IS《インフィニット・ストラトス》 駆け抜ける光 第十五話〜乙女の決心と怒り〜
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 私――ラウラ・ボーデヴィッヒは漆黒の闇の中にいた。強さを求めるあまり、自分が分からなくなってしまう。そもそも強さとはなんだ? 相手を圧倒できる力か?

 

考えていると、突然声が聞こえてきた。聞いたこともない男の声だ。その声の方向を向けばそこは鮮やかな緑の光でその部分だけを照らしていた。

 

[いろいろあるけど、強さっていうのは人を信じることだと思ってる]

「信じることですか?」

[そうだよ。ただ相手を妬んだり恨んだりするんじゃなくて、相手を受け入れることが大切なんだよ]

「私には……その資格があるのでしょうか?」

 

 私は織斑教官に憧れていた。凛々しく、堂々とし、自らを信じる姿に焦がれた。しかしそんな教官を壊す人間がいた。それが織斑兄弟だ。

 

 教官が二人の話をするた度に、教官は優しく笑み、気恥ずかしそうな表情になる。それは私が憧れる教官ではなくなってしまいそうで怖かった。

 

 当時、教官と居た光輝にもかなり酷いことをしてしまった。だが今考えてみると単なる恨みで光輝を傷つけたのではなく、あいつに嫉妬をしてしまっていたからか。あの親子のような優しい雰囲気に堪えれなくて……。

 

 嫉妬で人を傷つけた私にそんな資格が本当にあるのだろうか? 

 

[あるさ。自分の過ちに気付いてそこからまたやり直せばいい。君は一人じゃない。いつも隣には誰かが居るんだから]

「はい……!」

 

 いきなり光が私を包んでいく。だが怖くない。暖かい、ただそれだけなんだ。

 

「この光は一体……?」

[人の心の光だよ。そして光輝君の暖かみでもある]

「光輝……の?」

[そうだよ。あの子はこの暖かみを伝えるのが目標なんだ。まぁ今回は僕が勝手にやったがこうして君に伝えることが出来た。光輝君にお礼を言っておきなよ?]

「分かりました……! あの最後にお名前を教えて頂けませんか?」

 

 この光みたいに、光輝みたいに暖かみを伝えたい。その前にこの光の声の名前だけでも知っておきたい。

 

[名前……ね。また今度に教えるよ。また会えるから」

「そう……ですか……」

 

 名前が聞けないのは残念だが、でもこれを機に私は変われる気がする。この光が、教えてくれたから。

 

[さて、そろそろ目覚めようか。君を待ってる人たちが居るからね]

 

 そうして私の意識は現実に戻されていく。この暖かみは決して忘れない……!

 

 

 

「う〜ん、緊張するなあ……」

 

 トーナメントでの事件は夏兄のおかげで解決することができた。あの漆黒ISのからボーデヴィッヒさんを助けることが出来たのだ。それと同時に光は消えてνガンダムも強制的に解除されたのだ。理由は分からないけど、結果オーライだよ。肝心のトーナメントは今日は中止。明日からどうなるか分からないけど一回戦だけでもしたいよね。

 

 そして今、ボーデヴィッヒさんのお見舞いに保健室の前まで来ているのだけど、お母さんとボーデヴィッヒさんがなにやら重い話をしているらしく入りにくい。あぁ、どうしよう……。

 

「さっきからそこで盗み聞きしている奴、さっさと入ってこい」

 

 ひぅっ!? 突然呼ばれて身体が強張ってしまう。

 

 勇気を振り絞って入ればお母さんと来訪者に驚いているボーデヴィッヒさんがいた。ボーデヴィッヒさんは治療のためか左目の眼帯を外していて、左右で違う瞳で僕を見つめてくる。

 

「じゃあ私は仕事があるから戻るぞ。織斑弟も今日は早く休めよ」

 

 お母さんはそう言って保健室を出ていった。今、保健室にいるのは僕とボーデヴィッヒさんの二人だけ。なんというか、気まずいよ。

 

「身体の調子はどうなの?」

 

 ずっと黙っているわけにもいかず、調子を聞いてみた。なにかしらの病気にでもなっていたらと思うと心配だったからね。

 

「筋肉疲労と全身打撲だからしばらくは動けそうにない。さっき起き上がるのにも全身が痛かったしな」

「そうなんだ……でも良かった、命に関わるとかだったら嫌だから」

 

 そこからまた沈黙タイムへ。あぁこの間がすごく長く気まずいよ。どうしよう……何か話題はないものか。

 

「光輝、いろいろすまなかったな……」

「ん? 何のこと?」

 

 沈黙を破ったのはボーデヴィッヒさんだった。彼女から話しかけるのは珍しいけど一体なんだろうか?

 

「ドイツにいた時は寝込みを襲って殺しそうになったりしただろ? この学園内だって挑発もしたし、友も傷つけた。すまなかった」

 

俯いてしまうボーデヴィッヒさん。あ〜確かにそういうことが何回かあったな〜。まぁ他にもいろいろあった気がするけどほとんど覚えてないや。

 

「別にいいよ。もう過去の話だし、それに今この学園にいる間だけでも仲良くしたいから。ダメ……かな? 嫌なら嫌って言ってもいいからね」

 

 ボーデヴィッヒさんはキョトンとした表情で僕を見つめてくる。そんなに見つめられると恥ずかしいなぁ……。僕は思わず顔を背けてしまった。

 

「嫌じゃない。あの光に触れて、お前のことを完全に信頼出来たぞ」

「光? あぁ、緑の光の事ね。サイコバーストを発動したわけでもないのに、いきなり溢れ出すからビックリしたよ」

「それは光が勝手に出たと言ってたぞ」

 

 うん? 言ってたぞ?

 

「もしかしてあの光と話したの?」

「ああ。あの光自体に意志があるようだが一体誰なんだ?」

「僕にもさっぱり……でも暖かくて好きだよ」

 

 確かにあの光には意志があった。じゃあそれは一体何者なんだろうか? νガンダムと何か関係があるのかな? うぅ、分からないことだらけで頭が痛くなるよ……。

 

「光輝、すまないがもっと近くまで来てくれないか?」

「え? う、うん。分かったよ」

 

 突然そう言われて僕はボーデヴィッヒさんの真横まで来て屈んだ。こう見てみるとボーデっヴィさんの瞳が明るくなってる気がする。良いことだ!

 

「目を瞑ってくれ」

 

 ボーデヴィッヒさんのお願いに僕は素直に従った。一体何をするんだろう。心臓がドクドクいってるよ! あぁ、緊張するなぁ〜。

 

「ラウラ〜、元気〜?」

 

 この声はエリスさんか。やけにテンションが高いのは気のせいかな?

 

「っむぐ!」

 

 目を瞑ってるから周りが見える訳じゃないけど、唇に柔らかい感触が……。

 

「さ〜て、元気か……なっ!? 二人で何やってんの!? こ、こんなとこで……!」

 

 まさか、感触といいエリスさんの反応といいやっぱり……。

 

「ぷはっ、私は嫁とキスしていただけだが、なにか問題があるか?」

「「よ、嫁!?」」

 

 いきなりなんてことを言うんだこの人は!? 僕は咄嗟に離れようとしたが目の前にはエリスさんが鬼の形相で僕を睨みつけている。ひ、ひぃぃぃ!

 

「光輝くん? これはどういうことなのかな?」

「いや、僕だっていきなりだったんだよ! しかもボーデヴィッヒさん! 嫁ってどういう意味なの!?」

「日本では気にいった相手を『嫁にする』というのを聞いてな、それでお前は今から私の嫁だ」

「まさか……そんな間違ったことを教えたのはクラリッサさん?」

「そうだ。あいつが教えてくれたんだ。それと私のことはラウラと呼べ」

 

 あぁやっぱり……。あの人だったか〜。まぁラウラさんって呼ぶのはいいけどまさか嫁ときたか……。

 

「光輝くん? 覚悟はいい? 最期に自分の嫁を拝めて良かった?」

 

 エリスさんはいつの間にかハイメガキャノンの部分だけ装着しておりチャージ中のようだった。まさかここで発射する気じゃ!?

 

「待って! 僕はそんな気はないんだ! 全部無理やりなんだよ! 信じてエリスさん!」

「……じゃあちょっと外に行こうか? じゃあねラウラ、また来るよ」

 

 僕はエリスさんに腕を掴まれ無理やり引っ張られる。自分で歩けるからせめて立たせて! 

 

 

 

僕はそれからハイメガキャノンで死ぬ寸前まで追い詰められて、やっと許して貰えました。

 

「光輝くんて無理やられるのがいいんだ。よし、覚えておこう!」

 

 そんな不吉なことを言ってました……。正直これからどうなるか凄く怖いです。

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ラウラ改心!
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