異能者達の転生劇 |
魔帆良学園では夜な夜な魔法使いなどの不法な侵入者が出没する。
魔法関連の((貴重遺物|アーティファクト))、貴重資料を狙う((盗賊|ハンター))。関東魔法協会でもあるため敵対組織からの刺客。関東魔法協会で匿っている人物の暗殺者。
そして、
「ほらほら諦めなって朝倉ぁ。俺もさ? お前みたいな可愛い女の子を苛める趣味は無いっつーの」
この((物語|せかい))の舞台で活躍したがる転生者。
今回の侵入者は魔帆良に訪れた時たまたま同時に訪れた敵対組織の刺客と鉢合わせ、どうせなら((責任者|ぬらりひょん))に借りを作っとこう、と刺客達をものの数十秒で((伸|の))した。
目の前の男勝りな女の子(実際は男)はヤバイと悟った生き残りは逃走を図るが、転生者は許さず追い討ちをかける。しばらく遊び半分で追いかけていた所、刺客がいきなりドサっと倒れこんだ。
倒れた刺客の傍には赤髪を纏めてパイナップルっぽくした女子中学生が。
転生者には見覚えがある。
『ぶつかる寸前ぐらいスピード落としなさいよ! てゆうか天下の横道を走んなってぇの!』
しかしそんなキャラじゃなかったハズだ。
そこで推測を立てた。
こいつは朝倉和美ではなく憑依した朝倉和美ではないかと。
別にハーレムを目指すわけじゃないが、正直、他の転生者がいるのは『自分の世界』が壊される様で気持ち良くないものだ。だが一応原作キャラ。ここで殺したら物語がおかしくなるかもしれないと思った。
なので、憑依した意識のみ消そうと思った。それだったら問題は無いだろう。
微笑んで敵意の無いように装いながら近づくと、案の定距離を取る。
それが((4人|・・))の逃走劇の始まりだった。
「イヤよ! 誰がアンタみたいなレイプ目にシリを振るモンかっつーの!」
『ちょ、勝手に替わらないで! あたしの身体!』
『あぁ! 朝倉さんの魂が離れそう!』
そう、4人。転生者と朝倉和美と幽霊二人だ。
今の状況を説明すると、片方は殺気立って朝倉を追いかける殺伐とした光景で、もう片方は朝倉の体に幽霊の一人が乗っ取って必死に身体を動かしているというなんともコメディな光景。
時折、朝倉の前髪から電光が走り、青白い小規模な雷が転生者を襲い掛かる。しかし雷は貫く前に目に見えない何かに阻まれて四散する。朝倉(に憑依した幽霊)は苦々しく舌打ちをし、
(魔力が馬鹿でかいクセして((運用|つかいかた))がザツね。ただの魔力の多い子供だったら話は別だけど、どうみても和美よりちょっと上って感じだし、どうなってんのよ?)
短い茶髪の幽霊、ミコトは冷静に侵入者を分析するが良い結果が出てこない。
ミコトとしては早く魔法教師達の元へ逃げ込んで朝倉ともう一人の幽霊、相坂さよを保護してもらいたい。なんせ彼女達はコンビニの帰りに偶然現場の近くを通っただけなのだから。
だが、自分は襲い掛かってきた刺客をただ受け入れれば良かったという話なのか? そう言われるとそうでもない。刺客の人質になった場合、朝倉は何をされるかわかったもんじゃないし、酷ければトラウマになるかもしれない。その上追いかけてくる女の子(実際は男。二十歳過ぎ)は何故かは知らないが殺気立っている。人質だろうと関係無く、朝倉を殺しに来てただろう。
(雷撃っつぅと、大抵は御坂美琴の能力だな。だとしたら―――)
「俺と相性良くね……?」
彼は転生者。
彼は((神と名乗る者|ゲームマスター))の用意した((第二の人生|ゲーム))に参加した((主人公キャラ|プレイヤー))。
彼にはゲームならではの特典が付いていた。
しかし、彼は用心深い人間だった。『((一方通行|アクセラレータ))』や『アカシックレコード操作』などの下手に強力すぎる力を持てば何かと面倒な事になる。だがあまりに弱すぎると原作に介入できそうにない。
ならばスタンダードで扱いやすい能力だったらどうだ?
例えば、物を動かすという単純で汎用性がある『テレキネシス』。これならば大小の加減が容易に出来るから便利だし、魔法を日常に取り入れているこの世界でも目立ちにくい。
とある世界でのテレキネシスの一種、サイドアームという技は、空気中の電子を操って電撃を無効化させた事がある。
意識を研ぎ澄ませ、空気を固めるイメージで空間を支配する。
「きゃあ!?」
彼から逃げる朝倉は、ビンッ! と身体を磔にされた。
刺客らを仕留めた力は他の転生者に十分通じる事に安心感を覚えた侵入者は、悠々と朝倉に近づいた。
「こん、の!」
バチッ! と青白い1億ボルトの電撃が侵入者に放たれる。が、
「―――こんな感じか」
空気中の電子を操り、電撃は明後日の方向に向かっていく。
「((王手|チェックメイト))! やっぱハズレじゃなかったなこの力」
電気を扱う事に関しては多少の自信があったミコトは呆然と電撃が向かった方へ顔を向けていた。
ありえない。ただ魔力が高いだけの人間に自分の力が通じないなんて。
「だから言っただろ? 痛めつける気は無いって。まぁ、少しシビレるぐらいじゃねえかな?」
「ちょ―――!」
ショックで思考が停止しているミコトに代わり本来の人格である朝倉が声を荒げる。
「何なのよ一体!? そもそも襲われる意味がわからない!」
「そもそも運が悪かったとでも言っておこうか。ま、ようするに、朝倉の存在自体が邪魔なんだわ」
そう言いながらも詫びる素振りも見せない侵入者に、一番むかっ腹を感じてるのは朝倉本人だった。
裏社会を知ってからも普通に生活したかった朝倉は、ミコトにアドバイスされ、今回のような、何かあった時に助けを求めれる様に裏社会に生きている人達に短いながらもパイプを作っていた。
彼女と通じ合った魔法使い達は基本的に友好的だった。
しかし彼女は魔法使いの目指すものとはそりが合わないと思い、節度のある程度にかかわる事を選んだ。十四年しか生きていない自分に『正義』というものは、まだ理解できない、と。
「ここの魔法使い達も薄情なモンだよな。朝倉みたいな可愛い子が襲われてんのに、未だに音沙汰無いなんてな。だから正義馬鹿って言われんだろうな」
ふざけるな。
なんの説明も無く襲い掛かり、あまつさえ朝倉の所為にする。
それなら朝倉が今まで出会ってきた魔法使い達の方がよっぽどマシだ!
グツグツと熱いものを感じながらも、何か打開策はないかと落ち着いて辺りを観察する。
ミコトはあまり使えない。さよは精々ポルターガイストが出来る程度。戦えない。目の前の少女(実際は男。年齢=彼女無い歴)の勝ち誇った顔が癪に障る。
空に固定された居心地の悪さに身じろぎをすると、トスッ、と小さい物体が落ちた音がした。
ミコトがいつも所持してる何処かのゲームセンターのコインだ。
いつの間に制服に入れられたんだろ? と首を捻った時、
(―――そうだ)
さらに身じろぎを繰り返すと、さらにコインが落ちた。
これならば……! そう考えていると、
「そんなわけで、第二の人生お疲れさん。黄泉の国でゆっくりしていってね、ってことで」
「っ!」
侵入者が軽口を叩き、『朝倉という人間』を消し去るべく近づく。
朝倉は心臓が跳ねる思いをしながらも、必死に身体を捩った。侵入者は無駄な抵抗だと思いながら気にも止めなかった。
そして、コインがある程度落ちきった時、
『ポルターガイスト! ((超電磁砲|レールガン))! 真上! 早急に!』
取り憑いた二人の幽霊に命じる。
直後、雷と同じぐらいの光と轟音が、朝倉と侵入者の間を通り過ぎる。
少女(男)は一瞬だけ驚いて身を引いたが、すぐに能力で電撃を弾く。
「まだまだ!」
立て続けにポルターガイストによって浮いたコインが、朝倉と侵入者とを遮る超電磁砲《レールガン》の壁を作っていく。
侵入者は最初こそ驚嘆していたが、段々とつまらなそうな表情に変わっていく。そんなもんか? と。
最後のコインが上空に消えた時、拘束が解けている朝倉は疲れ切った顔を浮かべていた。
最もダメージを受けてるのは実は朝倉本人だったりする。
ミコトが配慮して魔力の薄い膜を張っていたものの、((超電磁砲|レールガン))の余波を受けて普段着はコゲてボロボロ。轟音と閃光で頭はクラクラだ。
「ハッ! 奥の手も尽きたか! ……いい加減諦めようぜ?」
『和美さん! 早く逃げて!』
朝倉を労わるぐらいの余裕を見せる侵入者。さよの悲痛な声。
それら全てが頭の中を素通りしていく。
知らぬ間に侵入者は気絶寸前の朝倉の額に手を乗せていて、何かしらの力が流れ込む。
「((王|チェック))―――」
「―――考えたわね和美」
意識が朦朧としている朝倉に代わって、今度はミコトが口を動かす。
あ? と疑問の声を上げた侵入者は、次の言葉を発する間もなく、こめかみを金槌で叩かれたような衝撃を受ける。
「―――ぁっ、あ?」
一体何がぶつかったのかわからない。まともに考えれたのはそんな事。
ズドドッ! とまた金槌の衝撃が、身体のいたる所をいたぶった。
「―――グ、ソ……! 一体、何処から……」
「君のすぐ横だよ」
彼のすぐ隣から中年男性の渋い声がした途端、金槌からダンプカーの衝撃に変わった。
寸での所でテレキネシスの壁を作ったものの、衝撃を完全に殺せずに侵入者の小さな身体は数m吹き飛んだ。
「……すまないね和美君。来る途中でカラスの群れに襲われててね。((超電磁砲|レールガン))が無かったら完全に道に迷ってたよ」
因みにカラスというのは、関西呪術協会の呪術師が召喚したカラス天狗の事だ。
地面にへたり込んでいる朝倉はカクカクと首を動かし返事を返した。眼鏡をかけた男性はポケットからタバコを出してふかし、咥えると朝倉の状態を確認する。
服が破れている事以外は外傷も無く無事のようだ。ホッと胸を撫で下ろした眼鏡の男性は女の子(男)が飛ばされた方へ向き直る。
瞬時に太い樹木や地中に埋められた岩が豪速で向かってくる。
「ふっ!」
ゴッ! ガッ! ドン!と。
大きい質量の衝撃が飛ばされた物体を粉砕する。眼鏡の男性は((ポケットに手|・・・・・・))を((入れたまま|・・・・・・))なのにだ。
樹木が飛ばされてきた先に、彼は居た。
「―――ってくれたな、タカミチィィィイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」
もはや、ここに来た時に見れた可憐な顔は、怒りに((塗|まみ))れて残ってなかった。
真っ直ぐ立った彼は手を大きく広げて、虚空を掴む仕草をするとぐいっと胸元に手繰り寄せる。たったそれだけで、
森が10mほど((動いた|・・・))。
ベキベキと樹木が樹木を強引に押し潰し、地面が捲り上がり、森の生命が残酷にも奪われていく。
地殻変動を目の当たりにしているような気分になる光景を、たった一人の人間が起こしてるのが異様だ。
だが、その地殻変動の中に二人だけ、無事なものがあった。
侵入者の力に驚いて腰を抜かした朝倉とポケットに手を突っ込んだままの眼鏡の男性、高畑・T・タカミチだ。
朝倉と高畑の周りの地面は、何故かロードローラーでならした様に隆起も無くなめらかな地面になっている。
「はい?」
侵入者は高畑という人間の設定はある程度把握している。
保護という名目で一人の少女の記憶を消し去り、それでいて自分は聖職者ヅラで普通に接している、封印されているエヴェンジェリンを除いて魔帆良で二番目に強い((取るに足らない存在|・・・・・・・・・))のハズだ。
「悪いけど早めに終わらせてもらうよ」
地殻変動が終わり、音が通るようになった時、タカミチの声が聞えた。
「女子寮の門限が近いからね」
自分の真後ろから。
恐らく瞬動で移動したのだろうと思い、反撃を仕掛けようと後ろを向こうと動くが、
「ゴハゥ!?」
衝撃がこめかみを貫き、さらに高畑がいる方からも衝撃が来て挟み込まれる。
(―――居合い拳を、瞬動で来る前に―――!?)
『居合い拳』という単語を理解していないと何が起こったか終始わからないままだっただろうが、理解していても今の現象はありえない。物理的に。
「舐めんな!」
だからといって侵入者のやる事は変わらない。自分の周囲を念力で吹き飛ばした。
流石に高畑も堪らず回避行動に移る。しめた! と思った侵入者は念力の空気砲で追撃に出る。
「なるほどっ。居合い拳とっ。同じみたいだねっ」
「余裕ぶんなゴラ!!」
見えない分余裕が無いんだけど……、と言いたかったが、怒り心頭の侵入者は耳も傾けないだろうと思う高畑だった。
「はぁー助かったぁ〜?」
大災害跡をバックに朝倉は呟いた。
『(和美に助けられるなんて……)』
『ぁ……や、やっぱり高畑先生凄いですねぇ〜』
自分の力が及ばなかった事を後悔するミコトに、いち早く察したさよは話題を変えるように言う。
地殻変動を引き起こした侵入者の猛攻を受けていても、服に汚れすらない。居合い拳で弾いたり、相殺して攻撃が一つも当たらないのだ。
さっきの地殻変動から守ったのも同じ。岩や樹木を居合い拳で木っ端微塵に殴り潰した結果、ああなった。
『……伊達にあたしら人外を差し置いて、学園ナンバー2に選ばれてないって事よ』
侵入者はイラだった。
念力による空気砲は避けられ、飛ばした物体は拳圧で砕かれ、高畑自身を吹き飛ばそうにも間近にくる居合い拳で集中できない。
大体高畑はヤラレ役だ。そんなヤラレ役に手間取ってる自分に腹が立つ。
「さっさと! アタレぇ!」
怒りに任せた攻撃は、勢いはあるがぶつかる時の力はそこまで無い為、死ぬ可能性は低いが、とてつもなく痛い。高畑としても痛いのは勘弁願いたい。
「うがぁああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
侵入者は腕を天に向けて掲げる。
その時、アメリカの航空宇宙局は奇妙な現象を観測した。
その時、成層圏を越えた高軌道にあったスペースデブリが一箇所に集まり、巨大な物体を作り出した。
そして、地球の重力ではない力を受け、((流星物質|メテオロイド))と化した物体は魔帆良目掛けて落ちてくる。
一番早く何かを察知したのはミコトだった。
「先生! でっかい金属みたいな塊がここに落ちてきてる!」
「何だって!?」
高畑は空を仰いだ。肉眼では見えないが、ミコトの言う事が正しければ……!
あれこれ思案していた時、頭部をガツンと殴られ膝をつく。侵入者の飛ばした倒木らしい。
「そうですそうなんです! 正直言って……テメェら俺の邪魔なんだよ!!」
ハーハッハ! と何処かのボスキャラのような高笑いをする侵入者。
高畑は侵入者を睨みつけゆっくりと立ち上がり、咥えていたタバコを吐き捨てる。
「―――なるべく、大怪我させたくなかったんだけど……」
「はぁ? 怪我も何も、テメェはさっきから俺に怪我なんて―――っ」
たしかに侵入者はダメージを受けた感じはしない。
しかし、侵入者の言葉は終わる前に途切れた。膝に居合い拳が的確に入り、ガクンと膝が折られ、ポケットに手を突っ込んだままの高畑の足が侵入者の胸にズン! と入った。
「く、はぁ―――!?」
何の抵抗も無く、侵入者は息を漏らす。直後に背中を大きく叩きつけられ、身動きできないぐらい体中が痛み出した。
「これで邪魔者は無くなった……。和美君! なるべく離れるんだ!」
「あ、はい!」
高畑は目を閉じ、心を落ち着かせる。
左手に世界の『魔力』を。右手に自分の『気』を。
相反する力を上手く混ぜ合わせて融合させる。
発動しただけで肉体強化・加速・物理防御・魔法防御・鼓舞・耐熱・耐寒・対毒など付与される((究極技法|アルテマ・アート))、名を((咸卦法|かんかほう))。
高畑はまた空を仰ぎ見る。((流星物質|メテオロイド))は肉眼で見れるほど近くまで来ていた。
「ガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグ直伝―――」
ポケットに手を突っ込んだままいつもの構えをして、
「七条大槍無音拳っ!!」
極太のレーザーのような居合い拳を放った。
極太レーザーは上空へ向けて進み、飛来してくるものにぶつかるとそのまま消え飛んでしまった。
高畑はふぅと息を漏らし、感卦法を解く。
朝倉とさよは今まで高畑という人間が凄いということは人伝でしか聞いていなかったため、言葉が出なかった。
それでも、一番驚いたのは侵入者。
(た、たかみちってこんなつよかったのか? ネギごときにやられるようなざこキャラじゃなかったのか?)
原作との大きな相違点による原作知識の無意味さ。それと自分の力が原作キャラよりも大きく劣るという恐怖。そういったものが侵入者を支配する。
(あれはもうタカミチじゃねぇ……DEATHメガネだ!!)
当の高畑は朝倉に自分の着ていた上着を渡して寮へ帰る様に指示する。朝倉ら三人は疲れがドッと来たらしく、おぼつかない足取りでフラフラと寮へ向かって行った。
「ミコト」
「……何よ」
「僕の生徒に何かあったら、君を許さないって言ったのは忘れたかい?」
「……わかってるわよ」
「けど……助かったよ」
「……」
高畑とミコトの会話はそんな感じに終わった。その時、ミコトが少し顔が赤かったのは気のせいだと朝倉とさよは思うことにした。
侵入者はもう立つ気力も無く逃げる体力もゼロだ。
そんな状態の侵入者は高畑が近づいてきた事に反応が遅れた。
「ひぃ―――!」
今の2―Aの担任はまだ高畑だったはず。
自分は彼のクラスの生徒を消し去ろうとした。
だったら負けた自分はただじゃすまない。
ぐるぐるとそういった言葉が頭を駆け巡り、侵入者は知らずに涙が出た。
(殺される! 原作キャラに殺される!)
しかし実際にはそういった事は起こらなかった。
身体を掴まれた時は覚悟を抱いたが、高畑はすぐに軽々と侵入者を肩に担ぎ上げる。
不穏な事ばかり考えていた侵入者は突然の事に拍子抜け、むしろ何で担がれてるのかわけがわからなかった。
「―――殺さないのか?」
恐る恐ると口を開く侵入者。
高畑はピクンっと少しだけ反応し、
「……殺す殺さないは僕が決める事じゃない。それと、子供がそう簡単に命を奪うとか言わないでくれ」
それだけ言って何事も無く歩き始める。
よくよく思えば、このキャラクターは生徒思いなキャラだった気がする。その所為で超(チャオ)と戦った時にやられたハズだ。
侵入者はまた高畑に問いかける。
「……俺、これからどうなるんだ……?」
「十中八九色々な事を聞かれるだろうね。それによっては一生幽閉の可能性もあるけど」
一旦言葉を切って、
「僕が何とかするから」
その言葉を聞いた侵入者は以後何も言わなかった。時折すすり泣く嗚咽が聞えたのは高畑しか知らない事。
魔帆良の夜はこうして人知れず終わって行く。
因みに、後日朝倉は高畑に何をしたらあんな強くなったのか聞いた所、
「力だけ強い人が毎日のように襲ってきた時期があってね。中には隕石とかブラックホールとか魔人とか出してきてさ、何度死に掛けたことか」
と笑いながら言う高畑にドン引きする朝倉が見れたそうだ
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第一部:人が死に、人ならざる者に出会い、異世界への生を与えられる。 自然の摂理に反した者が罰せられないのは間違っている。 第二部:紅き騎士は全てを消された上で異世界に放り出され、本来の主役は過酷な運命を課せられ、黒髪ツンツンは否応なしに巻き込まれる。 これは、狂いに狂った混沌とした物語。 |
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