二度目の転生はネギまの世界 第十四話
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第十四話「紅き翼との邂逅」

 

 

「アラン、リュビ。移動するぞ」

「どうしたの、アリカ」

 

 アリカの護衛になってからかなり経った。アリカにはもちろん極秘、リュミスにすら詳細は話していない情報網を利用して((完全なる世界|コズモエンテレケイア))について探っていたのだが、おもしろいことが分かった。

 ((MM|メガロ))の元老院にいる密偵がつかんだ情報によれば、魔法世界とは何者かによって創られた世界であり、そろそろ限界が近いらしい。限界に達すれば魔法世界は崩壊し、魔法世界住人は全員消滅する。旧世界からの渡来者の末裔であるMMの人間の上層部などは消えずに残るが、彼らはそのことを公表せずに崩壊の序曲と共に旧世界へ戻り世界支配を目論んでいるらしい。

 さらに、((完全なる世界|コズモエンテレケイア))の構成員と接触して新入りとなった者もいて、それからは『再構成不可能』である魔法世界を切り捨て、『崩壊』を早めることによって((MM|メガロ))を滅ぼして旧世界を守るらしいことが聞けた。

 ――なぜ100年以上何もしてこなかったかというと、忘れていたからだ、としか言いようがない。魔法世界編は拳闘大会あたりしか覚えておらず、戦争についてなぞ完全に忘れていた。戦争が始まったので念のために調べたら((完全なる世界|コズモエンテレケイア))が関与していることに気づき、ようやく情報を集め始めたのだから。

 ……誰に言い訳をしているのだ、((我|オレ))は。

 

「これから((紅き翼|アラルブラ))と接触する。まさか攻撃してくるとは思えぬが、護衛は頼むぞ」

「分かったわ。行くわよアラン」

「ああ」

 

 アリカの影に潜り込む。((我|オレ))が傍にいることを他者に悟られず、さらに危機とあらばすぐに駆けつけることが可能な状態である。まさに影から見守る状態だ。本来は『影』ではなく『陰』だが。

 マクギルが先行し、((紅き翼|アラルブラ))と先に接触する。

 

「「「マクギル元老院議員!」」」

「いや、わしちゃう。主賓はあちらのお方だ。ウェスペルタティア王国……アリカ王女」

 

 そしてこちらを紹介する。……ふむ、((紅き翼|アラルブラ))のメンバーが情報通り増えているな。あの銜え煙草はガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグ。その横にいるガキはタカミチ・T・高畑とクルト・ゲーデル。あとは最後に見たときのままでナギ、詠春、ラカン、アルビレオ、ゼクトか。

 

「その横にいるのは……((黄金女帝|ゴールドエンプレス))!?」

「ふふ、久しぶりね、ジャック・ラカン」

「……久しいな。護衛でもやってるのか?」

「ええ、アランも一緒よ。それと、護衛の間はリュビと呼んで頂戴。偽名だけど、ね」

 

 驚愕するラカンに、あくまで余裕の態度を崩さずにウインクすらして見せるリュミス。

 まあ、((我|オレ))も奴も同じくアリカに協力する身。いがみ合っても仕方ないのは確か。むしろ協力し合わなければ……する必要はないな。((我|オレ))の契約は護衛。契約に変更があるか特殊な条件下でもない限り、アリカから離れることはあり得ない。

 

「アラン、顔を見せよ」

「了解した、アリカ」

 

 影から抜け出る。ただし普通に現れては面白くないので、操影術でアリカの影を持ちあげ、そこから現れる。

 その出現に全く驚かないリュミスとアリカ…………と((紅き翼|アラルブラ))の面々。ち、さすがに少しも驚かんか、奴らでは。

 

「現在アリカの護衛を依頼されているアランだ。久しいな、ジャック・ラカン」

 

 だが、驚かずとも好戦的な目で見てくる奴はいた。一度叩きのめした男、ジャック・ラカンが。

 

「てめえ、あとで勝負しな。今度こそ俺様が勝ってやる」

「現在こちらはアリカの護衛中。そちらはアリカと協力関係にある。戦いに意味はない」

 

 まあ、別に殺してやってもいいのだが――あの闘技場で、誤って下手をすれば殺しかねない一撃を打ってしまったはずだが、何故かリミッターがかかったかのように力が弱まった。何かが働いているような気がするが……ふむ、何故か((我|オレ))が行った結果のような気もするが、覚えていないのであればどうでもいい事ではないのだろうか。さて、ラカンと話している間にアリカの方はど――

 

「気安く話しかけるな、下衆が」

 

 ――――ナニがあった? ナギが何か不用意なことを言ったのか、そのあたりだとは思うが……そのナギもぼぅっとして、っと。あれは落ちているな。そういえば、確かアリカがネギの母親だったような、違ったような……まあ、そのあたりはどうでもいいか。

 

 

 

 

 アリカの説明が終わる。簡単にいえば、戦争を終わらせる調停者となるはずだったアリカだが、力が及ばず((紅き翼|アラルブラ))に助けを求めたのだ。((我|オレ))? なぜに((我|オレ))がアリカを助けなければならん。((我|オレ))の役目は護衛であり、情報収集や戦争ではない。

 まあ、頼ってくれば速やかに情報提供を行うが。

 

「『((完全なる世界|コズモエンテレケイア))』。これが戦争を長引かせている存在です。現状では連合にも帝国にも関係者が潜んでいるようですが……」

 

 ガトウがアリカに説明している。が、その程度の情報であれば既に((我|オレ))の手の内。どころか、上層部クラスなら誰が((完全なる世界|コズモエンテレケイア))の人間かまで調査済みだ。((我|オレ))の究極の情報網、なめるな。

 ……しかし、この先どうするか。我が行動しなくとも、((完全なる世界|コズモエンテレケイア))との戦いは((紅き翼|アラルブラ))がいればどうとでもなってしまう。忠実に護衛に徹するか……それでは面白くないな。いろいろと文句をつけて護衛から離れてみるのもいいか。

 

「以上です」

「話は終わったか? なれば((我|オレ))から言うべきことがある」

 

 話の終わりにかぶせるように発言する。するとアリカがやや訝しげに返してくる。

 

「くだらないことは申すなよ、アラン。で、何を言う?」

「何、しばらくリュビに護衛を任せようかと思っただけだ。((我|オレ))もそろそろ運動不足で体がなまりそうなのでな」

「ふん、護衛の任務に飽きたとでもいうか? いいだろう。その力を以って王国に尽くせ。結果を出してみせろ」

「御言葉のままに」

 

 言質をとったぞ、アリカよ。久方ぶりに暴れられそうではあるから、血は騒ぐが。

 

「では、市井にでも降りて情報収集と行くか」

「待ちな、俺たちも行くぜ!」

 

 ((馬鹿|ナギ))の発言は無視する。どうせ((我|オレ))にはついていけないのだからな。

 

「ふん、勝手にするがいい。とはいえ、付いてきていいのはアルビレオかガトウか詠春だ。((餓鬼二人|タカミチとクルト))は邪魔、((馬鹿二人|ナギとラカン))は足手まといだ」

「な、ざっけんな、てめえ!」

 

 ラカンの怒鳴り声をBGMに王城から飛び出す。そのまま空中で生体変化系咒式を使用し、仮面とローブで隠された肉体を姉であるレナに変化させる。

 着地の直前、足元に影のゲートを開いて、王城から離れた場所に転移。ゲート内部でローブと仮面を外すのを忘れないわ。

 ……さて、情報収集を始めましょうか。まずはオスティアのジェルメイヌとミカエラを訪ねて……姿を変えながら帝国かしら。シャルテットとカイル、エルルカと会ったら((MM|メガロ))でレオンハルトね。ネイとグーミリアには会えたらラッキーって思いましょう。アリアドネーのマリアムに会ったらすぐに帰ってきて、ウェスペルタティア王城のクラリスで終了ね。ガストは((完全なる世界|コズモエンテレケイア))に所属しているし、キールは商人として全国を渡っているから、どこで会えるか不明だし無視して十分、と。

 

「((紅き翼|アラルブラ))には見つけられるわけないのよ。私が完全な別人に変身できることを知らないのだもの」

 

 そして、私が保有する情報網の正体を知らないから。まさか全員が■■■だなんて想像すら出来ないでしょうから。私ですら、<((?位相換転送移|ゴアープ))>であんな事が出来るなんて想像すらしていなかったんだから。何事も挑戦が大事、ってね。

 

「あまりゆっくりして怒られるのも嫌だし、手っ取り早く終わらせましょうか」

 

 <((量子過?遍移|タプ・ス))>を発動し、木々をすり抜けるように、いえ、文字通りすり抜けて移動する。物質透過という極微の確率を励起している私に、物理接触は無意味。本来は足裏だけは発動させていないため地面をすり抜けてしまうことはないから、まさに目標めがけて一直線に行くことが可能――なんて咒式だけど、飛行魔法を並行発動するから完全に接触する必要がない。だから、斬魔剣や重力魔法や重力咒式ぐらいしか今の私には効かない。

 世界各地に潜り込んでいる諜報員の名のオリジナルとなった歌を口ずさみ、私はオスティアへと飛翔する。

説明
紅き翼との我の邂逅。そして完全なる世界について、調べ始めてみたが……
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