ゲイム業界へようこそ!その6 |
「サッサと片付けるわよ!」
台詞と共にブラックハートは駆け出し、それに俺も続いていく。
「二手に分かれて、敵を挟撃するぞ!」
「分かったわ!」
そうして俺達は敵を挟み込むように移動していく。
野犬は少し迷ったようだが、俺の方に向かってきた。差し詰めまずは弱そうな方からと言った所か?
先ほど戦ったコカトリスとは勝負にならない程の速さで野犬が接近してくる。しかしまだ視認出来るレベルだ、対処出来る!
俺は武器を取り出し、敵の攻撃から持ち前のスピードを活かして、回避から隙を見て攻撃を繰り出す。攻撃は微弱のダメージしか通っておらず、GPをそこそこ減らしていく感じだ。
一方でブラックハートは確実に相手のHPを削っていく。これでガードブレイクに持っていければ、勝機は見えてくる。
「ガルルルッ…、ガウッ!ガウッ!」
敵も焦りを感じたのか、大きな声を荒げている。それに合わせて、攻撃も一段と鋭さを増している。あの攻撃を食らってしまったら、大ダメージは免れないだろう。
「集中だ…集中……。」
独り言のように呟き、俺は敵の攻撃を寸前で回避していく。敵のHPが削れなくても、これがガードブレイクに繋がるのなら、それは彼女の手助けとなる。今の俺にはそれで十分だ!
「きゃっ!」
そこで彼女の攻撃の手が止まる。見ると足元の大きな窪みに足を捕られたようだ。それに相手も気付き、彼女の方へ反転して突進していく。
「痛っうう…。」
どうにか相手の鋭いの爪の攻撃を防御したようだが、それが災いになったらしい。先ほどまでの彼女の連撃が止まってしまった。野犬も俺から彼女に相手を変えて、攻め立てている。
(これは厳しいか?)
攻撃の糧となる彼女が失われた今、ガードブレイクに持ち込んだとしても、果して相手のライフにどの程度のダメージを与えられるものか?
(やらないよりはマシか…、ん?)
ここでふと思い出す。俺のまだ試していなかった「能力」について。
…変身能力。
あれだけ早く試したいと言っておきながら、ブラックハートの介入によってすっかり忘れていた。
神様が言うには、変身後だと素早さに向上に加えて、攻撃力も飛躍的に上昇するらしい。しかし、元の攻撃力がこの程度では、変身後でも期待するレベルに達することが出来ないのは?
(今はそんなことを考えている暇などないな。)
試せることがあるのなら、まず試してみるべき。それで駄目ならまた次を考えるまでだ。
確か神様は変身したいと思ったら、すぐになれると言っていた。念じたりでもすればいいのか?
具体的な例は無いが、とりあえず俺は頭の中で「変身」という想像を描き、呪文のようにその言葉を唱えてみることにした。
「変身!!」
突如として俺自身に「変化」が起こり出す。
………………
「痛っうう…。」
野犬の攻撃に私は体に大きな衝撃を与えられてしまった。
戦闘の続行は可能であったが、剣が先ほどと比べて異様に重く感じている。これではまともに攻撃が出来やしない。
レンの方はなんとか相手の攻撃を避けながら攻撃を与えているみたいだけど、あれではダメージと呼べる程で無い。
私は自分自身が情けなくなってくる。レンにサポートしてもらいつつ、私がしっかりと攻撃を与えていかなくちゃ駄目なのに、これではただの足手纏いだ。
せっかく「仲間」が出来て、迷惑をかけないよう自分の役割をこなそうと思ってたのに…。
敵の攻撃が私の方に集中し始めた。どうやら痛手を負った私に相手を切り替えたみたい。でもこんなことじゃ負けられない!
レンは私のことを信頼してくれてサポートに回ってくれているのだ。彼がどんな人間か理解出来てない部分もあるけど、それでも私の持つ子供のような夢を笑わず真剣に聞いてくれた。
そして彼の言った「俺は声優を志望する君のことを絶対に馬鹿にはしない。」という台詞。
本当に嬉しくて泣いちゃいそうだったな…。
そんな彼が今一緒になって戦ってくれているんだ。こんなことで挫けてちゃいけない!
私は敵への攻撃を「負けられない」という気持ちを込めて、再度剣を振るう。なんだか剣が軽くなったみたい。うん、私はまだ戦えるわ!
そこに彼の方から声が聞こえた。
「変身!!」
突如として眩い光が彼を包み込む。一体彼に何が起こったというの?
光に圧倒されながら、彼のいた場所を確認する。徐々に光が収まっていき、薄っすらと彼の体が見えてくる。
そして眩かった光が完全に消え、彼の姿を見て私は呆気に取られた。
そこにいたのは彼とは全くと言っていい程に、異なった存在だったのだ。
髪は薄紅色で長髪、そして私にそっくりな服装。何より目元から胸など全ての体型が変化していた。
どう考えてもおかしい。彼、いや彼女はレンなのだろうか?
そこには一人の女性が立っていた。
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その6です。 | ||
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