IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・ |
二人との戦闘を終えた俺はピットに戻る。
一夏たちと反対方向のそこに居たのは、ラウラと箒のペアだった。
―――ああ、そういえばこの二人は次の試合だったっけ。
そんなことを思いながら、横を素通りしてピットの隅のほうに行こうとしたらラウラに呼び止められた。
「貴様、また邪魔をしてくれたな」
「あん? 何もしてねーよ?」
「今の試合、貴様が負ければ次の試合で私が織斑一夏を排除できていた」
学年別トーナメントはそのままトーナメント戦。組み合わせ的に、このラウラ&箒はこの試合で勝てば俺とあたることになってる。
ということは、先ほどの試合で俺が負けていれば一夏とシャルルがラウラに当たったということだ。
次のラウラたちの対戦相手には悪いが、専用機持ち……そして高い技術を持つラウラに訓練機で勝つには楯無レベルの強さが必要だと思う。だから、訓練機で参加の次の相手ペアはたぶん勝てない。
……だからこその宣言だと思うけども。
「ふぅん。なら都合がいいな」
「なに?」
「まあ、一夏をやらせるわけにはいかないんだよ」
「まあいい。想定内だ。まずは貴様から排除してやろう」
心の中で「その台詞、そっくりそのままかえしてやんよ」とつぶやきながらラウラを見る。
ラウラは俺を睨んでいて、視線が交錯。はたから見れば雰囲気もあわせて完全に睨み合いだな。
そんなとてつもなく入りにくい空気に入ってきたのは箒だった。
「時間だ。先に行くぞ」
いや、入ってきたとは言わないか。
それだけをラウラに向けて言うと、自らは打鉄を装備してピットを出て行った。
「……玖蘭拓神、首を洗って待っているんだな」
ラウラもそれだけ言って、ピットからシュヴァルツェア・レーゲンを装備して出て行く。
「ふぅ………」
それを見て俺は、深く息を吐いた。
「……なんか俺の心労の原因が一夏な気がする」
『君からも突っかかってるじゃないか』
今のピット内には俺しか居ないから、ティエリアも外部音声で話しかけてきた。
まぁ、俺が突っかかってるのは「せっかくだから」って気持ちも強いしな。
『それで、君はどうするつもりだ?』
「なにが?」
『ラウラ・ボーデヴィッヒの相手だ。実力はあるぞ』
「楯無より下なら別に。一夏とシャルルはコンビネーションでしっかりしてたからな、それをまったく無視のボーデヴィッヒ位ならいける」
さっき一夏のシャルルにしてやられたのは、コンビネーションと機体相性の差だ。
まぁ、デュナメスを使った俺も俺なんだろうけどさ。
『そうか。機体は?』
「キュリオス。サブマシンガンは両手で、左腕にシールド。右腕にはハンドミサイルユニット装備して」
『了解』
さて、あとはVTシステムか。そうだな……。
「ティエリア、あとエクシアをフル装備での展開準備もよろしく」
『セファーは?』
「もちろん展開で」
『了解だ』
これでよし、か。
さてどうなってるかな?
ラウラと箒が出て行って5分くらいが経った。ということで試合を中継しているモニターに目を向けた。
「瞬殺だなぁ、おい」
でもまあ、結果は目に見えてたんだけど。
すでに一人はリタイア、もう一人もボロボロ。
「えっと、たしか俺は次の試合、向こうのピットから出るんだっけ」
たぶんすぐに次の試合始まるじゃん! 十分であっちまでいけるのか?
まあダッシュだな。
……
「ふぅ……到着」
『ビーーーー!』
さっきまでいたのと反対側のピットに俺が到着したと同時に、試合終了のブザーが鳴り響いた。
セーフ。たぶん10分もすれば次の試合、俺とラウラ&箒ペアの試合が始まると思う。
……ってあれ? 10分あるなら走らなくて良かったじゃねぇか。
機体が動かなくなった訓練機のペアは下の出口から出ていく。ラウラはすでに戻っていて、箒も今向こうのピットに入った。
時間は少し流れて、
『それでは、第一アリーナ第三試合を始めます。各選手は準備をお願いします』
さて、行こうか!
「『マイスターズ』展開」
『モード((選択|セレクト))GN−003『ガンダムキュリオス』』
武装はまだ展開せずに、装甲だけ。
GN粒子が白とオレンジの装甲を構築した。
『各機能オールグリーン』
「オーライ、行くぜ!」
俺は、勢いよくアリーナに飛び出した。
ラウラと箒はすでに出てきていて、空中で静止した俺の目の前に居る。
「来たか……潰してやろう」
「俺は負けるつもりはさらさら無いな」
また睨みあい。いや、俺は顔も装甲に包まれてるからあっちに見えてるのかわかんないけど。
試合開始まで、後二十秒
――ティエリア、武装展開。
――了解。
GNサブマシンガン二丁、GNシールド、ハンドミサイルユニットが相次いで展開される。
「篠ノ乃、貴様は邪魔だ。手出しをするな」
「なっ!?」
そう言い放ったラウラは箒の反論を聞こうともせずに、俺のほうに向き直る。
「いいのか? 戦力を削って」
「あの程度、戦力にもならない」
箒の気分は悪くなる一方だが、そんなことは気にも留めないラウラ。
……箒のイライラが一夏に向かないことを祈ろう。
試合開始まで…5、4、3、2、1―――開始!
「叩きのめす!」「手加減は無しだ!」
俺とラウラは同時に動き出す。箒はラウラの後ろのほうで動かない。
それはおいておいて、俺はラウラに距離を詰めさせず空けすぎさせずの距離を保つ。
そして両手のGNサブマシンガンをラウラに向けて撃つ。
バババババババッ!
命中精度と威力は低いがその代わりに連射速度は高い。
そのビームの弾幕を、ラウラは回避しながら接近しようとしてくる。
俺はラウラとの距離を一定以下にさせない。AICを食らってもかなわないので、機体制御はティエリア任せでランダム回避。
「ちょこまかと!」
「わざわざ敵の思惑通りになるやつもいねぇだろ!」
両手のGNサブマシンガンの連射を続ける。
集弾性能がそこまで良くないことがむしろメリットになって、バラけた弾がときたまラウラのS・Eを削るが、ほぼ無傷といってもいい。威力が低い弾丸が十発程度当たったところで致命傷には程遠い。別にこのままラウラのエネルギーが切れるまでこれを続けてもいいんだが……味気なさ過ぎる。
ということで、俺は行動を起こすことにした。
「くらいなっ!」
右手のGNサブマシンガンでの射撃を止め、右腕のハンドミサイルユニットからミサイルを撃ちだす。
左手のサブマシンガンの連射はラウラの行動を遮るように変更した。
「ふっ!」
ラウラはAICでまとまって飛んでいくミサイルの中心にある一発を止め、ほぼ同時に肩のレール砲をそれに向かって撃つ。
レール砲の弾丸はミサイルに着弾しミサイルを爆破。その爆破に大体のミサイルは誘爆し、ラウラに向かうミサイルは誘爆を逃れた一発のみ。たぶんすぐにこれも撃破されると思けどな。
そんなことはどうでもいい俺はティエリアから機体の制御を受け取って、誘爆でできた爆煙に戸惑い無く飛び込む。
爆煙の中でもハイパーセンサーには捉えられる。ただ一瞬でも俺を見失ってくれればいい。俺は右手のGNサブマシンガンを腕のアタッチメントに装着。そして腰のリアアーマーからビームサーベルを引き抜く。
そして煙から飛び出した。
「はぁぁっ!」
この機体――キュリオス――の特徴は速度。巡航形態なら最大で((瞬時加速|イグニッション・ブースト))並みの速度を常に出せるし、人型のままでもそれに準ずる十分な速度が出せる。
その状態で左手のGNサブマシンガンを連射しながらラウラに急接近。
右手のビームサーベルを振るう。ラウラはそれを左手のプラズマ手刀で受け止めた。
プラズマとビームが、触れている部分からスパークを撒き散らす。
「甘いな」
ラウラは左手のプラズマ手刀を展開。それを振ってきた。
「甘いのはそっちだ」
俺はキュリオスのシールドをクローモードに変更。
シールドの前の部分が真ん中から割れ、クローになる。それでラウラの右腕を掴んだ。
「まだだ!」
ラウラは両肩からワイヤーブレードを射出してくる。
「それでも!」
右手のビームサーベルでラウラの左手のプラズマ手刀をはじき、自身の体は左に移動させワイヤーブレードを回避、クローで掴んだままのラウラの右腕を引っ張るようにしてラウラを投げ飛ばす。ワイヤーブレードもその影響で制御を失った。
そして体勢が不安定なラウラに対して左手のGNサブマシンガンを連射する。
「くぅぅぅっ!」
「どうしたよ、最初の威勢は!」
……頭の中がバトルジャンキーみたいになってるけど、気にしたら負けだな。
俺は銃身が焼け付く前にサブマシンガンの連射を止めてラウラに再接近。ビームサーベルを振りかぶる。
「―――はっ!」
ラウラはビームサーベルを振りかぶった俺に対して左手を向けてくる。
それと同時に、俺の体から自由が奪われた。
「……警戒はしてたつもりなんだけど」
「甘かったな」
全く、本当に甘かった。
ガキン! という大型レール砲の駆動音とともに、その砲口が俺に向く。
「くらえ!」
ドンッ!――バァン!
「ぐぁっ!?」
レール砲の狙った場所は俺の右腕、どうやら武器を奪ってから俺を倒そうという魂胆のようだ。
放たれたレール砲の弾は正確に俺の右腕に直撃。装甲を破壊され、ビームサーベルも壊された。かなりの衝撃が俺の右腕に走る。
――くっそ。ティエリア、何か方法は?
――キュリオスのGNバーニアを最大出力にすればあるいは……。
――なんでもいい。とにかくこの状況の打開を!
――わかった。脚部GNバーニア出力最大、全GN粒子を推進系に。
両足のGNバーニアの出力が全開になり、GN粒子を大量に噴出す。それとともに、じわじわとだが俺の体は動き始めた。
その事実に、ラウラの顔は驚愕に変わる。
「なっ、慣性停止結界に逆らうだと!?」
「いっけぇぇぇえ! キュリオス!」
俺が叫ぶと同時に、噴出すGN粒子がさらに勢いを増して―――俺は急上昇した。
「――ってあぶねぇ!」
俺はアリーナ上部の遮断シールドに衝突しそうになる。それもかなりの速度で。
「し、心臓に悪いな。これ」
「まぁ、いい。――さて、反撃といこうか」
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第33話『VS ラウラ&箒』 | ||
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