炎を司る天空の覇者 |
レゾナンス
一夏と箒にほぼ引っ張られながらやってきたのは最大級の品揃えを誇るショッピングモールだった。
唯は束から「女性の買い物は時間がかかるんだよ〜☆」と聞いていたが両手に持っている荷物を見てため息を吐く。
(まさかここまでとは思ってなかった・・。)
(女の子ってそういうものだよ〜♪)
唯は時計を見ると正午近くを指していた。
「おい、そろそろ昼だ。」
「あ、じゃあ今話題のお店に行こうよ。」
「じゃあ、そこに行こうか。でもその前にトイレに行かせてくれ。」
「む、仕方がないな。早く行ってこい。」
「じゃあ、荷物は私たちが持っておくね。」
唯は2人に荷物を預け、トイレに向かう。
戻る途中、たまたま同じ場所に買い物に来ていたセシリアと合流。
待っている場所に戻るとそこには人だかりができていた・・。
「いったい何があったのでしょう?」
「とにかく行ってみよう。・・すいません。」
人ごみを掻き分けるとそこにはクモの糸らしき何かで動きを封じ込められた警備員の姿があった。
唯はすぐさま警備員に駆け寄る。
「おい!いったい何があった!?」
「お前、あの女の子たちの知り合いか?いきなりクモみたいな化け物が現れて女の子二人をさらおうとしていた・・。俺は止めに入ったがこの有様だ。・・すまない。」
唯は舌打ちをする。
(クソッ。俺がトイレに行った隙にいったい何があったんだ!?)
すると唯の手に緑色の缶が振ってくる。
「あら、何ですの?これ?」
「これは・・!?」
緑の缶・・バッタカンドロイドは唯の手の上で変形し、バッタカンドロイド・アニマルモードに変わる。
セシリアはそれを見て驚く。
「か、缶が変形した!?」
さらに・・。
『唯!聞こえる!?』
「鈴か!どうした!?」
『ヤミーよ!場所はあんたが今いるところから離れた空き倉庫みたいね!あたしも後から行くから先に行ってて!』
「わかった!アレも持ってきてくれ!」
『了解!』
唯は鈴との通信を終え、セシリアのほうに向き直る。
唯の表情は真剣そのものだった。
「セシル、こっから先は非日常の世界だ。どうする?ついてくるか?」
セシリアは唯の表情を見て少し考える。
(唯さんはいったい何を知っているのでしょうか?知りたい・・。)
「お願いします。私も一緒に連れて行ってください。」
「わかった。」
唯は周囲を見渡す。
ある自販機が目に入りロングコートを翻しそこに向かう。
セシリアもついていく。
「あの・・唯さん?急いでいるのでは?」
「まぁ、見てろ。」
唯はメダルを取り出し、自販機に投入。
そして真ん中のボタンを押す。
すると・・。
ガシャン!
「じ、自販機がバイクに!?」
セシリアは驚いた。
自販機がバイクに変形したのだから。
これがセルメダルを解析した束と唯の共同制作によるメダルシステムのひとつ・・可変型カンドロイド移動基地・ライドベンダー。
「セシル、早く乗れ!」
「ハ、ハイ!」
唯からヘルメットを受け取ったセシリアは唯の後ろに乗り込み、腰に手を回す。
「しっかりつかまれよ!タカカン、道案内を頼むぞ!」
「ピィ!」
タカカンの道案内を受け、目的地に走らせる。
空き倉庫
一夏と箒はクモヤミーの糸で身動きが取れなくなっていた。
「く、動けない!」
柱の影から現れ、一夏たちの前に立つのは宿主の女性。
「久しぶりね。織斑さん、篠ノ乃さん。」
「あなたは・・!?」
「円山・・先生・・!?」
女性・・円山は一夏たちの小学生のときの担任。
ISの台頭で女性が強いが当たり前という歪んだ思想を持っている。
円山は特に世界最強の女性・千冬の妹である一夏、ISを開発した束の妹である箒に虐待とも取れるほどのイジメを率先して行っていた。
「あなたたちのお姉さんの千冬さんと篠ノ乃博士は私たち女性を救うべく立ち上がった救世主よ!それなのにこの程度で音を上げるなんてどういうことかしら!?」
「いい?私だって好きでイジメを率先しているわけじゃないの。あなたたちがはいと言えばそれですべての女性が救われるの。」
手本となり子どもたちを教育する教師とは思えない発言の連続だった。
一夏たちはこの出来事を思い出し、いつものかわいらしくきれいな表情から一変し恐怖の表情に染まる。
「い、いったい何のためにこんなことを!?」
「ふぅ、あなたたちは私の教育をまったく理解してなかったみたいだから特別に再教育してあげるためにここにつれてきてもらったのよ。この私の欲望の化身を使ってね。」
「な!?」
まさかの発言に一夏たちは呆然とする。
今でもこの思想が直っていなかったとは思っていなかったようだ・・。
「大体私を差し置いてあなたたちはデートですって?ずいぶんといいご身分じゃない。」
「先生!あなたはおかしいですよ!」
「そうです!私たちは・・。」
「うるさい!さぁ、もう一度私の教育をその身に受けなさい!」
円山は首でクモヤミーに行けと命じる。
クモヤミーが一夏たちの前に立ち、爪を振り下ろそうとしたその時、黒いバイクが現れ体当たりでヤミーを吹き飛ばす。
「グォ!?」
「な、何・・?」
一夏たちはバイクのほうに目線を向ける。
乗っていた人物が降り、ヘルメットを取る。
「大丈夫か?」
「唯!それにセシリアさんも!」
「一夏さん、箒さん、お怪我はありませんか!?」
唯とセシリアは一夏たちの元に駆け寄り、守るようにして前に立つ。
「お前がヤミーの親か。なぜ一夏たちをさらった?」
「あなたには関係ないわ。」
「いや、ある。俺は千冬姉さんと一夏の弟であり、世界で唯一ISを操れる男・・織斑唯だ。」
「あんたが・・!?」
円山は驚く。
まさか目の前の男が今世間を騒がせているISを操ることができる唯一の男・・。
「早くその男を殺しなさい!」
「御意。フン!」
クモヤミーはクモの糸を吐く。
だが、それは唯の元に届くことはなかった。
円型のエネルギー弾がクモの糸を撃ち落としたのだ。
「今度は何なのよ!?」
円山はエネルギー弾が飛んできた方向に目線を向ける。
またもや黒いバイクでそのライダーはヘルメットを取る。
「ふう、間に合ったみたいね。」
「鈴!どうして!?」
鈴が両手持ち銃・バースバスターでクモの糸を撃ち落としたのだ。
鈴はライドベンダーから降りて銃口を円山に向ける。
「一夏、箒、あんたたちも災難だったみたいね。いるのよたまに。歪んだ思想を抱いている大人って言うのが。」
「黙りなさい!なぜ私の邪魔をするの!?私はただ教育をするだけ・・。」
「ふざけんじゃないぞ。」
唯は腹の底から冷えた声を出す。
「あんたは勘違いしているみたいだけどな、ISがなかったら男も女も関係ないんだよ。」
「あ、あんた・・!」
「前のセシルならあんたの思想にたぶん賛成しただろう。だけどセシルは早い段階で気づいた。これからセシルは大きく成長する。これは間違いなく断言できる。」
(唯さん・・。)
思わず唯の言葉に感激するセシリア。
「まぁ、あんたはもう手遅れみたいだがな。」
「ふん、あんたにこの私の欲望の化身を倒せるのかしら。」
「倒せる。あんたは俺の家族、大切な幼なじみに手を出した。絶対に許すわけにはいかない。」
そういって唯は一歩前に出る。
腰にオーズドライバーを装着。
「唯!ほら!」
「サンキュー。」
鈴はコアメダルが収められたメダルホルダーを投げ渡す。
そして中から赤と黄色と緑のメダルを取り出しドライバーのくぼみにセットして傾ける。
そして右腰についている丸い器具・オースキャナーでドライバーをスライド。
「変身!」
(タカ!・トラ!・バッタ!)
(タ・ト・バ♪タトバ♪タ・ト・バ♪)
唯の体が視覚を強化する赤のタカヘッド、トラアームが付属した黄色のトラアーム、ジャンプ力、キック力を強化する緑のバッタレッグに変わる。
これが数あるコンボの中でも安定性がある基本形態・仮面ライダーオーズ・タトバコンボ。
「唯の・・。」
「体が・・。」
「変わりましたわ・・。」
一夏、箒、セシリアは唖然とする。
そんな中、オーズは円山を力強く指差す。
「お前の歪んだ幻想・・、この俺が破壊する!」
「何を!行きなさい!」
「鈴、一夏たちを頼む。」
「わかったわ!」
一夏たちを鈴に任せ、オーズはクモヤミーに立ち向かう。
「ふっ!」
「ぎゃぁ!?」
オーズはトラクローを展開しクモヤミーを切り裂く。
連続切り裂き攻撃を仕掛け、今度はラインドライブからバッタレッグにエネルギーが供給され連続キックを叩き込む。
「っと。」
「ぬぅ・・、隙あり!」
「うわっ!?」
オーズの体にクモの糸が絡みつき引き寄せられていく。
「捕らえたぞ。じっくりいたぶってやる。」
「それはどうかな?」
オーズは手首を動かし、トラメダルを外し、緑のアームメダル・カマキリメダルをセットしてスキャン。
(タカ!・カマキリ!・バッタ!)
オーズはタカキリバにフォームチェンジしてカマキリソードでクモの糸を切り裂く。
「はぁ!」
「何!?切れただと!?」
そしてそのままクモヤミーにカマキリソードの連続攻撃を仕掛ける。
その様子を見ていた一夏たちは驚く。
「腕が変わった!?」
「メダルを変えるとまったく異なる力になるというのか!?」
「そういうこと。さぁ、もうすぐ決まるわよ。」
鈴の言葉に一夏たちは目線を戦いに向けると言うとおりクモヤミーは慢心相違だった。
「なぜ・・!?なぜなの!?私は間違っていない!」
「まだわかんないのか?あんたは最初から間違っていたということを!!」
オーズは赤のコアメダル2枚を取り出す。
「今回は特別だ・・!お前の幻想・・跡形もなく燃やし尽くしてやる!」
カマキリ、バッタをはずし、代わりにクジャク、コンドルをセットしてスキャン。
(タカ!・クジャク!・コンドル!)
(タ〜ジャ〜ドル〜♪)
オーズの体が炎にやさしく包まれる。
炎が晴れ、そこにいたのは全身を真っ赤に染めたオーズの姿があった。
これが炎を司る天空の覇者・・タジャドルコンボ。
BGM:Time judged all(歌:織斑唯&篠ノ乃箒)
「今度は真っ赤になった・・。」
「アレは色を揃えて発動するコンボ。強力な力が得られる代わりに疲労が大きい・・けど使いこなしているから欠点はないに等しいけどね。」
「きれいな炎だ・・。」
箒は先ほどのオーズの炎を思い出す。
あの炎はすべてを浄化する天壌の炎に見えた。
「ハッ!」
オーズはクジャクウイングを展開し飛翔。
急降下して体当たりを2回くり出し再び高く舞い上がる。
そしてドライバーをスキャンする。
(スキャニングチャージ!)
「おおおおおぉぉぉぉ!!」
ラプタードエッジが巨大化、獰猛な鳥類の爪になりクモヤミーに向かって急降下。
「せいやぁぁぁぁぁ!!」
「がぁぁぁぁ!!」
オーズ・タジャドルコンボの必殺技・プロミネンスドロップが炸裂しクモヤミーは爆散。
地上に降り立ったオーズは変身を解除。
「ふぅ・・。さて。」
唯は円山の下に歩み寄る。
「な、何よ。私は悪くないわ。」
「あんたはたたいたらほこりがいっぱい出そうだな。ちなみにあんたと一夏たちのやり取りはすべて記録してるからな。」
そう言って唯の掌にバッタカンドロイドが乗る。
「こいつは通信や録音、映像の保管ができる代物でな。俺がここに来るまでのやり取りはすべて録画しているからな。」
「・・!?」
円山はがっくりとひざを突く。
「ま、こいつを姉さんや束、教育委員会、あとは日本政府に見せたらどうなるかな。少なくとも教員資格の剥奪は間違いないだろうな。後は暴行罪とかいろんなものが出そうだけどな。」
こうして事件は解決した。
この後セシリアと鈴も含めた5人でゲームセンターなどに行ったりと楽しい時間を過ごした。
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オーズ降臨! | ||
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