IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・ |
先の戦闘後、場所は自室。
ISもろとも負傷したセシリアと鈴音の二人は保健室。付き添いで一夏とシャルルも保健室に。
俺はさっきの戦闘のことを盾に自室に帰ってきた。いや、『疲れた』って説明したのはウソでもないんだけども。
ガチャッ
「おかえりなさーい」
「ただいま」
帰ってきた俺を迎えたのは案の定楯無。というか楯無以外ありえない……いろんな意味で。
その楯無は、ベッドに寝転がって雑誌を読んでいたみたいだ。
「聞いたわよ? ラウラちゃんと戦ったんだって?」
「まあな」
荷物を置いてから、ベッドに腰掛ける。
ちなみに部屋のベッド。いつの間にか一つになって、その代わりにベッドの大きさが大きくなってた……誰がやったのかは言わずもがな。
「久しぶりにちょっと本気になった」
「嘘でしょ。拓神が本気になったら、私でもかなわないもん」
「……本当か? かなりぎりぎりの戦いになると思うけど」
だって、今までの楯無の技量に加え神力での戦闘力上昇。
……まあ、学園最強がさらに強化されたということで。第三世代ガンダムでもキツイかな、ってところではある。
「まあ今回ビット使ったしな、AIC対策で。だからちょっと本気」
「アクティブ・イナーシャル・キャンセラー……だったかしら? 戦ってみてどうだったの?」
流石は楯無。知ってたのか。
「一対一ならチート。動きとめられてレール砲でアウト。一対二なら効力は薄いな、集中を乱されたらそこで効果が切れた。ビットがあれば一人でも対処可能―――こんなところ」
「へえ、よくそこまでわかったわね」
「言ったろ、俺は転生者。前の世界の頃からこの世界のことを知ってる……そうは言うものの、最近重要なところ以外の記憶が薄れてきてるんだけどな」
「そこから情報を持ってきてるのね。……ねぇ、未来のことも知ってるんでしょ? 私に教えてくれないかしら」
「駄目。そうすれば、起きる問題を何とかしようとお前は動くだろ?」
「ええ、もちろん。そうでなければ、未来の知識を持っている意味が無いわ」
「そうだな。だが、それで世界は変化してしまう。そしてそれは俺の知っている歴史を変える。……他にも問題が多発するんだな、これが。ってなわけで教えることは無理。理解した?」
少しでも変わればそれだけで世界は大きく変わるからな……。
俺が入ったっていうイレギュラー以上に何か起こせば、原作なんて簡単にひっくり返るはずだ。
「それなら、仕方ないわね。……じゃあ、これだけ教えてくれない?」
「答えられる範囲で」
「ありがと。……拓神の知ってる歴史は、どこまで? 月日で答えてくれればいいわ」
「それなら大丈夫か。俺の知っているのは、今年の十月の半ば位まで」
原作の七巻。それまでが、俺の原作知識の限界。
「そう、わかったわ。ありがと」
「―――さて、話を戻そうか」
「そうね」
「で、ラウラについて他に聞きたいことは?」
「彼女の目的は―――」
「一夏の…織斑一夏の排除だな。どうやら俺も、目的達成の障害として排除対象になっちまったみたいだが、…楯無に比べたら全然弱いな」
「あら、うれしいこと言ってくれるわね」
「事実だもんな。えこ贔屓も、何もしてるつもりは無い」
原作でもそうだったとおり、ラウラは楯無と比べれば弱い。しかもこの世界では楯無は神力で強化されて、その差はさらに広がっている。
―――あ、そういえば忘れてた。
「なあ、今度の学年別トーナメントってタッグだよな?」
「前に言ったはずよ? …今日全生徒に告知されてるわ」
「それで相談なんだが――――――ってできるか? 楯無の権限で」
楯無の耳元に口を寄せて、コソコソ話をするように聞いた。
「そうねぇ……無理じゃないわよ。でも本当にいいの? かなり不利なのはわかってるでしょ?」
「問題ないさ」
「そう、じゃあそう取り計らっておくわ」
「サンキュ楯無―――んっ」
久々に俺から、楯無の唇を奪った。
さっき耳を寄せられるくらいに近いんだ。このくらいはできる。
「――ん……こんなことされると、おねーさんは変な気分になっちゃうぞ?」
「やめい。……ただ感謝の意を示しただけだからな、間違えるなよ」
「むー、仕方ないなあ」
はい、拗ねてる顔ご馳走様っと。
さて。楯無とラウラ対策でも一緒に考えますか。
◇
六月も最終週。今週は丸々一週間学年別トーナメントが催される。
まあ、それに応じて生徒会の仕事も増えるわけで面倒なんだけども。
しかし今回ばかりは面倒なのは生徒会だけではないんだな、これが。朝からほとんどの生徒が自分の仕事をこなすために走り回っている。
会場の整理に来賓の案内から雑務まで、仕事の幅は広い。
結局一夏のペアはシャルルで落ち着き、セシリア・鈴音は不参加。
ラウラと箒はなんの因果か、抽選でペアとなった。
まあ、そして俺たち生徒会。楯無・虚さん・本音・俺の四人が今していることといえば。
「では、Aブロック一回戦一組目からはじめましょう」
「はじめよ〜」
「んじゃ、会長からよろしく」
「はーい」
えらくお気楽な空気の中で、お手製のくじ引き。
こんな空気でも今回の学年別トーナメントの対戦を決める重要な仕事なのだが……そんな雰囲気は今のところさらさら無い。
「じゃあ、これ」
まず楯無が引いたのは『織斑一夏ペア』のカード。
「さっそくか。じゃあその対戦相手は俺が引くな?」
「わかりました」
「引くのだ〜♪」
「誰かな?」
「んじゃ、これで」
俺が引いた一夏たちの対戦相手であるカードは、『玖蘭拓神ペア』
―――って俺かよ! 原作じゃここはラウラペアじゃないの!?
「自分を引いたのね」
「すごい運だね〜」
「では次を決めましょう―――」
とまぁ、全ての組み合わせを決めるまでこの空気でのくじ引きが続いた。
「初戦から一夏たちか……骨が折れるぜ」
愚痴りながら、アリーナのピットへと歩く俺。
向かうピットは、当たり前に対戦相手である一夏とシャルが居るピットとは逆のピット。
到着すると制服を脱いで、いつものジャージ姿に。
そしてピットの射出用カタパルトの傍らに立つ。
「ま、通常状態なのは当たり前として手加減も何も無し……というかしたら負けるか? こりゃ」
――気は抜くなよ。
――わかってるって。サポートは任せる。
――わかっているさ。……時間だ。
――了解だ。デュナメス展開。
『了解、モード((選択|セレクト))GN−002『ガンダムデュナメス』展開』
淡い緑のGN粒子が、俺の体にモスグリーンと白の装甲を構築する。
「追加、GNセファー展開」
『了解。GNセファー展開、『セファーデュナメス』』
見慣れたデュナメスの背に、前にラウラと戦った時にも使ったセシリアのものと比べて大き六基のGNプロトビットが、左右に広がるように装備された。
――さて、行くか。改めて頼むぜ? 相棒。
――ふっ、了解だ、相棒。
ティエリアと軽い一言をかわして、ピットのカタパルトに乗る。
目を閉じて、一度深呼吸して、目を開く。
「セファーデュナメス、玖蘭拓神。目標を撃破する!」
カタパルトで加速、アリーナへと俺は射出される。
心地のいいレベルのGが体に掛かり、自然とリラックスした状態で、俺は戦いを始めることになった。
俺がこちらのピットから射出されたと同時に、あちらのピットから出てくる白とオレンジの機影が見えた。
「まさか一回戦目でお前らと当たるなんてな」
「そうだな」
「負けないよ」
「ていうか拓神。お前、パートナーは?」
「俺のパートナーは居ない。唯一、一人参加だ。だからさ……全力で相手してやんよ」
そう、少し前に俺が楯無に頼んでみたのはこれだ。俺を一人でトーナメント参加させること。
その結果、楯無の権限で俺は一人で出ることになって、いま俺は一夏とシャルルの目の前にいる。
「さあ、はじめっぞ!」
俺がそう叫ぶと同時、試合開始のブザーが、アリーナに鳴り響いた。
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第31話『学年別トーナメント開催』 | ||
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