IS《インフィニット・ストラトス》 駆け抜ける光 第二十三話〜新たな白と光の覚悟
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福音に対峙するのは二次移行し新装備『雪羅』を手にした一夏、箒の二人だ。他はまだ回復に時間がかかるだろう。

 

「大丈夫か、箒?」

「あぁ、まだ大丈夫だ。早く福音を倒そう!」

 

 箒がこうも気合が入っているのは傷ついた一夏がこうしてやって来てくれたこと、また共闘できるということだろう。しかし一回目の福音戦とは違い、浮かれているのではなくしっかしりとした意志が詰まっている。

 

『敵情報を更新。危険レベル最大』

 

 その福音の機械音を機に一夏が零落白夜を片手で持ち、切りかかるが福音はのけぞってひらりとかわす。しかし一夏は雪羅で追った。

 

 雪羅は操縦者の意志で攻撃、防御、機動の各タイプに切り替えることが出来る。まさに第四世代の武器と言える。一夏のイメージに応えるように左の指先から1m以上のエネルギー刃のクローが出現する。

 

「逃がさねぇぜ!」

 

 クローが福音の装甲に当たった。シールドエネルギーに阻まれたが確実にダメージは与えている。だが問題が一つ――

 

 福音はエネルギー状の翼を広げて光弾による集中掃射が始まった。雪羅による防御を行おうとした一夏だが、

 

「そのまま動かないで!」

 

 その叫びとともに一夏の前にビームバリアが展開されている。よくみるとそれはフィンファンネル3基による三角形型のバリアだった。掃射が止まったと同時に福音の真横から瞬間加速で近付くISが一機。

 

 だが福音は読んでいたかのように高速で切り抜けしようとしたISの斬撃を回避し、距離と取った。

 

[奇襲作戦のつもりが失敗か。それにしてもあの回避性能と反応速度は尋常じゃないな]

「そうですね……軍用だから元の性能も高いはずですし、しかも二次移行したISとなると……化け物じゃないですか!」

 

 そんな会話をしながら一夏達の方へ近づいてくるのは光輝だった。IS自体のダメージは回復しているが身体のダメージが酷く、戦うのすら難しい状態だ。もうここまでくると精神的な問題なのだろうか。

 

「こ、光輝!? 顔色が悪く見えるけど大丈夫なのか!?」

「だ、大丈夫! それはそうと夏兄? その新しい武器は零落白夜と同じエネルギーだよね? だからあんまり使い過ぎてたらすぐにエネルギー切れになっちゃうよ」

 

 そう、雪羅を装備した白式は戦闘の幅は広がったものの、そのエネルギーは零落白夜のものだ。ということはエネルギーの消費が前より上がったということだ。ここが最大の弱点とも言える。

 

「お、おう。気をつけないといけないな……」

[なんとか僕達がチャンスを作るからそこを狙ってくれればいいさ。大丈夫かな光輝?]

「大丈夫です! 箒さんもいけるよね?」

「もちろんだ!」

 

 アムロは箒のその声を聞き、ほっとしていた。

 

[箒、今の君の目は凛としている。それを忘れちゃいけないよ?]

「は、はい!」

 

 アムロにそんなことを言われて戸惑ったのか、つい声がうわずってしまう箒。そんなやりとりが心地よく思える光輝と一夏。

 

[さぁ、三人とも福音を止めよう! 力を合わせれば必ずできる!]

「「「はいっ!」」」

 

 

 

(一夏が駆けつけてくれた!)

 

 それは暗い闇を照らす程の希望の光。

 

 心が飛び跳ねて熱を持つ。それはもう嬉しいを超えていた。

 

 そして戦う一夏を見て、何よりも強く願った。

 

(私は共に戦いたい! あの背中を護りたい!)

 

 強く、純粋にそう願った。それは人を強くする意志であり、周りを照らす光となる。

 

 その願いに応えるように赤椿の展開装甲から赤い光に交じって、黄金の光が溢れてくる。。

 

「この光は一体……!」

 

 ハイパーセンサーからの情報で赤椿のシールドエネルギーが急激に回復していく。

 

――『絢爛舞踏』、発動。展開装甲とのエネルギーバイパス構築完了。

 

 それは単一仕様《ワンオフ・アビリティー》発動の文字だった。

 

(まだ戦えるのだな赤椿? だったら!)

 

 力の使い方を今度こそ間違えないように――この力で!

 

(行くぞ赤椿! あの兄弟を、一夏を護る!)

 

 赤い光に黄金の光を纏った赤椿は、全てを照らし闇を切り裂く一筋の光のように駆けていく。

 

 

 

「ぜらぁぁぁぁ!」

 

 零落白夜の光刃が福音のエネルギー翼を断ち切るが、すぐに新しい翼が生えてくる。片方の翼を切っても、もう片方の翼を切ることが出来ず新しく構築されていく。その瞬間に光弾による無慈悲な射撃が始まる。

 

「フィンファンネル!」

 

 その度にフィンファンネルによるバリアで防いでいるが、零落白夜を使っている以上、エネルギーの消費は避けられない。光輝も身体の限界が近付いているのか射撃での援護が精一杯である。

 

「白式のエネルギーはあとどれくらい?」

「二十%を切ったところかな。三分が限界らしいけど、やるしかない……!」

[その気持ちで負けたら終わりだぞ! 諦めるな!]

 

 追い詰められていく二人だが眼差しは未だに輝いている。と、その時――

 

「一夏! 光輝!」

「箒!? ダメージは――」

「それはいい! 二人とも、これを受取れ!」

 

 箒の――赤椿の手が二人の手に触れる。

 

 その瞬間、二人に黄金の光が纏い、白式とνガンダムのシールドエネルギーが全回復した。

 

「エネルギーが回復? 箒さん、これって一体!?」

「今は考えるな! 行くぞ二人とも!」

「お、おう!」

「分かったよ!」

 

 身体が包まれるような感覚に戸惑う二人だが、再び戦闘に集中する。

 

[この感覚はなんだ? 力がみなぎってくるような感じだ。光輝、やれるな?]

「はい! この感じならいけます。フィンファンネル!」

 

 6基のフィンファンネルを射出し、福音へと向ける。その動きは今までの動きとは段違いで、福音の放つ光弾を回避しながらビームを当てていく。福音は逃れようとするがフィンファンネルはその速度を超えている。

 

「福音の動きが見える! そこだっ」

 

 光輝はフィンファンネルを収納すると、νハイパーバズーカを全弾発射させる。光輝の予測射撃で弾道が全部、福音の回避位置に行き全弾命中する。νガンダムの中ではトップクラスの威力を立て続けに受けた福音は大きく仰け反る。そこを箒が追撃する。

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

 気合の入った掛け声と共に雨月と空裂で連続的に切りつける。その剣撃には憎しみなどが無く箒の信念を映したかのような綺麗さが見える。

 

「一夏、今だ!」

「今度こそ逃がさねぇぇ!」

 

 一夏は雪羅から最大出力まで高めたクローを出現させながら、二重瞬間加速《ダブル・イグニッション》で接近し、その勢いで福音の腹部に突き刺す。さすがにシールドに阻まれるがそのまま海岸の浜辺まで福音を押し倒す。

 

 福音は最後の力を振り絞って一夏の首元に手を伸ばすが――エネルギーが完全に切れ活動を停止した福音は、支えを無くなった人形のように、だらんと腕が落ちた。

 

「あ、危なかったぜ……でもこれで、終わったんだよな」

「夏兄! やったねっ!」

「一夏、無事か!?」

 

 駆けつけた光輝と箒に笑顔を向けながら

 

「おう! 苦労したけどなんとか終わったぜ!」

 

 三人とも今まで緊張していたせいか顔がほころび、笑顔になる。これで一件落着――になるのかな? 

 

 

 

「この感覚は!? エリスさんの近くに……?」

[やはり来たか……。福音を倒したばかりだというのに]

「光輝? まさかまたなのか?」

「……うん。ごめん、二人とも。他のみんなの事を頼むよ。エリスさんを助けて決着をつけてくるから」

「だったら俺たちも行く! 複数なら、福音のように――」

「ダメ。これは僕とアムロさんの問題だから。それにみんなを巻き込みたくないんだ」

 

 それが光輝の想い。ある意味、自己犠牲とでもいうか。

 

「だが――」

「ダメって言ったらダメだよ!」

 

 光輝の悲痛なる願い。せめてみんなを巻き込まないこと。自分の事なのに大切な人が傷つくのは嫌だ。それだけのことだが、光輝にとっては精一杯の願いなのだ。

 

「本当にごめんね。じゃあ……行ってくる!」

 

 一夏と箒に背を向け、光輝はエリスのいる方向へ向かって行った。夕日に照らせれて見るその姿は、どこか寂しさを醸し出していた。

 

[いいのかい?]

「いいんです。みんなを巻き込んで傷つくのは見たくありません……」

[君らしいな。でもなんでも一人で抑え込もうとしたらーー]

「分かってます……みんなにも感謝してます。でも、だからこそ僕自身が決着をつけないといけないって思うんです」

 

 

説明
重症だった一夏は完治し、二次移行した百式を共に戦場に戻ってきた。一夏、光輝、箒の三人で福音に挑むが苦戦を強いられる。そのピンチに赤椿の単一仕様能力が……。
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