第十六話 羽休め |
はやてサイド
「オーケー、降参だ」
「えへへ、また俺の勝ちぃ〜。そろそろアンクもデバイス使ったら?」
凄いなぁ……アンクさんに勝ってもうた。
あれが魔法か〜……何か、実感湧かんな〜。
「バーカ。俺がデバイス使うとしたら、人間の状態でしか使わねぇよ。この状態で使ったら疲れるんだ」
「……アンク、お爺ちゃんみたいだね……」
「ほっとけ」
何か二人が軽口を叩きあいながらこっちに近づいてくる。
「いやぁ、それにしても……凄かったですね」
「そうですねぇ」
「前に一度戦ったんですけど……いやはや、あれでまだ全力ではないとは……流石に凹みます」
「ザゼルさんもアニス君と戦った事あるんですか?」
「えぇ、つい最近にですけどね。あの時はあんな魔法は使わずに、ほとんど剣術と体術でやられちゃったんですけどね」
おどけて苦笑しながらザゼルさんは言う。
それは悔しいとか、そんな感情なしに……本当に敬服しとる感じの声やった。
「やっぱり、私も強くならないといけないですかね〜。更に使い魔も増えそうですし……競争率も高くなりそうですし……」
「競争率って……何がですか?」
「いえ、ただの独り言です。気にしないでください八神さん」
「はぁ……」
何やろう……ウチも強くならんといけん気がしてならんのやけど……。
「あぁ、疲れちゃった」
いつの間にかもうウチの所までアニス君が来ていた。
アニス君は少し肩で息をしている。
「アンク〜……暑い……」
「だったら南国の設定にすんじゃねぇよ……」
「しょうがないじゃん、本家がそうだったんだから……あうあう」
はぁ〜、あうあう言っとるアニス君はかわぇぇな〜。
やっぱアニス君はあれや、天然さんやな。素でそれをやっとるんだから……ある意味尊敬するで。
「はやてちゃんは大丈夫?結構暑いけど」
「あぁ、そう言われれば暑いなぁ……」
「どうせなら、遊んじゃう?水着に着替えてさ。はやてちゃんはさ……泳げないけど……その……水際に座ってるだけでもだいぶ違うと思うんだ」
「……そやな。せやったらええかもなぁ。でも、水着持ってきてないで?」
「それだったら心配ないよ」
パチン。
そう言って、アニス君は指を鳴らした。
そしたらいきなり空間が割れて、その中をアニス君が覗き込む。
「えっと……確かこの辺に〜……うわっ!コラ!争うな!ひゃっ、手を舐めるな!うわぁ、ベトベト……きゃっ!ちょっ、コラ!触手伸ばすな!いやぁ!服に入ってきたぁぁぁぁ!こいつ食え!危ないから食っちまえ!」
【ウボァァァァァァァァ……ゴックン……ゲプ……】
「よしよし」
(((そこに何が入っているのか、凄く聞きたい……でも聞いたら負けだろう(ですね)(やね))))
「ん〜っと……あ、あったあった」
そして、そのまま何かを引きずり出してくる。
その手に握られていたのは………スク水。
「はい、これしかないけど……我慢してくれると嬉しいんだけど……」
「……先ず、アニス君が何でスク水を持っとるのかを小一時間問いただしたいねんけど……」
「八神聞いてやるな……こいつもこいつで苦労してるんだ……」
「そう……これだけは聞いてほしくないんだ……」
何や、アニス君とアンクさんが今にも泣き出しそうな顔をしてるのは……何でやろう?
アニスサイド
そう……このスク水は……前の世界で学校に通ってた時にストーカーから送られた品物です……。
どうやら魔法で作られていて、成長しても着れる優れものらしいです……。
しかもこれ、捨てても捨てても戻ってくる魔法も掛かっているので、今まで魔法空間に投げ捨てていた物だ。
まぁ、安全性は大丈夫。
俺一回着たから。その時使用人全員が鼻血を噴き出して倒れた。
どうやらチャームの魔法が掛かってたらしい(実際は掛かってなくて、自分の恐ろしさに気づいていないアニス。可愛さ的な意味で)。
まぁ、ほとんど魔法は解除したので大丈夫。でも捨てても戻ってくる魔法と伸び縮みする魔法は消えなかった。
「はい、これ」
「あ、ありがとな……」
何かはやてが憐れみの目線を向けてきてるのは……気のせいであってほしい。
「じゃあ、あの屋敷の中で着替て来て?あ、アンク……運んであげて……」
「分かった」
アンクはすぐに動き出し、車いすを押していく。
アンクも一応、屋敷の中知ってるから大丈夫だろう。
「アニスく〜ん」
ガバッ!
「ふわぁっ!?ザ、ザゼルさん!?」
「さぁ、今なら私と良い事できますよ?さぁさぁ、良い事しましょうよ!と言うか、食べても良いですか?」
ゾクゾク。
「ひやぁぁぁ……!み、耳元で喋らないでください……くすぐったいです……」
「ふふふ……その年で、良い感度ですね……これは食べごたえがあります……」
「いやぁ……だから、耳元で囁かないでください……はぅ……」
「あぁもう……こんなに愛らしい人を主人にしたのは初めてですよ……」
そう囁きながら、ザゼルさんは俺の体をまさぐりだす。
うわぁ!嘘嘘!?ダメダメダメダメダメ!!ダメェェェェェェ!
「死ね!」
ドスッ!
「ったぁ!」
「ハァ……ハァ……ア、アンク……」
「全く、人が目を離した瞬間これだ……」
アンクがはやてを連れて、既に戻って来ていた。
た、助かった〜……はぁ、もうザゼルさん呼ばない方が良いのかな?
「……あの……私砂に埋まっちゃったんですけど……」
「知るか、そのままずっとその状態で居やがれ!」
「……あっつ……」
まぁ、頭を冷やすには良いかもね……日に晒されて冷やすどころではないだろうけど……。
でもザゼルさんが悪いので、一向に可愛そうとは思わない。
「あはは、アニス君も大変やな〜」
「もう、他人事だと思って……結構恥ずかしいんだよ?」
「じゃあウチが恥ずかしいと思わんくなるほど胸揉んだるで?」
はやては手をワキワキさせながら、いやらしい顔で見てくる。
いや、そのワキワキやめなさい……女の子がはしたないよ?はぁ、毎日貞操の危機とか……嫌だなぁ。
「そ、それじゃあはやてちゃん。行こうか」
「せやね……あ、所で……アニス君はいつここ出るん?ウチ、洗濯とかしないといけないから」
「あぁ、言ってなかったっけ?ここから出れるのは24時間経ってからじゃないと戻れないよ?」
「……へっ?マジかいな……せやったらどないすんねん!ウチ家事とかあんねんけど!?」
「大丈夫だよ。こっちの中では24時間だけど、外の世界からしてみれば一時間しか経ってないから」
「………うん、ウチはもう何も驚かん……驚かんで……」
「?」
はやてが何かぶつぶつ言いだしたけど……どうしたのかな?
まぁ、大方現実味が無くなってきたんだろうね。大丈夫、君の周りはもう少しで現実味が無くなるから。
まぁ、騎士達がねぇ……でも、優しい奴らだから大丈夫だろう。
「さ、遊ぼうか、はやてちゃん!」
「うん!」
俺ははやてを車いすから抱き上げて、お姫様抱っこする。
「ア、アニス君……力持ち何やね……」
「……ま……まぁ……ね……」
「……無理しとるんか……」
「し……してない……よ……」
「嘘や、腕と足がプルプルしとるで?」
「……あうあうあうあうあうあうあう……ア、アンク……パス!」
「……はぁ、ほら、こっち寄こせ」
俺はアンクにはやてを渡すと、その場に座り込む。
はぁ、やっぱり筋力無いからキツイなー……。
「あはは、ありがとうなアニス君。ウチそれだけで嬉しいねん」
「……はやてちゃん……」
「ほな、遊ぼうか!」
「うん!」
俺とはやてとアンクは、そのまま海の水際で遊びまくりました!!
「……あのー……私は何時になったら出られるのでしょうか……結構深めに埋まったんで……力使えなんですよね……あの、今回の件、深く深く反省してますので……出していただけたら嬉しいのですが……」
ザゼルは犠牲になったのだ……by作者
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「いやぁ、楽しかったなぁ」
夜、あのまま遊びまくり、はやてちゃんがご飯を作ったりして、そのまま夜になった。
今はもう、寝る時間だ。
「それにしても、ここがアニス君の部屋か〜……何か、地味やな」
「ほっといてよ、俺は無駄な物は置かない主義なんだ」
「とか言いながら、この押し入れにはごっそりスパッツ入っとんのな」
「いや、勝手に開けてみないでくれる?」
プライバシーの侵害!!駄目!絶対!
「所で、ウチは何処に寝たらえぇん?」
「あ、そっか……ここにははやての部屋無いんだもんね……じゃあ今から部屋の用意するよ」
俺は立ち上がり、部屋から出ようとドアに向かおうとする。
だが、それをはやてが俺の腕を掴み阻止する。
「……どうしたの?はやてちゃん」
「……あの……な?もし、もしやよ?アニス君が嫌じゃなかったら……ウチと一緒に寝ても良い……かな?」
「……はぅ……はやてちゃん……些か大胆過ぎだよ……あうあうあうあう……」
うぅ、顔が赤い……照れてるよ俺……あうあう……。
何かそろそろ、このあうあうが定着しつつあるね……自重しなきゃ……。
「……う、うん……俺は別に構わないよ?」
「ホンマに!?じゃ、今すぐ寝るで!」
うん……やっぱりはやてちゃんは些か大胆過ぎだね……。
はぁ、俺理性保つかな?いや、いつも保ってたし大丈夫だろう……。
こうして、俺ははやてちゃんと一緒に寝ることになった。
「……アニス君、ほんまに小っさいなぁ……ウチの腕にスッポリや」
「あう……はやてちゃんの胸が……顔に当たってる……」
あうあう、俺はロリコンじゃないよ!
こんなもので、俺は欲情なんかするものか!否!断じて否だ!こんなもので、俺の鋼の精神は崩せるものか!!
「アニス君の髪の毛、良い匂いや……」
「か、嗅がないでよ〜……はぅ……」
「あぁ、ホンマに可愛い!」
ギュっ!
「ふわぁ!?ちょっ、はやてちゃん……苦しい……」
はやては思いきり俺を抱きしめる。
と言うか、主に顔なんでかなりキツイ……。
「……アニス君……ウチ、こんなに幸せでえぇんやろうか……」
「……はやてちゃん……」
「こないに暖かい家族が出来て……ホンマウチは幸せ者や。ホンマに……ウチには勿体ない位やで」
「……人が幸せになるのに、良いも悪いも無いんだよ?むしろ、子供だからこそ、色んな幸せを体験して、次の世代に繋いでいく。その方が、ずっと幸せが続くでしょ?俺は人の嬉しい顔や幸せそうな顔が大好きだ、だって、自分も幸せな感じになるから。それが俺のハピネス」
「……アニス君……ありがとうな」
俺とはやては、暖かい気持ちになり……そのまま就寝した。
そして朝、起きてからすぐにゲートに行き、外の世界に戻る。
まぁ、本当に一時間しか経ってなくてはやては驚いてたけど……それはまた別のお話。
「あの……私、忘れられているのでしょうか?」
その後、ザゼルは何とか自力で脱出し、そのまま魔界に帰って行った……。
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夏と言ったら海だね | ||
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