IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・ |
楯無さんを押しのけて部屋から出た俺は、屋上に上がってきた。
さっき言った通り、風に当たるため。
――ティエリア、GN粒子の散布は装甲を展開しなくても可能か?
――可能だ。散布するか?
――ああ、やってくれ。
ネックレストップから、青白く淡い緑色の色の粒子が放出されて屋上中を覆う。
ここの監視カメラ等の通信は無線でメインコンピュータへと送られると聞いたから、GN粒子を撒けば監視カメラに俺は写らない。正確には記録に残らない。
そして誰も居ないことを確認してから、ティエリアに話しかける。
「なあ、ティエリア。俺はどうしたら良いんだ?」
『君がどう悩んでいるのかは知らない。僕は心が読めるわけじゃないからな。ただ君をサポートするのが僕の役目だ』
「さっきの話、聞いてたんだろ?」
『……ああ』
「なら分かるだろ」
『更識楯無の想いを受け入れて良いのかどうか。ということか?』
「ああ、その通りだ」
『残念だが、それについて僕からは何も言えないな』
「どうして?」
『君がどういう風に考えているのか、僕には分からない。だけれど、最後に決めるのは君だ。彼女に転生者ということを教えるのか、教えないのか……他にも選択肢は多く存在する。その中から選び取るのが君だろう』
「ははっ、何も言い返せないな…」
『君の決めたことなら、僕は否定しない。それが僕だ。それがたとえ間違った道でも、僕はそれを肯定する』
「結局は自分で決めろってことか」
『そうだ』
「…………」
『…………』
ヒュウゥゥ……と、風の音だけがこの場を支配する。
その中で、俺は口を開いた。
「………俺はさ、多分寂しいんだよ。前世でも今でも両親は居ない……。まあ、前世ではそのぶん良い友達は居たけど。友達は友達。肉親とは違う絆だ。結局さ、失うのが怖いんだと思う。大切な人を作って、それを失ってしまうのが、な」
『そのための力が僕だ。君が君とその周りの世界を失わないための』
「そうなんだけど。でもそれに第一、俺があの人を好きなのかどうか確信できてない。あっちは好意を持ってるけど……俺は分からない」
『……なら、それでいいじゃないか』
「え?」
『まだ分からないのなら、分かるまで待てばいい。そしてその間にどうすれば良いのかを考えればいいじゃないか』
「……確かに、それが一番良いのかもな。つか、それがあたり前なんだよな」
『そのあたり前に気付かなかったのは君だがな』
「言い返せないな」
『僕に言えるのはここまでだ。後は自分で考えるといい。どうすればいいのかを』
「ありがとうティエリア。……少しは楽になった」
『それは彼女に言うべきことだろう? それに気づかせてくれた彼女に』
「そうだな。……GN粒子の散布中止していいぞ」
『了解』
辺りを舞っていた緑の粒子が消えた。
風に流され、夜の闇に消えていく。
さて、部屋に帰るか。
◆
部屋に戻った俺の目に最初に入ったのは、
「寝てるし」
さっきまで俺が横になっていたベッドで寝ている楯無さんだった。
幸せそうに寝息を立てている。……服装はさっきのまま。
楯無さんに布団をしっかり掛け直してから、どうするか考えた。
でも幸いなことに、ここは二人部屋なのをひとりで使ってるから、空いているほうのベッドに俺は横になれた。
「おやすみ、楯無さん」
――翌朝、なぜか俺の方のベッドに楯無さんが入り込んでいて朝から騒いでたのは言うまでも無い。
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第10話『拓海の気持ち』 | ||
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