IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・ |
早速だが、結論から言うと俺は昼飯のイベントに乗り損ねた。
「……ちくせう」
いや、ある意味セーフなのかもしれない。
セシリアの料理は確か本の通り……否、本の"写真の"通りに作られたもので、原作で一夏は我慢して食べていたはずだ。
……お人好しの一夏ならともかく俺は耐えられない。
そして俺も食べさせられていたかも知れないという可能性がある以上、行かなくてよかった……と思っておこう。
ちなみに昼食は普通に、楯無と一緒に食堂で食べた。
シャルル目当ての女子がわんさか騒いで居て、居ないとわかると普通に食事を取ってシャルルを探しに行ったんだが……たどり着けたのか?
「ん? どうかしたのか?」
「いや、なんでもねぇよ。つか、俺はなんで呼ばれたんだ?」
そんなこんなで、俺が今居るのは一夏とシャルルの部屋。
結局シャルルは原作どおり、一夏と同室になった。
……俺の部屋、すでに楯無が居るもんな。二人部屋だし。
「いや、いろいろとあって男子三人だけでゆっくり集まれてなかったろ?」
「まあ、そりゃそうだけどさ」
ちらっとシャルルのほうを見ると、苦笑いが返ってきた。
「で? 男子組で集まってどうすんのさ?」
「ああ、改めて自己紹介といこうぜ」
「うん、僕はいいよ」
「ああ、俺もOKだ」
「じゃあ俺から。俺は織斑一夏、一夏って呼んでくれ。改めてよろしくな」
「うん、よろしく。一夏」
「おう。んじゃ次、拓神」
「はいよ。俺は玖蘭拓神、拓神って呼んでくれていいぞ。よろしく」
「拓神もよろしくね」
「ああ、よろしくな」
シャルルと握手。
……やっぱり男子の手にしちゃ柔いな。偽装するなら、もうちょっと気を使ったほうがいいと俺は思う。
「じゃあ、最後は僕だね。……シャルル・デュノアです、シャルルって呼んで」
「おう、よろしくな。シャルル」
「シャルル、よろしく」
「よろしく」
改めて一夏と俺は、シャルルと握手をした。
「さて、自己紹介も終わったところで提案だ」
「ん? 拓神、どうした?」
「なあ、シャルル」
「うん? なに?」
「一夏のISの特訓、付き合ってやってくれないか?」
俺の提案はコレ。どうせそういう話の流れになっただろうけど、さっさと話を進めたほうが都合がいい。
「あっ、俺からも頼む」
「一夏は、他の連中より知識も経験も不足してるからな」
「ぬぉっ、そんなにズッパリ言い切らなくても……」
あ、一夏が凹んだな。……気にしない気にしない。
「だって事実だろ」
「ぐあっ……」
お、凹みの深さが倍くらいになったぞ。
「あははっ、二人って面白いね」
「いや、俺が一夏を弄って反応を楽しむのが好きなだけだ」
「やめろよ! 俺で楽しむなよ!」
「え? 一夏、なんか言った?」
「ヒデェ!」
こんな風にな♪
……最近こういうところが楯無に汚染されてきた気もしないでもない。
「さて、話がそれちゃったけど戻すぞ?」
「そらしたの誰だよ!」
「シャルル、頼まれてくれるか?」
一夏は無視に決まってる。
ちなみにシャルルは、このやり取りで笑ったままだ。
「はははっ……。うん、喜んで」
「本当か!」
あ、一夏が復活した。
……まだ潰し足りなかったか。
「もちろん。一夏にはお礼したいし、専用機もあるから役に立てると思うしね」
「ありがたい、ぜひ頼む!」
「うん、任せて」
いまさらだけど、シャルルの声って和むなぁ……。流石、ほんわかヴォイス。
さて、シャルルが引き受けてくれたことだし。帰るか。
「さてと、俺はもう自分の部屋に戻るぜ? 時間だし」
「あ、おう。わかった」
「じゃあね、拓神」
「ああ、じゃな」
じゃ、おやすみ。と言い残して、俺は一夏&シャルルの部屋から出て行った。
それにしてもよく気付かないよな、一夏。
あと一夏が鈍感とはいえ、そこそこ隠し通せるシャルルも凄いとは思うが。
◆
あれから五日。
今日は土曜日。この学園、土曜の午前中は座学で午後は自由時間になっているため、大体の生徒がアリーナでIS操縦の訓練をしてる。
しかもここ、第三アリーナには男子が三人も集まってることで使用希望者が続出。おかげでかなりの人口密度(笑)だ。
それで一夏は、シャルルも加えた……というより、あれからはもっぱら俺とシャルルだけが一夏の指導をしている。
あいつら、俺の言ったことなんざ忘れてやがるし。どっちのために特訓をやってるんだか……はあっ。
「ええっとね、一夏がオルコットさんや凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握してないからだよ」
「どうせお前のことだから『わかってるつもりだった―――』とか考えてるんだと思うが、ちゃんと把握しろ。情報はそれだけで武器になる」
「ぐぬっ―――はい……そうです、わかったつもりでいました……」
本当に、図星だったのかよ。
いまの一夏は射撃武装が無いから、自分だけなら問題ないんだろうけど。
でも扱い方を知っていれば、『相手がどう使ってくるか』の予測を立てられるようになる。
どうやって接近するかが命の一夏からしてみれば、かなり重要な課題ではあるな。
「やっぱり知識としてだけ知ってるって感じだったね。さっき僕と戦ったときも、ほとんど間合いを詰められないで終わったよね」
「アレだけボロ負けすれば、やる気も出るだろ?」
一夏は先ほどシャルルと戦闘して、ほとんど近寄らせてもらえず、射撃武器でS・Eを削られきって終了だった。
いや、シャルル(代表候補)の技量が一夏(素人)より高いだけだけど。
「うっ……、でも確かに、勝ちたいって思うな。ていうか、シャルルには『((瞬時加速|イグニッション・ブースト))』読まれてたよな……」
「一夏の瞬時加速って直線的だから、すぐに反応はできなくても軌道予測で攻撃できちゃうからね」
一直線ならルートの予測が簡単だし、その前に撃っておけば勝手に当たりに来てくれるって事だからな。
「だからこそ、射撃武器の特性を一夏はよく知ってないといけないってことだ。じゃないと対戦じゃ勝てないぞ」
「うん、拓神の言うとおり」
「わ、わかった。でも直線的、か……」
「あ、でも瞬時加速中は無理に軌道を変えないほうがいいよ。空気抵抗とか圧力の関係で機体に負荷がかかると、最悪骨折とかするからね」
「……なるほど」
「ま、そこから先は自分で考えろ。人に頼るんじゃなくて自分で考えたほうが力になる」
あ、ちなみにコレは体験談だ。前世だけどな。
「あ、おう。わかった」
「じゃあ、射撃武器の練習してみようか。はい、これ」
シャルルが自分の武装―――五五口径アサルトライフル《ヴェント》―――を、展開して一夏に手渡す。
「え? 他のやつの武装って使えないんじゃなかったか?」
「まずはもっと教科書とか読んどけ。……他人の武装でも、所持者が許可を出せば使えるようになるんだよ」
でも例外として俺の武装は無理。GN粒子が必要だからな。
他の機体で使いたいならば、GN粒子コンデンサーを((後付武装|イコライザ))に入れておいて武器と一緒に展開しなきゃ無理だ。
まぁ武装の中にもコンデンサーはあるし、威力を低めに調整すればピストルで10〜15発くらい撃てはするけど。その代わり撃ち切りで、後は投げるくらいしか使えなくなるけどな。
「――うん、今一夏と白式に((使用許諾|アンロック))を発行したから、試しに撃ってみて」
「お、おう」
「か、構えはこうでいいのか?」
さて、ここから先はその武器を使ってるシャルルに任せたほうがいいか。
俺は準備でもしておこう。
――ティエリア。
――ん? なんだ?
――デュナメスをすぐに展開できるように準備しといてくれ。
――了解した。
コレでよし。後は待つか。
ということで、俺は一夏の訓練の様子を立ちっぱなしで見ることにした。
そのうち、一夏がヴェントを使って射撃訓練を始める。
シャルルに支えられながら、出したターゲットを撃つ。中央には当たらなかったが、外れることはなかった。
……まあ結論から言って普通。
その後シャルルがお手本を見せる。
狙いは良く、すべてが的の真ん中に。
まあ暇だから、シャルルの専用機『ラファール・リヴァイヴ・カスタムU』について。
この前俺が戦った山田先生の使っていたISもラファールだったが、まずアレとは色から違う。
シャルルの機体の色は、量産機のネイビーとは違ってオレンジ。
そして背中に背負ってる推進翼は、中央部分から二つの翼に分かれるように見える。もちろん推進翼の性能も量産型よりもこちらのほうが上だ。
アーマー部分も山田先生の使っていた機体より小さくなっていて、マルチウェポンラックとしての大きなリアスカート。そこにも小さめの推進翼があってこちらは基本的に姿勢制御用らしい。
そして一番の変化といえば、肩のアーマー。
本来のラファールに装備されている4枚の物理シールド。それは全て外されていて、その代わり左腕の装甲と一体化したシールドが装備されている。
右腕は射撃の邪魔にならないように装甲は無く、スキンアーマーのみ。
以上、『ラファール・リヴァイヴ・カスタムU』の説明終了。
さて―――来た。
「ねえ、ちょっとアレ」
「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」
「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど……」
アリーナ中が騒がしくなる。原因は―――
「おい、貴様」
――ラウラ・ボーデヴィッヒ。
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第28話『シャルルと一夏と』 | ||
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