ゲイム業界へようこそ!その8
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ボスモンスターを倒した後、街へ向かっている途中で彼女がこちらに声をかける。

 

 

 

「あなたはこの後どうするつもりなの?」

 

 

 

「そうだな…とりあえずどこか落ち着ける場所を見つけるためにそれぞれの街を転々とするつもりかな。自分の家とか持ってないし。」

 

 

 

「へぇ…そうなんだ…。ちなみにどこの国がいいと思ってるの?」

 

 

 

「まだはっきりとは決まってないけど、プラネテューヌかリーンボックスあたりかと考えてるね。」

 

 

 

当初の考えを彼女に言う。実際は彼女のいるラステイションでもいいかなとか思ってたりするんだよな。でもこの世界に来たのだから他の国にも行ってみて、それから自分の住む場所を決めたい。

 

 

 

「そっか…。」

 

 

 

「まぁここをすぐ旅立つわけじゃないさ。むしろここの良い部分とかも見て、住むかどうか判断してみるよ。」

 

 

 

「ならラステイションに住む可能性もまだあるってことなのね?」

 

 

 

「そうなるな。」

 

 

 

「じゃ、じゃあこの私自身があなたのため、直々にこの街の良さを教えてあげるわ!」

 

 

 

「お?なんだかやる気だな?」

 

 

 

「もちろん!他の国なんかに負けてられないもの。後、出来たらあなたにはずっと居てもらいたいし…(ボソボソ)」

 

 

 

彼女は顔を真っ赤にして何か言っているがあえて気にしない方向だ。実際後半の方は聞こえなかったし。

 

 

 

それにしても彼女の真っ赤になった顔は可愛いなぁ…。惚れ惚れしてしまう。おっと顔がにやけてしまったか、気持ちを切り替えよう。

 

 

 

「それにしてもとりあえずはラステイションの街に住むとして、どこで暮らそうかな…。」

 

 

 

まずそこが一番の問題だ。

 

俺の持っているものと言えば、腰に差している武器の包丁だけだ。硬貨など一銭も持っていない。このくらい神様は融通を利かせてくれなかったのか・・・。俺の神様への好感度が大きくダウンした。

 

 

 

「そっそれなら私の住んでる協会に…」

 

 

 

「話は聞かせてもらったぞ!!」

 

 

 

彼女の言葉を遮り、突如として謎の人物が現れた!

 

 

そこにはなんと…モブキャラ「らしき」人が立っていた。

 

 

 

 

いや、「らしき」というのは本当にそう見えてしまうからだ。これと言った特徴を持っておらず、ふとした瞬間に忘れてしまいそうな…。

 

 

そういえばこのゲームのモブキャラはみんな立ち絵が黒一色だったな。目の前にいるやつは一応肌の色から服の色までしっかり分かれているが何故か近いものを感じる。

 

 

 

そのモブキャラ(男)がこちらに近づいてきた。

 

 

 

「どうやら住む家が無くて困っているようだな!どうだ、俺の家に住んでみないか?」

 

 

 

「とりあえずあなたは一体誰なんでしょうか?」

 

 

 

俺はこのモブキャラ(男)に少し押され気味だった。こんな奴に負けてどうする!頑張れ自分!!

 

 

 

「私は各地を渡り歩く流浪の騎士さ。最近までここで暮らしていたんだが、急いで別の街に移り住まねばならないのだよ。それで今ここの街に建ててある家をどうしようかと悩んでいたんだが…。」

 

 

 

「話の流れからすると、それを俺に譲ってくれるとでも言うのですか?」

 

 

 

「おお、君を実に賢いね!正解だ!とりあえず…これが家の鍵だ。ある程度は片付けたがあまり時間を取れなかったので、おそらくまだ私の私物が残っているはずだ。だが安心していいぞ!もう大した物は残っていないはずだから、後は君の好きなように使ってくれたまえ!」

 

 

 

「本当によろしいのですか?」

 

 

 

「もちろんだとも!!実は先ほど君がモンスターと戦っているのを見て、君みたいな勇敢な者に家を使ってもらえるのならばこちらとして本望なのだ。どうだい、頼まれてくれるかな?」

 

 

 

「分かりました、快く承りましょう。」

 

 

 

俺は感動したよ…。よっぽどこのモブキャラ(男)の方が神様に見えてきた。大事な所が抜けているあの神様より数十倍マシだ。

 

こういう人との触れ合いは大事にしていきたいものだ。彼の意思を酌んで、しっかりと家を守っていこう。

 

 

 

そうして俺はモブキャラの神様と強く手を握り合い、確固たる意思を持った。もうモブキャラと言って馬鹿にはしない。

 

 

 

近くでブラックハートが何か言ったようだが、気にしないでおこう。

 

 

 

 

 

「何なのよ、これ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョンを抜けて俺達はやっと街に着いた。

 

 

 

「ここがラステイションか…。」

 

 

 

ゲームの画面である程度は予想出来ていたが、実際に目で見てみると改めて驚かされる。

 

至る所に工場が建ててあり、煙突からモクモクと大量の煙が放出されている。煙が空を覆っているせいなのか、街全体が暗く感じてしまう。

 

 

 

「『重厚なる黒の大地』ラステイションよ。」

 

 

 

後ろから付いて来た彼女が口を開く。さっそくこの街について説明してくれるようだ。

 

 

 

「プラネテューヌに比べれとまだ発展途上だけど、それのおかげで日々新しい技術や物を生み出すことができているわ。」

 

 

 

「毎日が活気のある街なんだな。」

 

 

 

「ええ、この街に住む人々の活力は絶対他のところに負けないっていう自信があるわね。」

 

 

 

彼女はそう言って誇らしげに胸を張る。本当にこの街が好きなんだな…。

 

 

 

俺もこの街を一方的な見方をせず、もっと多くの視点から観察してみよう。何せ彼女が守護する街だ、気付かないだけで多くの良いところがあるに違いない。

 

 

 

新しく住むこの街に期待を膨らませ、俺は新しい家と向かった。

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