IS《インフィニット・ストラトス》 駆け抜ける光 第八話〜決意と転校生!?
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[よくサザビーを倒したね。でも無理し過ぎだよ」

 

 暖かい緑の光に包まれながら僕はその声のする方へ向いた。しかし、誰もいない……。

 

[やっぱり君は僕より良い才能を持ってる。それを生かすも殺すも君自身だけどね]

「才能? というか、あなたは誰ですか?」

 

 僕は声に質問した。いきなり才能とか言われても困りますよ……。

 

[今は言えない。でもいつか必ず僕から言うよ。さあ、もう目覚めよう。君を待ってる人たちがいるからさ]

 

 喋っている内に徐々に声が遠ざかっていく。最後にこう言い残した。

 

[僕は君の秘めたる可能性が開花することを祈っているよ]

 

 謎の声はそういうと完全に消えた。同時に僕も現実に引き戻されていく……。

 

 

 

「う〜ん、よく寝たなあ」

 

身体を伸ばしながら起き上る。どうも寮の僕と夏兄の部屋みたいだ。保健室じゃないってことは怪我はなし? でもけっこうギリギリだったけど、どうにかなるもんだね。

立ちあがって外を見る。日はすっかり暮れて真っ暗な夜。それを知った途端、急にお腹が鳴ってしまった。

 

「あ〜お腹すいたな〜。今何時だろ」

 

 時計を見ると7時15分だ。まだ食堂は開いてるし、まずは食べよう。それからいろいろ考えようかな。

 

「お〜光輝、目が覚めたのか」

 

 振り向くとドアの前に夏兄がいた。両手にはお盆にのせた定食が置いてある。

 

「ほら、まだ何も食べてないだろ? 疲労だからこそ食べないと身体に悪いしな」

「あ、ありがと夏兄。って疲労がなんだって?」

 

 

 

 夏兄の話はこうだ。

 あの光に包まれた後、サザビーは完全に停止して崩れたらしい。でもその残骸からはISのコアは発見できなかったという。理由は分からないがコアがなのは大変なことだ。

 ISにはそれ専用のコアがいる。そのコアを作ったのが、篠々乃束(しののの たばね)さん――箒さんの実の姉だ。

 

 ISのコアは束さんしか作れない。現在は束さんがコアの製造を止めてしまった為に世界で、467個のコアがある。これによってISの絶対数は467機になってしまう。各国では新しいISを作る度に存外のISを解体、初期化しなければならない。

 ちなみにISの産みの親、束さんは現在逃亡中である。ISを開発したことから政府の監視下にあったが行方をくらましている。コアの製造方法は束さんしか知らないので、各国から追われる身になっている。

 

 と話が逸れたから戻そう。現在のISでコア無しで起動するものはない。しかもサザビーは無人だったはず。無人のISも今の世界には開発されていない。

 

「なんで光輝はあのIS――サザビーだっけか? なんで無人だって分かったんだよ?」

「う〜ん、何か違和感があったんだよね。よく分からないんだけどさ。ごめんね……」

「謝らなくていいって。いや〜でも光輝が倒れた時はひやひやしたぞ」

 

 サザビーが停止した後、僕も倒れたらしい。何か致命傷でも受けたのかって思ってたらしいけど、どうも寝てたらしい……。外見は傷の一つもなくて中も異常なし。結果は極度の疲労による睡眠だってさ。しかし、今日の内に目が覚めて良かったよ。また五日間も寝てたら授業に追いつかない……。

 

「無事で良かったぜ。そうそう、千冬姉が光輝のこと呼んでたぜ? 大丈夫なら来てくれって言ってたぞ」

 

 お母さんが? 一体何だろうか。

 

「食べ終わってから行ってみるよ。ありがとう、夏兄」

「気にすんなよ。家族なんだからさ」

 

 

 

「来たか。入ってもいいぞ」

「し、失礼します……」

 

 光輝は千冬の部屋に入る。学校内だからかその姿は緊張しているように見える。

 

「そんなに緊張しなくていいさ。家族として話したい。いいな?」

「え、うん。それなら気が楽だよ」

 

 光輝はそう言われ気を楽にする。二人きりで話すことは慣れているのだが、この日はなぜか空気が重い。だが光輝はあえて気にしないようにする。

 

「光輝、どんな苦難も乗り越える勇気はあるか?」

「い、いきなりどうしたの? 何かあったの?」

「……どうかと聞いてるんだ」

 

 千冬が一方的に話を無視する。光輝からしてみれば珍しいだろう。今までちゃんと話を聞いてくれていた母が一方的なのだ。光輝は戸惑いながらも答える。

 

「もちろんだよ。僕は出来ることを頑張る」

「……それでこそ光輝だ。今日のあのISのことだが、あれはνガンダムに魅かれて現れたISだ」

 

 いきなり何を言ってるんだ? 千冬がそんな冗談を言う人ではないのは分かってるが、光輝は混乱している。

 

「いきなりそんなこと言われても分からないよな。まぁ束の言っていたことだから嘘ではないとは思うが……」

 

 束は光輝にνガンダムを与えた張本人だ。それともνガンダム自体が光輝に反応したと言うべきか。ともかく束は光輝の人生を変えたといっても過言ではない。

 

「光輝がνガンダムを受け取った日に束が言っていたんだ。いつか必ずνガンダムに魅かれて『赤い彗星』が来ると」

「今日現れたISがその『赤い彗星』なんだね。でもハイパーセンサーの情報だとサザビーってISだったけど?」

「そうなのか? じゃあ赤い彗星=サザビーってことになるのか……」

「でもさ、もう倒したんだから大丈夫でしょ?」

 

 千冬はゆっくり首を横に振る。

 

「サザビーのコアが無かったんだ。考えられるのはコアが自分の意志で装甲から抜け出したとしか考えられない」

 

 光輝は驚きを隠せなかった。まさかコア自身が意志を持って逃げたとでも言うのか。

 

「コアは自己進化していく。それを考えたら不思議ではないだろう?」

 

 確かにコアは自己進化することが確証されている。しかしコア自身が意志を持つというのはまだ例がない。

 

「もしまたあれが来るとしたら……大変なことになるよ」

 

 サザビーの性能は光輝が一番分かっている。圧倒的な火力と見た目からは想像できない機動力。あれは今までのISの常識を超えてるだろう。もしパワーアップしてまた現れたとしたら、今度はただじゃ済まないのは確実だ。

 

「一夏から奴のことを聞いただけでもかなりの性能なのは分かる。ISの常識を覆しているだろうな」

「……でもやるしかないんだね。サザビーはνガンダムが狙いなら、僕自身が決着をつけないといけない日がいつか来るなら、僕も絶対に強くなってやる! みんなも守る!」

「それでこそ、光輝だ」

 

 千冬は微笑みながら光輝の頭を撫でた。最初はびっくりした光輝だが素直に受け止めた。千冬や一夏、人から感じる心の暖かみがあるからこそ光輝は強くなる。力だけがすべてではないのだから。

 

 

 

 翌日の朝、僕は普段通りに通学することが出来た。

 別に体調不良ってわけでもないけど辛いことが一つ。昨日は寝れませんでした……。

 どうも僕が気絶(?)してから、7時間超は経っていたんだよ。そのせいで昨日の夜は寝ることが出来なかった。寝たのがいつも起きる時間の30分前。これは辛いよ、うん……。

 

「今日から本格的な実践訓練を始める。訓練機ではあるが――」

 

 HR前のお母さんの話なんだけど、眠くてそれどころではないんだ。くぅ〜、寝て楽になりたいよ……。

 

「「「えええええっ!?」」」

 

 そんなクラス中のざわつきに僕は目が覚める。それほどこのクラスの女子の声は大きいってことか。で一体何の話?

 そんな中、教室の扉が開き、二人の生徒が入ってくる。また転入か何かなの? 最近被るなあ。

 

「失礼します」

「…………」

 

 その二人を見てざわめきがなくなると共に、僕は目を疑った。いや、ぼくだけじゃないだろう。

 だって二人の内一人が――男子だったのだから。

 

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