが、自覚していないのなら必殺技を既に使っている事は考えられるので、二人とも危険性は十分に理解していることは分かる。
それなりに本気を出しているゴッドとデスティニーは兎も角、クロスディアもアレシディアもただ体だけを武器としていて能力を一切使っていないのだから、最悪の危険性は少ないだろう。
「…とは言え、あいつらを戦わせておくと何処で最悪の事態に陥るか分かったもんじゃないよな…。それに…マイシスの連中も…。」
そう言って視線を上へと向ける。
(結界の一つも張っているだろう…仕方ない…結界を破壊して、戦いを止めるか…。)
そんな事を考えていると防御魔法を使いながらヴィータの攻撃を防ぎながら追いかけっこを繰り広げていたユーノがガンダムの所へと近づいてきていたのだが、まったく気が付いていなかった。
(エクリプスクライドなら一発で十分だよな…。さっさと破壊するか…。)
そう考たガンダムが片腕を上げると同じ動作でハーディアがソード状になった腕を振り上げた所に、
「くっ、って、うわぁ!」
「エクリプス…って、なんだ!?」
ハーディアの背中に何かがぶつかった事で動きが止まってしまう。
「てめぇ!!!」
そこに振り下ろされるヴィータのグラーフアイゼン。
「って、危ない!」
慌てて避けるガンダムとハーディア…そして…
「うわぁぁぁぁぁあ!!!」
運悪く避けられもせずに無防備なままヴィータの一撃の直撃を受けて地面へと叩き落されていくユーノの図。
「………………。」
「………………。」
共に想像外の結果だったのだろう呆然と落下していくユーノを見ているガンダムとヴィータの二人…。
「あー…。え、えーと…ヨクモ誰カ知ラナイ奴ヲ(棒読み)。」
なんか棒読み気味にそう言うガンダム。…どうでも良いが、前回も今回もガンダム(時也)は一度もユーノと会っていないのだから、名前は知っていても顔は知らない。
「って、てめぇがそんな所に立ってたのが悪いんだろうが!!!」
「…あー…そうかもしれないな…。仕方ない…誰か知らない人の代わりに位はなってやるか…。掛かって来いよ…『鉄槌の騎士ヴィータ』。」
「っ!? てめぇ、なんであたしの名前を知ってやがる!?」
「企業秘密だ『夜天の魔道書』の守護騎士…。オレに勝ったら教えてやるよ。」
「上等だ! てめぇの魔力も蒐集してやるよ!」
「オレとハーディアに勝てるか、見せてもらおうか?」
「一対一で…あたしらベルカの騎士に負けはねぇ!!!」
そう叫んでガンダムへと向かってくるヴィータ。それを一瞥しながら、ガンダムは…。
「そうか。残念ながら、オレとハーディアは………“一人”じゃない!!!」
ハーディアのソードを構えながらヴィータとぶつかり合う。
SIDE OUT
龍也&焔SIDE
「くっ!」
「ゴッドスラッシュ!!!」
叫び声と共に出力を増したゴッドのサーベルをデスティニーはアロンダイトで受け止める。
「へっ、剣じゃ、お前には勝てないか!!!」
「当然でござるよ!!!」
「だったら…こいつが一番遣り易いぜ!!!」
デスティニー言葉にそう叫びながら空中のデスティニーに飛び蹴りを放つ。
「っ!? 拳で剣に勝つには三倍の腕は必要でござる!!!」
「へっ! マイシス時代は同じ部隊の隊長と副隊長だった事忘れたのかよ!」
「確かに…。だから、互角程度は覚悟の上でござる!!!」
「へっ、上等だぜ!」
そう言ってデスティニーは力を込めてゴッドを押し返す。そして、背中の翼を広げ…。
「パルマ…。」
「受けて立つぜ…。ゴッドフィールド…。」
背中の翼を広げるとゴッドの背中に光輪が現れる。
「フィオキーナ!!!」
「ダッシュ!!!」
最もスピードの乗った一撃を互いにぶつけ合う。
「ぐ!」
「素手なら、こっちの方が上なのは、当然だぜ!!!」
二つの技の激突で弾き飛ばされるのはデスティニーの方だった。
(…あれは…なのちゃん…。ボロボロなのに、砲撃を撃つ気でござるか…。まったく、相変わらず無茶をするでござる。)
吹き飛ばされた時、それが視界の中に入る。それによって、なのはの魔力収集に気が付いたデスティニーは心の中でそう呟き、ゴッドと向き直る瞬間、二人の間を何かが通り過ぎていった。
「っ!? ヴィータ!!!」
ゴッドはそれが何なのか見切ると、慌ててクロスディアを押さえていたアレシディアを向かわせ受け止めさせる。
そして、デスティニーとの戦いを斬り止めてアレシディアと合流する。
「…なにが…?」
「大丈夫か、ヴィータ!?」
「ゲホ…ゴッド兄…。」
ヒビだらけになったデバイスを持ったボロボロになったヴィータはそのままゴッドに抱えられて、アレシディアの背中で意識を手放す。そして、ゴッドとデスティニーは彼女が飛ばされてきた先へと視線を向ける。……そこには、
「お前は…。」
「時也殿…。」
ハーディアと共に冷たくヴィータへと視線を向けていたガンダムの姿があった。
「よう、龍也。それで…ゴッドの方は焔で良いのか?」
「…ああ…。」
何時もと変わらない気安い態度…それがデスティニー達にはこう思わせている。今の彼は“何かが違う”と。
「ゴッド殿…その子を連れてここから離れ方が言いでござる。」
「ああ。悪いな。」
そう言ってゴッドとアレシディアはヴィータを連れてその場を離脱していく。それを確認すると、デスティニーはガンダムへと向き直る。
「時…ガンダム殿、何故あそこまでする必要が有る!?」
「敵を倒した…“それだけ”だろ? 今はこっちから首を突っ込んでしまったとは言え、襲われたのはオレの方だ。聖獣(マイソロジー)を…バインドパーツを奪われる危険は排除したほうが良い。…違うか?」
デスティニーの怒りの言葉にガンダムはただ冷静に返す。
「だからと言って…あそこまでする必要はないだろう!? 苛立ちや目的は分かる…それでも…今の貴方は…違う!!!」
「何が違うんだ? オレはオレだ。誰かに洗脳されて「違う、そんな事ではない!!!」…どういう意味だ?」
「…拙者達を救ってくれたガンダム殿は…共に戦ったガンダム殿は…無意味に相手を傷つけるような者ではなかったはずだ!!! 聖獣(マイソロジー)を使っている以上、あそこまでしないでも、倒す事は出来たはずだ! それなのに…何故!?」
「…オレは強くならなきゃならない…。…エイロディアと戦える様に…マイシス幹部とも戦えるように…。…第一…前回の時、ウイングゼロにトドメを刺せなかったオレの甘さが、スバルちゃんから家族を奪った。敵にトドメも刺さずにいたオレの甘さが“彼女”を殺した。…だから…オレは強くなる…甘さも捨てる…それだけだ。」
ガンダムの叫び声を聞きながらデスティニーは彼を悲しげに見つめている。
「…違う…。前回の貴方の行動は何も間違っていない!!! 翼殿を救おうとしたガンダム殿の優しさが奪った訳ではない…ガンダム殿の弱さが“彼女”を殺した訳ではない!!!」
「…だから…どうした…?」
「…すまないでござる…。恩人の…仲間の気持ちにも気付かずにいた拙者達の罪でござる。だから…。」
「だから?」
「…今のガンダム殿は間違っている!!! だから…これ以上間違える前に…拙者が…ガンダム殿を止める!!!」
クロスディアの頭部に立ちアロンダイトを構えデスティニーはガンダムを睨み付ける。
「…分かっているのか…聖獣(マイソロジー)同士の戦いは…。」
「…分かっている…。だが、危険性が有るだけで一対一ならば危険も少ないのでは…? 四体の聖獣(マイソロジー)同士のぶつかり合いでも、起こらなかったのだから…。」
ガンダムの言葉に淡々と答えるデスティニー。
「ガンダム殿…たとえ大破壊の危険性が有っても…ガンダム殿への恩を返す為にも、今のガンダム殿を止めるのは拙者の役目でござる!!!」
「いいだろう…証明してやるよ…今のオレは何も…間違ってないってな!!!」
デスティニーはアロンダイトを背中に戻し、フラッシュエッジ2をビームブーメランとしてではなく、ビームサーベルとして抜き、ガンダムはビームサーベルの柄の部分を延ばし槍『ビームジャベリン』として持つ。
そして、己の主達…ガンダムとデスティニーの意思に従い、月と土星の聖獣(マイソロジー)達は翼を広げて臨戦態勢を取る。
「デスティニーガンダム…『時野 龍也』…。」
「ガンダム…『月宮 時也』…。」
「いざ、参る!!!」
「行くぞ!!!」
激突しあうハーディアとクロスディア。そして、ガンダムとデスティニー。デスティニーがクロノキャプチャーでハーディアの動きを止めようとすれば、その隙を逃さずガンダムはヘカティブレイドを叩きつけようとする。
「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」」
デスティニーがビームサーベルとして持っているフラッシュエッジ2を振るいガンダムの懐に飛び込もうとすれば、ビームジャベリンを振るうガンダムがデスティニーを近づけさせない。
互いの目に映るのは己の眼前の相手のみ…既に他の誰かの姿も言葉も、互いの目には認識していない。
暫くの間の激突を繰り返した後、天へと上るピンクの光の柱を連想させるなのはの砲撃を背景に睨み合う、ガンダムとハーディア、デスティニーとクロスディア。下手に動けば相手に隙を見せる結果に終わり敗北する。そう理解し合い、互いに動けずに居るのだ。
「…妙な因縁でござるな…。」
「…何の事だ?」
デスティニーの言葉にガンダムはそう言葉を返す。
「…忘れたでござるか、エイロスに洗脳されていた頃、拙者とガンダム殿が一対一で戦った時の事を…。」
「…まだ完全に聖獣(マイソロジー)を使いこなせなくって、負けたっけな…。それがどうした?」
「…ガンダム殿の間違いを正すためにも…もう一度勝たせていただくでござる!!!」
「丁度良い、その時の借りを返させて貰う!」
互いに睨みあい、次の言葉が重なる。
「「次の一撃で決める!!!」」
クロスディアの頭の上でフラッシュエッジ2を肩へと戻し、アロンダイトを抜き放ち両手で持つデスティニーに対して、ハーディアの肩の上でガンダムもビームジャベリンを背中へと戻し、腕を振り上げる。
互いに取るのは必殺技の体制…。
互いに必殺技を放てる体制になりながら動けずに居る二人…。互いに使おうとしている技が強力な大技であるが故に先に動いた者に与えられる物は敗北。
(失敗したでござる。クロノディメンションの体制では、エクリプスクライドを避けてからのカウンターは可能だが、それは相手も同じ。…どうする…クロノキャプチャーを使おうにも、下手をすれば相手の動きを止める前にこちらがやられる。)
(…技の選択を間違えたな…今ならお前がクロノキャプチャーを使う前にオレが先手を打てる。動きさえ止められなきゃ、条件は同じだ。)
互いに一歩も動けずに睨み合う二人…。このまま時が過ぎていくのかと思われた時…。
『ストップだ、龍也。』
デスティニーの視界を遮るようにモニターが現れる。
「な!? 邪魔をするな!」
『邪魔とはなんだ、君は…。』
ガンダムはデスティニーがモニターに映し出される少年(クロノ)と話している隙を逃さず必殺技を発動させ、動き出す。
「エクリプス…。」
「くっ、バインド一刀流奥義!!!」
エネルギーが集中した事でソードを輝かせながら向かってくるハーディアとガンダムに対して…。
「クライド!!!」
切り裂かれる直前で真上へと飛翔し、ガンダムの必殺の斬撃を避けた。
「なに!?」
「…ガンダム殿…ハーディアは月の守護を受けた聖獣(マイソロジー)…。月が姿を変える様に、扱う者の心の満ち欠けでその力は大きく変わるはず。以前の貴方のエクリプスクライドは、こんなに簡単に避けれる技では無かったはず。」
そう宣言しながら、デスティニーが背中の翼を広げ、クロスディアが咆哮する。
「一番大事な物を見失っている、今の貴方では…拙者には決して勝てない!!!」
「くっ…。」
「以前のガンダム殿を…拙者の剣で…この一撃で思い出せ!!! 忘れていた大切な事を!!! バインド一刀流奥義!!!」
ガンダムとハーディアとの距離を詰めてその懐へと飛び込むデスティニーとクロスディア。そして、放たれるのはクロスディアの嘴撃と共に繰り出されるデスティニーの斬撃。
それこそが…次元さえも破壊するクロスディアとデスティニーの必殺技…。
「クロノディメンション!!!」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」
ハーディアの胸部が大きく切り裂かれると、そのダメージはガンダムにも襲い掛かる。そして、吹き飛ばされながら、ハーディアが消えてガンダムは地面へと落下しながら、意識を手放していく。
「ガンダム殿…今の貴方の心は…前よりも…弱くなったでござるよ。思い出すでござる…以前の貴方が持っていたはずの…“本当の強さ”を…。」
最後に聞こえたのは、デスティニーのそんな言葉だった。
つづく…
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運命の剣士、デスティニーガンダムこと龍也って結構バトルマニアです。 | ||
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