IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・ |
六月頭の休日。
大体の生徒は学園の外に出かけたりして、普段より閑散とした学園。
それに違わず、一夏も((五反田弾|ごたんだだん))という中学時代の友達の家に出かけたらしい。
そして俺は、そんな休日にも関わらずアリーナに居た。
「――モード((選択|セレクト))『キュリオス』」
『了解、モード選択GN−003『キュリオス』』
今まで纏っていた白とモスグリーンの装甲――『デュナメス』――から、白とオレンジの装甲――『キュリオス』――に変わる。
左腕に細身のシールド。
右手には二連装ビーム砲のGNサブマシンガン。
両膝には巡航形態での主翼。
そして背中に巡航形態時の機首となるパーツ。
GN−003『ガンダムキュリオス』
人型から巡航形態に変形。
アリーナの中央を支点にその周囲を巡る。
中央には自動で攻撃をしてくるタイプの((的|ターゲット))。
的が撃ってくる弾を、左右のロール・急上下昇で回避。
そして人型に戻って、的をGNサブマシンガンのビームで撃ち抜く。
撃ち抜けなかった的が撃ってくる弾を急降下で回避、地面を滑るように的の真下に潜り込んで撃ち抜く。
ふぅ、このくらいか。
一応の練習を終えた俺は一度、マイスターズを解除する。
「『マイスターズ』解除」
装甲がGN粒子になって消え、運動用のジャージに戻る。
俺の機体の特性上、ISスーツを事前に着る必要は無い。
専用機持ちの特権『パーソナライズ』。
これはISの展開と同時にISスーツを展開するもので、着替える必要が無いという便利機能。
ただし、それにはエネルギーを消費するために緊急時以外で使われることはあまり無い。
が、俺の機体のコアとして扱われている『GNドライヴ』。無限にエネルギーを生産し続けるコレだと、多少のエネルギー消費は気にもならない。
そういえば、今日なぜ俺がアリーナに居るのかというと、確認のためだ。
先月あった襲撃事件。あれから俺は第三世代ガンダムを使っての自主訓練を始めた。
今日はその最終確認。
その四機にもそれぞれ慣れたし、デュナメスでの狙撃精度も十分。
なぜこんなに早く上達するのかは、父さん(神)が枷を外してくれたからだろうな。
これまでよりも身体スペックが上昇してる。
ちなみに『ガンダムラジエル』は元が戦闘用の機体ではないので使ってない。
――どうだった?
――もう十分だろう。いろいろと、一生懸命努力している者には悪いんだが。
――そう言うなって、その代わりにこの学園だけは最低でも守るさ。
――当たり前だ。そうでなければ何のための力だ?
――分かってるさ、ティエリア。
この力は守るための力。
相手を"破壊する"力だとしても、俺にとっては守るための力だ。
―――あの無人機に独白したようにな。
「あ、終わったんだ。お疲れ様」
「ん? ――楯無か。どうしてここに?」
ピットに戻った後、聞こえた声に反応すると、制服姿の楯無。
「こっちの事もひと段落ついたから、拓神の様子を見に来たの」
「なら、こっちも丁度ひと段落ついたところだ」
「残念ねえ、久しぶりに拓神と戦おうと思ったのに」
「……いつからお前はバトルマニアになったんだ?」
「あら、失礼ね。どのくらい強くなったか気になるだけよ?」
「自分で確認しないといけないタイプ、か?」
「ええ、出来ることはね」
そうらしい。
思ってみれば、楯無について知らないことは結構ある。
「ま、俺はもう上がるけど?」
「それじゃ、私もここに用事は無くなったわね」
お互いにアリーナに用は無くなったから、寮に向かって…正確には部屋に向かって歩き出す。
「今日も教師陣との会議だったんだろ? 議題は『学年別個人トーナメント』か?」
「その通りよ。……結局、タッグマッチになったわ」
「ふうん。さて、誰とペアを組もうか……」
「私とは、学年が違うから組めないわよ?」
「んなことは分かってる」
真面目にどうするか……原作どおりなら、一夏はダメ。
俺は―――! そうだ、((本音|のほほんさん))に頼むとしよう。
「というか、それだと『学年別個人トーナメント』じゃなくて『学年別トーナメント』だよな…?」
「そうね。でもまあ、生徒への発表はもう少し経ってからでしょうし」
「……まだ先月の襲撃事件のこと色々やってるもんな」
「おかげで、((生徒会|こっち))にも仕事が多く回ってきてるわよ?」
「うわ、面倒だ」
ちくせう。あの無人機め……いや、送り込んだ本人知ってるけどさ。
「ねえ、拓神」
「なに?」
「あの力について聞きたいんだけど?」
「答えられる範囲なら答える」
「最近、身体能力が上がってる気がするんだけど……これって神力の影響?」
「合ってて合ってないな。俺と同じ存在になったってことは、体のリミッターが少し外れてるってこと。それがデフォルトでさらに神力を使って強化が出来る……って具合だな」
「そっか」
「だから普段は力をセーブしとかないと、人が出来ないことも出来るから……」
「人外よね?」
「ストレートに言いすぎ――っと、着いた」
話をしながら歩いていたら、部屋に辿りついていた。
最近じゃ、部屋への道のりを体が覚えてる。
さっさと部屋に入って、話の続き。
俺らは、ベッドに隣同士で腰掛ける。
「てか、半神なんだから人外なのは当たり前だ」
「あ、開き直った」
「事実だからな。人の姿でも人じゃない存在、ってとこだ」
「まあ、それはどうでもいいわ。拓神と居られるなら、ね♪」
「……どうして、そんな((恥|はず))い台詞をサラッと言えるんだ?」
今更でも、流石に気恥ずかしい。
「いいじゃない、二人っきりなんだし」
「そうだけどなぁ……こっちが恥ずかしい」
「あら、私もよ。それより、どうしたら拓神と一緒になれるか考えてるんだけど?」
「……おい、なんか卑猥な方に聞こえたぞ」
「だってそうだもの。……ね、私とキモチイイ事、しない?」
「今はまだやらない。急ぎすぎだ。別に、俺はお前といつまでも一緒に居る」
「嬉しいこと言ってくれるわね。でも、その台詞も十分、恥ずかしいと思うけど?」
「いいんだよ。二人っきりだろ?」
「もう、仕方ないなあ」
「何がだよ」
ゾクッ、という嫌な予感……また何をする気だコイツは。
「ふふっ、それはしてからのお楽しみ♪」
「するってなにを、っと」
するっとベッドの上に行った楯無に、後ろから抱きしめられる。
「――ありがとう。本当に嬉しいわ」
「……当たり前だ。俺もお前と居たいからその力を渡したんだからさ」
「今は、本当の名前で呼んで?」
「ああ、わかったよ――結」
「うん」
嬉しそうに頬を赤くした楯無。
それにいつもとのギャップがあって、可愛くて……俺はいつの間にか、楯無にキスをしていた。
◆
楯無とある程度……まあ、察してくれ。
その後で、俺は今月の予定表に目を向けていた。
『学年別個人トーナメント』。いや、『学年別トーナメント』か。
一週間かけて行われるこの行事――といってもすぐにアレが起きるだろうけど。
これで確認するのは、一年・浅い訓練段階での先天的な技能。二年・そこから訓練した成長能力。三年・具体的な実戦能力の評価……こんな感じの説明だったはずだ。
それで、特に三年の試合には企業からのスカウトをはじめ、多くの注目が集まる。
もちろん一年・二年も見られるわけで、才能・実力が十分あるとなれば声をかけられるくらいにはなる。
ちなみに前回、クラス対抗戦での襲撃事件。
あれについては((緘口令|かんこうれい))が敷かれ、直接関わった者には誓約書を書かせていた。もちろん俺と楯無も書いた。
「拓神、食堂に行きましょう? もう夕食の時間だわ」
「おう、行くか」
時間が進むのはやっぱり早い。もうこんな時間になってたのか……イチャつきすぎたか?
まあ、そんなことはともかく、部屋から出て食堂に向かった俺と楯無。
料理を受け取って空いてる席に座った。
と、ここで。
「ふふっ、ちゃんと広がったようね」
楯無の目線の先は、スクラムを組むようにして集まっている女子。
その話の話題は『学年別個人トーナメント』で優勝すれば一夏と付き合える、という話。
「もう手回ししたのか」
「ええ。何事も迅速に、よ?」
「余計なことまで迅速にやらなくても……。でもま、面白そうだから賛成だ」
「なら、良かったじゃない? あ、噂をすればなんとやら、かしら?」
「ああ、そうだな」
食堂の入り口からたった今入ってきた一夏と鈴。
それぞれ食事を受け取った後、俺たちを見つけた一夏と鈴がこっちに来た。
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第22話『休日の一幕』 | ||
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