IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・ |
「というわけでっ! 織斑くんクラス代表就任おめでとう!」
女子の誰かがそう言ったと同時、ぱん、ぱんっとクラッカーが一夏向けて乱射される。
今は夕食後の自由時間。場所は食堂。一組のメンバーは全員揃っていて、それぞれ飲み物を手に盛り上がっていた。
壁には『織斑一夏クラス代表就任パーティー』と書かれたデカイ紙。
実際のところ、パーティという名目で騒ぎたいんだと思う。
「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねえ」
「ほんとほんと」
「ラッキーだったよねー。同じクラスになれて」
「ほんとほんと」
おい、さっきから「ほんとほんと』とだけ言ってるお前、二組だろ。何でここに居るんだよ―――気にしないけど。
正直なところ、紛れ込んでるクラス外のメンバーも多々居る。だって明らかにクラスのメンバー以上の人数が食堂に居るからな。
「はいはーい、新聞部でーす。話題の新入生、織斑一夏君と玖蘭拓神君に特別インタビューをしに来ました〜!」
女子一堂がオー、と盛り上がる。今のどこに盛り上がる要素があったのか男子の俺にはわからん。
「あ、私は二年の《黛薫子|まゆずみかおるこ》。よろしくね。新聞部部長やってまーす。はいこれ名刺」
渡された名刺の名前を見る。画数多い名前だなぁ……書くのに一苦労するのは間違い無しだぜ?
あと、なんで学生なのに名刺を持ってるのかは気にしちゃいけないんだろうな。
「ではまず織斑君! クラス代表になった感想を、どうぞ!」
一夏にボイスレコーダーを押し付けるように向けた。
「え、えーと……まあ、なんというか、がんばります」
「えー。もっといいコメントちょうだいよ〜。俺に触るとヤケドするぜ、とか!」
このセンパイが、何を望んでるのか分からなくなってきたぞ?
「自分、不器用ですから」
「うわ、前時代的!」
「じゃあ、まあ適当に捏造しておくから良いとして」
結局捏造!? 取材の意味は!?
「じゃあ次、玖蘭君! 何か一言!」
ああ、やっぱり俺にも来るんだ。
んー、どうしようか……中二発言しても大丈夫だよね♪
「戦闘中は俺に触れるな! ……とかどうです?」
「おお、いいね〜! 捏造のしがいがあるよ!」
だーかーらー、捏造するなよ!
……いや、俺のこの発言は捏造してほしいけど。
「はい次、セシリアちゃん!」
「わたくし、こういったコメントはあまり好きではありませんが、仕方ないですわね」
とか言ってるが、すぐにコメントできる位置に居たのは気のせいか?
「コホン。ではまず、どうしてわたくしがクラス代表を辞退したのかというと、それはつまり―――」
「ああ、長そうだからいいや。写真だけちょうだい」
ナイスですセンパイ、コイツはノリだすと終わらないんで。
「さ、最後まで聞きなさい!」
「いいよ、適当に捏造しておくから。よし、織斑くんに惚れたからってことにしておこう」
「なっ、な、ななっ……!?」
図星で真っ赤になるセシリア。というか今の発言は心でも読んだのか?
そしてセシリア、分かりやすすぎる。
「何を馬鹿なことを」
《唐変朴|いちか》再登場。
「そ、そうかなー?」
「そ、そうですわ! 何をもって馬鹿としているのかしら!? だ、大体あなたは―――」
「はいはい、とりあえず三人で並んで。写真取るから」
「えっ?」
その「えっ?」は「本当に?」のなのか? それとも「俺が入るから」なのか?
「注目の専用機持ちだからねー。あ、こうしてこうして」
センパイに手を引かれて、三人の手が重なる。
一夏を中心に向かって左がセシリア、右が俺だ。
「よし、それじゃあ撮るよー。35×51÷24は〜?」
「え、えっと…?」
「……74.375!」
「玖蘭君正解〜!」
うん、身体スペック上昇はこういうところでも出るんだよな。
パシャッと切られるシャッター。
―――それと同時、その場の全員がシャッターに納まった。
「なんで全員入ってるんだ?」
「なんつー行動力」
一瞬、みんなの影がブレたからな……すげぇスピード。
その後、結局十時を回る頃まで『織斑一夏クラス代表就任パーティー』は続いた。
……こういうときの女子のパワーってすごいのな。
◆
「ただいま」
「お帰りなさい」
うん、いつも通りだ。いつも通り楯無が部屋に居る。
俺もいつも通り、楯無の寝転んでいるベッドに腰掛ける。
「ほんと、何で毎日ここに居るんだ?」
「分かってるでしょ? 君に愛に来てるの」
「あいって漢字が違うよな?」
「あら、そうだった?」
楽しげにケラケラと笑う楯無。
この間のアレ以降、敬語は使ってない。というか、使ったらまた押し倒されるなり何なりされる。
「で、私が居るのに、他の女の子と遊んできたんだ〜?」
「まだその気持ちは受け取ってないよな」
「気づいてて放置してるんだ。ヒドーい」
「第一、自分の気持ちが分かってないんだ。他人の気持ちは受け入れられない」
「それなら、最初に言ったはずよ? 『君の心、いつか私が奪う』って……もう、恥ずかしいんだから言わせないでよ」
「俺は言わせてない。それに言われる方も恥ずかしいからな?」
「ま、それでも……気づかせてあげるだけだよっ♪」
「良くそんなことを恥ずかしげも無く―――んむっ!?」
すっと俺の目の前に回りこんだ楯無に唇を奪われた―――ってまたか!
そしてそのままベッドに押し倒される。
「―――ぷはっ……君の心を奪うために、私はどんなことだってするよ」
何度でもね。と付け足した楯無。
今、その顔は超至近距離。かろうじて触れない程度。
そして見つめてくる二つの瞳。そしてそれは……俺を、俺だけを求めてる。
「俺の純情、何度も奪わないでくれ」
「何度も言ったよ? 君の心を奪うって」
「ほんと、どうして俺?」
「わからなかった。でも、今はわかる……魂が惹かれてるって言うのかな、そう、そんな感じ」
「……重くないか?」
「女の気持ちは重いのよ?」
「さいですか……まあ、とにかく離れてくれ」
「え? なんで?」
「とぼけるな……そして自分の服装とかを改めて見てみろ」
楯無の今の服装=下着にワイシャツのみ。
「えっちぃなあ、拓神は」
「原因はそっちだ。全く、自覚を持て。色々と」
「自覚ならあるわよ。ただ自重してないだけ……君の前限定だけど」
「なら自重してくれ。その気持ちは嬉しいけど、まだ受け取れないんだ」
「ちぇー、いくじなし。据え膳食わぬは男の恥だよ?」
「自分が好きかどうかも分からない女を抱くわけにはいかないよ」
「ま、今はまだ良いよ。いつか必ず………けどね」
最後を聞き取れなかったが、そう言った楯無は俺の上からどいた。
「で、なぜに手を離さないんだ?」
「せめて一緒に寝よ?」
ったく……はぁ。
「……仕方ない」
「やった♪」
起こしかけた体を元に戻して、普通にベッドに寝転ぶ。
その俺の右腕には、楯無がくっついた。制服のままだけど……まあいいだろ、もう一着あるし。
なんだか、だんだん順応してってる俺が居るなぁ。
その後、色々な原因で寝つけなかったのと、朝については――言わなくても分かるだろ?
◆
「織斑くん、玖蘭くん、おはよー。ねえ、転校生の噂聞いた?」
翌朝、眠気と戦っている俺と席に着いた一夏にクラスメイトが話しかけてきた。
「転校生? 今の時期に?」
「ああ、知ってる。中国からのだろ?」
知ってるってのは、もちろん原作で見たからだ。
「そうそう、なんでも中国の代表候補生なんだって」
「ふーん」
とういうか、各国の代表候補生の情報って代表候補の間でも公開されて無いのか?
「あら、わたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」
「このクラスに転入してくるわけではないのだろう? 騒ぐことのものでもあるまい」
箒、今まで自分の席にいたのにいつの間に一夏のそばに来た?
「ああ、たしか二組に転入してくるって話だったぞ?」
この程度なら知ってても怪しまれないんだぜい。
「へえ、どんなやつなんだろうな」
答:お前のよく知ってる女子だ。
「む……気になるのか?」
「ん? ああ、少しは」
「ふん……」
素直じゃないなー、箒は。
……ここまで向けられてる好意に気づかない一夏も一夏なんだが。
「大体、今のお前に女子を気にしている余裕はあるのか? 来月にはクラス対抗戦があるというのに」
「そう! そうですわ一夏さん。クラス対抗戦に向けて、より実戦的な訓練をしましょう。ああ、相手ならこのわたくし、セシリア・オルコットが務めさせていただきますわ。なにせ、専用機を持っているのはまだクラスでわたくしと一夏さん、玖蘭さんだけなのですから」
よかった……一夏の事ばかり気にして俺のこと忘れられてるかと思った。
あ、そういえば。
――なあ、ティエリア。俺の原作に関する知識はお前と共有してるんだよな?
――ああ、その通りだ。クラス対抗戦で介入してくる無人機についても分かっている。
――わかってるならオーケーだ。当日は索敵を頼むぞ。
――了解した。
さて、どうするか……アリーナの観客席からアリーナのシールドを破壊するのは色々と危険だよな。ということはアリーナの外で観戦か。
場所ならいくらでも空いてるだろ。なんなら楯無に頼んでも良いし。
それと、俺も訓練しとかないといけないよな……機体性能に頼ってばかりじゃそのうち負ける。
これは……楯無に頼むか。嬉々として受けてくれそうだし。
他には……神の言ってた『バグ』。それが起きるのか、起きないのか。どんな影響を与えるのか……こればかりはなにも分からない。
「織斑くん、がんばってねー」
「フリーパスのためにもね!」
「今のところ専用機を持ってくるクラスは一組と四組だけだから、余裕だよ」
ああ、また考えてて時間が過ぎてた。
ちなみにフリーパスというのはクラス対抗戦一位のクラスに配られる優勝賞品で、学食デザート半年間無料券だ。
さて、原作通りだとそろそろかな?
「―――その情報、古いよ」
来たか。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」
教室の入り口に出てきた人影、一夏が反応した。
「鈴? ……お前、鈴か?」
「そうよ。中国代表候補生。凰鈴音《ファン・リンイン》。今日は宣戦布告に来たってわけ」
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第14話『一夏のセカンド幼馴染』 | ||
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