二度目の転生はネギまの世界 第十一話
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第十一話「魔法世界に来てみたが」

 

 

 『術』を400年かけて研鑚し続けたせいなのか、神鳴流を会得するのにかかった年月は2年で済んだ。斬岩剣を3日、斬空閃を7日で習得してしまい、その他多くの技を名前と一致させる作業を一カ月する合間に、奥義である斬魔剣を教えてもらうために交渉した半年を含めてだが。

 ともかく。京都神鳴流を会得した((我|オレ))は、次なる地を目指す前に二振りの小太刀を鍛えてもらった。陰陽系の魔術師を専門にしている裏の鍛冶屋に、莫大な魔力を込めた((我|オレ))の血液を混ぜた砂鉄を渡して、無理を承知で作らせたその小太刀の名は「((黒陽|こくよう))」と「((紅月|くげつ))」。

 ((我|オレ))の血を馴染ませた小太刀であるが為、((我|オレ))以外には扱えん代物と化した。具体的に言うのであれば、下手に抜けば小太刀からの((圧力|プレッシャー))で弱ければ命を断たれる。強くとも意識を断たれるであろう。魔と適合する異常者であるのならば、もしくはブーストされるであろうが、((我|オレ))以外はいるとは思えん。

 

「魔法世界へのゲートはここでいいのか?」

「はい。杖などの武器になるものは一時預かりになります」

「((我|オレ))は……杖は指輪二組。武器は太刀一振り。以上だ」

 

 次の行先は魔法世界だ。まあ理由はいくつかあるが、一番大きな理由は戦争に介入してみたいことだ。次点は賞金稼ぎが嫌になるほど多いことか。全員返り討ちにしたが。

 返り討ちについては、((我|オレ))が強くなりすぎたことも大きな要因か。常に武術・魔術面で強化を続けているため『進化し続ける怪物』などという二つ名が追加されていたからな。

 

「((仮契約|パクティオー))カードも預かり対象になりますが、大丈夫でしょうか?」

「契約者のカードは影の中だ。杖がなければ取り出せん」

「……確かに。それではこちらの…………」

 

 今は適当に咒式変化している。((我|オレ))の本来の姿は、見つかればすぐに抹殺対象レベルまで危険視されてしまっている。この程度は日常茶飯事だ。

 ああ、先ほど言っていた小太刀二振りはキティのパクティオーカードとともに影の中だ。あんな危険物、万一抜かれでもしたら出禁ものだ。キティとの関係も、知られると不安要素ばかりになるしな。

 さて、ゲートを抜けたら適当に徘徊するか。さすがに100年以上も時間が余っている以上、もう少し鍛えておきたいところではある。無論、魔法も気も使わない、純粋体術のみで。

 これは、((最近|300年前から))の制限行為の一つだ。現在の((我|オレ))の異常な魔力と気の量では、戦いになることがまずあり得ない。そのため、よほどのことがない限りは魔力を封印、気も最低限度にしている。それでもなお、((我|オレ))が認めうる存在はハーン師範や青山宗一郎くらいのものだ。魔法使い共には体術の良さが分からんのか、遠距離から魔法ばかり撃ってくる。当然接近して殲滅。俳句風にするのであれば、『寄らば斬る。寄らずとも斬る、寄って斬る』か。数が多い場合は仕方なく魔法と咒式で殲滅している。

 

「などと考えている間に魔法世界に到着か。見た目はファンタジーだが、実情はどうかな」

 

 空飛ぶクジラや明らかに((人間|ヒューマン))ではない((人型生物|ヒューマノイド))もいるが、知的生物である以上、それほど旧世界と変わらない生活を送っているはずだ。魔法を除けばだが。

 さて、どこに行くか……そもそも魔法世界編以降は真面目に読んだわけでもなし、どこがどうだったかなど、もう記憶には欠片もない。メガロが腐っていたあたりなどは覚えているが……ん、ケルベラス渓谷?

 ――――ストーリーにかかわりがあった場所だとは思うが……よし、行ってみるか。指輪、刀三振り、共にオーケー。この装備で大丈夫か?

 

「大丈夫だな、問題あるまい」

 

 転移を実行する。((我|オレ))の視界が一気に切り替わり、たどり着いたのはどこかの崖の上。渓谷ならば、崖の一つや二つあっても不思議ではないが、谷底からは妙な気配が漂ってきている。この感じ……魔力消失空間? とりあえずはここの谷底は、魔法と咒式は一切使えないか極限まで軽減されるかのどちらかだな。まあ、気が使える時点であまり問題になるまい。降りて修行を開始するか。

 で、わざわざ谷底まで降りて行ったのに、だ。

 

「ギュオオオオオォォォォオォォォァァァアァアァ!!!」

「デュラアァァァァゥゥゥウゥ!!」

「五月蝿い」

 

 ひたすらに五月蝿い。((我|オレ))に図体が勝っているだけで強がる獣どもが。皆殺しにしてくれるわ。

 

<私が相手になるから引きなさい>

「「「「「「ギュア!?」」」」」」

「……ほう、それなりにできる者が来たか」

 

 念話のようだが、誰だろうか。渓谷の奥、それも相当先だ。

 

<馬鹿ね、圧倒的実力差を見極められないなんて……さて、私が出ていくのとそちらが来るの、どっちにする?>

 

 声だけでわかる。声の主は相当の猛者だ。口調からして女性……若しくは人語を解する高位の雌の魔獣か。

 

「((我|オレ))が向かおう」

 

 獣どもが((我|オレ))に道を譲る。ならば声をかけたのは、この渓谷最強の存在か。

 別に恐れる必要性はない。強き者との戦い。それは血沸き肉躍る行為だ。

 

「さて、邪魔するぞ」

<ええ、いらっしゃい。勇敢なるヒト>

 

 最後の角を曲がったところで、声の主の姿が映る。なるほどな、確かに彼女なら最強を名乗れる。

 それは、龍。それも、およそ120メートルはあるかという極上の大物。

 

<私を見ても驚かないとはね。さすがは、ケルベラス峡谷に単身足を踏み入れる猛者。私はリュミスベルン。このケルベラス峡谷の魔獣のトップにして龍種最強よ>

「ふむ、ならば((我|オレ))も倣うとするか。((我|オレ))はアルトリウス・R・A・ノースライト。旧世界より来た((真祖の吸血鬼|ハイ・デイライトウォーカー))だ」

<ふうん……旧世界からのお客様は初めてだけど、ここじゃ弱肉強食だからね。私と一戦やらない?>

 

 なぜそうなるのかは分からないが、別に戦うことについては文句などない。龍種ほどになれば、((我|オレ))の相手としても不足はない。

 

「いいだろう。((我|オレ))の力を見せてやろう」

<はっ、力不足を嘆かないでよ!>

 

 それだけ言って、リュミスベルンは飛燕のごとき……否、飛龍のごとき速度で腕を、尾を、翼を振るい、((我|オレ))に攻撃する。

 それら一つ一つは大振りでありながら速く、さらには範囲も恐ろしく広い。巻き込まれる空気そのものも凶器となり襲いかかってくる。

 確かに、疾くはない。ただ大きさと相まって避け辛いだけだ。だが、これは真理の一環でもある。それは、『どれだけ不意を突かない攻撃であろうとも、避けられなければ関係ない』だ。

 『術』の求める先である『正面から不意を突く』とは対極に位置する、近代兵器に求められる真理ではあるが、ここまで圧倒的なものは初めて見たぞ。

 

「だが、どうにかなるな」

<へえ、遅いくせに速いなんて、矛盾もいいとこじゃない>

 

 不敵に口角を釣り上げる。まだこれなら、回避は不可能ではないのだからな。

 気を使い、加速度を限界まで上げる。加速時間をゼロにするだけで並大抵の攻撃は掠ることすら許さない。ならばさらに加速度を上昇させてしまったらどうなる? 答えは簡単だ。達人級であろうと危険性がなくなる。

 さらに、剣術を使用する。さすがに龍を相手にして素手で挑もうと思うほど馬鹿ではない。勝てなくはないであろうが。

 

「紅蓮閃」

 

 野太刀を抜き、気を火に変換。それを斬空閃の要領で飛ばす。まずは弱めの一撃で様子見だ。

 

<甘いわ>

「グルオアアアァァァアアアァァァァァ!!!」

 

 リュミスベルンはそう吼えた。その一吼えで紅蓮閃は吹き散らされる。同時に、背後にいた魔獣も大きく後退する。さすがは龍。鶴の一声よりも効果は抜群のようだな。

 

<死の吐息にて消え失せなさい!>

 

 そのまま火炎の吐息で追撃を加えてきた。なるほど。これほどの範囲攻撃であれば、回避は不可能になる。まあ、回避不能ならば、安全地帯を生み出せばよいだけのこと。

 

「斬魔斬空閃」

 

 形無きものに干渉する魔の型を以ってして、吐息を斬り裂いてやる。若干熱が伝わってくるものの、吐息そのものに比べれば可愛いものだ。

 

「っと、ぅおおぉぉぉ!?」

 

 が、少々慢心が過ぎたようだ。死の吐息を目くらましに放たれた尾による一撃を、甘んじて受けてしまった。いやいや、さすがに龍の一撃は重い。

 

<浅かった……いえ、直前で跳んで軽減したのかしら?>

「いつつ……さすがは必殺とすら言われるだけあるな。気と回避で軽減して、ここまで通るものか」

<さすがね。私の一撃を受けて生きていたのは、龍を除けばあなたが初めてよ>

「お褒め頂き恐悦至極」

 

 やや芝居がかった台詞で返すが、さすがにダメージが大きく、まともに動こうとするのは辛い。しかたないか。全力で潰させてもらうか。

 

<だけど、次で終わりね>

「そうだろうな」

 

 野太刀を納め、小太刀二刀に手をかける。

 さて、『岩』は動きの最適化による最高の一撃と気による強化。『空』は気による遠距離攻撃。『魔』は形無きものへ干渉する術。

 それらを自在に扱ってこそ、京都神鳴流は完成する。先程のように、二つを組み合わせることも到達者としては必要だ。

 そして、その強弱を調整することもできて、一流と呼ばれる。

 

「烈風絡魔斬鉄閃――」

 

 妖刀『黒陽』にて、遠距離攻撃である『空』の型にねじれを作り、鉄をもねじ切る斬鉄閃を放つ。そこに『魔』を追加することで、形無きものを絡め取る。

 そう、周囲に残存する吐息の熱量。それらを風で集め、干渉して絡め取り、ひとまとめにすることで生じる、焦熱の一撃だ。あの金色の鱗であろうと、鉄すらねじ切る一撃にこの熱ならば、耐えきれまい。

 

<消し飛びなさい!>

 

 追撃のように死の吐息を吐くリュミスベルン。だが、それは悪手だ。形無きものを斬り裂く『斬魔』と違い、『絡魔』は形無きものを絡め取る。((我|オレ))の一撃の限界まで、それは止まることはない。

 さあ、根競べだ。((我|オレ))の攻撃が臨界を迎えるのが先か、そちらの攻撃を超えるのが先か!

 

「グルアァ!」

 

 どうやらリュミスベルンも気づいたようで、((我|オレ))の攻撃を押し返そうと吐息を吐き続ける。このままでは全ての熱量が((我|オレ))に向けて流れ込んでくるであろう。このままなら、な。

 

「――二刀連撃!」

 

 残る一刀、魔刀『紅月』で烈風絡魔斬鉄閃をもう一度放つ。一つでは足りないのなら、二つならどうだ?

 

<ふ、あは、あはは! まさか私が負けるなんてね>

 

 どうやらリュミスベルンも気づいたようだ。((我|オレ))の攻撃を止める術が、既に存在しないことに。

 攻撃を続けても打ち破れない。避けるには攻撃を止めなければならないが、攻撃を止めれば直ぐにでも攻撃が到達する。もはやチェックメイトだ。

 

<楽しかったわよ、アルトリウス>

 

 だがリュミスベルンは諦めない。龍の誇りを胸に、最期の瞬間まで抵抗を続けるのだろう。だが、死なれでもしたらこちらが面白くない。

 気で脚力強化。瞬動で岩壁を駆けあがる。さあ、見せてやる。((我|オレ))の最高の一撃を!

 

「ARAN全力右パンチ!」

 

 体を割り、膝抜きを以って最速の一撃。そこに莫大な気を乗せて未来の((羅漢拳|ラカンパンチ))を模倣する。

 否、((我|オレ))の一撃は無駄を完全に省いていることに加え、気の総量が(おそらくだが)ラカンを超える。そこから繰り出される一撃は、((我|オレ))が上だろう。

 せめぎ合っていた吐息も、烈風絡魔斬鉄閃も、問答無用に叩き落とし、消し飛ばす。やや茫然としたようなリュミスベルンの顔に、不敵な笑みを見せつける。

 

「((我|オレ))の勝ちだな」

<くっ! あははっ! ええ、あなたの勝ちよ、アルトリウス。私自身が諦めた一撃を、当たり前のように叩き潰す。そんな奴に勝とうなんて、未来永劫不可能よ>

 

 龍の遠吠えが渓谷に響く。そして、((我|オレ))に向けられていた敵意その他諸々が消えていき、畏怖の念が向けられる。どうやら((我|オレ))がリュミスベルンに勝利したことで、ここでの最強が((我|オレ))であることが全魔獣に伝わったようだ。

 

「リュミスベルン。((我|オレ))と共に来い」

<なに、私を気に入ったとでも言うのかしら?>

 

 やや笑みを含んだ声色で、冗談めかしてリュミスベルンは言う。気に入った? ふはは、気に入ったとも。

 

「敗北を目の前にしても諦めない。それは((我|オレ))にすれば喜ばしいものだ。そして、十分に強い。ならば手放すことこそ愚策」

<お褒め頂き恐悦至極>

 

 どうやら先程の((我|オレ))の真似のようだ。くくく、ますます手放したくなくなったぞ。

 

「さらに言えば、勝者は敗者の生殺与奪権を得る。ならば、貴様から死を奪ってやるだけだ」

<それを言われたらどうにもならないわね。いいわよ、地獄までだろうと付いて行ってあげるわ>

 

 互いに笑いが止まらない。ああそういえば、((我|オレ))から言わねばならんことがあったな。

 

「これからは((我|オレ))をアランと呼べ。イニシャル読みだが、偽名にはちょうどいいだろう」

<なら私はリュミスでいいわよ。これから頼むわね、アラン?>

 

 ((巨大な龍|リュミスベルン))が首を垂れる。周囲の魔獣どもも同様だ。これからの魔法世界生活、想像以上に楽しくなりそうだな。

説明
魔法世界に来たのだが、どこに行くべきなのであろうか。……そうだ、ケルベラスへ行こう。
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魔法先生ネギま! クロスオーバー 『術』 巣作りドラゴン(名前のみ) 

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