IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・ |
『ビーーーー!』
試合開始のブザーが鳴り響く。
それと同時に俺、一夏とシャルルも動き出した。
「行けよ、ビット!」
背のコアブロックに装備されていた、ラウラのときよりも多いGNプロトビット8基がティエリアの制御で二人に向けて動き出す。
「二対一だからって余裕でいると、足元すくわれるぜ?」
「そんなこと」
「――わかってるよ!」
「ならいくぜ……デュナメス、目標を狙い撃つ!」
GNスナイパーライフルを構えて、まずは一夏を狙い――トリガーを引く。
一夏に接近戦に持ち込まれるとまずい。零落白夜は、エネルギー質のものを全て無効化する。つまり、ビームサーベルの刀身では零落白夜を発動させた雪片弐型を受け止められない。
「うぉぉぉっ!」
一夏もそこまで馬鹿じゃないみたいだ。ビームサーベルを消滅させられることをわかっているようで、ビームが数発命中することもいとわず((瞬時加速|イグニッション・ブースト))で接近してきた。
「ちっ」
零落白夜も発動して雪片弐型を振り下ろしてきた一夏に対して、上に飛んで距離をとった。
先ほどまでの俺は地上に居るため浮いてなかった。つまり、一夏の振り下ろした雪片は地面に食い込むことになる。
どうせISのパワーアシストで、一秒あれば雪片を引き抜いて体勢を整えられるだろうから、一発でもGNスナイパーライフルのビームを命中させる。
ちらっと、ティエリアのビットに任せてあるシャルルのほうを向いてみた。
流石ティエリア制御のビット。いまだに一基も落とされること無く、シャルルの翻弄してこっちに来れないようにしてくれてる。
――流石だな、ティエリア。
――無駄口を叩いてる暇があるのか?
――まあ、一夏相手なら。
――油断していると足元をすくわれる。……君が言った事だぞ。
――そうだな。じゃ、ビット任せた。
ティエリアとの会話から、意識を一夏のほうに。
一夏は体勢を整え、再度接近してきていた。
「だから、接近戦は分が悪いんだって」
右膝のアーマーを開く。そしてそこに内蔵されている四基のGNミサイルを射出。
一夏は横に避けるが、知ってのとおりミサイルは追尾する。またも俺と距離をとるしかなくなった一夏に対して、ガンカメラの展開とカメラアイを起動。GNスナイパーライフルで狙撃を行う。
――背後に注意を!
ティエリアの忠告から一秒経たないうちに背中に衝撃が。俺は前のほうにつんのめる形になる。
「なっ!?」
「僕のこと、甘く見ちゃ駄目だよ」
即座にガンカメラを収納して後ろを確認すると、ショットガン《レイン・オブ・サタディ》を二丁構えたシャルル。
ビットの包囲を抜けて来たのか……!
――すまない、押さえ切れなかった。
――ビットだけじゃ限界があって当たり前だ。ビットをシャルルの足止めじゃなくて、こっちのサポートに回して。
――了解した。
俺が指示を出したと同時にシャルルのショットガンからの面での弾幕。
俺はシャルルのほうを向いて、GNフルシールドで身を包み防御する。
ガガガガガキンッ!
ショットガンの弾とシールドがぶつかる音。
それと一夏の様子を見ると、ミサイルを一発でも受けたらしく左腕の装甲が手の部分を残して無残なことに。それでも俺のほうに接近してきていた。
「んなろっ」
腰部フロントアーマーを開き、GNミサイル十六発をシャルルに。
シャルルはすぐにショットガンで迎撃、全て撃ち落す。
俺はその隙に、シャルルと一夏から十分に距離を取った。
「なら今度は――乱れ撃つぜ!」
GNスナイパーライフルを収納。両腿のホルスターからGNピストルを二丁引き抜く。
そして、二人向けて両方のトリガーを次々と引く。
俺がトリガーを引くのと同時、ピストルに片方三基づつビットがサポートに入り射撃、二人の回避先を読むように援護射撃を行う。
「くそっ!」
「まだまだ!」
「追加だ! くらっとけ!」
左膝のアーマーを開き、残った最後のGNミサイル四発も吐き出す。
知っている一夏は回避、シャルルは左腕のシールドで防ごうとする。
GNミサイルは爆破でダメージを与えるんじゃなくて、内部にGN粒子を送り込んで破壊する。
つまり現状では一夏の判断のほうが正しい。シャルル、そのシールドはもらったぜ?
シャルルの左腕のシールドには二発のGNミサイルが突き刺さる。そして内部にGN粒子を送り込んで……
「――えっ!?」
バァン!
左腕のシールドの"外装だけ"破壊した。
……確かシャルルのシールドの中には、盾殺しこと《シールド・ピアーズ》が仕込んであったから、そのせいだな。
その証拠に、外装の破壊されたシールドの内部からリボルバーと杭が融合したような武装が覗く。
「パイルバンカー、ねぇ……」
「くっ!」
シャルルは弾の切れたショットガンをすぐに収納。それとほぼ同時に新たな武装アサルトライフル《ヴェント》を呼び出して撃ってくる。
俺も多少のダメージは無視で、ピストルを乱射した。
「―――これならっ!!」
一夏の二度目の瞬時加速。
また後ろに逃げようとしたが、何かに阻まれて下がれない。
「なっ!?」
「逃がさない!」
俺の背後を取っていたのはシャルル。いつの間に!?
こんなことが可能な芸当は……瞬時加速か!
俺の背後を取ったシャルルは、その左腕の外装を破壊されたシールド――パイルバンカー――を俺に向ける。
「前も後ろもかよ―――このっ!」
かろうじて、体をシャルルを右側に、向かってきている一夏を左側になるように動かす。正確には、二人ともGNフルシールドの可動範囲内に入るように。
その直後、超加速した一夏とシャルルのパイルバンカーの準備が整う。
「「これでっ!」」
ザンッ! ―――バキィ!
ズガン! ―――メキィッ……!
二人から一撃づつもらった。シールドでガードしたものの、一夏の零落白夜を発動させた雪片弐型を受けた左側のシールドは当たり所が悪く、外側から一つ目のヒンジの部分に当たりその先を切断される。パイルバンカーを受けた右側のシールドは大きな亀裂が。
左手を動かしてピストルとビットのビームを放ち、一夏だけは俺から遠ざける。
シャルルは―――簡単に言えば間に合わなかった。
ズガン! ―――バキャァ!
パイルバンカーの二発目。先ほどの亀裂が一気に広がって、一つ目のヒンジから先が砕けた。それと、S・Eに対するダメージは防げても内側に来るダメージは……防げない。衝撃が通った俺の体は痺れる。
「まだまだ!」
次の一発。俺を守るものは何もない。
「シャルル行け!」
一夏はもう決まると思っているみたいだ……けど!
「くそっ! ―――まだだ!」
パイルバンカーの衝撃が通り、少し痺れる体を無理やりに動かし、機体を少しだけでも下に動かす。
まだ上の部分のシールドだけは残ってる。なら、そこで防ぐ!
ズガン! ―――バキャァ!
いまので残っていた右側のシールドは全て破壊された。残ったのは左肩にある普通のGNシールドだけ。
だが、それが最後の一撃だった。今まで撃てなかったティエリアの援護射撃が今の衝撃で俺が動いたことで狙えるようになり、ビットのビームがシャルルに命中。俺とシャルルを引き離す。
――助かった。
――まだ終わってない。行こう。
――ああ、勝つさ!
いまのはただシールドを壊されただけだ。防御は薄くなっても、その分機動力は上がった。
まだトランザムを使うわけにはいかない。けど、それでも!
「まだだ、まだ終わらない!」
再度一夏とシャルルの両方にピストルとビットの銃口を向ける。
「……これでもまだ駄目なのかよ」
「毒づいても駄目だぜ一夏。終わってないのは終わってないんだからさ!」
左右のピストルのトリガーを引く。
それにあわせて、俺の周りで滞空するビットからも二人に向けて射撃。
二人は左右に避け、それをビットが先読みして当てる。
「でも……埒が明かないな。なら、仕方ない」
俺は機体を加速させてシャルルに急接近する。
――ビットは一夏の足止め頼む。
――わかった。
全てのビットを一夏に向かわせて、そのままシャルルに接近していく。
シャルルは接近戦の用意で、近接ブレード《ブレッド・スライサー》を右手に呼び出した。
俺は左手のピストルをホルスターに戻して、カウンター気味にビームサーベルを引き抜く。
「「はあっ!」」
俺にブレードの刃が触れる寸前にビームサーベルがその刀身と衝突し、山田先生のときと同じく溶断。
シャルルもそのことはわかっていたんだろうけど、俺がビームサーベルを抜くのが一歩遅れたように見えたんだろうな。実際カウンターが成功するかどうかは賭けだったし。
「―――あっ!」
「チェックメイト。だ、シャルル」
そのまま斬撃を当ててシャルルの体勢を崩させると、左手のアサルトライフルも弾き飛ばす。これでシャルルは丸腰になった。
左手のビームサーベルで再度の斬撃。それに合わせてGNスナイパーライフルを片手で構える。
山田先生にしたように銃口を向け、今度は問答無用でトリガーを引く。
「ジ・エンド――!」
バシュゥン!
ピストルとビットの連撃をすでに食らっているシャルルの機体にこの攻撃を耐えるすべは無く、戦闘不能に。シャルルはよろよろと地上に降りていく。
「一夏、後はお前だけだぞ」
「はっ、ここまでやっといて負けられるかよ。シャルルのためにもな」
「ならさっさと決着を付けようか!」
ビームサーベルを仕舞い、GNスナイパーライフルを両手で構えた。ガンカメラも展開し、カメラアイも起動させる。
今の一夏はティエリアの操るビットに翻弄されていて、こっちに接近できる状況じゃない。なら好機だぜ。
「狙い撃つ!」
次々にトリガーを引き、ビームを連射。
―――何発か命中したところで、一夏が何か覚悟したような顔になったのがわかった。一夏、何するつもりなんだ?
「はぁぁぁぁぁっ!!」
ビットの射撃を無視して一夏が急加速――捨て身か!
零落白夜はまだ使えると思っていい。そうなるとこっちにもう受け止められる武装は無い。特攻がこんなにも厄介だったなんて……聞いてないな!
「仕方が無い、か」
GNスナイパーライフルを収納して、両手にGNピストルを持つ。
「くらぇぇぇぇっ!」
最大まで加速した一夏が零落白夜までも発動して突っ込んでくる。
さて、覚悟を決めようか―――
―――俺の勝ちだ、一夏。
一夏が雪片弐型を振りかぶって―――
「隙だらけだっ!」
スラスターとバーニアをフルスロットル。
((瞬時加速|イグニッション・ブースト))には及ばないが、それに近い速度を叩き出す。
「おらっ!!」
そのスピードで、一夏に右肩からのタックルを食らわせた。
「ぐっ!?」
「――身体だって、ちゃんとした武器なんだよっ!」
タックルの衝撃で構えの解けた一夏に、追撃の蹴りを浴びせる。
そして吹き飛んだ一夏に向けて、もう一度展開したスナイパーライフルを向けた。
――バシュゥゥン!!
『ビ――――ッ!!』
『試合終了。勝者―――玖蘭拓神』
その放送が聞こえた後、すぐに俺は地上に降りた。
降りて『マイスターズ』を解除する。
「勝った……か」
「ああ……俺たちの負けだ」
そのつぶやきに、さっきの攻撃で墜ちた一夏が応えた。
もちろん白式は解除済みで。
「……拓神、強いね。二人がかりで倒せないなんて」
先にリタイアとなったシャルルも近寄ってくる。
「こっちだって本当にギリギリだったんだから、同じくらいだよ」
実質的にはこっちも二人なんだよな、ティエリアがいるから。
……楯無に、俺を一人にするようにって頼んだ理由のうちにこれもあるんだけど。
「まあ、とりあえずはお互いお疲れってことで」
「ま、一夏の言うとおりか」
「そうだね。お疲れ様」
「ああ……さ、戻ろうか。次の試合もあるからな」
ということで、俺 VS 一夏&シャルルの結果――
―――ギリギリで俺の勝ち。
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第32話『VS 一夏&シャルル』 | ||
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