IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・ |
食堂に入ってきた一夏と鈴は、俺たちのところに。
「一夏くんに鈴ちゃん。こんばんわ」
「先輩、こんばんわです」
「あ、こんばんわ」
ちなみに一夏、鈴の順だ。
「あん、楯無って呼んでいいのよ?」
「で、でも……なぁ」
「ええ……。ってなんであたしに振るのよ!」
「だってさ、同じじゃねぇか」
「あたしは楯無さんって呼んでるわよ?」
「えっ!? そうなのか?」
「はいはい、夫婦漫才おつかれ」
このままだと、いつまでも言いあってそうなので止める。
鈴は"夫婦"というフレーズに反応して赤くなった。
パシャッ!
「真っ赤な鈴ちゃんの画像ゲット♪」
楯無、お前いつの間に携帯出したよ。
「なっ、あ、ああっ! た、楯無さん! 消して! 消してください!」
羞恥でさらに赤くなる鈴
「んー、どうしよっかなぁ〜」
「消してください! お願いします!」
「じゃあ、一夏くん」
「は、はい?」
「これからは私のこと、楯無って呼んで。それが条件」
すごく楽しそうな楯無。
うん、やっぱりドSだな。俺もどちらかといったらSだと自覚はしてるけども。
言われた一夏の顔を鈴が必死の顔で睨んだ。
それに気おされたのか、一夏は口を開く。
「え、えっと……楯無、さん」
「んふふ、合格♪」
さっと携帯を操作して画像を削除。その画面を鈴に見せた。
それを見た鈴は、ほっ、と息を吐いて安心したような顔をする。
「あ、ここ座らせてもらいます」
「どうぞ」
そこで今まで立ったままだった二人が、俺たちの居る机のイスに座った。
ちなみに、俺の向かいは一夏。楯無の向かいが鈴となっている。
「なあ、そういえば拓神は何で楯無さんと一緒に居るんだ?」
「ん? いや、別に。一緒に食事をしてるから、一緒に居るんだけど?」
嘘は言ってない……よな?
「あら、別にごまかさなくてもいいんじゃない?」
おいおい。
「うん? 玖蘭、どういうことよ?」
「いいのか?」
「構わないわ。……いえ、むしろその方が、ね」
ばらしとけば、俺に寄る女子が少なくなる……と?
まぁ、嬉しいけどな。
「そうかい。どういうこと、と言われたら……まあ、俺と楯無は付き合ってるってこと」
「「………」」
一夏と鈴、沈黙
そして――――――
「「「「「――えええええっ!?」」」」」
返ってきたのは二人に加え、近くの話が聞こえるポジションに居た女子十名(学年はバラバラ)ほどの、悲鳴にも近い叫び。
その後、思い思いに口を開く。
「この世界に神はいない――!」
「こんな現実、私は……イヤだね」
「ああ、世界の悪意が見える……」
「美人だし、何でも出来るのに、さらに彼氏まで居るなんて……万死に値するわ」
この際、全員がネタじみてるのは気にすることじゃない。
つかコレ、無意識に声だしてるよな? 狙ってないよな?
そして楯無、得意げな顔で周りを見るな。このカオス狙っただろ。
「ほ、ホントなの!?」
そして鈴である。
俺が反応する前に、楯無が口を開く。
「ええ、本当よ。ね、拓神♪」
「ああ。でも、人前でくっつくな」
楯無が俺の片腕に抱きついてきた。
ほら、さっきの女子がさらに絶望に染まった顔になってるぞ?
「あら、いいじゃない。もうばらしたんだし」
ここで、久々に一夏が声を出した。
「あ、あの……俺たちってお邪魔でしたか?」
「気にしなくていいのよ? 私達も気にしないから」
「俺は気にするからな? 人前でイチャつく気は無いからな?」
「なら、部屋ならいいの?」
「別に良いよ?」
「やった♪」
おい、どうして肉食動物の目になる?
……帰ったら早く対処しよう。
「え、えっと…なんていうかアレなんで、俺たちはこの辺で」
「え、ええ。失礼させてもらうわ」
まあ、目の前でこんなにされたら……なあ。
気持ちは分からなくないが、同情はしない。
「了解。――ま、凰はがんばれ」
後半は小声で。鈴と、隣の楯無だけに伝わるレベル。
「なっ、なににょ――ッ!」
あ、噛んだ。
またもや恥ずかしさと、失態の羞恥とで赤くなった鈴。
そしてそれを、ニヤニヤ顔で見てる俺と楯無。
そんな状況下だ。鈴はさっさとどこかに行こうとして―――
「あ」
「あ」
「一夏、あってなによ、あって。―――あ」
順番は上から、一夏・箒・鈴。
箒はこの前の『付き合ってもらう』発言から、一夏とギクシャクしてる状況だ。
このメンツで「あ」って……レアなんてもんじゃなくて、これっきりだろ。
「じゃ、私達はおいとまさせてもらいましょうか」
「いまさらどの口がそんなことを言うのか……」
「この口。……塞いじゃう? もちろん口で」
この台詞を聞いた鈴と箒は一夏から視線を逸らして、顔を赤くする。
「……さて、帰るか」
「あっ、ヒドーイ。待ってよ〜!」
酷くない。原因を作ったのはお前だろうに。
……そう思いつつスピードを緩める俺も俺だが。
◇
月曜の朝。
いつも通り、隣で寝てた楯無を起こして――最近これに幸福を覚えるようになった――朝やるべき事をサクサクと済ませて、教室に入った。
―――と、とたんに今までISスーツのカタログを見ながら、あれこれ言い合っていた女子の視線が俺に集まる。
理由は……楯無との件についてだろうなあ。
案の定のようで、クラスメイトの女子は俺に寄って来た。
「ねえ、玖蘭くん! あの話、二年の先輩と付き合ってるって本当なの!?」
「あ、ああ、マジだぞ?」
「「「きゃああああっ!!!」」」
ぬおぁ! み、耳がぁぁっ!
ソ、ソニックウェーブだと!?
「で? 告白はどっちから?」
「どこまで行ったの?」
「どこを好きになったの?」
等々…etc
一気に質問攻めに飲み込まれる。
こんなのは入学当初以来だぞ……!?
「そういうのは、二人の秘密だから答えないんだ」
「「「きゃああああっ!」」」
ぬぅっ、今のどこに叫ぶ要素がっ!
結局この状況は織斑先生が鎮圧するまで続いた。
ちなみに、俺も出席簿の一撃をもらうことに……なんでだよ。
◆
「さて、改めて…諸君、おはよう」
「おはようございます!」
乱れの無い返事。さすが織斑先生。
実際に言ったらマジで首が飛びかねない理由が、頭の中にどんどん出てくる。
「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それもないものは、まあ下着で構わんだろう」
下着で何が構わないのか、三〇字以内での説明を求めたい!
ほかにも、全員が突っ込んだだろうな――心の中で。実際に言う勇気は無い。
ちなみに、学校指定の水着=スクール水着だ。
絶滅危惧のアレが、こんなところで使われているとは誰も思わないだろう。
そしてこの間、楯無が着てたのもコレだ。
そして個人用のISスーツ。
学校指定のものがあるのに個人で用意する理由は、ISは操縦者に合わせて一人一人、十人十色の仕様に変化するものだから早いうちに自分のスタイルを確立することが必要とのことだ。
「では山田先生。SHRを」
トレードマークと言っても良いその大きめな眼鏡を拭いていた山田先生。
突然織斑先生から話を振られたことに驚いたのか、慌ててソレをかけ直す。
「え、ええとですね、今日は――『も』ですかね? 転校生を紹介します! しかも二名です!」
「え…」
「「「「「えええええっ!?」」」」」
さて、来たか。
シャルル・デュノア……いや、シャルロット・デュノアにラウラ・ボーデヴィッヒ。
ちなみに、転校生の情報は事前に楯無から聞かされている。
シャルル・デュノアは怪しいということも。
――ん、彼――いや彼女か。
――お、ティエリア。その通りだ。
――彼女は……。
――原作通り、だろうな。ま、一夏に任せるさ。話相手はあいつのほうが上手いだろ。
――そうか、了解した。
ティエリアとの会話を終えると、教室のドアが開く。
「失礼します」
「………」
入ってきた二人をみて…正確にはその片方を見て、クラスのざわめきは怖いくらいに静まる。
理由は簡単、その片方が男子にしか見えないから。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました―――」
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第23話『転校生は・・・』 | ||
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