IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・ |
「では、はじめ!」
よく響く織斑先生の声。
俺が激痛で悶えてる間に、三人の用意は終わっていたらしい……イテェ。
セシリアと鈴が飛翔。上に向かったのを確認して、山田先生も空に。
「手加減はしませんわ!」
「さっきのは本気じゃなかったしね!」
「い、行きます!」
戦闘開始。
まずブルー・ティアーズ……メンドイ。ビットの射撃を山田先生は、いつものほわほわした感じからは想像もできないような機動で全て回避。
次に鈴の衝撃砲。回避に加え、実体盾での防御で全てを凌ぐ。
「さて、今の間に……そうだな。ちょうどいい。デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみろ」
「あっ、はい」
上空での戦闘を見ながら、シャルルが解説を始める。
「山田先生の使用されているISはデュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』です。―――
省
略
「―――でも、知られています」
シャルルの説明が終わると同時、上でも決着がついた。
山田先生が射撃でセシリアを誘導、鈴と衝突させて両者の動きをとめたところにグレネードを撃ち込んで終了。
グレネードの爆煙の中から、鈴とセシリアがおっこちてきた。
「くっ、うう……。まさかこのわたくしが…」
「あ、アンタねえ……何回面白いように回避先読まれてんのよ……」
「り、鈴さんこそ! 無駄にばかすかと衝撃砲を撃つからいけないのですわ!」
「こっちの台詞よ! なんですぐにビットを出すのよ! しかもエネルギー切れるの早いし!」
負けたのに元気だなあ。
一対一の戦闘だったら五分五分だろうな。
理由は専用機の優位性。操縦技能は二人より山田先生の方が上だろうが、専用機の個人に合わせ操作性などが個人に適応される。
……でも、それでも山田先生の技量だと五分五分の状態まで持っていかれるだろうけど。
「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。……さて次は玖蘭だ」
「面倒です」
ズッパァァン!!!
「ごぶぁっ!?」
「いいからやれ」
「はい……」
さっきより威力が上だよ……地面をのたうち回ってる俺からの報告は以上だ。
「いつつ……『マイスターズ』」
――全く、君は馬鹿なのか?
ぐあっ、心にダメージ。
『『マイスターズ』起動、((モード選択|セレクト))GNY−001F2『ガンダムアストレアTYPE−F2』』
ティエリアの余計な一言とともに展開される、もう見慣れた深紅の全身装甲。
装備は右腕にプロトGNソード、左手にビームライフル、両足にはピストル。
「じゃあ、山田先生」
「はい、やりましょうか」
――ティエリア、準備を頼む。
――了解している。
ん? 山田先生は俺たち男子と話をするとき、いつもあわあわしてる感じなんだが……全身装甲だから良いのか?
まあいい、楽しめそうだな。
「では――はじめ!」
山田先生と同時に空へと飛び出す。
「先手はもらいます!」
右腕のプロトGNソードの刀身を展開し、山田先生に切りかかる。
山田先生は、冷静に後退して回避。
「そこです!」
プロトGNソードを振り切った状態の、隙だらけの俺向けて山田先生はアサルトライフルで弾丸を叩き込んでくる。
―――俺の狙いはコレだ。
その弾丸の射線に入るように、左手のビームライフルを投げる。
実弾の弾丸がビームライフルに何発も突き刺さり、爆散。GN粒子を含む爆煙が辺りを包む。
「モード選択『デュナメス』」
『モード選択、GN−002『ガンダムデュナメス』』
その爆煙の中で、俺は装甲を変える。
深紅から、白とモスグリーン主体の装甲に変化した。
「ガンカメラ展開」
額のV字アンテナが降りて、ガンカメラを露出させる。
俺は右肩にマウントされているGNスナイパーライフルを取り、射撃準備。
全身を外套のように覆うフルシールドを翼のように外へと動かして、煙を四散させる。
山田先生はあの無人機のときに俺の機体が変化することを知っているので驚きは無いが、下に居る女子はいろいろと言いあっていた。
……まあ、無視だけどな。こちとら戦闘中だ。
「狙い撃つぜ!」
山田先生をロックオン。狙いを定めて、引き金を引く。
――機体の制御と防御は任せた!
――了解。
機体制御と防御をティエリアに任せて、狙撃に集中する。
バシュン!
まず一発、コレは回避された……MISS
バシュン!
二発目、その山田先生の回避先に一発……HIT
バシュン!
三発目、よろめいた山田先生に一発……HIT
バシュン!
四発目、よろめいているうちにもう一発……よろめきながらも回避された。MISS
ここで、山田先生が接近してくる。
「せいっ!」
近接ブレード――敵武装情報、武装名《ブレッド・スライサー》――で、切りかかってきた山田先生。
ガンカメラを収納。左手をスナイパーライフルの持ち手から離して、臀部のバーニアのサイドにあるビームサーベルを引き抜いて受け止める。
鍔迫り合い――とはならない。
GN粒子でコーティングされていない実体剣とビームサーベル……打ち合うことはできても、ビームサーベルの膨大な熱量にコーティング無しの実体剣が耐えることは不可能。
刀身同士が触れて一瞬の拮抗の後、山田先生の持つ近接ブレードは刀身の半分から先を失った。
「そんなっ――!」
「そこっ!」
右手に持つスナイパーパイフルを突き付けて、引き金を引く――
「くっ!? させませんよっ!」
ブレードを持つ手とは逆の左手に持っていたアサルトライフルで、スナイパーライフルの銃口を無理矢理に逸らされた。
ビームは山田先生の頭、その左側をスレスレで通り過ぎていく。
そしてそのまま、アサルトライフルの銃口は俺に向く。
この状況をチャンスに変えるなんてな……!
山田先生に振り下ろそうとしていたビームサーベルの向きを変更して、撃たれる前にアサルトライフルを切り裂いた。
中に残っていた弾薬がビームサーベルの高熱によって誘爆を引き起こし、銃自体が爆散する。
俺と山田先生は、その爆発の衝撃でお互いに距離をとった。
――ティエリア、機体制御をこっちに。
――わかった。
「さすが玖蘭くんですね。強いです」
「山田先生こそ、いつもとは大違いですよ」
ビームサーベルをラックに戻し、スナイパーライフルを両方とも((収納|クローズ))して、両足の太もものホルダーからピストルを取り出す。
山田先生も、新しくマシンガンを展開した。
「……再開といきましょう」
「いきます!」
サークル・ロンドで円を描きながらの射撃戦。
加速と減速、急停止を使い、お互いに相手の弾丸を避けながら撃つ。
やはり山田先生の技量は高い。楯無とまではいかないが……流石、元代表候補生。
互いの銃弾は何もない空間を切り裂き、最終的にはアリーナの遮断シールドに衝突していく。
……さて、そろそろこの無限ループを打開するか。
「いけ!」
腰のフロントアーマー、両膝の装甲が開いてGNミサイル計二四発を発射する。
山田先生は回避しつつ遮断シールドの近くへ。すれすれを沿うように飛んで、ミサイルを遮断シールドにぶつけて無効化していく。
しかしそのうち一発は追尾のおかげで山田先生への直撃コース。山田先生はそれを実体盾で防御してみせた。
それと同時に、ミサイルはシールドに突き刺さる。そしてミサイル内部からGN粒子を相手に送り込む。
「えっ!? きゃあっ!」
その結果、山田先生の実体盾は内部から膨張して破壊された。
膨張による爆破で吹き飛ばされた山田先生向けて、両手のピストルを連射。確実にシールドエネルギーを削っていく。
「ま、まだですよ!」
体勢を立て直した山田先生がマシンガンを連射してきた。
俺はピストルを仕舞って、再度スナイパーライフルを右手に展開しつつ弾幕を回避。隙をみて接近する。
ピストルをホルスターに戻した左手でビームサーベルを再度引き抜きながら、マシンガンの銃身だけを切り裂く。
よし、うまく切れた。
銃身のみを切り飛ばしたマシンガンは爆散せず、形を銃身部以外ほとんど保ったまま機能停止に持ち込めた。
いま左から右に向けて振ったビームサーベルを、同じルートをなぞるように切り返す。
ビームサーベルに対してブレードが無意味ということをすでに理解している山田先生は、使い物にならなくなったマシンガンを俺に向けて投げつけてきた。
俺はGNフルシールドを可動させ、それを弾く。
それと同時進行で、俺は両手で保持したスナイパーライフルの銃口を山田先生に向けた。
この距離で相手にすぐ抵抗できる手段は無し……今度は外さないぜ?
「山田先生、終わりです」
「そうみたいですね……」
負けを認めて苦笑する山田先生。
武器を全て収納して、両手を上に上げて見せた。
俺もそれに合わせてスナイパーライフルを下ろす。
ふぅ。楯無ほどとは言わないが手強かった……。
さすがだな、山田先生は。
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第26話『実戦訓練 その2』 | ||
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