IS 〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・ |
あれから数日後。週は明け月曜日。
つまり、セシリアとの戦いの日。
決闘の方式は勝ち抜き戦になった。
まず一夏対セシリア。
次に勝った方対俺。
俺達はピットに居るのだが……一夏と箒の間に変な空気が流れている。
「――なあ、箒」
「なんだ、一夏」
「気のせいかもしれないんだけど」
「そうか。気のせいだろう」
数日前から仲が悪くなっていたけど、もうそれは無いみたいだにゃー。
「ISのことを教えてくれる話はどうなったんだ?」
「…………」
「目 を そ ら す な」
話しかけるに話しかけられないんだが。
「し、仕方が無いだろう。お前のISが無かったのだから」
「まあ、そうだけど―――じゃない! 知識とか基本的なこととか、あっただろ!」
ちなみに俺が一夏に教えようとしたら、ドス黒いオーラを纏った箒さんに却下された。
「…………」
「目 を そ ら す な っ」
ちなみに一夏の白式はまだ届いてない。
そろそろ来る頃だと思うんだけどな?
……おい、なぜ話をやめた一夏。
空気がさらに悪くなってんぞ?
「お、織斑くん織斑くん織斑くんっ!」
先生、3回も言う必要は無いと思います。
ピットの扉が開いて中に駆け込んできたのは、おなじみの副担任山田先生。
「どうしたんですか?」
「ああ、玖蘭くん。え、えっと織斑くんは……居ますね」
かなり焦ってるようだ。
いや、理由は知ってるけど。
「え、えっとですね、来ました! 織斑くんの専用IS!」
「織斑、すぐに準備をしろ。アリーナを使用できる時間は限られているからな。ぶっつけ本番でものにしろ」
その山田先生の後ろから織斑先生登場。
一夏はいまだにポカンとしてる……織斑先生に頭を叩かれすぎたのか?
「この程度の障害、男子たるもの軽く乗り越えて見せろ一夏」
「え、えっと?」
「お前のISが来たんだよ」
まだ惚けていやがる。
「「「「早く!」」」」
俺と織斑先生、山田先生、箒の声がハモって一夏を急かす。
ごごんっ、と重い音を立てながら斜めに開くピットの搬入口。
その向こう側には
―――『白』が居た。
コレが白式……真っ白だな。良い意味で。
「これが……」
「はい! 織斑くんの専用IS『《白式|びゃくしき》』です!」
一夏はその後、織斑先生に指示され急いで『白式』を装備した。
「ISのハイパーセンサーは問題なく動いているな。一夏、気分は悪くないか?」
「大丈夫、千冬姉。いける」
「そうか」
やっぱり織斑先生ってブラコンなのか?
「玖蘭、何か言いたげだな?」
「い、いえっ、なんでもないです。はい」
禁句だな。直接言ったら殺される。
「箒」
「な、なんだ?」
「行ってくる」
「あ、ああ。……勝って来い」
一夏はそれに頷いて応えると、俺こんどは俺に意識を向けた。
それがわかった俺は、こっちから話を切り出す。
「負けんなよ?」
「もちろんだ」
「次の試合で戦うのは俺とお前だ……勝てよ」
「分かってる」
結果は俺には分かってるのにな……なんかやるせないぞこれ。
◆
結果
原作の通り、一夏はセシリアに負けた。
三十分近く逃げ回って、一次移行を済ませ、ワンオフ・アビリティーである『《零落白夜|れいらくびゃくや》』を発動させて……S・Eを使い切って負けた。
「馬鹿だな」
「よくもまあ、持ち上げてくれたものだ。それでこの結果か、大馬鹿者」
ティリン! 一夏が「馬鹿者」から「大馬鹿者」にレベルアップした!
……うん、どうでも良いや。
「さて、先ほども言ったが時間に限りがある。玖蘭、早く行け」
「了解です」
リニアカタパルトの近くで、ISを起動させる
「行くぞ『マイスターズ』」
『『マイスターズ』起動、モード選択《セレクト》GNY−001F2『ガンダムアストレアTYPE−F2』』
GN粒子が俺の体に装甲を構築していく。
今までとはまるで違う深紅の装甲。紅意外の色は頭部装甲のマスクとデュアル・アイ、V字アンテナの先だけ。
それと同時に右腕にはプロトGNソード、左腕にはGNシールド、左手にGNビームライフルが装備される。
「……行きます」
誰に言うわけでもなくそうつぶやく。
ピットのリニアカタパルトに足を乗せ、前傾姿勢に。
射出と同時、グッと相殺し切れなかったGが俺の体に掛かった。
――深紅の正義の女神が、アリーナに飛び出す。
◆
深紅の機体がアリーナに出ると同時、一夏の戦いで喧騒に包まれていたアリーナは不気味なほどに静まる。
理由は簡単、全身装甲なだけでも異常なのだ。しかしそれをさらに際立たせるような深紅のカラーリング。
その名である『アストレア』。『正義の女神』を意味するその名とは正反対に位置するような印象をもたらす機体。
「よぉ、待たせたな。オルコット」
「っ―――あら、逃げずに来ましたのね」
一夏との戦闘で失ったエネルギーなどを補給して戻ってきたセシリアはその雰囲気に飲まれかけ、冷や汗を流しているようだが気にすることではない。
今のアイツは『敵』だ。そして戦闘は既に始まっている。
―――戦闘待機状態のISを確認。操縦者セシリア・オルコット・ISネーム『ブルー・ティアーズ』戦闘タイプ中距離射撃型。特殊装備有り―――
ハイパーセンサーに表示される敵の情報。
一度だけ読み流して、そのウィンドウを消す。
うつむいていた頭を上げ、そのデュアル・アイでセシリアを捉える。
ブルー・ティアーズ、イギリスの第三世代IS。四枚の特徴的なフィンアーマーを背に従え、それを纏っているセシリアの手には大型BTライフル《スターライトmkV》が握られていた。
――ティエリア、両膝のハードポイントにピストルの展開を頼む。
――了解した、GNピストル展開。
両膝の外側に一瞬だけ量子的な空間の揺らぎが出来たと同時に、そこから出たGN粒子がピストルの本体とホルスターを構築して装備される。
「こっちの準備は終わりだ。いつでも来い、セシリア・オルコット」
―――警戒、敵IS操縦者の左目が射撃モードに移行。セーフティのロック解除を確認―――
「わかりましたわ」
―――警告! 敵IS射撃体勢に移行。トリガー確認、初弾エネルギー装填―――
「では……早速ですみませんが、お別れですわ!」
キュイン!
というライフルからBTレーザーの発射された音。
左腕のシールドをその射線に持っていって、ガード。S・Eの減少は無し。
だがセシリアも流石にこの程度のことは想定内だったのか、動じることはなかった。
「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲《ワルツ》で!」
それ、さっきも言ってたけど恥ずかしくないのか? 人の事言えないけど。
すぐにBTライフルからのレーザーが襲い掛かってくる。
それをただ回避。逃げられないものはシールドでガード。
「その程度か!」
「まだですわ! ブルー・ティアーズ!」
セシリアの背のフィン状のパーツが分離、独立機動兵装――いわゆるビットとかファングとかのこと――として此方に向かってくる。
この兵器の名称はブルー・ティアーズ。セシリアの機体名もブルー・ティアーズ……うん、ややこしいな。
「っと、ほいさっと、よっ」
四基のビットが放ってくるレーザーの隙間に自分をねじ込むようにして回避していく。
セシリアはこのビットを操作するのに集中力が必要だから、コイツらで攻撃してきてるときは他の攻撃は来ないと考えて良い。
「ど、どうしてあたりませんの!?」
機体性能に差があるのは確かだが、その前にあせりすぎだ。もっと冷静に操作したほうがいい。ビットが無駄な動きをしてる。
「ほらほら! 最初の威勢はどこ行った!」
俺はまだ一回も攻撃をしてない。出来ないじゃなくてしてない。
「さ、そろそろ終わらせるぜ?」
「なにをおっしゃってるのですか!」
ビームの雨をかいくぐり、右手に右のホルスターからピストルを引き抜く。
ISのハイパーセンサーは360°を視認できる。わざわざ後ろを向かなくてもそう意識すれば見える。
俺の隙を突こうと背後に回りこんだビット向けて、右手のピストルを撃つ……まず一基。
その攻撃で出来た隙を突いてきたビットの攻撃を避けて、左手のビームライフルで撃つ……二基。
上下から同時に攻めてきた二基を、両腕のGNバルカンで蜂の巣にして……全四基撃墜。
「なっ!? そんな……わたくしのブルーティアーズが!?」
予測しやすい動き方で助かったぜ。
相手の死角や隙を突いてこようとばかりするから、逆にそれを利用して誘導して撃墜……後半は作業だった。
「ビットの動きが読みやすい。だから、一夏程度に動きを読まれる……そのくらいわかんだろ?」
一夏のことを貶すのはデフォルト。
ピットでorzしてる一夏が浮かぶが気にしない。
「くっ!」
残ったBTライフル《スターライトmkV》のBTレーザーによる射撃。
BT兵器を高い適合率で運用すれば偏向射撃……曲がるBTレーザーを撃てるが、今のセシリアは出来ない。そのただ直進してくるのを避けるくらい簡単だ。なんならシールドで防御してても良い。
右手のピストルをホルスターに戻し、最初から装備されているプロトGNソードの刀身を展開する。
エクシアのGNソードと違ってトンファーのようにして前方に長い刀身が展開される。コレにビームライフルの機能はない。
右手にせり出したプロトGNソードのグリップを握って、セシリアに接近する。
「まだですわ! まだブルー・ティアーズは残ってますわ!」
腰の装甲の一部が動いたと思ったら、それは残り二基の実弾《ミサイル》仕様のブルー・ティアーズ。そこから二つの弾頭が発射された。
「この程度!」
左手のビームライフルを片方のミサイル向けて投げる。それはビームライフルと共に爆散した。
セシリアはまさか武器を投げてくるとは思っていなかったようで、唖然としてる。
もう片方は爆発に巻き込まれて誘爆した。……よし、対処完了!
「もう終わりか? だったら終わらせるぞ!」
左手で腰からビームサーベルを引き抜く。
右手にプロトGNソード左手にはビームサーベルの二刀流になった俺は、セシリアのレーザーをかいくぐってに接近。
「そら!」
こういうとき、この機体は瞬時加速《イグニッション・ブースト》が出来ないのが残念だ。
まぁそんなことは置いといて、至近距離まで接近した俺は左手のビームサーベルでBTライフル《スターライトmkV》の銃身を切り裂く。
そして右手のプロトGNソードで、左腰にある実弾仕様のブルー・ティアーズをセシリアのS・Eを削りつつ切って破壊。
セシリアとすれ違った格好になった俺は、体を左回しに回転させて右腰のブルー・ティアーズもビームサーベルで破壊。そのままセシリアに切りつけた。
「これで……トドメ!」
「きゃああっ!」
そしてその回転の勢いのまま右手のプロトGNソードで……突き刺す!
ビーッ!
『試合終了。勝者―――玖蘭拓神』
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第11話『紅き正義の女神と蒼雫』 | ||
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