IS《インフィニット・ストラトス》 駆け抜ける光 第十話〜現れるは二つのZZを持つガンダム |
「ええとね、一夏がオルコットさんや凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を理解してないからだよ」
「そ、そうなのか? 一応、分かってるつもりだったんだが……」
シャルルくんが転校してきて五日たった土曜日。シャルルくんとはすぐに仲良くなることが出来た。性格や見た目とは裏腹にISの腕は中々だったよ。
量産機である『ラファール・リヴァイヴ』をシャルルくん専用にした『ラファール・リヴァイヴ・カスタムU』がシャルルくんのISだ。
通常のリヴァイヴとは違い、背中に背負った一対の推進翼は中央部分から二つの翼に分かれ、より機動性と加速性が高くなっている。アーマー部分もシェイプアップされていて、大きなリアスカートがついている。そこにも小型の推進翼があって、姿勢制御に使われているようだ。
他にも違いはあるが、最大の違いは武装の多さだろう。基本装備をいくつか外して、拡張領域を倍にしてある。故に武装を増やすことができ、カスタムUは二十もの装備があるという。
オルコットさんや凰さんにしても普通のISの武装数はだいたい五つぐらい。多くて八つぐらいです。νガンダムでも七つぐらいだよ。そう考えたら二十ってすごいよね。
「ふん。私がちゃんとアドバイスしてるだろうが」
「あんなにわかりやすく教えてあげたのに、なによ」
「わたくしの理路整然とした説明の何が不満だというのかしら」
シャルルくんは教えるのも上手い。この三人が教えるよりいいだろうね。実際に遠距離武装を使わせてみるのも一つの方法か。思いつかなかったなあ。
――っ、この敵意はまた……
「ねえ、ちょっとアレ……」
「ウソっ、ドイツの第三世代機だ」
「まだ本国でのトライアル段階って聞いたけど……」
敵意を感じたと同時にアリーナ内がざわつきはじめている。その方向に振り向くと
「…………」
もう一人の転校生――ドイツの代表候補生、ラウラ・ボーデヴィッヒさんがいた。
誰とも話そうともしないし、常に一人であろうとする。まさに『ドイツの冷氷』と呼ばれるだけはある。まさに孤高の女子ってね。
「織斑光輝、私と戦え」
ISのオープン・チャネルで声が届いてきた。この声は間違いなくボーデヴィッヒさんだね。いや〜久しぶりの会話ですか。
「意味もないのに戦う必要は――」
「ならば――戦わざるを得ないようにしてやる!」
ボーデヴィッヒさんは漆黒のISを戦闘状態にシフトする。刹那、左肩に装備された大型の実弾砲が火を噴いたと思ったら
ギュオオオオ!
いきなりボーデヴィッヒさん目掛けて極太のビームが放たれた。それを難なく避けるが、かなりの熱量なのかビームに近かった一部のISのアーマーが溶けかけている。
「いきなりゴメンね。光輝くんに用があるんだよ」
オープン・チャネルで話しかけるのはビームを放った人物だろうけど、誰なの?
ビームが放たれた方向から一機のISが近寄ってくる。
どこかしらνガンダムに似ているのは気のせいだろうか? 額のVアンテナなんか似てるぞ、うん。右手には大きめのライフル――砲門が2門あるのか。珍しいな――に背中にはかなり大きいバックパックが……。
――MSZ-010、ZZガンダムと断定。火力はサザビーと同等かそれ以上。その代わり機動性、運動性は従来のISに比べると少し低くなっている。額に装備されたハイメガキャノンは広範囲、至近距離ではあるがその熱量は凄まじく、回避しても絶対防御を超えて装甲が溶けかけてしまうことがあります。しかし、チャージに時間がかかる為、連射は不可能です。
さっきの極太ビームのことか。確かにボーデヴィッヒさんのISの一部が溶けかけてる。なんて威力だよ! だけど驚くのはそこだけじゃない。
「君のISもガンダムって言うんだ。う〜ん、ガンダムって何を意味するんだろ?」
ZZガンダムの少女はこちらを向いて質問する。確かにガンダムってどんな意味なんだろ?
「何しに来たのよ? エリス」
「鈴じゃん♪ 特訓とは頑張りますなぁ」
凰さんがいう少女――エリスさんはどうも僕に用があるらしい。でもその前に……。
「貴様……!」
ボーデヴィッヒさんがお怒りだよ。それに気付いたのかエリスさんはボーデヴィッヒさんの方へ向く。
「何のつもりだ」
「何のつもりって……だから私はこの織斑光輝くんに用があるって言ってるんだよ。ってことでちょっとお借りします♪」
エリスさんは僕の手を掴んでアリーナから出ようする。全員あっけを取られたのか追ってくる人は誰も居なかった。僕は一体どうなるのさ!?
「一体、用ってなんなの?」
あれからすぐに着替えて、エリスさんの部屋に連れ込まれていた。男女で二人きりなんて……うぅ。
「ん〜ちょっと話がしたいんだよ」
アメジストの瞳に肩まで伸びているオレンジの髪で羽根の髪止めをしている。優しそうな感じで初対面でも嫌な感じはしない。
「その前に自己紹介が遅れたね。私はエリス・リムスカヤって言います。一応、四組の専用機持ちの一人ってことになってるのかな? よろしくね! あと呼び方は「エリス」か「リム」でお願いしま〜す」
邪気の全くない笑顔で自己紹介を終えるエリスさん(こっちの方が呼びやすいな)。専用機っていうのはZZガンダムのことかな。
「えっと、織斑光輝……です。こんな容姿だけど男だから……よ、よろしく」
突然エリスさんが近付いてくる。え!? 何なんだよ!
「ふ〜ん、噂通りの男の娘だね。顔も赤くなっちゃって、可愛いよ」
噂通りって……可愛いだなんて……僕って一体……。
落胆しているとエリスさんが苦笑いしながらもっと顔を近づける。
「そう落ち込むことないよ。光輝くんは光輝くんでしょ? 容姿がどうこうじゃなくてさ」
「え? う、うん。ありがとう」
そんなこと言われたのは夏兄以来だよ。嬉しいな。
エリスさんは離れて僕に質問をした。
「さっそくなんだけど、光輝くんのνガンダムってどこで手に入れたの?」
「そうなんだ。篠々乃博士が関係しているなんて」
「僕もよく分からないんだよ。どうやって開発したのかはね。でもエリスさんのZZガンダムも凄いよね。自然発生なんてさ」
あの質問をした後、お互いのISについて話し合っていた。エリスさんのZZガンダムはサザビーが乱入してきた次の日にいつの間にか持っていたものなんだってさ。
「私も驚いたよ。でも違和感はなかったんだよね。まるで始めから持っていたような感じだったの」
「う〜ん、謎だねぇ。そういえばなんで僕のISがνガンダムだって分かったの?」
「さっきアリーナで反応したのもあったけど、鈴に教えてもらったからね。『織斑光輝ってのも確かνガンダムって名前だったわね。一体ガンダムって何よ』って」
へぇ〜、凰さんか。エリスさんて顔が広いんだね。でも分かるかな。この明るくて人懐っこい性格だし、一緒にいて楽しいよ。
「でエリスさんはZZガンダムで模擬戦とかしたことあるの?」
「一回だけクラスの友達としたけど、制御が難しくて途中で止めたの。性能はかなり高いんだけど制御が難しいんだよね。だから今は調整中なんだよ。ISのOSを自分なりに調整してやっと今日まともに操作できるようになったんだよ。でもまだ一つ問題がある」
「問題って?」
「ハイメガキャノンの出力調整だよ。普通に打ったら避けても装甲が溶けるからさ、さすがにやばいなって……あれでも一応リミッターはしてるんだけど」
ってことは、まだ出力が上がるってこと!? 避けただけで溶けるのに、あれ以上の威力ってどうなるんだ!?
「でもあれってシールドエネルギーをかなり持っていかれそうだね……。いっそのこと使うの止めたら?」
「そうだよね。でもあの武器もZZの一部なんだからさ、使わないとダメだよ。いざって時にだけになるけどね」
エリスさんはいっぱいの笑顔で言う。ZZガンダムを大切にしてるんだね。
不意にエリスさんが時計を見る。どうかしたのだろうか?
「そろそろルームメイトの子が戻ってくるから今日はこのくらいかな」
「え、そう……なんだ。じゃあ帰ろうかな」
「騒ぎになっていいのなら今日一日部屋に居てもいいよ?」
はい!? 何を言って……!
「い、いいいい、いや! 大丈夫だよ!」
「冗談だよ。いや〜反応が可愛いね。また話そうね。今度はIS以外のことも……ね?」
エリスさんの笑顔って可愛いなぁ。さっきまでからかわれてたのに、どうでもよくなってくるよ。
「うん、またね。手伝えることがあったらなんでもするから!」
そう言って僕はエリスさんの部屋を後にした。しかし、ガンダムって一体どんな意味なんだろう? 知ってそうな束さんにでも訊けたらいいな。
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