風を司る猛獣の王者
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学年別対抗戦当日

 

「ふぅ〜・・。観客が多いな。」

「そうだねぇ。」

 

唯が言った。

アリーナの観客席には各国のIS関係者が集まっていた。

 

「その中でも注目度が一番なのは唯だと思うよ。」

「まぁそうだろうなぁ。」

 

世界で唯一ISを動かせる男。

 

唯には不本意ながらその二つ名が付いてしまい世界各国の注目の的となっていた。

 

「さらに一回戦からボーデヴィッヒとのペアか・・。もうこれはある意味宿命だよな・・。」

 

そう、運命のいたずらか一回戦からラウラのペアと当たる唯たち。

さらに唯には気になることがあった。

 

(ボーデヴィッヒのISにVTシステムが搭載されている可能性あり・・か。しかも巧妙に隠したつもりらしいが俺の親友にかかれば紙のようなものなんだよな。)

 

藤丸から受け取ったデータでラウラのISの情報を見ていた唯。

その中で開発、研究、搭載禁止にされているはずのシステム・VTシステムが搭載されている(かもしれない)ことに気づいた。

しかも操者であるはずのラウラも知らない。

 

(ボーデヴィッヒはこれが搭載されていることは知らない・・。システム発動には何らかの条件が有ると見ていいな・・。まぁ、戦ってみれば分かることか。)

 

唯はそこまで考え一旦考えを切る。

パネルを開き装備を確認してシャルルに向き直る。

 

「デュノア、悪いが・・。」

「うん、言いたい事は分かるよ。絶対に勝ってよ?」

「ああ。」

「仮に負けたら女子の格好をしてもらうからね。」

「了解。さぁ、行くか。」

 

唯の言葉と同時に2人はISをまといカタパルトへ。

 

「織斑唯、黒百合。行きます!」

 

その号令とともに飛翔する唯。

 

(カッコいいな〜。僕もやってみようかな?)

 

「シャルル・デュノア、ラファール・リヴァイブ・カスタムU。行きます!」

 

シャルルも号令とともに飛翔。

唯はある程度上空に来たところで目を閉じて精神集中を行い相手を待つ。

 

「・・・。」

 

そしてゆっくりと目を開き顔を横に向ける。

そこにはラウラが居た。

 

「今日という日を待っていた。貴様を倒し、教官の目を覚まさせる!」

「お前の幻想・・この俺が破壊する・・!」

 

『試合開始』

 

唯がそういった瞬間、試合開始の合図が響き渡る。

 

控え室

 

「始まったね・・。」

「ああ・・。」

「唯さん・・。」

(何だろう・・?嫌な予感がするわ・・。)

 

モニターを見つめる4人。

上から一夏、箒、セシリア、鈴である。

鈴の横にはセルメダルがたくさん入ったミルク缶が置いてあり蓋の上にはゴリラカンと呼ばれるカンドロイドがあった。

 

アリーナ・観客席

 

「キヒヒ、始まったぜぇ・・。」

 

ある席に居た男の手には砕けたセルメダルがあった・・。

 

唯は適度に距離を保ちつつメガキャノンを低出力で放ち、ラウラに牽制を与える。

ラウラは右手を前に出し停止結界を発動しようとする。

 

「その能力の弱点は分かっている!」

 

背中のバーニアを吹かせながら高速移動を開始。

移動しながら低出力メガキャノンを放つ。

 

「確かにお前のその能力は脅威だ。だがそれを扱うには手を向けた方向にしか発動しないことと発動には多大な集中力が必要になる!そこを突けば何の脅威にもならない!」

「くっ!?ならば!」

 

ラウラはワイヤーブレードを射出。

唯は左手のビームサーベルで弾き返す。

 

「くっ、中距離戦か。」

 

右手にもビームサーベルに持ち、ビームガトリングで牽制を行いつつ接近を試みるがラウラはワイヤーブレードを巧みに操り、レールキャノンを撃ち込んでくるため近づけないでいた。

 

(くそっ、これじゃ近づけない・・!ならば一か八か・・!)

 

唯は次の瞬間、思いもがけない行動に出た。

 

「っし!捕まえた!」

「なっ!?」

 

唯は左手でワイヤーブレードを掴んだのだ。

さらに引っ張り寄せビームサーベルで切りかかろうとする。

 

「くらえ!」

「なんの!」

 

ラウラもプラズマ手刀を発動して応戦。

 

ガン!ガン!

 

会場の歓声とは別に激しくぶつかり合う音が響き渡る。

ある程度切り結んだ2人は距離をとる。

離れる際ふとシャルルの方を見るとパートナーを撃破したようだ。

 

「・・・。」

「・・・。」

 

2人は無言でにらみ合う。

 

「・・お前が姉さんを尊敬する理由は分かる。強く、気高い・・。だけどなぁ・・!姉さんだって完璧じゃない!!前にも言ったがこの世に完璧な人間なんか存在しないし姉さんは姉さんの道を歩んでいる!!それを俺たちがどうこう言う筋合いは全く無いんだよ!!」

「・・まれ・・。」

「姉さんの経歴が傷ついても!!どんなことがあっても織斑千冬という人間は不完全な人間だ!!俺はそんな姉さんを支えてやりたいし、今まで一緒に居られなかった分姉さんと一緒にいたい!!」

 

唯は幼い頃に千冬と一夏と離れ離れになった。

だからこそ一緒に居て千冬や一夏と共に過ごし、一緒に要られなかった分の隙間を少しでも埋めようとしている。

それと同時に尊敬もしていたがラウラのように完璧さも神聖さも求めなかった。

世界を回っているときにある探偵が言っていた言葉がある。

 

この世の中に完璧な人間など存在しない。

不完全だからこそ支えあいながら生きている。

 

その探偵いわく、今は亡き師匠の受け売りらしいが唯の心に響いた。

この言葉を胸に秘め今を生きている。

世界最強の女性である千冬もISを開発した束もISを操ることができ、開発もできる自分も不完全な人間なのだから・・。

 

「お前の身勝手な価値観だけで姉さんの人生を縛られてたまるか!!」

「黙れぇぇぇーーー!!!」

 

逆行したラウラが切りかかろうとするがそれをかわす。

 

「この・・バカ野郎ー!!」

 

唯はバズーカ・拡散弾頭を撃ちながら距離を取る。

黒百合の装甲が展開して赤く発光、超高速で動きレールキャノンを一撃で破壊。

 

「な、にぃ!?」

 

レールキャノン破壊後唯は急接近。

ラウラが右手を差し出すときには既に唯はラウラの目の前に居た。

 

「な、速い!?」

「でやぁぁー!!」

 

ビームサーベルで滅多斬りを行い、蹴り落とす。

 

「カハッ!」

 

地面にたたきつけられたラウラの肺から空気が漏れる。

最後にメガキャノンを構えて高出力で発射。

 

「これで終わりだ!」

 

唯はそう言うと同時に装甲が元に戻り、一息つく。

 

「唯!」

 

そこにシャルルが駆けつける。

 

「やったね。だけど・・。」

「あんだけ叩き込んだんだ・・。絶対防御も発動しているみたいだからもうこちらの勝ちだ。」

 

勝利を確信し2回戦について話し合う2人。

だが・・。

 

「ヒヒヒ。そろそろだなぁ・・。」

 

ラウラは考えていた。

尊敬する千冬の経歴に傷を入れた妹・・一夏。

そして・・今自分を倒した弟の唯。

教官に強さを証明できず目の前にいるこの男に負けるのか・・?

 

(力が、欲しい・・。)

 

その時ラウラの胸の奥底に何かが蠢いた。

 

『願うか・・・?汝、自らの変革を望むか・・・?より強い力を欲するか・・・?』

 

そしてラウラはこう答えた。

 

(わたしに、比類なき最強を、唯一無二の絶対を――――私によこせ!)

 

<VTシステム・・起動・・>

 

チャリチャリチャリン・・!!

 

「・・!?」

 

唯の目が紫に光りセルメダルの気配を感じラウラのほうを見る。

するとラウラのISシュヴァルツェア・レーゲンの装甲だったものがぐにゃりと溶けラウラから溢れたセルメダルと結合、ドロドロとしたものに変わり、ラウラを包み込んでいった。

 

「チッ、ヤミーに寄生されていたか・・!それにVTシステムが結合した・・というところか・・!」

 

唯は目の前にいる黒いウサギのヤミー・・ヴァルキリーヤミーの持っている刀に目を見開いた・・。

 

「雪片・・!ふふ、ドイツめ、ずいぶんと楽しいものを作ったものだなぁ・・!ボーデヴィッヒには黙って挙句の果てには巧妙に隠してまで・・!」

「・・・。」

 

シャルルには分かった。

唯はすごく怒っていることに。

 

「デュノア、避難してくれ。」

「分かった。でもあれを倒せるの?」

「俺にはあれを倒す為の力がある。だから心配するな。」

「絶対に帰ってきてね。負けたらメイクも追加だから。」

「ああ、わかった。」

 

シャルルは生徒を連れてアリーナを後にする。

唯は司令室に通信を開く。

 

「ねえさ・・織斑先生。ドイツの来賓を今すぐに拘束してくれ。絶対に逃がすな。」

「・・分かった。だがあれはどうするつもりだ?」

「あれはヤミーだ。といってもVTシステムとセルメダルが結合して出来たものだな。」

「・・ラウラを頼むぞ。唯。」

「・・ああ。」

 

唯は通信を切り、ISを解除した後、腰にオーズドライバーをセット。

それと同時に大量の屑ヤミーが現れ唯に襲い掛かる。

 

「・・!屑まで!?」

「唯!」

 

愛琉が現れタトバのメダルを投げ渡す。

 

「はっ!」

 

屑ヤミーを蹴り飛ばしてメダルをキャッチ、ドライバーにセットしてスキャン。

 

「変身!」

 

(タカ! トラ! バッタ!)

(タ・ト・バ♪ タトバ♪ タ・ト・バ♪)

 

唯はオーズTTBに変身。

避難しながらそれを見ていた各国のIS関係者は驚く。

 

「何だあれは!?」

「ISとは違う・・?」

 

オーズは専用剣・メダジャリバーを構えヴァルキリーヤミーに切りかかろうとする。

しかし屑ヤミーが邪魔で近づけずにいた。

 

「ハァ!くそっ、キリが無い・・!」

「お待たせ!」

「唯!大丈夫!?」

 

オーズは悪態をつく。

そこに鈴たちが現れ鈴はバースドライバーを巻きつける。

 

「さて、行きましょうか!」

 

ピーン・・!

 

鈴はセルメダルを上に弾き左手でキャッチ。

 

「変身。」

 

そしてメダルをセットしてダイヤルを回す。

 

カポーン!

 

鈴の体がカプセル状のオーラに包まれ機械的な装甲を身につける。

これがセルメダルの力を極限にまで引き出す力を持ったライダー・・仮面ライダーバース。

 

「はぁぁ・・!」

 

愛琉も自身の本当の姿であるメズールに姿を変え屑ヤミーに攻撃を仕掛ける。

 

「一夏!箒!援護お願いね!」

「分かった!」

「・・ああ!」

 

バースバスターを構え発射する一夏と箒。

 

「ナイス!てりゃ!」

 

バースバスターで怯んだところをキックやパンチを叩き込んでいく。

 

「ふっ!」

 

メズールは水流弾をメインにパンチとキックを当てていき数を減らしていく。

そしてオーズはヴァルキリーヤミーと激しく切り結んでいた。

 

「チィ!やっぱり元が姉さんというだけあって強い・・。」

「ふふ、私は最強だ!貴様とあの妹を殺しそして教官を連れ戻す!」

「そうかい、だがお前が強い訳じゃなく姉さんが強い・・。お前のように思いも信念も籠っていないただの模倣の剣で俺は倒せない!」

 

オーズはキックを当てて距離をとりタトバのメダル全てを外して新たにメダルをセットしてスキャン。

 

(ライオン! ゴリラ! チーター!)

 

オーズはラゴリーターにフォームチェンジ。

 

「姿を変えたぐらいで!」

「ふっ!オラァ!」

「グフッ!」

 

ヴァルキリーヤミーは雪片を振り下ろすがゴリバゴーンで受け止め、そのまま力の篭ったパンチを当てる。

 

「皆!目を閉じろ!」

 

オーズのその声を聞き、反射的に一夏たちが目をつぶる。

 

ピカー!!

 

ライオンヘッドの特殊能力・ライオネルフラッシャーを発動しヴァルキリーヤミーの動きを止める。

その隙を突き高速ダッシュでヴァルキリーヤミーの元にいき、組み付いてチーターレッグの特殊能力である連続キック・リボルスピンキックを繰り出す。

 

「・・!いた!」

 

しばらくセルメダルを削っているとラウラがいた。

 

「手を伸ばせ!」

「・・・。」

 

オーズの言葉にラウラは手を伸ばして掴みオーズは一気に引っ張る。

 

「ぐぉぉぉ!貴様ぁ・・!」

 

ラウラを引き抜いたオーズはいつの間にかタトバコンボに戻りヴァルキリーヤミーの攻撃をかわさず、そのまま攻撃を受ける。

 

「グッ!」

「どうしたの!?唯!」

 

一夏はバースバスターの銃口をヴァルキリーヤミーのほうに向けるがバース(クレーンアーム・ドリルアーム装備)がストップを掛ける。

 

「一夏!よしなさい!」

「どうして止めるの!?鈴は平気なの!?」

「唯はね、決断をさせようとしているのよ。」

「え・・?」

 

オーズはヴァルキリーヤミーの攻撃を全て受けている。

ラウラは不振に思い声をかける。

 

「どうした・・!?早く倒せばいいだろう・・!」

「ボーデヴィッヒ、あれはお前の欲望・・。俺と一夏を殺したい欲望を持ったヤミーだ。お前はどうしたい・・?」

「!?」

 

オーズは全く手を出さず、ヴァルキリーヤミーの攻撃を受け続ける。

 

「幻想にとらわれたまま生きるか・・幻想を捨て、新しいラウラ・ボーデヴィッヒを始めるか・・。決めるのは・・お前だ・・。」

「私は・・。」

 

ラウラは羨ましかった。

鬼のような教導の中、嬉しそうに一夏と唯の話をする千冬。

千冬にこんな表情をさせる2人に嫉妬をしていたのだ・・。

 

千冬が強いのは実力だけではなく、守るべきものがあったからこそなのだとラウラは理解した。

 

「唯ー!頼むー!」

「・・了解!ハァ!」

「ぐ・・!分が悪いか・・!」

 

ラウラの言葉を聴いたオーズはバッタレッグを発動し強烈なキックを叩き込む。

不利を悟ったヴァルキリーヤミーはアリーナの壁を破壊し外に逃げ出す。

 

「あ、待て!姉さんなら退かないぞ・・。あった!」

 

オーズは通路にある自販機を見つけ、黄色のカンドロイドを起動。

 

(トラカン!)

 

そして自販機に向かって投げる。

 

コロコロ・・。

ガシャンガシャン。

 

「ガオオン!!」

「合体した!?」

 

トラカンとライドベンダーが合体してラトラーター専用機・トライドベンダーに変わる。

合体したことに一夏は驚く。

オーズはタカとバッタのメダルを外しライオンとチーターをセットしてスキャン。

 

(ライオン!トラ!チーター!)

(ラッタラッタ〜♪ラトラーター♪)

 

オーズの姿が全身黄色の姿に変わる。

これが風を司る猛獣の王者・・ラトラーターコンボ。

 

「・・!あれは黄色のコンボ!?」

「二人とも!目をつぶりなさい!」

「うおおおぉぉぉ!!!」

「暑い・・!」

 

オーズが咆哮を上げるとライオネルフラッシャーが強化された熱光波・ライオディアスが全身から放たれ屑ヤミー数体は消し炭になる。

 

「鈴!愛琉!屑は任せる!」

「分かったわ!」

「ええ。」

 

ちなみにメズールはライオディアスを受けてなぜ平気なのかというとシャチ、ウナギ、タコのメダル3枚は唯が持っており、現在メズールの体を構築しているのはシャチ2枚、ウナギ1枚、タコ1枚。

代わりにライオンコア、チーターコアを取り込んでいるためライオディアスに対抗できるようになっているのだ。

オーズLTTはトライドベンダーに搭乗、バースたちに屑を任せてヴァルキリーヤミーを追いかける。

 

「一気に決めるわよ!」

 

バースは2枚セルメダルをセットしてダイヤルを回す。

 

(セルバースト!)

 

「いっけー!」

 

クレーンアームに取り付けたドリルアームが光り輝き、バースはそれを振り回す。

必殺技・セルバーストを受け屑ヤミーを全て爆散。

 

BGM:Ride On Right Time(歌:織斑唯&シャルル・デュノア)

 

「ええい!しつこい!ハァ!」

「っと!」

 

オーズLTTはヴァルキリーヤミーの放つ衝撃波を交わしつつ複合武器・メダガブリューを取り出す。

そしてセルメダルを食べさせる。

 

(ゴックン!)

(ラトラーター! 〜〜♪)

 

コンボ名とメロディーが流れメダガブリューは黄色に輝く。

 

「ハァー・・!」

「切り裂いてやる!」

 

トライドベンダーの前方に黄色のリングが出現してそこを猛スピードで潜り抜けスピードの乗ったアックスモードを叩き込む。

 

「せいやぁぁぁーー!!」

「ぐわぁぁ!!」

 

必殺技・グランドオブレイジを受け、ヴァルキリーヤミーは爆散、その場には大破したシュバルツェア・レーゲンが残りオーズはそれを回収してIS学園に帰っていった。

それを影で見ていた男がいた。

 

「くそ!IS学園って言ったら女の園じゃないか!なのにハーレムのような生活を満喫している織斑唯とかいうやつ・・許せん!」

 

この男は伊藤誠。

彼女がいるというのに平気で他の女を抱くという男の風上にも置けない男だ。

この男は一体何をするというのだろうか・・?

 

説明
トーナメント開幕。
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